京都にある寺社とアーティストを組み合わせ、そこでしか聴けない音楽の体験を提供する「SOUND TRIP」の第3弾として、智積院×原摩利彦、浄住寺×AOKI takamasaの2作品がリリースされる。
これまでにコムアイ × オオルタイチ、haruka nakamura、青葉市子、ユザーン&蓮沼執太、Kyokaらが参加してきた「SOUND TRIP」。この第3弾においても、それぞれその寺社で流れる音、たとえば水の音や鳥の鳴き声、お経の声、修行僧が歩いている足音、風に揺れる鐘の音などをフィールドレコーディングし、その音素材を使用しながら、そこに行かないと聴くことのできない音楽体験が制作されている。
以下、原摩利彦、AOKI takamasa両名の制作風景と言葉だ。
「境内の中にいくつかの時間が在ったのが印象的でした。修行僧たちの過ごす日々の傍らで裏山には鳥たち独自の世界がありました。朝のお勤めでは宿泊客と私たち外からやってきた人もお堂に集い、読経と護摩が行われました。重なる声の中に入り込む時間感覚は、手元でまわしている録音機が示す時間経過とは違ったものでした。 智積院は外界から孤立した場所ではなく、日常世界となだらかに繋がっています。境内の中でも東大路通の交通の音が聞こえ、江戸時代には七条大橋まで修行僧たちの箸を置く音が届いたとも言われているそうです。 この楽曲では、フィールドレコーディングとその他の音との境界はときに曖昧にしてあり、複数の時間が混ざり合い積み重なることで音楽を作り上げています。音が小さくなると、目の前の名勝庭園の水音が聞こえてくることでしょう。音楽が終わった後の少しの間、この世界のすべての音が以前よりもいきいきと聞こえてきたら幸いです。」 ― 原摩利彦
「地球人が普段何気に意識している『時計時間』は、太陽と地球という宇宙的には極めて限定された空間での関係性から成り立っていて、ある意味この太陽系の地球人にしか機能しない尺度であると思います。その『時間』という存在をより俯瞰した視点で観察すると、果たしてこの宇宙に時間は存在するのか?という疑念を抱きます。実は宇宙の基本は始まりも終わりもない『無限』であって、始まりも終わりも在る有限な体に閉じ込められた地球人類の視点からは、その『無限性』をうまく理解できないだけなんじゃないか? ただ『今この瞬間』が永遠に無限に続いているのが宇宙なのではないか? 晴天と紅葉に恵まれ、そよ風が心地良かった浄住寺での禅、瞑想体験を通して、あの日あの場所で感じた『今』を、その時そこで録音した音を使って表現しました。」 ― AOKI takamasa
今後、「SOUND TRIP」は京都を中心に日本各地へと広げていき、「当時、最先端で活躍していたアーティストの狩野永徳や長谷川等伯の作品がお寺や神社で展示されていたように、日本の寺社で新しい音の体験を世界中のアーティストとともに制作していきます」とのこと。さらなる展開に期待したい。
INFORMATION
SOUND TRIP
智積院アーティスト:原摩利彦
浄住寺アーティスト:AOKI takamasa
妙心寺 退蔵院アーティスト:Chihei Hatakeyama
隨心院アーティスト:haruka nakamura
神護寺、西明寺アーティスト:青葉市子
仁和寺:ユザーン&蓮沼執太
壬生寺アーティスト:Kyoka
貴船神社アーティスト:コムアイ × オオルタイチ
三千院アーティスト:Yosi Horikawa
体験料:300円
周遊パスポート:3,000円(パスポートを購入すればそれぞれの寺社での音楽体験料は無料。音楽を持ち帰られるお土産カードもそれぞれの寺社で受け取ることができる)