貝印によるグルーミングツールブランドAUGERの掲げる「Kiss our humanity – 心に触れて“整える”時間」を生活に浸透させ、“自分と向き合う”ことで生まれる、新たな創造と可能性。その創造性をEYESCREAMがアーティストにぶつけ、自由に作品を構築してもらうシリーズ企画「AUGER ART ACTION」。
第7弾はピクセルアーティストの石田芙月がドット絵でAUGERのプロダクトを表現する。まるでゲームのキャラクターのように動く様が可愛らしい。ピクセルアートを広めるアーティストの1人として知られる石田に、ドット絵の魅力と今フォーカスしていることについて聞いた。
あえてAUGERのプロダクトをそのままドット絵で表現した
ーピクセルアーティストとして活躍していて、今回のAUGERもドット絵が特徴的な作品を描いていただきました。まず、ドット絵を描くようになった流れとルーツと教えていただけますか?
石田芙月(以下、石田):子どもの頃、スーファミやプレステのRPGゲームを好んでやっていて、そこに映し出されるドット絵に興味を惹かれたんです。特に好きなのは『幻想水滸伝II』 ですね。もう20回以上やっていると思いますし、自分の人生に投影させるくらい好きです。小学生の頃からパソコンで絵を描き始め、意識的にドット絵を描き出したのは高校生のときです。その後、美大へ進学し油絵を学びました。
ードット絵というとデジタルなことを学ぶような気がしますが、油絵を専攻されたんですか?
芙月:全然違うと思われがちですが、根本は同じだと思うんですよね。私としてはちゃんと絵が描ける人間としてドット絵を描きたいと考えて、基礎的な画力を身につけるために美大で学んでいたんです。
ー石田さんが描かれたピクセルアートとして広く世に知られるきっかけになったのがmillennium paradeの「Fly with me」 におけるオフィシャルティーザーと、その後のヌーミレパークで展開されたゲームの絵だと思うのですが、いかがでしょうか?
芙月:そうですね。それまではフリーランスとしてドット絵以外も描いていたんですけど、あのお仕事をきっかけに思い切ってドット絵に絞ったんです。そこから今に繋がっていると思います。
ーどのドット絵作品もかなり緻密に描かれてらっしゃいますよね。制作に向き合う際、どのように精神統一したりしていますか? 何かルーティン的に行っていることはありますか?
芙月:自宅で制作を行っているので、気分をリフレッシュするためにお風呂に入ってスッキリして身だしなみを整えたり、部屋の片付けなど身体を動かす作業をしてからペンを握ることが多いです。作業に没頭していると運動はおろか、ほとんど歩かないような日も出てくるので、せめて少しでも身体を動かすように意識していますね。手元以外を動かすことで、その後の制作に集中できるように思います。
ー雑誌EYESCREAMにおいても2022年12月1日発売の特集で取材させていただきましたが、それから1年が経ち今はどんな感じでしょう?
芙月:以前から引き続き音楽アーティストのMV制作などの話もあるのですが、最近フォーカスしているのがゲームの作画のお仕事ですね。個人的には信じられないくらい嬉しいお話をいただけて切磋琢磨しています。ゲーム作画の現場は非常に厳しくて、すごく充実した勉強になる時間を過ごしていますね。ようやく本当のドット絵師として仕事をやっているような感覚があって。
ーこれまではドット絵を描けるデザイナー/アーティストだったのが、ピクセルアーティストに囲まれて仕事するようになり環境が変わったわけですね。
芙月:そうですね。ドット絵を描ける人自体が少ないですし、そもそも流行っているということもあって評価されていた部分はあると思いますが、全然ダメだったんだなと思い知らされています。もちろん今までの作品もちゃんと向き合ってきたし誇りを持っているんですけど、勉強しなくちゃいけないことがもっともっとたくさんあると実感しています。
ーそんな中でAUGERの作品を描いていただきました。非常に可愛らしいですね。
芙月:AUGERのアイテムをゲームのキャラクター選択画面みたいに表現したいと思って作りました。個人的に気に入っているのは、小さいグレーの爪切りですね。可愛いと思います。
ーあえて、AUGERのプロダクトをそのままドット絵にされたのには何か理由はありますか?
芙月:私の場合、自由に好きな絵を描くとこういう風にそのままの姿をリアルに描くことが多いんですよ。強いていうなら、それが私の作家性なのかなと思います。それにプロダクトの形自体がスタイリッシュで好みでしたし、このままを描いても可愛いんじゃないかと思って。
本当のドット絵の魅力が次の世代に伝わったら
ーこのキャラクターたちがRPGゲームのように冒険するということを考えるとワクワクしちゃいますね。では、2024年の活動についても少しお伺いしたのですが、ゲーム作画のお仕事に専念されるということになりますか?
芙月:まずはそれを進めつつ、MVなどのお話をいただいたら都度検討させていただきたいと考えています。今やっているお仕事が本当に小学生の頃から好きなものばかりなので、現状にビックリしつつ頑張らなくちゃいけないなって。
ーそうやって石田さんの描いたドット絵がゲームに使用されて、それをプレイした子どもがまたドット絵に興味を持ったらいいですよね。
芙月:はい、本当にそう思います。今の子どもたちは本当のドット絵に触れる機会が少ないと思うんですよ。スマホのゲームなどで“ドット絵風”のものはたくさんあると思うんですけど。だから、この先、ドット絵のゲームが1つのカルチャーとして再び馴染んで流行ってくれたら嬉しいですね。それでドット絵を描きたいと思う人が増えてくれたらいいと思います。ゲームを通じて子どもたちにドット絵の魅力が伝わればいいですね。