Interview:礼賛(CLR/サーヤ) 1st Album『WHOOPEE』で掲げるバンド像

昨年一月、突如発表した音源「愚弄(DEMO ver.)」をもってその全貌を明らかにしたバンド、礼賛。作詞・作曲/ヴォーカルを務めるCLRことサーヤ(ラランド)を筆頭に、川谷絵音、木下哲、休日課長、GOTOが集ったことに驚いた人も多かっただろう。そんなサプライズから約一年。同バンドが1stアルバム『WHOOPEE』を1月18日(水)にリリースした。タイトルの通り“バカ騒ぎ”を体現した彼らの結成から、本作の制作や控えるツアーについて、バンドのブレインであり、芸人、俳優、経営者とさまざまな顔をもつCLR/サーヤに話を訊いてみた。

こんな豪華なバンドでやれると
想像もしていなかった

ーまずは、バンド結成について聞かせてください。川⾕絵音さんのプロジェクト美的計画への参加がきっかけとなったそうですが、元々川⾕さんと親交はあったんですか。

ラランドのM1の予選動画を『面白い』とツイートしてくださったのが最初で。私のアカウントをフォローしてくれて、偽物かとびっくりしたのを覚えています。そこから私がお笑いライブで『絵音さんに曲を書いてほしい』と発言したのがネットニュースになって(笑)。その記事をツイートしたら、絵音さんから“グッドマーク”の絵文字が返ってきたので、本当に書いてくれたらいいなと淡い期待を抱いていたら、美的計画のお声がけをいただきました。

ーそこからバンド結成まではどういった流れだったのでしょう。

美的計画の際に『また何かやりましょう』とは言ってくださっていて。ある日絵音さんから『ヒップホップ系のバンドを新たに始めたいんですけど、ヴォーカルやりませんか』とDMをいただき、『もちろんやりたいです』と返したのが、(DMを見返しながら)2021年9月とかですね。次の日にはドラムのGOTOさんが決まって、あっと言う間にメンバーを集めてくださいました。そこからのスピード感がすごくて、最初にスタジオ入りした際に絵音さんが『ケツを決めて動きます』と宣言して、その場でライブハウスを抑えて、1月には下北沢ERAで初ライブをしました。

ーすごいですね(笑)。バンドでは作詞・作曲を手がけられていますが、元々曲などは描かれていたんですか。

大学生くらいからnanaという音楽投稿アプリ内で、誰かが上げたトラックやギター、ピアノに歌をのせて遊んでいました。最初の頃は、ワンオクや宇多田ヒカル、クリープハイプ、ハナレグミ、Aimerとか、特定のアーティストというよりはジャンルレスに歌っていましたね。今もアカウントが残っているので、たまにファンの人からディグられています(笑)。アプリでのことは、絵音さんにもチラっとお話していたので、今回作詞も任せいただくことになりました。

ー歌への憧れはいつから抱いていましたか。

小さい時から歌は好きで、いつかやりたいなという気持ちはありましたね。けど、お笑い芸人として世に出ていく上で、まず芸人としての立場を確立しないと別のことに挑戦してはダメだと思っていたので、昨年(2021年)の一年間はテレビなど芸人ワークに集中して。そろそろ音楽活動もしてみたいなと思っていたタイミングで声をかけていただけたので、本当によかったです。ましてやこんな豪華なバンドでやれると想像もしていなかったので、めちゃくちゃ幸せだなと思っています。

ー素敵ですね。ヒップホップバンドということですが、普段はどんな音楽を聞かれますか。

いろんなジャンルをぐちゃぐちゃに聞いているので、日によって全然違います。

ー以前、雑誌EYESCREAMに出演いただいた際には、TikTokなどで流行っている曲もとりあえず聞いてみると言っていましたが、それはインプット的に聞かれている部分もありますか?

Licaxxx × 荒田洸(WONK)「注文の多い晩餐会」vol.15 〜サーヤ(ラランド)の巻〜

そこはあまり関係ないですね。移動中も何かを聞いてないとダメなタイプなので、好きで聞いています。それこそ絵音さんがやられているバンドの曲は全部チェックしていましたし、全ジャンル好きなので、ジャニーズとかも聞いています。

ーここからはアルバムについて伺っていきます。制作自体はいつからスタートしましたか。

絵音さんから『今○曲だから、(アルバム作るなら)あと数曲は作らないとな』と言われて。やっているうちに始まった感じですね。ツアーも決まっていたので、そこまでに完成させようというプレッシャーをじわじわ感じつつ、制作していきました(笑)。

ー今作には、すでにリリースされたシングルが収録されています。当初はデモバージョンでのリリースでしたが、何か狙いがあったんですか。

ひとまず曲を聞いてもらおうという感じだったので、絵音さんが『とりあえずデモで出そう』と言って、デモバージョンをリリースする形になりました。

ーデモ版から具体的にどんな部分が変わりましたか。

デモを録ってからライブを重ねたので、こう歌った方が気持ちいいとか、アレンジした方がハマるとか、全体的にアップデートした感じです。1stシングル「愚弄(DEMO ver.)」が一番最初に書いたんですけど、デモからわりと変わっていますね。

ー制作はどうやって進めていきましたか。

それこそ「愚弄(DEMO ver.)」とか先行でリリースした音源は、スタジオでバンドメンバーがトラックを作っているのを聴きながら、並行して歌詞を描いて、歌いながら曲の方向性を決めていきました。あとは、描きたいテーマを伝えて、それに対して絵音さんがトラックを仕上げてきてくださったり。大体、一度スタジオに入ったらトラックができて、翌週には録ります、みたいな感じなので、それまでに歌詞を仕上げていきました。なので、自分の中では1日で作詞する感じですね。言いたいことは日頃メモっているので、それをまとめる作業に近いです。根っからの一夜漬けタイプなので、地道かつ勢いに任せています(笑)。

ーテーマ先行の曲でいうと、一曲目「TRUMAN」は映画『トゥルーマン・ショー』が題材になっているそうですね。

人生で一番好きな映画が『トゥルーマン・ショー』で、絵音さんに雰囲気を伝えてトラックを作ってもらいました。この曲は一番の歌詞が描き終わったときに、やりきっちゃった感が出ちゃって、二番の歌詞を描くギアがかかるまでに時間がかかりました。やっぱり好きな作品だからこそ、自分の中でハードルが上がってしまって。けど、一度寝かして考え直したり、映画を見返したりして、自分の中で噛み砕いて作ったので、結果的に気に入った曲になったので良かったです。ネタとかでも『これは面白いわ』って完成直後に思うことはなかったんですけど、この曲は出来上がってすぐに好きだと思えました。自分が作ったものに対して、ここまでしっくりきたのが初めてだったので、とてもいい体験でしたね。

ーそんな映画『トゥルーマン・ショー』はどんなところに感銘を受けたんですか。

主人公の周りにいる人はエキストラで、彼の生活は全てテレビで放送されているという、作られた世界で常に社会に監視されている設定が、今自分の置かれている環境に近いと思って。街中の人や週刊誌とか、常に誰かに見られている状況というか。テレビと私生活の境目がこれから先、もっとなくなっていくんだろうなと感じたり。歌詞にも〈有名税で建てるビル〉ってあるんですけど、ここから芸能界で生きていくと、有名税として取られているものを合算したらビルが建つなと思って(笑)。漠然と感じていたことをそのまま入れました。同じ業界にいる人はもちろん、会社で働いている人も近い感覚があると思うんですよね。会社の看板を背負って見られる場所というか。そういう方々にも共感してもらえたらいいなと思っています。

ー一方「Mine」では、サーヤさんの人生観が綴られています。

芸人もやっている状況をそのまま出した方がいいと思って、カッコつけるというよりは、リアルさを意識して描きました。これは最初にトラックをもらって、そのデータ名が「Happy Soul」になっていて(笑)。けど、ハッピーになりすぎない方がいいかなと思ってバランスを意識しました。

ー「バイバイ」は作曲がCLR / 晩餐となっていますが、川谷さんとテーマを決めたんですか。

絵音さんが曲のテーマを決めていて、サビのメロもある程度仕上げてくださっていたので、そこからラップ部分をメインに考えていきました。今作唯一の失恋ソングなので、なんか新鮮ですよね。これは過去の経験やその時々で感じたことをパッチワークで描いた感じです。これを描いたときは失恋していなかったけど、後々で歌詞のようなことが起きたので、『歌詞先行かい!』って思いました(笑)。

どんちゃん騒ぎをしている雰囲気を
そのまま出せたらいい

ー曲作りを重ねていって、バンドメンバーとの仲も深まりましたか?

私以外の方が凄すぎるので、とにかくすごくかっこいいなと(笑)。歌録りがなくても、一緒にスタジオに入って、トラックが作られていくのを聞いているだけで、めちゃくちゃいいなって思うし。同時進行で歌詞描けているのが楽しいです。全てが初めてのことだったので、みんなから全部教えてもらっていますね。

ーサーヤさんはアーティストとの交友関係も広いですが、制作中に相談されたりしましたか。

周りの方々には出来次第デモを送りましたね。DJ松永さん(Creepy Nuts)は毎週会うので、その時に聞いてもらったり、「TRUMAN」のときは、Licaxxxも映画が好きなので、音源を送ったら『いい具合に昇華されていて、良いと思う』と言ってもらいました。あとアフロさん(MOROHA)に『サーヤは芸人の上で音楽をやっているから、歌詞にもその立場を生かした方がいいよ』と言われていたので、「Mine」を送ったときに〈変な⾒出しつくお笑いナタリー〉とか、こういう歌詞を待っていたと褒めてもらいました。基本的にみんな勇気出る言葉をくれます。

ーいい関係ですね。改めて、2022年はどんな一年でしたか。

新しいことが続いた一年でしたね。ラランドの単独も半年くらい準備して特殊な演出を入れたり、バンドでアルバムを制作したり、初めて演技と丸1ヶ月向き合ってみたり。違うことをやっていたけど、お笑いも、音楽も、お芝居も“何かを表現する”ことが根本にあったので、そういう意味で大きな違いはないなと思いました。なので、変に意識して切り替えなきゃって感じはなかったですね。最初の頃は、ライブ中にMCを入れると前説みたいというか、芸人の喋りがノイズになっちゃう気がしてMCを入れていなかったんですが、その辺りも試行錯誤をして。だんだんバンドとして話す感覚が掴めてきました。そういう意味で、お笑いでできなかった表現を音楽に昇華したり、音楽でできなかったことを芝居に落とし込んでみたり。できなかったことを別の場面で取り返せたので、心は健康でいられたかもしれないです。とにかく楽しかったですね。

ーちなみに、タイトル名であるWHOOPEE(=バカ騒ぎ)はどういうイメージでつけましたか。

礼賛というバンド自体が仕事という感じではなく、ワイワイ集まって楽しんでいるので、そういう肩肘張らず、どんちゃん騒ぎをしている雰囲気をそのまま出せたらいいなと思ってつけました。

ー2023年はどんな一年にしたいですか。

“曲を聞いてもらいたい”という純粋な気持ちで動いているので、初めて聞いてくれた人にもちゃんと届いてほしいですね。バカ売れしよう!って感じではないですし、そもそもみなさん活躍されている方々なので(笑)。自分たちの好きを詰め込んで、好かれたらハッピーって感じの空気感を色濃く出していけたらいいなと思います。これから開催するツアーをはじめ、今年もライブやフェスにもたくさん出たいですね。

ーでは、ツアーへの意気込みをお願いします。

私の地元・八王子からスタートということで、お笑いでも八王子でやることがなかったし、新鮮ですし嬉しいです。聞いてほしい曲しかないので、それを各地でいい感じにお届けできたらいいなと思います。あとはとにかく合間で遊びに行きたい(笑)。ライブ前にみんなで焼肉に行くのが恒例になっているので、ツアーを楽しみつつ各地の酒と焼き肉も堪能したいですね。そして課長(休日課長)は酔っ払うと死ぬほど褒めてくれてるので、打ち上げでは早く酔わせようと思います(笑)。

ー最後に、サーヤさん自身の今後の目標を教えてください。

個人に関しては、年々お酒との向き合い方が上手くなっているので、このまま失敗を減らしつつ、お酒は辞めず(笑)。音楽、お笑い、お芝居、お酒。一個一個の手を抜かずに全部頑張りたいですね。

INFORMATION

礼賛

1st Album『WHOOPEE』
2023.1.18(Wed) Release
1. TRUMAN
2. Damn it!
3. 愚弄
4. 橋は焼かれた
5. Take It Easy
6. バイバイ
7. Parasite
8. Mine
9. Monet Magic
10. NO SWEAT
11. U

礼賛ONEMAN TOUR 2023 「whoopee」
2023年1⽉21⽇(⼟)
⼋王⼦MATCH VOX 開演18時
2023年1⽉28⽇(⼟)
福岡LIVE HOUSE Queblick 開演18時
2023年1⽉29⽇(⽇)
岡⼭CRAZYMAMA 2nd Room 開演18時
2023年2⽉04⽇(⼟)
仙台LIVE HOUSE enn 2nd 開演18時
2023年2⽉10⽇(⾦)
梅⽥Shangri-La 開演18時
2023年2⽉11⽇(⼟)
名古屋CLUB UPSET 開演18時
2023年2⽉19⽇(⽇)
渋⾕WWW X 開演18時