ReNの最新EP『Early Project』がリリースされた。自身初となるバンド編成でのツアー『ReN THE BAND TOUR』に向けて制作された楽曲が並ぶ本作は、彼のさらなる可能性を提示する作品となった。これまで、ギター1本でステージに立ち、ループステーションやエフェクターを駆使することで鮮やかなサウンドを紡いできたReNが、バンドのフロントマンとしてライブと対峙したとき、どんなエンターテイメントを繰り広げるのだろうか。今作『Early Project』について、10月28日の札幌公演を皮切りに全国7カ所、8公演が行われる同ツアーについて話を聞いた。
「いま自分が伝えたいことをまとめつつ、
この先表現していきたい世界観を記しています」
ー昨年9月に3rd アルバム『ReNBRANDT』をリリースしてから約1年、本作の制作に向けてどのような日々を過ごしていましたか?
この1年間は“バンドセットでの表現”に意識を向けて、制作に打ち込んできました。アーティスト活動をはじめた当初からバンドへの憧れはありましたが、まずはソロとして自分のスタイルやサウンドを確立させるためにこの7年間走ってきて、多くのことを学んだと同時に、やっぱりバンドで表現したい楽曲も増えてきて。今回、さまざまな巡り合わせもあってバンド編成でのツアーが実現できるので、そこに向けて、ベストなサウンドを追求してきました。
ーそれをひとつの形にしたのが、今作「Early Project」なんですね。
今の僕にとって一番新しいプロジェクトなので、タイトルはストレートに「Early Project」。今の自分が伝えたいことをまとめつつ、今後表現していきたい世界観を記しています。「エール」のように苦い曲もあるけど、全体を通して聴くと、すかんと抜けるような、前向きなエネルギーに溢れた作品になっていると思う。今作が僕のライブに来てくれる、きっかけになってくれたら嬉しいです。ライブでは僕がみんなに向けてパワーを放ちつつ、僕自身もお客さんから力をもらうことが多くて、それが次のステージへのエネルギーになっています。
ーReNさんのライブからは、お客さんとの一体感を強く感じました。
ひとりでステージに立ってきた分、僕とお客さんで一緒にライブを作ってきた自負があるので、グルーブはかなり強いと思います。コロナによって、いろんな制限が強いられた中で行うライブを経験したことで、よりお客さんとの絆を感じた部分もあって。今では、マスク越しでもみんなの表情がわかる特殊能力を身につけました(笑)。動きからも、多くの感情が伝わりますし。これはこれで、いまの時代のひとつのライブの形なんだなと思えるようになりました。制限された環境の中だからこそ、“本当に大切なもの”が見えたので、いい経験になったと思っています。
ー先行シングルとしてリリースされた「千輪花火」は、歌詞の繊細な描写が印象的で、まるで映画を観ているような感覚でした。
“千輪”って実際にある花火の種類で、一回打ち上がると5秒間の沈黙の後に、無数のカラフルな火花が出て、とても綺麗な半面、儚さがあると有名なんです。この曲では、これまでに感じた自分の苦い想いを、あえて爽快感のあるサウンドに乗せて表現していて、その世界観を表す言葉を探しているときに、“千輪”に出会いました。以前から、花火をテーマにした楽曲を作りたいと思っていたので、自分の中で満足のいく作品が残せて嬉しいです。
ー「エール」はReNさんからの叫びのようなメッセージがダイレクトに心に刺さりました。
この曲を作っている頃の僕の根底にあった思いを、素直に書いた曲です。だからこそ、レコーディングはワンテイクで録りました。うまく綺麗に歌うのではなく、剥き出しの自分を残す方がこの曲には必要だなと思ったので。聴いてくれた人、それぞれの感情にリンクする曲になっているといいなと思っています。
ーサウンドも歌も研ぎ澄まされていますよね。
ピアノは、バンドメンバーの大樋祐大(SANABAGUN.)が弾いてくれています。僕と祐大とふたりで、「よーいどん!」で録りました。かなりヒリヒリしましたし、いま聴き直してもヒリヒリする(笑)。祐大のピアノは、自分の声やギターに添えてくれるような音色だからこそ歌に集中できたし、ひとりでは絶対に出せないテイクだったと思います。
ー「Traveling Train」はまさに、旅に出たくなるような楽曲ですよね。
旅がしたくても、自由に行けない今だからこそ生まれた曲です。どこかに行って感じたことを書くのではなく、どこかに行きたい衝動を歌おうと思って。この曲は、バンドツアーを意識して最初に書いた曲なので、より振り切ったサウンドになっていますし、何よりも動きのあるドラムの音が入ってきたことが、一番大きな変化だと思います。そういうサウンドになったのはこの曲から。ひとりのライブでは、できることとできないことがあって、その制限があったから良かった部分ももちろんありますが、制作のときはそれが原因で小さくなってしまうこともあって。この曲で自分の可能性が広がったし、自由に、ラフに、音楽を楽しみながら作れました。あとは、去年のツアー中に制作できたこともプラスに働いていると思います。
ーワンマンツアーの最中に制作活動も行われていたんですか?
お客さんに向けて歌っている状態でレックすると、自分にもすっと入ってきますし、曲の説得力が増す気がするんです。あとは、歌詞を書くときは別の世界に入ることが必要だから、ライブでのONの状態から気落ちを切り替えることもできて。忙しいけど、だからこそ濃い作品ができたと思います。コロナでずっと活動が止まっている中で制作を続けていたから、動きながら作れている今の方が良いなと。「Traveling Train」の他にも「千輪花火」と、「Decision」も昨年のツアー中に作った楽曲です。特にこの曲はアレンジに悩みました。最初はギターで弾き語りしてみましたが、何か違うなと思って。どこか懐かしい雰囲気の中、シンセとベースとピアノが反響していて、ギターとボーカルが抜けていく感じにしたいなと思っていたので、試行錯誤を繰り返しながら大枠を作っていきました。それを、「Hot and Cold」(2019年)や「Running Forward」(2021年)でも一緒にセッションしたDavey Badiukがブラッシュアップしてくれて。僕がイメージしたものを3Dにしてくれました。結果的にすごくシンプルになったからこそ、潔く、最初から最後まで突き抜けるような一曲に仕上がりました。
ー満を持してのバンドツアー『ReN THE BAND TOUR』が10月28日の札幌公演を皮切りに始まりますね。改めて、今回のツアーを一緒に回るバンドメンバーについて教えてください。
最初は僕ひとりだったけど、少しずつ仲間が増えてきて。自分の中ではドラクエみたいな感覚です(笑)。今回のツアーから初めて一緒にやるメンバーもいれば、祐大のようにこれまでもセッションを重ねてきた仲間もいて。みんなそれぞれ他にもバンドを持っている中で、僕としては願ってもいないようなメンバーと一緒にできるので嬉しいです。
ー恵比寿LIQUIDROOMでツアーファイナルを迎えるときには、バンドのグルーヴもより高まっていそうですね。どんなステージになるのか楽しみです。
ひとりでのライブもそう。最初と最後では違う良さがあるので、ここから約2ヶ月後、どうなっているのか楽しみだし、初のバンドセットへのお客さんの反応を見るのも楽しみです。あとは僕がぶっ倒れないように頑張るだけ(笑)。しっかり背中を任せられる仲間がいるから、僕は歌と表現に集中して、来てくれたお客さんがエネルギーを感じてくれたら嬉しいです。
INFORMATION
ReN
Digital EP『Early Project』
2022.10.7 Release
https://ren.lnk.to/EarlyProject
Track list.
1.千輪花火
2.エール
3.Traveling Train
※ドラマ「#居酒屋新幹線」オープニングテーマ
4.Higher
5.Decision
※テレビ東京系 金曜8時のドラマ「警視庁強行犯係 樋口顕Season2」主題歌
6.No No Lies
『ReN THE BAND TOUR』
10.28(金) 札幌 cube garden
10.30(日) 仙台 darwin
11.3(木) 名古屋 クアトロ
11.4(金) 大阪 クアトロ
11.19(土) 福岡 ロゴス
11.20(日) 鹿児島 Caparvo
12.7(水) 東京(恵比寿) LIQUIDROOM
12.8(木) 東京(恵比寿) LIQUIDROOM
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