[ZINEspiration]Vol.08 篠宮由香利

クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。
昭和の香り漂うキッチュなラブホテルの写真や、文章で構成された雑誌『アイネ』を主催する篠宮由香利が、大切にしているZINEを紹介してくれた。

「写真雑誌」「寫眞文藝誌」をコンセプトにした2種類の『アイネ』を草薙しおり、ライターの坂崎麻結、デザインの大西萌とともに制作している篠宮由香利。彼女が写真を始めたきっかけには、写真好きな父の影響があった。

「お父さんから学生の頃に一眼レフをもらって。使い方が全然わからないから、家でおじいちゃんを撮ってみたり、とにかく適当に撮りまくっていたんです。アメアパ(American Apparel)で働いていたときに、周りに写真を撮ってる人が多くて、そこでカメラはどういうものがいいか教えてもらったり。それから友達とユニットを始めてZINEを作ったり、セルフポートレートを撮り始めて発表するようになったんです」

『アイネ』の昭和的なテイストの通り、彼女の制作のインスピレーション源になっているのは、古い映画や建物など、どこかノスタルジーを感じるようなもの。

「特に影響を受けてるのは映画ですね。古い映画が好きで、新しい『寫眞文藝誌アイネ』でも『家族ゲーム』(1983年/森田芳光監督)について書いていたり。ジュリー(沢田研二)も大好きなんです。あとは、伊豆が好き。伊豆にバブルの頃に作られて、もう閉館しちゃった美術館があるんですけど、まだ営業していたときに行ったらすごくよくて。そういうものを見るとインスピレーションが湧きます。(『アイネ』に載せているような)ラブホテルもめちゃくちゃかわいいし、そういうものを見つけると伝えたくなるんです」


自身の視点で発見した素敵なものを伝えていきたいという、混じりけのない気持ちを原動力にしながら、制作を続ける篠宮由香利。最後に、今後の『アイネ』と彼女の目標を教えてもらった。

「3月に名古屋のC7Cというギャラリーで『アイネ』の展示をやることになったから、今はそれに向けて頑張っているところ。ラブホテルのシリーズや、伊豆の旅行で撮りためた写真、それと今度、千葉の房総に行って新しく撮りおろす予定の写真とかを展示しようとしています。今後はふたつの『アイネ』も、もうちょっとコンスタントに作れたらいいなと。あとは『アイネ』もやりつつ、自分のZINEも作りたくて。『アイネ』は何ヶ月もかけて作り上げるから、もっとプライベートな感じで、その瞬間の気持ちをまとめたものを作れたらいいな」

【篠宮由香利がレコメンドするZINE5冊】

YOMA RU

「YOMAは8 BALL ZINE(NYで始まったZINEフェアおよびコミュニティ)のメンバーで、YOMAが撮ったショートムービーに私が出演したりして、友達になったんです。これは私が作ったZINEと交換してもらったもの。ポラロイドばかりで作られてて、中のページも赤くてかわいい。YOMAはショートムービーの撮影中も、その場でいきなりZINEを作り始めたり、飛行機の中でもZINEを作ったりする子で。その瞬間、瞬間に作りたいものを作っている感じがする。そういうテンションって私にはないからすごいなって。きっと彼女にとって生活の一部なんだろうな」

坂崎麻結(IG:@mayusakazaki)『アイランド』

「坂崎麻結ちゃんは『アイネ』を一緒に作っているライターの子です。これは彼女が与論島に行ったときに、森瑶子さんが書いた与論島を舞台にした『アイランド』という小説を地図代わりにして、出てくるビーチやお店を回った記録で。小説自体は読んだことがないけど、小説と実際に彼女が見たものの違いが書かれていておもしろいんですよね。写真もきれいだし、文章にエモーショナル感があって、何回も読んでます」

酒井いぶき(IG:@iibbuukkii_

「表紙からして『いぶきちゃん!』って感じで本当にかわいい。中のページにもいたるところにステッカーとかテプラが貼ってあって、紙も3種類くらい使ってあったり、すごく凝ってるんですよね。いぶきちゃんとは、たしか何年か前のNORIKO NAKAZATOのファッションショーにモデルとして出たときに知り合いました。そのときはモデルさんだと思っていたから、こういうものを作っていることを知らなくて。去年のTABF(TOKYO ART BOOK FAIR)で久しぶりに会ってトレードしたZINEがこれです」

maiho takahashi(IG:@takahashimaiho)『クール&タフ #1』

「彼女は、私たちが『写真雑誌アイネ』を始めたばかりの頃からずっと買ってくれていて、感想を送ってくれたりする、すごく大事な存在なんです。去年のTABFに来てくれたときに、『篠宮由香利さんへ』って書いたステッカーと、このZINEをくれて、すごく嬉しくて。彼女はまだ10代なんですけど、自分がティーンエイジャーであることについて書かれている前書きや後書きに、すごくぐっときました。海外の映画や音楽とか、いろんなものに興味がある子で、好きなプレイリストとかが書いてあるんですけど、本当に気持ちを込めて好きなものを詰め込んで作った感じがいいなって。忘れかけていたものを思い出す宝物みたいなZINEですね」

篠宮由香利、草薙しおり(IG:@aine916)『アイネ』

「『写真雑誌アイネ』は、草薙しおりちゃんと、お互いに昭和っぽいものが好きで、『ラブホテルを探そう』って話になったことから始まったんです。最初はネットで検索して探していたけど、有名なところしか出てこないから、誰も見たことがないところに行きたくて。足で探すことにして、車で埼玉まで行ったんです。住宅街に1軒だけあったラブホテルで、受付のおばちゃんに『一番かわいい部屋に入りたいんです』って言って撮らせてもらったり、何軒かラブホテルを回って。それで撮り終わったあとに、せっかくだから本にしようってことになったんです。『アイネ』という名前は日本で一番多いラブホテルの名前らしくて。その後、草薙しおりちゃんが絵も描きたいし、ライターの坂崎麻結ちゃんとデザインの大西萌ちゃんも入ってくれることになって、昔っぽい文芸誌を作りたいなっていうところから、『寫眞文藝誌アイネ』もできたんです」

INFORMATION

アイネ写真展 『記憶旅行』

2018年3月24日(土)〜4 月8日(日)
会場:C7C(愛知県名古屋市千種区千種2-13-21 2F)

第二十六回文学フリマ東京
会期:2018年5月6日(日)
時間:11:00~17:00
会場:東京流通センター 第二展示場(東京都大田区平和島6-1-1)
※『アイネ』として出展

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