Interview: LiSA ー『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の日本語吹替版主題歌“REALiZE”に込めた運命に抗う力強いメッセージー

言わずと知れた日本を代表するLiSA。これまでに数々のアニメ作品の主題歌やエンディングテーマを手掛けてきたが、今回担当したのは『スパイダーマン』シリーズ最新作、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の日本語吹替版主題歌だ。ハリウッド映画の主題歌は初でもある。曲名は「REALiZE」、約7ヶ月ぶりの新曲でもあり、スピード感のある楽曲にLiSAらしい力強いメッセージが落とし込まれている。本楽曲について、LiSAの思いと共にお届けしたい。

この機会だからこそ
自分の“好き”を曲に詰め込みたかった

 

ー映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の日本語吹替版主題歌を担当されているわけですが、もともとスパイダーマンは好きでした?

LiSA:昔から好きですね! 最初に観たのは中学生くらいだったと思うんですけど、周りにも男女問わずスパイダーマン好きの友達が多くて、彼らからスパイダーマンについての熱い話を聞いてきたので、私も好きになっちゃったんです。
 

ーLiSAさんがスパイダーマンの中で好きなキャラクターは、今回の物語においてキーになっているグウェンだそうですね?

LiSA:はい。グウェンは強くてキュートなスパイダーウーマンですけど、ただ可愛いだけじゃなくて、強くて頼りになるお姉ちゃんっていうか。だけど女の子らしいところもあってすごく好きですね。私がずっとアヴリル・ラヴィーンさんを好きな感覚とも少し似ているかもしれないです。
 

ー今回の主題歌に際して、映画の制作に携わったアニメーターが特別に描き下ろしたスパイダーバース世界のLiSAさんのジャケット写真も公開されましたが、これはスパイダーマン好きのLiSAさんにとっては喜ばしいことだったんじゃないでしょうか?

LiSA:めちゃめちゃ嬉しかったです、もうご褒美ですよ! 前作(『スパイダーマン:スパイダーバース』)のときも、アニメーションとコラボしていたのを見ていたので、もしかしたら私もそんな風になるのかな? と思ってワクワクしていました。だから、このイラストが届いたときは感動しちゃいましたね(笑)。


 

ーでは、楽曲「REALiZE」について教えてください。作編曲を担当した堀江晶太さんとは、どのように制作を進めていったんですか?

LiSA:晶太くん(作編曲:堀江晶太氏)と話していたのが、スパイダーバースの世界観を思いっきり意識して、スピード感があるサウンドにしようってことでした。スパイダーマンたちが飛び交っていくような光景が思い浮かぶような曲になればいいなと思って。どんなメロディが上がってくるのかワクワクしながら待っていたんですけど、上がってきたデモを聴いたら、歌い上げるサビのパートがあり、Aメロ、Bメロではテンポのよいリズム感で構築されていて。スパイダーマンっぽいし、同時に私らしい曲だったので、歌うのがすごく楽しみな曲でもありました。
 

ーそうしたスピード感や立体的な音像などを表現するにあたって、ミックスエンジニアのZakk Cerviniさんの存在も欠かせないものだったんじゃないかなと思います。これまでblink-182やBring Me The Horizonなどを手掛けてきたエンジニアですが、どういった経緯でオファーするに至ったんですか?

LiSA:映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の日本語吹替版主題歌ということを踏まえて、映画が持っているスケールの大きさを表現したいと思ったんです。それで、晶太くんとも話し合った結果、このタイミングだからこそお願いしよう! となったんですよ。Zakkさんは、いつかご一緒したいと思っていた方だったので、その夢が叶った形ですね。上がってきた曲をはじめて聴いたときは、カッコ良過ぎて笑っちゃいました(笑)。
 

ーめちゃくちゃクリアなサウンドで、しかも重厚感ある曲に仕上がっていますよね。歌はもちろん、すべてのパートが均等に鮮明に聴こえてきます。

LiSA:例えば、Bring Me The Horizonなど、これまで自分が聴いてきた大好きなアーティストのサウンド感に仕上がっていて、こんな風にマジックがかかったことに驚きました。同時に、すごく自信に繋がりましたね。今までであれば、(主題歌を)担当させていただく作品が日本のアニメーションだったし、自分も日本のシンガーとして活動しているということを、日々意識してやってきたので、なかなかこういうミックスやアレンジにはならなかったんです。だけど、今回は、スパイダーマンだからこそ、もう好きなことをやってしまおう! って感じでもあったんですよ。
 

ーなるほど、映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』ならではの布陣だったわけですね。

LiSA:はい。結果として「REALiZE」は、映画の公開を心待ちにしている人にも聴いていただける曲に仕上がったと思いますし、日本語吹替版主題歌としてマッチしているんじゃないかと思います。

運命を背負ったヒーローと自分の立場をクロスオーバーさせて

 

ーでは、歌詞について教えてください。物語の内容とリンクしているものですか?

LiSA:今回の『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に限った話ではなく、スパイダーマンが背負わされている宿命にフォーカスした内容にしました。スパイダーマンは誰もが憧れるヒーローですけど、大切な人を失ってしまう運命にあって、そんな中でも、彼ら・彼女たちは世界を救うことを選択して生きていくという姿が描かれています。そこに、音楽で生きていくと覚悟を決めた自分自身の姿が重なるんですよ。ヒーローほどではないですけど、やっぱり音楽だけで生きていくうえで、何かを選択したり犠牲にしなくちゃいけない場面はあって、そこに対しての心意気や覚悟を歌詞に昇華したいと思いました。
 

ーなるほど。サビの歌詞が非常に力強く描かれているのは、そういう理由からなんですね。

LiSA:そうです。特に力強さは意識して言葉を選んでいきましたね。あと、これは「REALiZE」というタイトルにもかかってくる部分なんですけど、彼ら(スパイダーマンたち)が、自らをヒーローとして自覚したからこそ強さがあるんだっていうことを、自分と照らし合わせながら歌詞やメロディに反映させていったんです。自分が歌うにあたって、過去の私はなんであんな風に思っていたんだろう? 本当の気持ちはなんだったのかな? って自分自身にインタビューしながら、自分とスパイダーマンたちの気持ちがリンクする部分を引き出していったんです。
 

これからの10年を示す楽曲になったと思う

 

ー「REALiZE」は、楽曲の臨場感といい、歌詞のメッセージ性といい、スパイダーマンファンにもLiSAさんのファンにとっても、たまらない1曲だと思います。改めて、ご自身にとってどんな曲になったと思いますか?

LiSA:10年という節目を超えて、この先の10年をLiSAというアーティストとして、どうやっていこうかなって考えてながら音楽を作っていた期間が続いていたんですよね。そんなときに『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に携わらせてもらい、ずっと好きだったサウンドをやらせてもらえるタイミングがきて、何かこう、すごくしっくりきたし、今後の自分にワクワクできたんです。「REALiZE」はそんなきっかけになった重要な曲になりましたし、改めて、私の心に火をつけてくれた曲になったと思います。私にはまだまだやれることがある。もっとLiSAとしての音楽を進化させることができるんだって希望をもらった感覚がありました。「REALiZE」を聴いてワクワクしてくれた仲間と一緒に、次の10年に走っていくぞ! って気持ちになれましたね。
 

ーこれまでと気持ち的に変化した部分が「REALiZE」を経て明確化した感覚ですか?

LiSA:そうですね。新曲としては約7ヶ月ぶりになりますけど、10周年記念企画を終えてから、自分自身が本当に好きなことを大切にしながら、1個ずつ音楽にしていく方向にシフトした感覚があります。子供の頃のように純粋な気持ちで、好きだから音楽を作ろう、カッコいいことをやりたいから、こういう音楽を作ってみようだとか。そんな風に気持ちが先行して音楽に向き合えているような感じがあって、そのうえでできたのが「REALiZE」なんですよ。自分の好きに忠実になったらカッコいい曲ができたんです。
 

ーありがとうございます。では、最後に今後チャレンジしたい個人的なことがあったら教えてください。

LiSA:今年は人生においてすごく大きな出来事がありました。それを受けて、今、新しい自分になったような感覚でいるので、ゼロからスタートで喉も含めて、身体を鍛え直して、また進化していきたいと思っています!

INFORMATION

LiSA 「REALiZE」

https://LiSA.lnk.to/REALiZE

https://www.lxixsxa.com/
https://www.instagram.com/xlisa_olivex/
https://twitter.com/LiSA_OLiVE

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
原題 『SPIDER-MAN: ACROSS THE SPIDER-VERSE』
日本公開:6月16日(金)全国の映画館で公開
https://www.spider-verse.jp     
https://twitter.com/SpidermanMovieJ