Daft PunkやPhoenixをうならせた大型新人バンド、Parcelsインタビュー。

photography_Philippe Jarrigeon

Patrick Hetherington(key)、Louie Swain(key)、Noah Hill(b)、Anatole Serret(ds)、Jules Crommelin(g)――バンドメンバー5人全員が、柔らかい歌声のハーモニーを奏で、ダンサンブルでグルーヴィーなリズムを刻む。Parcelsは、Kitsunéが誇るブライテストホープだ。

本誌の2017年4月号、特集『トーキョー古着カルチャー』で登場していた彼ら。たった5ドルの古着のジャケットやニットの中からデヴィッド・ボウイやジミ・ヘンドリックスを彷彿とさせるムードを見出し、それを敢えて纏う。現代を生きる自分と混合させることで新たなスタイルを生み出し、一種の遊びとして、楽しみながらディグるのだと語ってくれた。

Parcelsの音楽性は言うならば、“フューチャー・ヴィンテージ”だろう。オールディーをただ踏襲するのでなく、自らで咀嚼し現代版へとアップデートさせる。しばしば、Daft PunkとSteely DanとFrank Oceanを足したらParcelsになるという不思議な方程式で評されるように、アダルトオリエンテッドなサウンドの中に、ほんのり感じるテクノの要素が全体をいっそうに研ぎ澄ましている。ノスタルジックなだけでなく、どことなく新しく、それが絶妙に心地いい。

そんな彼らが約1年ぶりに、東京にカムバック!去る12月14日に行われた来日公演「OVERNIGHT」のリハーサル前、JulesとPatrickに、この激動の1年間の活動内容を中心に話を訊いた。

photography_Philippe Jarrigeon

Patrick Hetherington(以下Patrick):元気にしてた?ほとんど、1年ぶりだよね〜!

―そうですね!あれからあなた達は、物凄くホットなニュースを沢山巻き起こしてくれました。まず、この2017年におけるParcelsの活動を振り返ってみて、いかがですか?

Jules Crommelin(以下Jules):最もエキサイティングで、目まぐるしく、クレイジーな1年だったね。ちょうど以前、東京でインタビューを受けた時から、もの凄く忙しくなったんだ。

Patrick:忙しすぎて、逆に1年がものすごく長く感じちゃう謎な現象まで起きた(笑)。もちろん、悪い意味じゃなくてね!

Jules:え?早く過ぎ去っていった感覚しかないけど。

―今年は、The Great EscapeやGlastonburyなど、数々の音楽フェスにも積極的に参加していましたよね。

Patrick:有難いことに、特にフェスシーズンは、ほぼ毎週末といってもいいくらい世界各地を飛び回ってライブをさせてもらっていて……その忙しさに僕たち自身が特に驚いてしまったよ。

―The Great Escapeを拝見していて驚いたのが、若い子に交じって、結構40〜50代あたりのおじさま、おばさまが最前列の方で弾け踊っていた光景で……

Jules:そうなんだよ!不思議だよね。

Patrick:前方の、しかもスピーカーの真ん前でしっかりポジショニングしているんだ。そうした方が、サウンドがよりクリアに聴こえるみたいでさ!

Jules:あと、毎公演に必ず1人はLouieに夢中になっているおばさまがいるね。可愛い息子を見ている気分なのか、または娘のボーイフレンドとして狙い定めているのか分からないけど、とにかくロック・オン状態なんだ。あと、さっきのおばさま、おじさま世代のさらに上の、白髪頭のご老人というかそれくらいのシニアの人も僕らの音楽が好きみたい!嬉しいな。

―70〜80’sのディスコ・ファンクなサウンドに新しいエレクトロ要素を混ぜ込んだ独自のスタイルが、当時ディスコを聴いていた人たちをもう一度魅了させ、そして若い人たちにも新しい音楽として浸透していく。Parcelsらしいとも言える、不思議な広がり方ですね。

Jules:うん。僕らのファンってそういう意味では、かなり年齢層に幅があるのが特徴なんだろうな。

photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura
photography_Erina Uemura

―そして、Daft Punkとコラボレートした「OVERNIGHT」について教えてください。

Jules:この出来事で得たものは計り知れないくらい沢山あるんだ。それは、もちろん制作面においてもなんだけど、まず純粋に振り返ってみて、彼らとコラボレートできたことが僕らにとって、とても大きな自信に繋がった。自分たちが音楽を続けてきたことの意味を見出せたというか。Daft Punkは僕らParcelsのインスピレーション源そのものだし、キーパーソン中のキーパーソンだったから、そんな彼らと何か一緒にできたということ自体がたまらなくて!

―このコラボレーションはどのようにして実現したのですか?

Jules:実は、彼らがパリの初公演を観に来てくれていたんだ!

Patrick:ライブ中は全く気付かなかったけど、後々、色んな人から「Daft Punkが観に来ていたよ!」なんて言われたけど、冗談だと思った(笑)。信じられないだろ?

Jules:本当にね。それで、彼らから「スタジオに遊びに来なよ」って(笑)。もちろん、今すぐにでも飛んで行きたくてたまらなかったんだけど、そこに行くからにはParcelsの人生をかける覚悟を持っていったんだ。1日何時間も彼らと一緒にスタジオに入り浸り、夢中になって楽曲を制作していったんだ。何度も何度もテイクを重ねて、そんな日々がおそらく、1週間くらいは続いたのかな?まさに夢のような時間だよ。すべての瞬間に学ぶことが沢山あった。当時の光景が未だに僕の脳裏に色褪せることなく、焼き付いているよ。

―Daft Punkがこうして制作をプロデュースをするというのは初めての試みみたいです。

Jules:ええ本当?ああ、今までのWeekndとかファレル・ウィリアムズはフューチャリングやリミックスってことか。僕らのは完全に制作に携わってくれたという感じだよね。だから初めてということか……!

Patrick:僕らのファンも元々僕らがDaft Punkを好きだったのは知っていたから、このコラボレーションのリアクションもとても良かったんだ。

―Parcelsのファン像について教えてください。

Patrick:ツアー先で結構違ってくるんだ。しかも同じ国でも街によって全然違うかも、ベニューによっても違うくらいさ。

Jules:でも冗談抜きで、東京の雰囲気が一番好き!

―Phoenixのオープニング・アクトを務めていましたが、この経緯は「OVERNIGHT」をリリースしたことと関係はありますか?

Jules:あれは、Gildas(Gildas Loaëcメゾン キツネ 共同設立者兼クリエイティブディレクター)が古くからの友人だったみたいで、なんとなくやりそうな予感というかそんな匂いがしていたんだ。でも、彼らもまた、2回目のパリの公演に来てくれてもいたんだ!あと今年はAIRの前座もやったね。

―やっぱり、パリの公演は、オーストラリア以上にいろんな人に出会えるチャンスがあるみたいですね。

Jules:うん。でも同様に小さな輪のようにも思えるな。僕らと同じようなフレンチ・タッチのバンドとは交流が深いって感じ。そういう数は多くないけどお互いをよく知っている仲良いバンドを大事にしている。

―ちなみに、仲良しのバンドは?

Jules:Hush Mossはよく会うし、意識しあっているとも言えるね。ライブも一緒にしたことがある。彼らから多くのインスピレーションを得るんだ。楽曲制作への考え方が、サウンドトラック作っているみたいにフラットで、心地いいんだよね、そこが好きなんだ。

Patrick:確か、彼らはベルリンを拠点にしていたけど、今はパリにいるよね。

Jules:うん。あと、L’Impératrice、Agar Agar。この辺はみんなパリにいるバンドさ。

―仲良いバンドと相互に影響を与え合っているParcelsですが、まさに現在進行形でバンドの音楽性が形成されていく最中、地元のバイロンベイからベルリンに拠点を移しました。この出来事からはどれほどの影響を受けましたか?

Jules:実は、ベルリンに拠点を移す、6ヶ月前に今のバンド形態として結成したんだ。だからベルリンに来てから組んだわけじゃないし、直接的にテクノ・シーンから影響を受けているわけでもないんだ。

Patrick:そう。実はベルリンに来て影響を受けたのは、むしろ真逆のものだったのかも。ベルリンに来たことで、これまで以上に自分たちのやりたい音楽を再認識できたんだ。そういう意味では影響を受けたと言えるんだけど、やっぱりエレクトロ・シーンに引っ張られているという感じではないんだよね。

Jules:フェスの僕らをみればお分りの通り、僕らって毎週末パーティーやクラブには行けないだろ?いわゆるウィークエンドがParcelsにはないからね(笑)。でも、ベルリンのシーンはアツいというのは確か。敏感な人も多い分、活動を拡散していくためにはもってこいの街だなっていうのは常に感じているよ。

―そもそも70〜80’sの音楽にハマったのはなんでですか?

Jules:なんでだろう……昔のものには惹かれがちだよね。

Patrick:古いけど、なんかこうしたら未来的かな?こう捉えたら新しいのかな?って思うことがあるんだよね。

Jules:でも、個人的に制作という面においてはディスコって最低だと思う。当時はお金も十分にあって、大きいスタジオでなんか、ただ録音しているって感じ?

Patrick:もっとなんかビジネスとしての道具のような感じで。でも今はもっとプロフェッショナルだろ?プロデューサーがいて、アレンジャーがいてって細分化されているしね。これから僕らももっとクオリティを高めた音楽を作っていきたいんだ。

Patrick Hetherington(key)
Louie Swain(key)
Noah Hill(b)
Anatole Serret(ds)
Jules Crommelin(g)

―最後に、これからの活動内容について教えてください。

Jules:東京の後、しばらくオーストラリアのツアーを行って、その後はアルバム制作に専念すると思う。このライブでも何曲かは今度のアルバムに入れるであろう新曲を披露するつもり。僕たちのファーストアルバムも、もうすぐ完成させるから、このまま楽しみにしていて欲しいな!

PROFILE

Parcels

オーストラリア・バイロンベイ出身の同級生5人で結成された、ファンクポップバンド。現在は活動の拠点をベルリンに移し、Kitsunéに所属する。ファーストEP『Hideout』をリリースすると、The Great Escapeをはじめとする数々の人気音楽フェスに出演。さらにDaft Punkがプロデュースす「OVERNIGHT」を発表し一躍注目の的となる。ファーストアルバムのリリースも控え、今後ますます目が離せない大型ルーキー。

parcelsmusic.com/