東京を拠点とするアーティスト、BIENの個展『PlanetesQue : The Case of B』が馬喰町PARCELにおいて7月22日より開催される。
BIENは、アニメーション表現や文字、記号などの輪郭に着目し、その形状や意味を解体/再構築する抽象的な平面表現をはじめ、映像、彫刻、インストラクション、インスタレーションなどメディアを横断しながら作品を制作している。2022年には熱海のレジデンスプログラム「ACAO OPEN RESIDENCE #5」や石巻で開催された「Reborn-Art Festival」にてサイトスペシフィックなインスタレーションを発表、西荻窪HAITSUでは部屋の中心に置かれた正体不明の真っ黒なオブジェクトを来場者がスケッチするという参加型の展覧会を行なったほか、作家・キュレーター石毛健太とのプロジェクト「SCAN THE WORLD」として、来場者に開かれ参加を促す場としての展覧会『アペルト17 SCAN THE WORLD [NEW GAME] 』を金沢21世紀美術館において6ヶ月に渡って開催したのも記憶に新しい。
本展は、今年5月に恵比寿Peopleで開催された『PlanetesQue : The Case of Y』に続く、ゲーム・装置的な要素を持つ新作「PlanetesQue」を中心に構築される展覧会となる。「PlanetesQue」は車輪付きの家の形をした箱で、中には説明書、複数のサイコロといくつかの象徴的なオブジェクトが入っており、プレイヤー(制作者 / 解読者)がその家型の箱を運び、選んだ場所で箱の中のサイコロを振り、説明書に書かれたルールやヒントに沿いながら同封されたオブジェクトやその場所周辺のものなどを使っていくことで、誰でも展示空間を作ることができるというもの。今回の展覧会では「PlanetesQue」の設計者であるBIEN自身が、PARCELの空間内でサイコロを振り、自身が設定したルールを再度咀嚼し、作家/プレイヤー「BIEN」として展示空間を作り上げる。
以下、アーティストステートメントだ。
「月にコウモリのような羽を持った生命体が存在している。」
1835年アメリカで起こった”グレートムーン捏造記事”は、ある有名な天文学者が捏造記事を発表し、これを信じた人々が新聞社に殺到したという事件です。捏造記事については荒唐無稽なホラ話だと笑うこともできますが、そういった話が信じられてしまう現象は、過去に比べても現代の方がさらに細かく、そこかしこに存在しているのではないでしょうか。”PlanetesQue”に登場するコウモリ人間の天秤は、この事件を由来として誕生しました。偶然起きた小さな出来事から非現実的な世界を想像する。想像することがそれぞれの内なる世界を作り、信仰を作る。個人が信じた世界を生き、重なるようで重なっていないこの世界。コウモリ人間が本当に月にいないかどうかなど、誰にもわからない。人類にはそういった物語を作るような想像力があるからこそ、世界は面白く、時に傾き崩れそうになりながらもバランスを保っているのだと思います。
”PlanetesQue”は誰でも作品を制作できるように設計されたゲームです。
サイコロが生み出す偶然と付き合うことで、普段何気なく過ごしている周りの環境を新たに、まるで未知の宇宙を観測するかのように捉え直します。世界の断片を拾い、展示空間に構成していくことができます。
展覧会では制作者が関与していない事象も起こっているかもしれないし、どこまでが意図なのかはわかりません。
かつてアーティスト・ジョルジオ・モランディは「わたしたちが実際に見ているもの以上に、抽象的で、非現実的なものはなにもない」と言いました。このゲームはそういった世界の捉えきれなさ、不確実さを再認識することを目的としています。
– BIEN
INFORMATION
PlanetesQue: The Case of B
「プラネテス・ク:Bの場合」
BIEN solo exhibition
会期:2023年7月22日(土) – 9月3日(日)
会場:PARCEL(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F)
14:00 – 19:00 ※月・火・祝は休廊
・オープニングレセプション:7月21日(金)18:00 – 21:00
https://parceltokyo.jp/exhibition/planetesque-the-case-of-b/