9月20日にニューEP『GOLD IMPRINTS』をデジタルリリースしたNOISEMAKER。本作は20周年に向けたZEPPツアーにおいて会場先行で販売されていた作品でもある。NOISEMAKERらしさもありつつ、バンドの新たなアプローチを感じさせる本作について聞く。そして、今作にも込められた2024年という20周年に向けての話と、アートコレクティブとして全国で個展を行っているDOTS COLLECTIVEの今についても話してもらった。
過去を踏まえて自分たちらしく新たなアプローチを
ーまずはニューEP『GOLD IMPRINTS』の話からお伺いします。9月20日にデジタルリリースされたわけですが、そもそも本作は8月4日から開催された『ROAD TO 20th ANNIVERSARY ZEPP TOUR』の会場でフィジカルが販売されていたわけですよね。
HIDE:そう、ZEPPツアー開始直前に出来上がったEPなんですよ。だかr、けっこう制作して時間が経っているんです。
ーその周年ツアーに向けた作品とも言えるわけですし、実際に聴くと5曲を通して、これまでのNOISEMAKERを曲ごとに表しているようにも感じられたのですがいかがしょう? そういった歴史をイメージする部分はありましたか?
HIDE:ええ、まさにそれを狙っていました……と、言いたいところなんですけど、気づいたらそういう内容になっていたんじゃないか? という感じなんです。
AG:周年をそこまで意識するというわけではなく、まずはツアーに来てくれる人に先に聴いてもらいたいねって気持ちで作った作品なんです。なので20周年記念EPではなくZEPPツアーの現場へ向けたものでしたね。あと、これは今作に限った話ではないんですけど、新作を作る際は過去作を踏まえつつ、それを進化させて曲を作ろうとするので、自分たちらしさっていうのは必然的に出てくるんです。
ーたしかに、急にこれまでのバンド像から逸脱した曲を作るということはないですよね。そこでいくと3曲目「Pushing My Back」はかなり斬新なアプローチに感じました。あそこまでラップメインなのも珍しいのでは?
AG:ええ、ここまでなのは初めてですね。だけど、ラップは僕らの根底にあるもので「APEX」や「Wings」などでも披露してきたので、やはりNOISEMAKERの進化系と捉えられると思います。今までやってきた経験があったからこそ思いっきり表現できた曲なんじゃないかと。
ーそういう意味ではルーツを表現したボーカルライン=ラップでもある?
AG:ありますね。オレらの世代ってミクスチャーやニューメタル、それこそレイジ(Rage Against the Machine)やリンキン(Linkin Park)にリンプ(Limp Bizkit)がベースにあって、コットンマウス・キングス(Kottonmouth Kings)でラップを聴いてきたりしたし、バンド初期の曲はそこに直接的に影響を受けた曲も多いですからね。今もメインストリームのHIPHOPを聴きつつルーツを意識しながら新しいことをやろうとしています。
ーでは、曲についてはいかがでしょう?
HIDE:途中でテンポチェンジしているんですけど、このアプローチは初めてでしたね。いわゆるAメロ→Bメロ→サビっていう構成ではなくて、次々に展開しながら曲が進んでいくっていうのも面白いじゃないですか。曲に関してはそういうことを考えながら作っていきました。
ーそれはHIPHOP的なアプローチを意識したということになりますか?
HIDE:いえ、どっちかと言うとテンポチェンジに関してはEDM、あとは全体的にエレクトロニカだったり昔のダブステップだったり。この辺りは昔から聴いてきて自然と取り入れていく傾向にあるって感じですね。
AG:あとはトラップっぽさがありつつもドラムの音にレトロ感があったりギターリフがジミヘン(Jimi Hendrix)っぽかったり。自分らの引き出しを全部詰め込んで新しい音になったんじゃないかと思いますね。
ーリリックの内容には20周年感が表れていますよね。
AG:そうですね。来年に向けて今までのことを振り返りつつ、キタカゼ(自主主催フェス『KITAKAZE ROCK FES』)も始めたし、今こそ<きたから南 起こす風>ってフレーズを自信と説得力を持って歌えるので。まだ19年目ですけど、このリリックは来年に向けている部分があると思います。
ー続いて「LAST FOREVER」ですがリリックに決意めいたものを感じました。
AG:これは長く続いてきたコロナ禍について振り返った内容ですね。<Our voices could be gone in just one night(この声がたった一夜で消されてしまう時もある)This dream we see wonʼt last forever(その夢が消えてしまうこともあるだろう)>なんてわかりやすい表現ですよね。そんなネガティヴをポジティヴへ。そういう感情の対比を描いています。曲の面ではシンセベースを活用しながら音の隙間をうまく活用したような曲になっていて、そこが自分たちの中では新しいポイントだと思いますね。
HIDE:そう、シンセベースに関してはけっこう細かく計算していて、右→左→中央と音の位置が変わるような感じにしているんですよ。そういう細かいところも面白い曲だと思います。
ー2曲め「MAE」。ディストーションのかかったベースから始まる曲ですがクールなテンションのサビが魅力的です。
AG:これはサビを少し低い音程でバーっと話すように歌う曲が作りたくて。どうしてもサビはハイトーンで伸びやかなものが好まれると思うんですけど、日本語の言葉を詰め込んでスピーディに歌いたかったんです。アメリカのポップスではあえてサビで抜くようなことをやる人もいるじゃないですか。ああいうアプローチが好きで、それをロックでやってみたかったんです。この曲はまだライブでやってないんでどうなるか。それも今後の楽しみです。
ー4曲めの「STARS」。このEPの中で映えるバラード曲ですがかけがえのない誰かに向けられた愛のリリックだと思いました。
AG:これはこれまで自分を大切にしてくれていた人、なおかつそこに気づかなかった、見えなかったことがたくさんあったんだなってことに、ようやくこの年齢で気づいてきて。誰しも愛されて助けられて、そこに葛藤もあって、ということをストレートに書いたリリックですね。きっと自分に当てはまる部分も多いと思いますし、リスナーによって感じ方が異なるバラードなんじゃないかと思います。
2023年が良い方向を向くための深い跡を残した1年になれば
ーラストの「NO WONDER」。ゴスペルからスタートするというのは実にNOISEMAKERらしく、そしてこれまでにない雄大さが表現されていると思います。
HIDE:これはコロナ禍でホールツアー(『NOISEMANIA PREMIUM HALL TOUR』)を行うときに何をやろうかって話になって。当初はバンドとオーケストラって案も出たんですよね。でも、なんかありきたりで自分たちらしくないと思って。それでゴスペルも既存曲でやったらはまったんですよ。それで「NO WONDER」にも入れようと思って。この曲を作っている当初はAG1人だけが歌う予定だったんですけどね。急遽ゴスペルverにアレンジした曲でもあります。
AG:メロディをシンプルにして全員で歌えるようにしたり。結果的にライブでもシンガロングできるような曲になったと思います。
ーEPのタイトルを『GOLD IMPRINTS』にしたのはどういう意図があるんですか?
AG:2023年はZEPPツアーや、その前のキタカゼもあってバンドやメンバーの人生的にもすごく大きな出来事が多くあった1年になったんですよ。そこに良い意味で深い跡を残す意味で“金色の刻印=GOLD IMPRINTS”としたんです。ちょっとゲン担ぎじゃないですけど、この跡を経てその先の20周年へ向かうって意味合いも込めて金色でプリントしたくて。なんかご利益がありそうじゃないですか?
ーそうですね(笑)。なんか荘厳ですよね。デザインはAGさんが手掛けたんですよね。
AG:はい。このロゴは曲を紋章のように示しているんですよ。
ーそうなんですか! どのロゴが何を示しているんですか?
AG:左上が「NO WONDER」ですね。歌詞の内容にちなんで陰陽のデザインの中央にNOISEMAKERを象徴する鷹のモチーフが前に進む様を入れています。右上は「Pushing My Back」。リリックに<いつ差し出すの 夢に心臓>というパワーワードがあるんですけど、ロゴではハートが4つ重なってクロス(十字架)が出てくるように作っています。左中は「MAE」。矢印が4つお互いに前へ向かい合っている様子ですね。右下は取扱注意のロゴに星を支えるように、大事なことをソッと扱うようなロゴで「STARS」、左下はすでにシングルでも出している「LAST FOREVER」です。右中は曲に囲まれたバンドロゴになっていますね。全体を考えるのに時間がかかったんですけど腑に落ちるようなロゴができてよかったです。
気づけばコミュニティが形成されつつある個展の現場
ーありがとうございます。では、お2人でやられているDOTS COLLECTIVEの活動の方は最近どうですか? 9月上旬より全国を回る6th Exhibition『Girl with a Monogram』を開催中です。
HIDE:前回までに行けていなかった場所にもツアーして個展を開催している状況です。当然、自分たちのアートを見てもらうためことが目的なんですけど、最近ではDOTS COLLECTIVEを介したコミュニティみたいなものが形成されつつあって、ファンとの交流の場になっているのがいいですね。そこで会話できるのが楽しみだし、だからこそ入場無料にしていますから。個展でお客さん同士が仲良くなってたりもするんでいいなと。そんな風に気軽にアートを楽しめる空間を提示できているのも自分たち的に面白いところです。
AG:個展ではあるけどわちゃわちゃ騒げるところがあるっていうのはいいかなと。中にはNOISEMAKERのことを知らない人も来てくれて、DOTSきっかけでライブに来てくれるようになったりもしていますからね。本当に自分もファンとの会話を楽しめるし、そこで自分も頑張ろうと思えるんで毎年の楽しみなんですよ。中にはDOTSでデザインに目覚めてデザイナーの仕事に就きましたって子もいたりして。
HIDE:そういう人がちょくちょくいます。なかなか他にはない場所になっていますよ。ブランドを始めた人がいたりだとか。
ーエキシビションのタイトルが『Girl with a Monogram』ですが、モノグラムにフォーカスされている理由はありますか?
AG:昨年もモノグラムの作品をやっているんですけど、横に並べたときに統一感が出る絵にしたいということと、ポップアートとしてキャッチーで心踊るものを表現したいと考えてモノグラムを作品に取り入れているんですよ。こうして今回もやってみてよかったなと。うまく表現できているんじゃないかと思います。
ーありがとうございます。そして来年はいよいよ20周年を迎えるわけですが何か思うことはありますか?
HIDE:何をやろうかなと思いつつですが、やはりライブ中心の1年になっていくでしょうね。キタカゼだとか『NOISEMANIA』といったイベントはやりつつ20周年らしいことを考えていきたいと思います。
AG:間違いなく、より頑張る年になるでしょうね。
ー楽しみにしています!
INFORMATION
NOISEMAKER
NOISEMAKER
https://noise-maker.net/
DOTS COLLECTIVE
https://www.dotscollectiveshop.com/