名越啓介の写真展『ON THE LINE』が石川県加賀市で開催。名越の現在地を浮かび上がらせる展示構成となる

今年6月に東京で開催された名越啓介の写真展『ON THE LINE』の巡回展+アルファの展示が、石川県加賀市のセレクトショップPHAETONと隣接する紅茶専門店TEATONに2会場において10月15日より開催される。

名越啓介の写真展が2会場で同時開催。アメリカをトレインホッピングしながら撮影した新作展と俳優・渋川清彦を捉えた写真集『ALL.』からの展示

名越は1977年奈良県生まれ。19歳で単身渡米し、スクワッター(不法占拠者)と共同生活をしながら撮影したのを皮切りに、世界/日本の辺境地域やマイノリティーなコミュニティーに入りこんで、寝食をともにすることで被写体の素顔を引き出してきた。

本展『ON THE LINE』は、今年2月に約3週間、アメリカのトレインライダー(貨物列車で生活している人たち)とともに生活し、撮影した新作写真展。今までの名越の写真と違い、被写体が登場することなく、電車に揺られている中で見えてきた風景を中心にした写真群となっている。TEATONを会場とし、実際に録音してきた現地の音を流すことで、視覚と聴覚を刺激する展示空間となるようだ。

一方のPHAETONでは、これまでの名越ともいうべき、被写体の魅力の伝わる写真を展示。それぞれの会場で、これまでとこれからを対比させることで、写真家・名越啓介の現在地を浮かび上がらせる展示となる。


なお10月22日には、名越とPHAETON坂矢悠詞人による写真、視点、死生観などをテーマとしたトークショーが開催される。

以下、『ON THE LINE』についての名越のテキストだ。

ON THE LINE

今までの過去を清算しなければならない
誰しもが思ったことのあること
ずっとそこにいても始まらない
もうその時が来た。

人を傷つけたことがわからなかったこと
嘘をつきつづけてきたこと
心の中にしまいこんでしまって
自分の心を見失ってしまった。

もうつつみかくす必要はない
いい人を演じる今までの
アウトサイドは脱ぎ捨てても
自分のことなど誰も知らない
気にしているのは自分だけ。

一度死んでしまった。

素直に向き合う時が来た
もう過去の自分はいらない。

おさらばして新しい自分を愛す時がきた。

もう一度自分を信じる勇気を持つこと
可能性を引き出せることがもっとできるはず。

信じることを愛する時が来た。

時代は待ってくれない
目の前を流れる風景は過去に向かって
轟音たて走りつづける。

貨物列車の中は暗くて景色もろくに見えない。

目の前が何もなくなったとしても、
心を開いて内側から滲みでてくる
自分にシャッターを押せばいい。

焦らず心の静けさをしっかり持つこと。

目の前の人を愛すること。

このレールは一本の刃物のように、
鋭く、細く、輝いている
線上の綱渡りは、人生そのものだと錯覚する。

過去に向かって走った先に、未来はきっとある。

懐かしい未来に出会うために
生きとし生けるすべてを信じよう。

すべてを愛していく。

そして、あなたが笑ってくれると信じている。

——名越啓介

INFORMATION

名越啓介写真展『ON THE LINE』

会期:2022年10月15日(土) – 10月29日(土)11:00 – 18:00
会場:PHAETON、TEATON(石川県加賀市伊切町239)

[TALK SHOW]
日時:10月22日(土)18:00 – 19:00
出演:名越啓介、坂矢悠詞人(PHAETON)
料金:3,300円 ※チケット事前予約はPHAETON HPより

https://www.phaeton-co.com