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人気DJのエクスクルーシヴMIXを毎月配信! 『EYESCREAM.JP Mix Archives』#54 渡辺俊美

Interview & Text : Yu Onoda | Photo & Edit : Yugo Shiokawa

EYESCREAM.JPレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「EYESCREAM.JP Mix Archives」。今回登場するのは、TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美。

伝説のクラブ、ZOO(のちのSLITS)の前身である下北ナイトクラブ時代からクラブDJの第二世代として、現場に立ち、その後、TOKYO No.1 SOUL SETの一員として活動を続けながら、セルロイドやエマニュエル、DOARATといったショップ、ブランドを通じて、ストリートファッションを発信してきた彼は、2000年前後からジャズの新しい楽しみ方を提示するパーティ「INTER PLAY」を始動。その他にもTHE ZOOT 16や紅白歌合戦にも出演した猪苗代湖ズ、ソロでの音楽活動、ベストセラーとなったフォトエッセイ集『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』の出版など、多岐に渡る活動を通じて、独自の世界を確立してきた。

今回のインタビューでは、そんな渡辺俊美の音楽観を紐解きながら、年末年始にじっくりゆっくり楽しめるDJミックスの制作を依頼。セレクトされたお気に入りのジャズが織りなす極上の時間をお楽しみいただければと思います。

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)



クラブでもなく、ライヴハウスでもない、東京らしい遊び場を作りたくなったんだよね。


— 俊美さんの歴史を紐解くと、初めてのDJは、ZOO、SLITSの前身、下北ナイトクラブで行われたスーパーラヴァーズのイベントということになるんですよね?

渡辺俊美(以下、俊美):そう、4つ打ち……まぁ、ディスコ・クラシックだよね。7つ離れている姉ちゃんが、よく家に友達を呼んで、レコードをかけていたんだけど、ビージーズをはじめ、ディスコのレコードが多くて、その影響だよね。振り返ると、78年から81、82年くらいまでの時期はディスコが面白かったんじゃないかな。いろんなレコードを持ち寄っては、姉ちゃんがはしゃいでいたから、自分のなかでパーティというと、ディスコのイメージがあるし、DJをやるんだったら、曲を繋ぎたいなと思ったの。だから、自分がDJをやる時もディスコ、それから、リアルタイムでハウス、アシッドハウスが出てきた頃だったから、ディスコにその当時のリアルタイムな音楽を混ぜてかけたかった。繋ぎといえば、EMMAがロンドンナイトでDJしている時、ロックでガシガシ繋いでいるのも面白かったし、そう、とにかく繋ぎたかったんだよね。

— 当時、影響を受けたハウスDJは誰かいました?

俊美:クラブではないんだけど、当時、お店(セルロイド)をはじめていたラフォーレ原宿で定期的にイベントをやってて、(のちのマッシヴ・アタックになるワイルドバンチのDJ)マイロとか、ニューヨークとかロンドンのアーティストが来てはDJをしてたんだけど、俺がその前座でDJをやらせてもらってたのね。だから、彼らのDJに触発されて、新しい音楽は常に意識してた。その当時だと、(渋谷のレコードショップ)DJ’s Choiceとか、六本木のWAVEとか、専門の情報が早いレコード屋があったから、12″シングルは毎週のように買ってたし、EMMA、SHIMOYAMAくん、(TOSHIYUKI)GOTOくん、HEITAさんとか、クラブ文化が少しずつ進化していくなかで、そういうDJのプレイを聴いたりもしてたよ。

— 当時の俊美さんは上から下までばっちり決めて、ハウスDJで盛り上げまくっていたとか?

俊美:そうそう。自分のDJは楽しかった(笑)。というか、こちらが楽しんで盛り上げないとって思ってた。でも、自分のなかで、DJとして色々始まったのは、川辺ヒロシくんに出会ってからじゃないかな。最初はソウルセットのツアーで、DRAGON&BIKKE、CHIEKO BEAUTYだけではライヴがもたないからっていうことで、俺もDJとして連れていかれて。ヒロシくんがロックとかスカとかレゲエをかけてて、俺は4つ打ちとヒップホップ担当だったんだけど、その後は俺がヒロシくんに寄っていったんだよね。だって、俺はノーマン・クックが一番好きだったからね。あの人は元々クラッシュのマニアで、ハウスマーティンズっていうギターバンドからビーツ・インターナショナルを結成して、クラッシュの「Guns Of Brixton」ネタで「Dub Be Good To Me」を出したりとかさ。だから、グループを組まずに、そのまま放っといたら、俺はああいう風になっていたんだと思う。


Beats International『Let Them Eat Bingo』 のちにファットボーイスリムとしてワールドワイドなブレイクを果たすノーマン・クックのユニットが1990年にリリースした名作。サンプル・オリエンテッドな作風は90年代のソウルセットとも共通点が少なくない。

Beats International『Let Them Eat Bingo』
のちにファットボーイスリムとしてワールドワイドなブレイクを果たすノーマン・クックのユニットが1990年にリリースした名作。サンプル・オリエンテッドな作風は90年代のソウルセットとも共通点が少なくない。



— クラッシュ、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトの系譜、その進化形というか。

俊美:でも、川辺ヒロシくんのDJが素晴らしいから、最終的に「俺はいいかな」って。DJで食ってる人と違って、自分には別に食い扶持があるわけで、DJの枠から自分がいなくなることで、DJで食ってる別の人が出来ればいいかなっていう思いもあったし、DJという職業は好きなだけでは出来ないというか、それくらい命をかけなきゃダメだと思うから。だから、自分もパーティに呼ばれれば、DJはやるんだけど、DJで食っている人のようにやるのは違うなって。そう考えて、ヒロシくんとは違う方向に行こうと思ったんだけど、気づいたら、4つ打ちのDJもたくさんいたから、お店(ZOOT SUNRISE SOUND)をやりながら、自分はマヌ・チャオとか、後に(コンピレーション・アルバム)『Musica Inosente』にまとめたバルセロナのミクスチャー音楽を新たに見つけたり、ジャズにどっぷり浸かるようになって、新たなパーティ、INTER PLAYを無料で始めて、そこではレコードもかけつつ、最後はちょっとライヴをやるっていう形。まぁ、「俺の好きなレコードを聴いて!」っていうくらいの感覚でやりたかったんですよ。


Various Artists『MUSICA INNOCENT selected by 渡辺俊美』 様々な人種、音楽が混在する無国籍な街、スペイン・バルセロナ。そこで育まれたレベル・スピリットと折衷的な音楽性に渡辺俊美が共鳴。コンパイルを手掛けた2008年の熱いコンピレーション盤。

Various Artists『MUSICA INNOCENT selected by 渡辺俊美』
様々な人種、音楽が混在する無国籍な街、スペイン・バルセロナ。そこで育まれたレベル・スピリットと折衷的な音楽性に渡辺俊美が共鳴。コンパイルを手掛けた2008年の熱いコンピレーション盤。



— 曲をかけつつ、曲間でしゃべったりするスタイルでしたよね。

俊美:そうそう。レコードが、ジャズが好きなんだけど、1曲1曲には物語や思い出、思い入れがあるわけですよ。そういうエピソードを話すことで、その曲が好きになってくれればいいなって。DJはそれを1時間なり、2時間の中で山や谷を設けて、物語を作っていくわけだけど、自分には自分のやり方があるんじゃないかなって思ったし、レコードをかけながら、しゃべるスタイルというのは、古典的なディスコのDJですよね。

— なるほど。ある意味でルーツに立ち返ったわけですね。俊美さんは<「INTER PLAY」の最初のカセットを2000年にリリースされましたが、それ以前も聴かれていたはずのジャズにどっぷりハマったきっかけというのは?

俊美:ソウルセットの(1999年作)『9 9/9』のレコーディング中に、神経がやられちゃって、左手が勝手に動いたり、おかしくなって。そうしたら、ヒロシくんが「これでも聴いて、ゆっくり休めば?」って言って、ウェス・モンゴメリーのベスト盤とかセロニアス・モンクのソロとかをくれて。ずっと聴いていたら、すごい心地良かったんですよね。「ああ、落ち着くなぁ。これは薬みたいなものだな」って思っているうちにハマっちゃった。当時は昼間に洋服屋もやりながら、夜はレコーディングっていう生活がずっと続いていて、息子もまだちっちゃかったし、日々動きまくっていたから、自分を落ち着かせるための特効薬がジャズだったんだよね。ゆっくり聴きたいし、聴くからにはいい音で聴きたいということで、今度はオーディオにハマったり(笑)。結局、その延長にあるのが、(今はなき青葉台のバー)「ROCKSTEADY」ですよ。サッカーを辞めた森(敦彦:ROCKSTEADYオーナー)くんと毎日のようにオーディオショップをまわったり、ジャズのレコードを買いに行ったりしてたから。まぁ、でも、そういう遊びはやっぱり必要だよね。


Various Artists『INTER PLAY ~ My Favourite Swings selected by 渡辺俊美』 2000年前後からジャズへの傾倒を深めていった渡辺俊美が新たなジャズの楽しみ方を提唱するパーティ「INTER PLAY」。過去4作リリースしたコンピレーションCDから更に楽曲を厳選した2012年のベスト・オブ・ベスト盤。

Various Artists『INTER PLAY ~ My Favourite Swings selected by 渡辺俊美』
2000年前後からジャズへの傾倒を深めていった渡辺俊美が新たなジャズの楽しみ方を提唱するパーティ「INTER PLAY」。過去4作リリースしたコンピレーションCDから更に楽曲を厳選した2012年のベスト・オブ・ベスト盤。



— そうやってジャズを掘り下げていくなかで、何か新たな発見はありましたか?

俊美:岩手県の一関市にベイシーっていうジャズ喫茶があって、そのオーナーの菅原(正二)さんの本(『ジャズ喫茶「ベイシー」の選択 ぼくとジムランの酒とバラの日々』)を読んでさらにジャズが好きになっちゃったんだけど、自分のなかであの人は先駆者だと思っていて。それはどういうことかというと、一関でジャズ喫茶を始めて、アート・ブレイキーだったり、世界的なミュージシャンが店に来てライヴをやったりしているんだけど、みんな、菅原さんに会いに行ってるんだよね。今でこそ地方活性化とか、そういう動きがあるけど、それ以前の時代から「自信をもって店を出せば、人は来るんだ」っていうことをやってのけた、その物語が好きなんだよね。もうね、ホントしびれるよ(笑)。

— 物語とスタイルに対する熱意ですよね。そして、俊美さんがハマったバルセロナのミクスチャー音楽もジャズもジャンルは違えど、音楽に内包されたルードネスという意味で、一貫したテイストがありますよね。

俊美:やっぱり、そういう匂いがね。もちろん、エンターテインメント的なジャズもあるんだろうけど、自分が好きなのはジャズの寡黙さ。それこそ、私語禁止、スマホ禁止、なにもかも禁止されたなかで、不味いコーヒーを飲みながら、ジャズを聴くっていう昔ながらのジャズ喫茶みたいな世界というか。今はお洒落なカフェばっかりだから、そういうジャズ喫茶があったら面白いよね。
DJやってるとよく分かるんだけど、昔の音楽がまた新しくなる循環サイクルがあって、ジャズも自分には新しく感じたし、40年代半ばから60年代頭までのモダンジャズを総ナメして、頭に知識を入れたから、それを整理して、『INTER PLAY』のテープを出したり、コンピレーションCDを出したりしたんだけど、次に本を出すなら、テーマは食べ物と旅とジャズだよね。いいタイミングで出せればいいなって思っているんだけどね。


渡辺俊美『としみはとしみ』 2012年リリースの初ソロアルバム。打ち込みを交えたミニマムな佇まいの楽曲から浮かび上がる渡辺俊美のパーソナルな世界。豊かな音楽性と血の通った歌心にぐっと惹きつけられる。

渡辺俊美『としみはとしみ』
2012年リリースの初ソロアルバム。打ち込みを交えたミニマムな佇まいの楽曲から浮かび上がる渡辺俊美のパーソナルな世界。豊かな音楽性と血の通った歌心にぐっと惹きつけられる。



— そして、ここ最近では毎月末、三軒茶屋のa-bridgeにて川辺さんと新たなイベント「IN THE ROOF」を開催していますよね。

俊美:今月で22回目になるんだけど、クラブでもなく、ライヴハウスでもない、東京らしい遊び場を作りたくなったんだよね。DJとライヴをシークレットにして、俺とヒロシくんの名前で来てくれれば、誰かしらが面白いことをやってるし、誰かがいるっていう。まぁ、自分の理想だよね。あと、個人的に毎月ヒロシくんのDJが聴きたいし。

— ふらっと遊びに行けるルーフトップ・パーティは、ロンドンやニューヨークではよくやっていますけど、まだ一般的ではない日本での新たな提案だな、と。

俊美:そうそう。アンダーグラウンドではなく、ルーフトップだから、開放感もあるだろうし、そうなりたいか、なりたくないかは別だけど、若い子が「あ、変なおっさんがいるな」っていうような、変な大人がいる場所。クラブだとどうしても体育会系のノリになりがちだけど、もうちょっと健全に音楽が楽しめる場になればいいかなって。


TOKYO No.1 SOUL SET『try∴angle』 渡辺、川辺、BIKKEの三者三様な個性がぶつかり合い調和する、2013年リリースのソウルセット最新アルバム。テレビドラマ「ノーコン・キッド」の主題歌となった『One day』には、砂原良徳がアレンジで参加。

TOKYO No.1 SOUL SET『try∴angle』
渡辺、川辺、BIKKEの三者三様な個性がぶつかり合い調和する、2013年リリースのソウルセット最新アルバム。テレビドラマ「ノーコン・キッド」の主題歌となった『One day』には、砂原良徳がアレンジで参加。



— そして、新たな提案という意味では、去年からふたたび俊美さんがディレクションしている『DOARAT』で、さまざまなデザイナーが“お気に入りの一曲”をグラフィックTシャツで表現する「MY FAVORITE SONGS」というコラボ企画を展開されていますが、これは実に俊美さんならではの視点ですよね。

俊美:まぁ、でも、洋服もそう簡単ではないからね。それこそ、DJと一緒で、片手間には出来るものじゃないから、真剣にやらないといけないし、他の人の邪魔もしたくない。だから、みんながやってないメンズコスメを作ったり、自分が欲しいと思ったから、好きな曲タイトルをTシャツにしたりね。自分の中で何が旬か、それをどうやって形にするのかということもDJと同じだよね。

— 最後に。今後の予定としては、近いところでは毎年恒例、年末のライヴイベント「やぁ、調子はどうだい」が控えています。

俊美:来年にはソウルセットの作品もリリースする予定で、近々、レコーディングに入ります。ソウルセットに限らず、「毎年何かしら作品を出そう」と2000年から決めて実践しているし、年末恒例のイベントもそう。みんな生きてるか、確認の場でもあるし(笑)、自分たちは懐かしのバンドではなく、常に動いているバンドだから、売れる売れないは別として、ちゃんと歩いているところを見せるということがミュージシャンの意味なんじゃないかな。福島や東北に行っても、言うのはいつもそこなの。支援ではなく、「がんばれ」とか、そういうことも言う必要はなくて、ミュージシャンに限らず、自分が格好いい姿を見せて、「こういう風になりたい」と思えば、みんな、それぞれにがんばるだろうし、自分の役目はそういうことなんだよね。


TOKYO No.1 SOUL SET presents 「やぁ、調子はどうだい」


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公演日
12月29日(火)
OPEN 17:00 START 18:00

会場
LIQUIDROOM
東京都渋谷区東3-16-6
http://www.liquidroom.net/access/

出演ARTISTS
TOKYO No.1 SOUL SET
SLY MONGOOSE
ホフディラン

チケット料金(ドリンク別)
前売:ALL STANDING 4,500円
当日:ALL STANDING 5,000円

チケット
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード:280-232
ローソンチケット 0570-084-003 Lコード:78337
イープラス http://eplus.jp

INFO
HOT STUFF 03-5720-9999  www.red-hot.ne.jp
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