Interview: Ryoma Tomo from APHRICA 1st EP『Love Land』Release 混沌とした時代を照らすラブソング

多様なルーツを感じさせるサウンドが身体を揺らし、柔らかなヴォーカルが“愛”を紡ぐ。8月20日にリリースしたAPHRICAの1st EP『Love Land』は、無機質な世の中を明るく照らす、希望のような作品だ。昨年、AFRICAからAPHRICAへとバンド名を改め、再び舵を切った彼らの出発地点であり、集大成でもある今作について、バンドの音楽性を司るVo./Gt.の鞆良磨に話を聞いた。

「バッドエンドのままではなく、
その先に希望を見たい」

ー鞆さんが音楽活動をはじめたきっかけや、APHRICA結成の経緯を教えてください。

僕が音楽活動をはじめたのは学生時代、神戸にある芸術系の大学に通っていた頃です。文化祭でライブができたらな、くらいの感覚でバンドを組みましたが、音楽をやる楽しさにのめり込みました。大学卒業後、当時一緒にバンドを組んでいたギタリストの友人と、新たにメンバーを集め活動をはじめましたが、その後解散してしまい、もう一度、彼と一緒にバンドを結成したのが、今の前身となるAFRICA。その後、彼も抜けることになり、代わりに現ギターのLEMIが新しく加入し、新生APHRICAとして活動していくことになりました。

ーAPHRICAが奏でる音楽は、70年代〜80年代のシティポップのような雰囲気を纏った、どこか懐かしい楽曲が多い印象です。

僕らの音楽を聴いて、懐かしさを感じてくださる人は多いみたいですが、特にそこを意識して作ってはいなくて。ただ自分が好きな音楽の方向性が、レトロみたいなところなのかもしれません。松任谷由美さんや山下達郎さんは普段から聴いているアーティストの中のひとりではありますが、あまりジャンルに囚われず、幅広い音楽を聴いています。

ー特に、影響を受けたミュージシャンはいますか?

ニュー・ウェイヴが好きなので、バンド活動をはじめたばかりの頃の自分は、特にSPARTA LOCALSに影響を受けていたと思います。でも、少しずつ作る音楽の傾向が変わってきています。自分の生活にフィットする音楽が、変わってきたんでしょうね。

ーその変化を具体的に教えてください。

僕は映画が好きで、以前は、楽曲のコードと歌メロが完成したら、それを自分の好きな映画作品に当てはめて、歌詞を書いてみたりしていました。学生の頃は60年代にフランスで始まった、ヌーヴェルヴァーグという映画運動の時代の白黒映画が好きで、学校で流すための自作の映画を撮ったりもしていて。でも最近は、自分の経験を音楽に昇華したいと思うようになりました。いい意味で肩の力が抜けた作品が多くなりましたね。

ーそれは、経験や年齢を重ねたことでの変化ですか?

そうですね。年齢は大きいかもしれない。あとは、2年程前に東京に上京してきたことが、ひとつのきっかけになっていると思います。以前は大阪を拠点に活動していて、大阪は、絶えず笑いに溢れた街だったんです。そんな僕にとって東京はすごく静かで、愛が必要な場所に感じて。だから自分の明るい部分を歌って、届けたいなと。大阪というより、たまたま自分の周りにいた人が、賑やかなだけだったのかもしれないですけどね。

ー1st EP『LOVE LAND』に収録された全5曲にも、さまざまな形の“愛”が込められていますよね。

分かち合えない上司に苛立ったり、好きなはずの恋人なのに喧嘩してしまったり。相手に寄り添う優しさやコミュニケーション、相手への“愛”を大切にしてほしいなと思い、今作のタイトルにも“LOVE”を入れました。「革命」と「雨に唄えば」はEPにあわせて新たに作った楽曲で、「BABY」 と「HAPPY END」はもともとあった曲をリアレンジしています。「初恋の詩」も原曲は、今と全然違う感じだったんですが、他の4曲を進めていく中でアレンジを加えました。

ーTwitterで、各楽曲についてのコメントを展開されていましたよね。ここでは、その内容について、さらに深く伺っていこうと思います。まず、1曲目の「革命」についてですが、「新しい自分に生まれ変わりたい人たちの支えになってほしい」と明言されていますよね。

誰しも、多かれ少なかれ、自分の現状に葛藤を抱いていると思うんですよね。僕だったら、APHRICAの音楽をより多くの方に聴いてもらうためにはどうすればいいのか。もっと人に優しくなるには、どういう行動を取るべきなのか、など。例えば、募金箱にお金を入れてみるだけでも、大きな何かに繋がることもあって。そんな小さなアクションが、大きな革命を起こすかもしれないということを伝えたくて、作った曲です。

ー作曲とプロデュースには、シライシ 紗トリさんも参加されていますよね。どのようなやりとりがあったんですか?

デモが10曲くらいあって、シライシさんがその中からこの曲を選んでくれました。デモの時点では、もっとクラブミュージックっぽい感じの雰囲気でしたが、僕らのコンセプトや色を乗せて、完成に持っていきました。

ー「革命」のMVにはみなさん自身がご出演されていますよね。APHRICAのMVはアニメーションが使用されている印象が強かったので新鮮でした。

どこかのタイミングで顔を出したいと思いつつ、アニメーションでの演出に一貫していたので、今作ではひとつやりたかったことにチャレンジできました。EPのリリースというのは、僕たちにとって大きなニュースだったので、このタイミングしかないなと。

ーある意味「革命」ですよね。2曲目の「BABY」はディスコのようでもあり、サイケの雰囲気も纏ったメロディーが印象的でした。

「BABY」は元々もっとバンド色の強いサウンドだったんですけど、制作の過程で、80年代のシンセポップのような音を入れたら面白いかもと閃き、プロデューサーのESME MORIさんに相談して、今の方向にアレンジしてもらいました。シンディ・ローパーのような感じをイメージしています。

ー歌詞は、ストレートなラブソングになっていますよね。

この曲は映画「ベイビー・ドライバー」のオープニングをイメージして書きました。主人公のベイビーがかっこいいんですよ。無口だけど、彼女に対する愛を行動で示す感じを歌詞にしています。

ー「雨に唄えば」も同じく、映画のような世界観を持った楽曲ですよね。

この曲は、歌メロとコードを一緒に作りました。僕がギターを弾きながら、ラララで歌ったメロディーをシライシさんがリアレンジしてくれて。楽曲の雰囲気から、映画「ショーシャンクの空に」のジャケットのような、雨に打たれながら空を仰いでいる光景が浮かんだので、“雨”をキーワードにしました。ただ、心を暗くするような雨ではなく、ワクワクするような絵を想像しています。

ー“DAN! DAN! DAN!” などのキャッチーなフレーズが、曲の表情を明るくさせますよね。

かっこ悪いけど、かっこいいみたいな、絶妙なセンスを持ったワードですよね。“DAN! DAN! DAN!” から韻を踏む感覚で広げて、“Merry Go Round Round Round”と“DOWN DOWN DOWN”もアクセントとして入れています。

ーAPHRICAの1stシングル「HAPPY END」は、「本を一冊書き終わったぐらいの達成感があった」とのことですが、特にこだわった点などについて教えてください。

5曲の中で、一番完成までに時間がかかった楽曲です。半年以上は費やしたかな。僕の中でも特に好きな曲だったので、リリースのタイミングを見計らっていました。特に、ヴィンテージ感を大切にしていて。レコードで流したい曲をイメージしていて、明るいけど、キラキラした感じをあえて削ぎ落としたような。そこの加減にこだわった分、時間もかかりました。

ーラストの『君は素敵だよ。』のフレーズが、印象的ですよね。

全体を通して、言いたいけど柄じゃなくて言えない。素直になれない感情を歌詞にしています。

ーそして「初恋の詩」では、ご自身の“初恋”をテーマにされているんですよね?

僕が小5で経験した初恋を曲にしています。初恋って、意外と覚えているものじゃないですか。それも美しい思い出として。僕の初恋の相手も絶対、美人になっていると思うんですよね(笑)。

ー情景がリアルで、逆に映画のようなノスタルジーを感じました。

メロディーもとことんエモで、ノスタルジックな感じの世界観にこだわりました。初恋はきっと誰にとってもいい思い出なんじゃないかと思うので、この曲を聴いて、あの温かい気持ちで満たされてもらえたら嬉しいです。

ー『Love Land』に収録された5曲の全ての物語が一貫して、ハッピーエンドであることに救われます。それは、今作に限らずAPHRICAが描く音楽の形ですか?

そうですね。僕はバッドエンドが好きではないので、救いのない曲は今後も作ることはないと思います。バッドなことは誰にでも起こることで、その後にどうするのか、が大事だと思います。ハッピーエンドまでは行かなくても、その先に希望が見えるラブソングを歌っていたいですね、これからも。

INFORMATION

APHRICA
1st EP『Love Land』

2021.8.20 Release
1. 革命
2. BABY
3. 雨に唄えば
4. HAPPY END
5. 初恋の詩
https://lnk.to/LoveLand

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