えみそん（フレンズ）の感銘脳内vol.2『コンビニランド』　

日々の心の機微を多彩なポップサウンドで表現し、唯一無二のポップアイコンとして活躍する神泉系バンドフレンズ。そんなフレンズのボーカルを務めるえみそんこと、おかもとえみの連載「感銘脳内」が6月からスタートした。フレンズの楽曲の作詞のみならず多くのアーティストへの楽曲提供など作家としても活動する彼女が、その時の脳内環境を自身で制作したイラストと写真を織り交ぜながら言葉で表現していく。第二回はえみそんのコンビニでのひと時。普段は見ることができない彼女の“脳内”を楽しんでみてほしい。

駅から家までの帰り道に必ず寄るところがある。みなさんご存知“コンビニエンスストア“である。用事があってもなくても吸い込まれるようにそこに入ってしまう。明日の朝ご飯のパンの上に乗せるとろけるチーズはもう無くなっていたかなぁ、土鍋で炊いたご飯を冷凍するためにサランラップたくさん使っちゃったからもうあと残りわずかかもしれないなぁ。頭の中をフル回転させて、家の隅々までくまなく足りなく買ったものを思い出す作業をすると、あれもこれも足りないような気がしてならない。自動ドアを颯爽と通り抜けてから私の頭の中で何か、買、わ、な、きゃ！と一定のリズムで誰かが語りかけてくる。魔法にかかったかのように。
　
テーマパークに行く時、入り口には大体壮大な音楽がかかっている。その音楽を聞くと、日常から外れて、いつもと違う夢のような世界に入った気持ちになる。某テーマパークでは、妖精のシャラララ〜ンと言う音が魔法の粉をかけている音でその合図になっていて、さぁこれからあなたを魔法の世界に誘っちゃうよ！という事らしい。
　
そんな私の今日行くテーマパーク『コンビニランド』の入場音楽は、ファ＃レラレド＃ラ〜ミファ＃ミラレ〜だ。明るいメロディーに迎えられてワクワクしてきた。その後すぐに合宿免許の店内ラジオが聞こえる。何度も耳にするこのフレーズは少しの安心感と普段家では聞けない特別感が入り混じった不思議な感覚になる。免許を持ってないのでとりたい気持ちも芽生えてくるからまんまと術中にハマってしまっている。好きな音楽を聴きながら海岸沿いをドライブしたら楽しいだろうな。

　
免許の話は置いといて。

私のモデルコースを紹介しよう。
まず１番目にイッツアスモールデイリーワールドこと日用品コーナーだ。入園したばかりなのでまずはゆっくり揺られながら眺める。右手に見えるのはいつも使っている洗剤のジェルボール！あと何個残ってたか覚えてないけど、まだ補充には早い気がするのでスルー。少し視線を下げると食器用洗剤詰め替え用ボトル！泡が織りなす虹色のシンクを思い浮かべながら、まだこれも足りている気がするのでスルー。わずか数分の世界を巡って、本当に欲しかったのか実際に足りていなかったものなのか分からないゴミ袋やラップなどの日々の必需品を持ちながら２番目のアトラクションへ。ウォーターペットボトルスライダーこと飲料コーナーへ向かう。天然水を手に取る。ここでは迷いがない。一日にたくさんの水を摂取するので何本あっても良いのだ。たとえ家に何本もストックがあろうとも‥この後も楽しい楽しいアトラクションが待っているので短めに乗りこなそう。そろそろ両手が塞がってきた。買い物かごをゲットしたところで３番目、本テーマパークのメインであるスナックパレードへ。私のカバンには常に何かのお菓子が入っているくらいお菓子が大好きだ。新人スナックの華々しいデビュー作を一度手にとる。新食感の謳い文句に思わずカゴへダイブさせてしまいそうになるが、まだパレードの序盤だ。甘いとしょっぱいが交互にダンスを繰り広げている。まずは罪悪感の少なそうなナッツを選び、少しだけ心を満たす。しょっぱいものを選んだとなると、次はチョコレートが待ち構えていた。罪悪感問題で言うと、ハイカカオのチョコレートを選ぶべきだが、ここは夢の国。とびっきり甘いミルクチョコレートを選ばせていただく。作業中のコーヒーのお供に間違いないチョイスだ。もう充分な位ではあるが、私の目に飛び込んできたのは、ポテトチップスのり塩味、メインアクトのお出ましだ。気がついたら１袋なくなっている魔法界の魔物である。もう少しスナックパレードを見ていたい気持ちだが重くなるカゴに急に現実を感じてきたところで、今日はアイスコーナーにはよらずレジへ向かうことにする。

あれ、全然覚えてないけどなんかいっぱいカゴに入ってる‥これぞマジック！楽しんだ代償は、大きい。レジの金額を見て、さらに現実に引き戻される。店員さんのありがとうございましたの声にこちらこそ楽しい思いをさせてくださり、ありがとうございましたと心の中で返事をし、名残惜しさとともにコンビニランドを後にする。

ああ今日も買いすぎた。