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人気DJのエクスクルーシヴMIXを毎月配信! 『EYESCREAM.JP Mix Archives』vol.70 Febb as Young Mason

Interview & Text : Yu Onoda | Photo : Takuya Murata | Edit : Yugo Shiokawa

EYESCREAM.JPレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「EYESCREAM.JP Mix Archives」。今回は、3年ぶりの新作アルバム『SO SOPHISTICATED』をリリースしたばかりのFebbをフィーチャー。

ラップ、ビートメイク、DJを多角的に行う彼は、今や新世代ヒップホップの筆頭グループとして認知されているFla$hBackSの一員として、シーンに大きな衝撃を与えた後、2014年にファーストソロ作『THE SEASON』をリリース。その評価は時と共に高まり、クラシックアルバムとして長く愛されているが、昨年11月に発表されたYOUNG JUJUのアルバム『juzzy 92’』にラップ、ビートメイクで参加したことを皮切りに、昨年12月にKNZZ、J-SCHEMEとのグループ、DOGGIESのEP『YOU BARK, WE BITE』、今年1月に初のビートアルバム『BEATS & SUPPLY』を次々にリリース。その勢いをさらに加速して到達した新作は、国内外の錚々たるゲストを交え、東京のヒップホップを体現するアルバムとなった。23歳の突出した才能は、東京の街に、そして、その先の世界に何を見ているのか。彼が愛するヒップホップを詰め込んだDJミックスとインタビューを手がかりに、“普通じゃない”アルバムを深く聴き進めていただきたい。

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)



今の日本には、USのヒップホップとタイムラグを感じることなく聴けるアルバムが少ないからこそ、そういう作品を作りたかった


— 前作『THE SEASON』は2014年の傑出した名作でしたが、新作『SO SOPHISTICATED』はそこから更なる一歩を踏み出したアルバムですね。

Febb:前作はあの時に出せるベストを出した感じで、今聴いてもまったく色褪せていないアルバムなんですけど、今回のセカンドは前作を越える作品を作りたかったんです。そのハードルは高いと周りは思ったのかもしれないけど、俺からしたら今やってることの方がヤバいと思っているし、結果がどうだったかは別として、今出せるものを全部出せば、ハードルはクリアできると思ってました。


Febb『The Season』 国内外のプロデューサーが提供する最高のビートでラッパーとしての研ぎ澄まされたセンスとスキルを爆発させた2014年のTRUEヒップホップ・クラシック。

Febb『The Season』
国内外のプロデューサーが提供する最高のビートでラッパーとしての研ぎ澄まされたセンスとスキルを爆発させた2014年のTRUEヒップホップ・クラシック。



— Febbくんがビートとラップで参加したYOUNG JUJUのアルバム『juzzy 92’』がリリースされた去年11月以降、活動のペースが急激に活発化したのは何か理由があったんですか?

Febb:YOUNG JUJUのアルバムが11月に出て、DOGGIESのEP『YOU BARK, WE BITE』が12月、それからビート集『BEATS & SUPPLY』が1月にリリースされる流れはまったく狙ったわけではなかったですし、制作のペース自体は変わってないんですけどね。

— ただ、『THE SEASON』のリリース日が延期に延期を重ねた経緯を考えると、Febbくんは制作に時間がかかるタイプなのかなと思っていたんですけど。

Febb:たしかに昔はそうでした。当時はスタジオでリリックを書いていたので、時間がかかっちゃってたんですけど、今回はあらかじめ書いたリリックをスタジオで録るだけだったので、1日3曲録る日もあったり、ペースはすごく早くて、構想の段階から完成まで約半年で完成したんですよ。ただ、構想とはいってもアルバム全体のイメージがあったわけではなく、1曲1曲のアイデアを形にして、曲が溜まっていって、アルバムができあがった感じです。

— Febbくんのラップに関して、フレーズ単位の強度が研ぎ澄まされていた前作と比べると、今回は表現の仕方が直接的になりましたよね。

Febb:俺のなかではその変化は地続きなんですけど、多分、それは制作のスピードが上がったことも影響していて、以前は詩的に考えることが多かったけど、今はビートに対してラップを乗せることにフォーカスしていて、ビートを買って、ラップを売るっていう、そういうサイクルが自分の生活に入ってきたからこそ、直接的な表現が増えたんだと思います。


Febb『BEATS & SUPPLY』 あたたかく洗練されたソウルフィールと冷たく太いビートを混在させたアプローチにビートメイカーとしての個性と現在のモードが反映された初のビートアルバム。

Febb『BEATS & SUPPLY』
あたたかく洗練されたソウルフィールと冷たく太いビートを混在させたアプローチにビートメイカーとしての個性と現在のモードが反映された初のビートアルバム。



— そして、ラッパーとしてのアルバムを意識していた前作に対して、今回は自分で7曲のビートも手掛けていて、総合的な表現としての作品になっています。

Febb:機材がMPC 2000XLからMPC RENAISSANCEに変わって、作風の幅も広がったこともあって、トラックメイカーとしての自分をもっと見てほしかったということもあるし、国内外のゲストのフィーチャリングもあるけど、作品の芯は俺のトラックが担っていて、バランスが取れた作品になりましたね。Mobb DeepのHavocのように、いつか全曲自分のプロデュースのアルバムも出してみたいですね。

— そして、今回のアルバムは海外のラッパー、ビートメイカーをフィーチャーしたことで、前作以上にFebbくんのUSヒップホップオタクとしての側面が全開ですね。

Febb:そうですね。ヒップホップは身内のビートメイカーやラッパーを使って金を稼ごうって音楽でもあるから、それはそれで素晴らしいし、日本独自のヒップホップもそれはそれで面白いんですけど、今の日本には、USのヒップホップとタイムラグを感じることなく聴けるアルバムが少ないからこそ、DOGGIESしかり、自分しかり、そういう作品を作りたかったし、ヒップホップを広い視野で捉えて、海外の人に聴いてもらえるようなアプローチをしたり、もっとデカいフィールドでやることを意識して、今回、ラッパーやビートメイカーを選びました。


DOGGIES『OU BARK, WE BITE.』 FebbがKNZZ、J-SCHEMEと結成した新グループ。GUCCI MANEも思わずチェックした昨年12月リリースのファーストEPは、A-THUGをフィーチャーし、トラップビートと共に東京、川崎の最深部へと誘う。

DOGGIES『OU BARK, WE BITE.』
FebbがKNZZ、J-SCHEMEと結成した新グループ。GUCCI MANEも思わずチェックした昨年12月リリースのファーストEPは、A-THUGをフィーチャーし、トラップビートと共に東京、川崎の最深部へと誘う。



— 海外のラッパーやビートメイカーとはどうやってコンタクトを取ったんですか。

Febb:今回は全部自分でやりました。Instagramでメッセージを送って、ギャラを聞いて、音源のやり取りするっていうのは誰でもできますからね。ただ、みんな、仕事は早いんですけど、金を払わないと何もやってくれないので、まず、金を渡して、相手のモチベーションが高いうちにどれだけ早くレコーディングに持っていけるかが大事なんです。だから、海の向こうから会わずにそういう流れを作るのが大変だったんですけど、AZなんかは仕事が超早くて、金を払ってから、1週間でヴァースが送られてきましたからね。しかも、そこには“俺たちは飢えるために生まれてきたわけじゃないから”っていうすごく印象的な一節があって、感動して思わずうるっときちゃいましたね。

— USのアーティストに馴染みが薄い読者も多いと思うので、Febbくんから紹介してもらえますか?

Febb:1曲目の「ANGEL」にフィーチャーしたAZは、Nasのクラシック『Illmatic』にも参加しているブルックリンのラッパーです。去年の夏、(WDsoundsオーナー)マーシーくんの家で遊んでた時に1曲目にAZをフィーチャーしたアルバムを出したら、とんでもないことになるなって、ふと思いついて。それですぐその場で携帯からコンタクトを取ったら、速攻でレスポンスがあったんですけど、すぐにギャラが払えないから、制作の予算を出してくれるところを見つけるために動き出したことで、今回のプロジェクトがスタートしたんです。


AZ『Doe Or Die』 Nas「Life's A Bitch」への客演で注目を集めたAZが、満を持して95年にリリースした1stアルバム。大ネタ・Juicy「Sugar Free」を大胆に用いたソロデビュー曲「Sugar Hill」やPete Rockプロデュースの人気曲「Rather Unique」などを収録した、90年代の名盤のひとつ。

AZ『Doe Or Die』
Nas「Life’s A Bitch」への客演で注目を集めたAZが、満を持して95年にリリースした1stアルバム。大ネタ・Juicy「Sugar Free」を大胆に用いたソロデビュー曲「Sugar Hill」やPete Rockプロデュースの人気曲「Rather Unique」などを収録した、90年代の名盤のひとつ。



— 10曲目「WELCUM 2 THE HEAVEN」にフィーチャーしたBoogz Boogetzは、Mobb DeepのProdigyとのコラボ盤も発表していますよね。

Febb:もともと彼の選ぶトラックが好きで、Instagramでやってくれるかどうか聞いてみたら、ギャラもそんなに高くなかったし、その時、自分が作ってたトラックを試しに送ってみたら、そのトラックでラップしたいっていうことになったんです。彼とはそれをきっかけに友達になって、俺がTwitterに投稿すると「いいね」をつけてくれるので、ヒマなのかなって思ったり(笑)。

— そして、ビートメイカーは3組。まず、Young ThugやChief Keefを手掛けるLuca Vialliは?

Febb:Luca Vialliは、彼がプロデュースを手掛けたA$ton Matthewsの「Desperado」って曲がすごく良くて。



— 「Desperado」というと、DJ Shadow「Mongrel…Meets His Maker」と同じネタを使ってる曲ですね。

Febb:で、彼のトラックもInstagram経由でコンタクトを取ってゲットしたんですけど、InstagramはTwitterと違って、相互フォローしてなくても、メッセージが送れるので、今回のアルバムを作るうえではかなり活用しましたね。

— V DonはA$AP Rocky、2 Chainz、そして、KID FRESINO×C.O.S.A.(「Time Lost」)にも提供しているビートメイカーです。

Febb:DOGGIESのレコーディングでKNZZくんと『V Donからビートもらったらいいんじゃね?』って話になったので、俺がアプローチしたらビートが送られてきて。でも、その時は微妙だねってことになって、DOGGIESでは使わなかったんですけど、後々聴いてみたら、そのうちの1曲が良かったので、自分のソロで使いました。



— NY Bangersは去年夏にフィメールラッパー、Young M.Aの「OOOUUU」が大ヒットしたプロデューサーですよね。

Febb:敵刺くんをフィーチャーした曲のビートを探してた時に俺がSoundCloudでフォローしてた人のなかにNY Bangersがいて。1曲、これを使いたいと思った曲があったので思い切って聞いてみたら、『OOOUUU』が売れたあとなのにすごい安かったので、制作上、かなり助かりました(笑)。



— そして、このアルバムで初めて名前を知ったビートメイカー、Chad Gはサウスカロライナ出身だとか。

Febb:Twitterでトラップのビートを公募したら、彼はトラップじゃない隠れクラシックみたいなビートを送ってきて、これいいじゃん!ってピックアップしたんです。トラップって日本人が突き詰めきれてないフィールドだから、クオリティという点では海外に見劣りするし、海外のビートメイカーの方が積極的というか、断然ハングリーだったりするんですよ。

— さらにゲストとして、ビートメイカーではSCRATCH NICE & GRADIS NICE、ラッパーでは前作から引き続きKNZZをフィーチャーしているほか、B.D.、A-THUG、敵刺が参加してる前半は、A-THUGいうところのSAVAGEな、残忍、残酷なヒップホップが展開されています。

Febb:KNZZくんは兄貴的な存在で、私生活のこともアドバイスしてくれたり、ラッパーという垣根を越えて、男として尊敬しているんですよ。そして、コウヘイくん(B.D.)に関しては、KNZZくんとは違った兄貴肌な側面があって、THE SEXORCISTの仲間でもあるし、VDonのトラックを聴いた時、これはコウヘイくんに合うなと思ってお願いしたし、逆に敵刺くんに関しては向こうからやりたいと言ってくれたんですよね。それ以前は接点がなかったA-THUGは、DOGGIESでの共演をきっかけに今回参加してもらったんですけど、俺、もともとSCARSをずっと聴いてきたんですけど、きっちりヒップホップであると同時に、ヒップホップに馴染みがない人にもアピールする分かりやすさがあって、それは彼の天性だと思うんですよね。



— そして、前作同様、SAVAGEな前半からメロウな後半への流れは、Febbくんらしいスタイルですよね。

Febb:最初はハードに、そして、ソフトに。そういう後味のいいアルバムが好きだし、もっとスタイリッシュに東京を描ける人が出てきてもいいと思うんですよ。『SO SOPHISTICATED』というタイトルにあるように、このアルバムでは洗練されている東京感を出したかったし、そういう部分は後半のメロウな側面から読み取ってもらえたらうれしいですね。


Febb『So Sophisticated』 AZやBOOGZ BOOGETZ、A-THUG、B.D.、KNZZ、敵刺といったゲストとのスリリングなやり取りはもちろんのこと、現行のUSヒップホップを見据え、ラッパー、ビートメイカーとして結実させた高次元のトータルアートが聴き手を熱くさせるセカンド作。

Febb『So Sophisticated』
AZやBOOGZ BOOGETZ、A-THUG、B.D.、KNZZ、敵刺といったゲストとのスリリングなやり取りはもちろんのこと、現行のUSヒップホップを見据え、ラッパー、ビートメイカーとして結実させた高次元のトータルアートが聴き手を熱くさせるセカンド作。



— 「ANGEL」に<普通じゃない少年時代過ごしたやつのDOG LIFE>っていう一節があるように、Febbくんは若くして東京最深部のヒップホップに触れてきた経験があるわけですからね。

Febb:あの一節はKNZZくんも褒めてくれて。『お前は不良じゃないけど、NEO不良みたいな、そういうニュアンスを感じて好きだ』って言ってくれたんです。

— ははは。不良じゃなく、NEO不良ね。

Febb:別に俺は悪いことをやってるわけじゃないし、NEO不良というか、ルードボーイみたいな感じなんじゃないすか。自分は不良ではないけど、ストリートや自分のフッドについて歌うラッパーがストリートからメジャーのディールを掴んだり、成功することに夢があるんじゃないかなって。

— 成功という意味では、それぞれが異なる個性を際立たせながら、評価を高めているFla$hBackSの仲間であるJJJとKID FRESINOの2人は、今回のアルバムに敢えてフィーチャーしなかった?

Febb:今回は意識が海外に向いてたということもあるし、JJJ、佐々木(KID FRESINO)と俺は音楽の嗜好が違って、俺のほうがもうちょっとドープなヒップホップを聴いているのに対して、あいつらはポップなR&Bとかも聴くので、そういう違いも踏まえて、今回は2人の力を借りずにアルバムを作ったんです。ただ、今回はUSのラッパー、ビートメイカーとやったから、次は日本人、身内で固めて作りたいし、Fla$hBackSもやりたいと思っているんです。


Fla$hBackS『FL$8KS』 ラッパー、ビートメイカーのJJJとFebb、そして、この作品ではビートメイカー、DJだったKID FRESINOからなる若き3人の突出した才能を知らしめた2013年のクラシック。

Fla$hBackS『FL$8KS』
ラッパー、ビートメイカーのJJJとFebb、そして、この作品ではビートメイカー、DJだったKID FRESINOからなる若き3人の突出した才能を知らしめた2013年のクラシック。



— では、最後にFebbくんが単独で作ってくれたDJミックスについて一言お願いします。

Febb:自分が今まで聞いてきた曲の中でもリピート率が高い曲を、一部ですが選ばせていただきました。なかでもオススメは、最後のHarry Fraud x Freddie Gibbsの1曲前、Show TuFliというラッパーの“Me & You”。男のワンループ、ハーレムのラヴソングです。

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