CULTURE 2017.10.04

スケートシーンにおけるZINEの源流を辿る “NO SHITY ADS” 展

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

本サイトでも頻繁にご紹介しているZINEカルチャーだが、なかでも特に注目したいエキシビジョンが今週末、10月7日(金)より開催される。場所は16/渋谷区神宮前6-19-15。
NO SHITTY ADS Presented by FACT. Curated by Skateboardmuseum Berlin

FACT.とベルリンのSkateboardmuseumがパートナーシップを組みキュレーションした。世界中からセレクトされたZineの原本、Zineのコンテンツを使ったコラージュ、当時のD.I.Y.アパレル、Zineの復刻版などが出展されると共に、新しい世代のZine作者でこの展示のホスト役を務めるアーティスト、Sergej Vutucによる大型コラージュも展示する。

INTRODUCTION

80年代初頭、スケートボードのセカンドウェーブが終わりを迎えた頃、スケートパークは次々とブルドーザーによって忘却の彼方へと葬り去られていった。スケートボーディングの現場はコンクリート造りのプールからバックヤードに組み立てられた木製のハーフパイプへとシフトし、音楽はディスコからパンクやニューウェイブへ、豪華フルカラーのスケートボード雑誌は廃刊していった。そんな時代に創刊された『Thrasher Skateboard Magazine』は新聞紙の様な安価な紙を使用し、読者たちに自らZineを作る勇気を与え、雑誌自体もそれを奨励した。「ラディカルなアイデアを用いて新しいエネルギーに満ち溢れたスピリットを持って既存の壁を越え更に広げよ。ペンを手に持ってこの未開拓のエネルギーを駆使し、現場から直にアクションを記録するのだ」(Thrasher 1981 6月号より)

沢山のスケーターがこのアドバイスを受け止め、D.I.Y.アティチュードに衝き動かされた結果、スケートボーディングの運命を自分たちの手の中に納めた。

最初にシーンで知られるようになったZineのタイトルが “Skate Fate” (スケートの宿命) であり、その後、幾百もの素晴らしいタイトルで発行されたスケートZineが続いたことも偶然ではないのかもしれない。当初、部数は平均25~50部程度で、後に50~100部へと増えていった。パンクカルチャーの影響が窺えるデザインは、とてもアーティスティックで地元のスケートボードシーンやスケーター、トリックの紹介、インタビュー記事の他、アートや音楽やカートゥーンなどにも注目しており、自分たちのアドバタイジングさえも制作していた。

多くのZineは技術的に完成されていない写真と下手なスケッチを使った、パンクにインスパイアされた荒削りな表現であったが、広告主や親、そして権力から解放されてむき出しとなった想像力がとてもユニークなユースカルチャーを生み、驚くほどアーティスティックな結果をもたらした。このうねりはアメリカで始まり、やがて世界中へと拡散、様々な国々のスケーターがZineを制作し、自分たちの地元の秘密社会を記録していった。   

GSD (Gary Skate Davis)、Steve Caballero、Tod Swank、Claus Grabkeらが有名だが、その他にも多数のスケーターが自らZineを手掛け、パンクバンドでプレイし、D.I.Y.アパレルを創作した。

PROFILE

Skateboardmuseum Berlin キュレーター / Juergen Bluemlein
1973年生まれ。スケートボードと出会った87年以来、常にスケートボードと関わり続けてきた。スケートボード、アート、映像とファッションにルーツを持ち、80年代にはデザインへ情熱を注ぎ込み、Swatch社の時計のコレクションも開始。アートスクール卒業後、映画やCM業界で働く傍ら、00年代にアーティストグループ「FauxAmi」を設立。後にヨーロッパで初のスケートボードミュージアムを創設する。スケートボードの遺産をキュレーション及び展示しながらスケートボードにまつわるユニークなアーカイブを所有する彼のスケートボードシューズコレクションは世界一であり、“MADE FOR SKATE: The Illustrated History of Skateboard Footwear” 展と同タイトルの書籍のキュレーションと共同執筆も担当した。2018年にはスケートボードファッションとアパレルについての書籍を発刊予定。
skateboardmuseum.Berlin  @Skateboardmuseum

アーティスト / Sergej Vutuc
1979年ボズニア・ヘルツェゴヴィナのドボイに生まれる。クロアチアのザグレブとドイツのヘリブロンで育ち、現在はベルリンを拠点に活動。その作品は現代社会の開発についての観察と考察である。公共スペースが民営化され自然環境がコンクリートに埋め尽くされていく中、人間は意識を高く持ちコンシャスで在りたいと思う反面、遊び心を持って想像の中で生きたいという欲求も併せ持つ。彼はスケートカルチャーを現代社会にみる遊び心への願望と表現の自由を軸にした幾つものサブカルチャーの中の一つと考える。90年代半ばからパンクとスケートボードコミュニティに身を置き、これらのD.I.Y.カルチャーの美意識や哲学が彼の作品に独特のキャラクターを与えた。当然ながらスケートボードカルチャーは大きな役割を果たしているが、この際のボードはスポーツをするための道具やおもちゃとしてではなく媒介物として考えてもらいたい。彼の作品は「スケーターは現代の都市部の孤立した盗撮魔」でないことを再確認させる。 
www.sergejvutuc.com

INFORMATION

NO SHITTY ADS
Presented by FACT.
Curated by Skateboardmuseum Berlin

開催期間 : 10月7日(土)〜10月15日(日)12:00〜20:00
オープニングレセプション: 10月6日(金)18:00〜21:00
venue_16 / 東京都渋谷区神宮前6-19-15
tel_03-6452-6033
info@factbrand.jp

POPULAR