聴く人の心を揺さぶる力強い歌声がSNSで話題となり、デビューを掴んだシンガー・Heli。彼女の1st EP『AWAKE』が本日リリースを迎えた。弱冠17歳の多感な少女が綴る楽曲群には、大人と子供の間で揺れる複雑な心情が描かれ、曲毎に表情を変える歌声がその世界観を鮮やかに彩る。太陽の神さまを名前に宿した現代のシンデレラは、今作に何を託したのか。まだあどけなさの残る笑顔を浮かべ、ゆっくり言葉を選びながらインタビューに応えてくれたHeliの、今後の活躍から目が離せない。
「音楽には言葉では伝えられない想いを届ける力がある」
ーHeliさんが音楽活動をはじめたきっかけを教えてください。
「小学生の頃から習っているダンスの発表会で歌ったことがきっかけで、プロになることを決心しました。そこから、ボイトレに通い始めたり、ライブハウスにお願いして歌わせてもらったり。それが中2くらいだったと思います」
ー中2でライブハウスに立つなんてすごい! 影響を受けたアーティストはいますか?
「ジェシー・Jです。小学生の頃、自分が踊るための曲をYouTubeで探していたときに、アコースティックギターにあわせて彼女が歌う動画を見つけて。圧倒的な歌声と迫力に衝撃を受けました。最近では、韓国のアーティストのイ・ハイをよく聴いています。R&Bの雰囲気にマッチする声質がかっこいいんです。ダンスをやっていたので、ノリのいい音楽が好きなんだと思います」
ー音楽活動を通して、どんなことを発信していきたいですか?
「音楽には、言葉では伝えられない想いを届ける力があると思うんです。高校生の私が抱くこの複雑な感情は、今の私にしか表現できないもので、私はそれを世の中に発信できる唯一のアーティストなのかもしれない。同世代の思いを代弁するような、そんな気持ちでいつも歌詞を書いています」
ー代弁してくれることで、救われる人はたくさんいると思います。Heliさんの制作スタイルについても教えてください。
「歌詞は感情的になったときにバーっと書いて、ストックしています。家族が全員寝静まった後に、ベットに座ってもくもくと書いたり。私は大阪に住んでいるので、楽曲についてプロデューサーさんと対面でやりとりする機会があまりなくて。送られてきたトラックに合うテーマを考えて、そこに歌詞やメロディーを乗せて、世界観を広げていく作業を行っています。最初の頃は、自分がやりたいことをうまくプロデューサーさんに伝えられず、悔しい思いもしましたが、最近は徐々に克服してきて、4枚目のシングル「甘風ドライブ」などは、ゼロのところからCarlos K.さんと一緒に作り上げていくことができました」
ーその「甘風ドライブ」も収録された1st EP『AWAKE』がリリースされましたね。
「EPをリリースできることが、とても嬉しいです。大人と子供の間にいる私のリアルな想いや、大人への憧れ、成長する過程での葛藤など、今だからこその複雑な感情をそのまま曲に落としこんでいるので、等身大の作品に仕上がっていると思います」
ー今作には、さまざまな表情のHeliさんが収められていますよね。タイトル『AWAKE』にはどんな思いが込められていますか?
「1枚目のEPなので、“目覚め”や”呼び起こす”の意味を持ち、響きもかっこいい“AWAKE”を選びました。あと、今作に収録されている6曲中、タイトルに“B”のつく楽曲が3曲もあるので、タイトルは“A”ではじまる言葉がいいなと思って。私の中でのこだわりです(笑)。なので、次のアルバムは“C”とか? 楽しみにしていてもらいたいなと思います」
ー楽曲毎に豪華なプロデューサー陣が参加されていますよね。先ほどもお話にあった「甘風ドライブ」は、Carlos K.さんとどんなやりとりがあったんですか?
「Carlos K.さんと『サマーソングを作りたいね』というやりとりがあった上で、Carlos K.さんが作ったトラックに、私がイメージしたメロディーを乗せて作った曲です。サマーソングの中でも何をテーマにするのか。聴いてくれた人たちの心に残る曲にするためには、どんな構成がいいのか。いろいろ考えすぎて、なかなか作詞が進みませんでした。なので、シンプルに私自身の夏の思い出を振り返ってみたら、車の中のシーンが浮かんだんです。それは、小さい頃におじいちゃんの車に乗せてもらって、一緒にアイスを買いに行った思い出でした。そこからテーマはドライブに。夏って楽しいことが多い分、切なくなるときもありますよね。そこにフォーカスを当てて作った曲です」
ースローテンポな曲調とHeliさんの繊細な歌声が、夏の切なさを彩っていますよね。今作の中では「甘風ドライブ」の他に、「Balloon」をCarlos K. & Tuyoshi Yamadaさんと制作されていると思いますが、こちらはどんな想いが込められた楽曲ですか?
「『Balloon』はすごく難しい曲でしたし、一番思い入れの強い楽曲でもあります。家族や自分自身のことなどをリアルに書き下ろした楽曲なので、構成や表現の方法にとても悩みました。タイトルのBalloon=風船にも、自分のさまざまな部分を重ねています」
ー今作の中では「Starting Again」や「Brand New Me」も、Heliさんの等身大の思いがリアルに描かれているのかなと思いました。
「『Brand New Me』は中学生のときに作詞した楽曲なんです。高校受験も終わり、残された中学生活の中で、新しい高校生活がはじまるドキドキと、Heliとして本格的に活動していくぞ! っていう覚悟をテーマに書きました。応援歌のような楽曲です」
ー「ドラマみたいなこと起きないかな」って私もよく考えていました(笑)。
「(笑)。私は新しい環境や出会いに躊躇して、うまく自分を出せなかったり、立ち止まってしまいがち。同じ思いを抱えている人が『Brand New Me』を聴いて、私と一緒に新しい一歩を踏み出そうと思ってくれたら嬉しいです。『Starting Again』は去年の6〜7月頃、ちょうど最初の緊急事態宣言が開けたタイミングで制作した曲。今まで経験したことのない事態の中で感じたことを書いています。コロナの影響で、最後の中学生活を納得のいくように過ごせなかった悔しさを抱えたまま、自粛期間が始まってしまい、すごく気持ちが下がっていた時期でもあります。でも、世の中は元の生活に戻るために試行錯誤しながら、頑張っていて。そんな姿から、この曲のタイトルが思い浮かびました。スタートに戻ってみんなで新しい生活を待とうよ、という意味の曲。その試行錯誤の中で生まれる新しい文化やオンラインの発達は、これからの社会にとってすごくポジティブなことだと思うんです。それを曲の中でも表現しています」
ーHeliさんご自身もすごくポジティブですよね。
「友達の影響だと思います。明るい友達ばかりなので、自分もそのパワーを分けてもらっています」
ーこの未曾有の事態は、Heliさんの音楽活動にも影響をもたらしていますか?
「実際の制作活動にも、感情的にも、すごく影響を受けていると思います。私は音楽活動のスタートを切るタイミングで、コロナ禍になってしまったこともありますし。書いている曲によっても、自分の気持ちの浮き沈みが影響して、制作がなかなか進まないこともあります」
ー本作の中で、Heliさん的に一番調子のいい状態で作れたと思う曲を教えてください。
「『UMU 〜遊夢〜』だと思います。この曲はトラックのトリッキーさが衝撃的で、どう世界を広げていけばいいのか悩んでいたのと、その頃の私は、自粛疲れの影響なのか、何に対してもやる気が起きなくて、制作に取り掛かるまでに、時間がかかってしまった曲でもあります。そんなときに観た映画『インシディアス』が、このトラックの雰囲気と重なって。主人公の男の子が幽体離脱したまま戻れなくなるかも、という映画の内容にインスピレーションを受けて歌詞に落とし込みました。無気力な時期だったからこそ、私自身も幽体離脱をして、どこかの街に行ってしまいたいと思っていたので、全てがリンクして」
ー恋愛について書かれた曲なんだと思っていました!
「歌詞の内容だけだと、恋愛っぽいですよね。今まで、恋愛についての曲をあまり書いてこなくて、高校生になったことを機に、チャレンジするようになりました。『Behind the m.i.c』は大人の恋愛への憧れと、等身大の自分が恋愛に躊躇してしまう感情を混ぜて書いた曲です。ディスコ調なこの楽曲は私自身、一番ノリやすい曲でもあります。やっぱり私のルーツにはダンスがあるので、次の作品に向けて、みんなが曲にあわせて踊れるような、ダンスナンバーを作ってみたいなと思っています」
ー最後に、Heliさんが音楽活動を通して叶えたい夢を教えてください。
「音楽やエンターテイメントを通して、SDGsの活動を行なっていきたいと思っています。昔からニュースを見ることが日課で、世界中で起こる悲しい現実を見て、人の役に立ちたいと思っていました。今、通っている学校も、そういった国際社会の問題にきちんと目を向けていて、授業の中でディスカッションも行われています。自分の音楽を生かして、どのように貧困に苦しむ人々を救っていくのか。私の音楽活動の課題だと思っています」
INFORMATION
Heli
Digital EP「AWAKE」
2021.09.30 Release
M1. Starting Again
M2. 甘風ドライブ
M3. behind the m.i.c
M4. UMU 〜遊夢〜
M5. Brand New Me
M6. Balloon