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『ベージュの靴とともに』藤井隆行(nonnative デザイナー)

写真:平山 勝之

いわゆる「アラサー」世代が手がけるブランドの中で、個人的に最も正当な評価をされてると感じるブランド「ノンネイティブ(nonnative)」。そのディレクターであり、旧知の友人でもある藤井氏が気になっている物を取材してきました。

出てきたアイテムは、氏の事を多少知っている人なら誰でも納得、的なモノでしたが、それ以外の部分で相当興味深い話をうかがう事ができました。

ファッションってなに?


「仕事が楽しい」と語る藤井氏

「仕事が楽しい」と語る藤井氏



— では早速ですが、最近気になってる事について教えてもらえますか。


藤井氏(以下敬称略):あえて言えば、靴ですかね。とりあえず。でもハマってると言えば…やっぱり仕事だったりするんですけど。あとは最近、「洋服ってなに? ファッションってなに?」って考えてますかね。


— それは興味深いですね。まずはそこからお伺いします。どんなきっかけでそう考えるようになったのですか?


藤井:ここ10年いろいろな洋服があって。渋カジ的なアメカジブームが終わってから、いろいろ現れてきたじゃないですか。いわゆる裏原系を筆頭に、サイラス(SILAS)とかシュプリーム(Supreme)とか。ソフ(SOPHNET.)も10周年だし。ロンドンでいうなら、ダファー(The DUFFER of St.GEORGE)とかみたいな。もちろんなくなったブランドもあって。

で、今後またファッションの中心はコンセプトがよりはっきりしてるブランドっていうのに戻りそうな予感があって。というのは、去年・一昨年くらいで「モノ」に寄り過ぎてる感じするじゃないですか、ファッションが。変な意味で本物志向になってきて、なんとなくオタク化してて。でもそれは、ファッションではないなと思ってる。


「ROYAL BLUE」をテーマカラーとしたnonnative 08/09AWコレクション

「ROYAL BLUE」をテーマカラーとしたnonnative 08/09AWコレクション



— その傾向は強くなってる感じはありますね。うんちく寄りと言いますか。

藤井:それを着てどうのこうのって、ちょっとおかしな感じがして。その時に思ったかな。自分たちとしてはそんなつもりなくても「アメカジ(ブランド)」とか言われたりするし。その辺は今まで意識して表現はしてこなかったけど、分かってもらえるだろうと思ってた。でも、そんなには伝わってなかったみたいですね。


— メディアは特になんでもジャンル分けして表現しがちですもんね。雑誌の読者に作り手の真意は、なかなか伝わりにくいのかもしれません。


藤井:「職人ブランド」なんて謳われたりして。「いいんですか?!」みたいな感じでしたし。他のそういうブランドに失礼じゃないかな、って。


— 「あなた達のジャンルはそこですよ」と、メディアから一方的な扱われ方をした、という事ですか?


藤井:そうそう。僕たちはこういういろいろなモノがある時代に生きてて。ある狭い範囲にドップリ、ではなくていろいろなモノや情報がミックスされてる時代に生きてる世代じゃないですか。でも、今まではそこを表現しようとしても、説明できる状況じゃないし理解もしてもらえない。だから、ちゃんと答えを出したいな、って。


当日藤井氏が用意してくれた靴の数々。 詳細は次ページ以降で

当日藤井氏が用意してくれた靴の数々。
詳細は次ページ以降で



— なるほど。これからはブランドとしてコンセプトを明確に打ち出して表現して行くということですね。では、次になぜ靴が好きなのかについてお願いします。


藤井:メンズファッションって「(実用品としての)道具」と「(装飾品としての)ファッション」がリンクしてるじゃないですか。例えば時計なんかは質も満たしてるし、その上さらにカッコいい。あとはバッグだったり靴だったりも。そんな中で、やっぱり靴っていうのが特に別格なんです。靴ってやっぱり、いろいろな部分を満たさないと履けないと思うんです。機能性とか快適性とかすごく重要だし。あと例えば、ブーツなんて最初重たいだけなんだけど、履いていくうちに馴染んできて、結果ものすごく履き心地が良くなるのとかも魅力的だったり。

でもオタクじゃないから、やっぱり見た目も大事。ハイブリッド車が良いっていうのも分かるけど、それはファッションではないと思うんです。ハリウッドの人達にとってはそれがファッションなんでしょうけど、ちょっとそれは違うと思うし。

例えば、プリウス対ポルシェ。対極な存在だと思うんですけど、若い人はポルシェに憧れるべきだと思う。プリウスに憧れてはいけないと思うんですよ。もちろん、環境問題的な考えは別としてですが。でも、今の人はプリウスに憧れるようになってきてるでしょ。だからブランドの服が売れない。まず、えぇカッコしたいと思ってくれないと。本当に一番マズいと思うのは、20代前半で貯金してプリウス買いたい、っていう考え方。


— 確かに夢が無いですね。あくまでファッション的に、ですけど。プリウスをデザインなども含めてトータル的に欲しいなら別ですが、そこまで堅実に生きて一体どこに辿り着きたいの? という。


藤井:これって、インターネットで服を買って、じゃあそれをどこに着ていくの? っていう疑問にも繋がるし。
なんか今って、結果ばっかり急いで全部ショートカットになっちゃってる気がするんですよね。でも、それを仕掛けてるのは大人であって。


若い人達にはもっと夢を持ってほしい

若い人達にはもっと夢を持ってほしい



— 確かに。ムダになるかもしれない間(あいだ)の過程とかに色々と大切なことがあると思うんですが…。何がいけないんでしょうね? 遊びに行かないからなんでしょうか?僕たちの頃には、服を買いに行くときが一番おしゃれしていた、みたいな事もありましたよね。まぁ、それは本末転倒だったりするんですけど…(笑)


藤井:そうそうそう。でも、あとはあれですね。今はノンネイティブなり何なり、ちょっと調べれば何でも分かるようになっちゃってるじゃないですか。どんな山奥に住んでたとしても。


— インターネットの功罪ですか。


藤井:その影響で今まで100%だった情報が、120%とかそれ以上になってる気がしてて。ウソで情報も積み上げられるようになってきてるでしょ?


— 情報操作もまかり通る環境になってきている、と。


藤井:便利さも度が過ぎて、トゥーマッチになってきてる気がする。


— その便利なシステムっていうのを、まさに今僕らはやろうとしてたりするんですが(笑)


藤井:でも、全部じゃなくて7割8割で抑えておかないと。『最後は自分で探して』っていう部分を残しておかないとマズいよね。


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