[AUGER ART ACTION]Vol.03:ʏᴀʙɪᴋᴜ ʜᴇɴʀɪǫᴜᴇ ʏᴜᴅɪのハイブリッドで調和が取れた立体コラージュ

貝印によるグルーミングツールブランドAUGERの掲げる「Kiss our humanity – 心に触れて“整える”時間」を生活に浸透させ、“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性。その創造性をEYESCREAMがアーティストにぶつけ、自由に作品を構築してもらうシリーズ企画「AUGER ART ACTION」。第3弾はコラージュアーティストのʏᴀʙɪᴋᴜ ʜᴇɴʀɪǫᴜᴇ ʏᴜᴅɪが描く立体コラージュ作品について。異素材で立体的に構築されるコラージュの裏側にある意図は何か。

ファッションカルチャーに興味を持ったのが入り口

ーまずは、ヤビクさん自身について教えてください。出身は?

ʏᴀʙɪᴋᴜ ʜᴇɴʀɪǫᴜᴇ ʏᴜᴅɪ(以下、ヤビク):僕はブラジルのサンパウロ生まれで、日本には11歳のときに来ました。5、6年前から東京に移住して、1年ほど文化服装学院でファッションの勉強をしていたんです。ファッションデザイナーを目指していたわけではなく、単純にファッションカルチャーに興味を持っていて、直感で動くタイプなので文化を選んで、という流れです。

ーファッションが好きになったのは、どういうブランドの影響があるんですか?

ヤビク:わかりやすいところでいくと、Supremeやギャルソン(COMME des GARCONS)だとか。以前はスケートもやっていたのでストリートカルチャーも好きで、そういうブランドを追いかけている時期もありました。

ーでは、グラフィックに興味を持ったのはストリートブランドから?

ヤビク:そうですね、自然とグラフィックに目がいって、デザイン重視で服も選んでいました。意識するようになったのは高校生くらいの頃だと思います。それまではファッションとかアートにも興味が全然なかったので。

ーアート自体に興味を持つようになったきっかけは何ですか?

ヤビク:上京したということが大きかったですね。何となくギャラリーや美術館に行くようになって。知識はなくとも、好きなものを見て好きな場所に行くという感じで、やりたいことをやっていたら自然とアートに興味を持つようになっていったんです。

ーファッションが好きになり、東京でアートの存在に衝撃を受けて。そこから自分でコラージュを作ってみようとなったのは、どういう経緯があったんですか?

ヤビク:文化を中退した後、1年くらいバイトをしていた時期にあったんですけど先輩と古本屋に行ったことがあったんですね。そのときに70年代の古雑誌『PLAYBOY』を80円で買ったんですよ。なんか面白そうでカッコいいなってぐらいの認識だったんですけど。それで何となく雑誌を切り抜いてコラージュを作り始めたんです。

ー自然な流れでコラージュをしようとなったんですね。

ヤビク:そうですね。時間はあったし、何か直感めいたものがあって作り始めて。それをインスタにアップしていました。最初は面白くて作っていたんですけど、SNSの反応が意外と良かったんですよね。ストーリーで作品販売をしますってことを載せたら、けっこう買ってくれる人がいたりして。それで、ちゃんと続けていれば形になるかもしれないと思って、どんどんコラージュを作るようになっていったんです。そんなある日、YAGI(オカモトレイジがキュレーションを手がけるエキシビションマッチ)にいきなり呼ばれて出演したんですけど、それを機に一気にオファーが増えていきました。

ー2017年11月にWK Galleryで開催された初回のYAGIですね。

ヤビク:はい。レイジくん周辺の人やメディアの目に触れたのが大きかったのか、その翌週からオファーをもらうようになって。そこから本腰を入れてコラージュに取り組んでいくようになりました。

ーその時点で現代アートの道を歩もうと決めていたんですか?

ヤビク:いえ、最初は何となくコラージュで作品を作る人になっていくんだろうなってくらいでした。グラフィックデザイナー兼コラージュアーティストという感じでしたね。今では展示も行って、現代アートの枠に徐々に入っていっているような状況ですけど、最初は違ったんですよ。自分は計画的に生きれるタイプではなくて、いつも目の前のことでしか動けないので、想像もしていなかった方向に進むんですけど、それもまた面白いと考えていて。

奥行きを持たせて異素材を組み合わせるのがルール

ーコラージュの作品には、作り手のルーツが反映されると思います。そういう意味で、ヤビクさんの作品作りに対するバックボーンは、どういう点にあるんでしょうか?

ヤビク:考え方の根底にあるのは、同時並行的にいろんなものをフラットに見てきた経験だと思います。これは僕の出身がブラジルだからですね。今もサンパウロの雰囲気にはすごく愛があるし、作品には一切影響していないように見えるとは思うんですけど、何らか大きく影響している部分があると思います。今の作品に繋がるという意味では、やっぱりファッションカルチャーがベースにあると思います。初期の頃はアパレルブランドのビジュアル作りやグラフィック制作もやっていたので、そこが大きく残っていますね。

ーたしかにヤビクさんのコラージュ作品は非常にファッショナブルな空気を感じますね。

ヤビク:僕からすると服作りにもコラージュ的要素があると思うんですよね。例えばレザーとコットンだとか、色々なパーツが組み合わされて1つの洋服が構築されているわけじゃないですか。異なるものを使って1つのものを作ると言う意味で、技法的な親和性をファッションとコラージュに感じています。

ーヤビクさんのコラージュ作品には、さまざまな素材やモチーフが組み合わされてハイブリッドに作られていますが、そこは意識的にやっている部分ですか?

ヤビク:はい。他のアーティストが作ったコラージュを日常的に見ているんですけど、どうしたら明らかな違いを生み出せるかを模索していて。そこで、自分のルールとして決めたのが、立体的に奥行きを出して組み合わせたうえで、3種類ほどの異素材を使って作品を作るということでした。この条件以外はフィーリングで構築していく感じです。他のコラージュとの明らかな違いと衝撃がある作品をどうやって制作していくかを重視していますね。

ー今回、AUGERから受けたインスピレーションを作品化するにあたっても、異素材が組み合わされた仕上がりとなっていますね。どのような考えを経て、この作品に至ったのかを教えてください。

ヤビク:まずはモノトーンで作ると決めたんですが、このサイズ感でのモノトーン作を制作するのは初めてだったのでワクワクしながら制作しました。お洒落な雰囲気を維持しつつストリートな感じに持っていきたいなと考えて、左上の人物は古雑誌の写真を活用しています。紳士と淑女、まさに身だしなみを整えた男女のモチーフは絶対入れようと考えて。あとは花畑を連想させる要素をミックスさせて作品全体の雰囲気を整えています。ミラーを取り付けているのも、自分の服装を整えるときに鏡を見る行為を作品に取り入れようとしたんです。最近レザーシューズが好きなので、足元と顔が見える位置にミラーをつけたイメージです。数字も古雑誌から持ってきたんですが、これは美容院を予約するときの電話番号のようなイメージですね。

ー作品を見る人の行動やアクション性が作品に投影されているのが非常に面白いですね。色んな情報が詰め込まれているように感じます。

ヤビク:ありがとうございます。コラージュを作るときには、過去の情報を作品にして新しい命を吹き込むということをテーマにしているんです。昔の雑誌なんて、普通の人は買わないでしょうし、僕が見つけて使わないと、そのまま死んだ情報になってしまうじゃないですか。そういうことを考えながらグラフィックを組み合わせています。当初は取り付けたミラーを割ってみようかとも考えたんですけど、そうするとストリート寄りになり過ぎてしまうように感じたのでバランス感を考慮して、こういう形にしてみました。

不協和音的でありながら調和が取れている状態に

ーコラージュを作るときには、何かっぽくなり過ぎないようなバランス感というのも重視していますか?

ヤビク:そうですね、バランス重視です。ギャルソンが掲げるワードとして「不協和音」ってよく出てくるじゃないですか。それがすごく好きなんです。色んなものが混在してるけど、ちゃんと調和が取れているという絶妙なバランス。そこを重視しながら最終的に綺麗にまとまるように、あえてシンプルな部分も残したりしながら構築しています。だから今作にも余白を持たせた部分を残しているんですよ。

ーこれは精神面の質問なんですが、制作するときに行っているルーティンなどはありますか?

ヤビク:僕は気持ちが整わないと制作ができないんです。気分が乗らないときは何も作れないので、作品を作り始める前は、ちゃんと動きやすい服装になって、テンションが上がるような音楽をかけたりして、マインドセットをしていますね。そうやって心を整える準備を済ませてから作業に移っています。これが、作品制作においてすごく大事なことだと思っていますね。

ー先日、初個展も開催し、韓国のアートフェア『KIAF Plus 2022』にも参加していましたよね。今後は現代アートをメインに行なっていくことになりますか?

ヤビク:それも考えているんですが、やっぱりファッションカルチャーとの繋がりを切るのは嫌なんですよ。アパレルブランドとは今後も良い機会があったら積極的に協業していきたいです。この間、NATE LOWMAN(アメリカの現代アーティスト)がSupremeとコラボ(2022SSコレクションでコラボ作をリリース)していたじゃないですか。彼の作品が昔からすごく好きですし、作家としてのスタンスにも憧れています。アートフェアにも参加して自分らしいアートを表現しつつ、ストリートブランドとも一緒にやっていく、そういうことが出来るアーティストになっていきたいと考えています。その方が色んな人に作品を見てもらえるし、アートシーンだけで活動するのは、自分のルーツとちょっと違うと思うので。

INFORMATION

AUGER

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AUGER MAG.

ʏᴀʙɪᴋᴜ ʜᴇɴʀɪǫᴜᴇ ʏᴜᴅɪ

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