Column:総再生2,200万回突破とバイラルヒット「鬼ノ宴」から紐解く友成空の魅力「鬼ノ宴」と同じ音色の上に流れる決意の歌「I LOVE ME!」

シンガーソングライターの友成空が3月13日に新曲「I LOVE ME!」をリリースした。友成は、今年1月にリリースした「鬼ノ宴」がバイラルヒット中の新進気鋭のソロアーティストだ。「鬼ノ宴」がこれほどまでに多くのリスナーを虜にした理由を探りながら、新曲「I LOVE ME!」ひいては友成空というアーティストの魅力を紐解いてみる。

友成空は2021年3月、自身の高校生活最後の日にEP「18」でデビューした21歳。“高校生活最後の日”を切り口にするにふさわしい、みずみずしい感性を全開にしつつも、サウンドはポップスにAOR、ファンクとバラエティ豊かで、当時からその才能を見せていた。2022年にはTikTokアカウントを開設。シティポップナンバーを中心にカバー動画を投稿し、大きな反響を集める。そんな中で大きな注目を集めたのが「鬼ノ宴」だ。友成は2023年11月に「鬼の宴って曲作った」と1分強の動画をアップ。

@tomonarisora 鬼の宴って曲作った。#作詞作曲 #オリジナル曲 #バズれ ♬ 鬼の宴 d e m o – 友成空

その時点で、「鬼ノ宴」を引きつける大きな起因になっている「始月曜」(はじマンデー)というフレーズも織り込まれており、「早くフルで聴きたい」という声であふれていた。

2024年1月10日に満を辞して「鬼ノ宴」のフルバージョンが配信リリースされると、あっという間に大ヒット。同日に公開されたリリックビデオは、現在1700万回再生を超えており、3月1日に公開されたミュージックビデオは500万回再生を超えている。同曲は、Billboard JAPAN “JAPAN Heatseekers Songs”において3週連続で首位を獲得し、現在HOT 100においても上昇中。また、Spotifyでの月間リスナーが140万人を超え、3月26日時点ではTOP 50(JAPAN)で9位にランクイン。

絡みつくようなダンストラックに乗せ、日本民謡を思わせるメロディと歌声で、古風な言葉遣いによるリリックが歌われる。歌詞では<決まりばかりの世の中>で何を選べばいいのか(<何処から喰へば良いものか>)と迷う主人公が、鬼に<御先にどうぞ遠慮なく>とそそのかされて、宴へと誘われるというストーリーが描かれる。シンプルな展開でありながら、これだけのヒットを生んだ理由の一つは、隅々に隠されたギミックだろう。先述した通り、1番のみアップされたデモの段階から「始月曜」を「はじマンデー」と読ませるところには多くのリスナーが膝を打ったが、さらに“宴が始まった”2番では<今宵は帰日曜>の「帰日曜」を「かえサンデー」と読ませた。また“鬼ノ宴”に向かうまでの葛藤を、1番では<仏が何時も水を差す><鬼がこの身を唆す>と、よくある天使と悪魔が囁くようなイメージを和風に描き、2番では同様に<御釈迦が蜘蛛の糸垂らす><地獄の聲が耳を打つ>と表現している。1番の<美味いものか不味いものか>と対になる2番の<白い札か黒い札か>ではピアノの音色が差し込まれているのも面白い。音とのリンクで言えば、<仏が何時も水を差す>の前には水が落ちる音が、<御釈迦が蜘蛛の糸垂らす>では糸を思わせる流れるようなピアノが走る。……と書き出せばキリがないほど、隅から隅までこだわり尽くされているギミックは、発見したら思わず誰かに言いたくなってしまう。思わずSNSで「この曲、ヤバいから聴いて」と言って回りたくなる。いわば現代版の口コミだ。

サウンド、リリック共に、シンプルでありながら奇抜で個性的なものとなった「鬼ノ宴」はもちろん多くのクリエイターにも刺激を与える。音楽系YouTuberや歌い手などが、次々とカバー。その広がりは、リリースから2ヶ月経った今も衰えない。

そんな中、友成が新たに放ったのが「I LOVE ME!」。当初「女性への応援ソングを」という気持ちで作り始めたという同曲は、「ぼくのままで生きていたい」という友成自身の決意の曲となった。軽やかに跳ねる鍵盤の音色に乗せ<やっぱ最近ちょっと太ったな>と鏡の前の前で自問自答する様子から始まる同曲。しかし楽曲が進むにつれ音色が増えていき、サビでは<I LOVE ME! 鏡にうつらないぼくの一番素敵なとこ>と明るく前向きになっていく。さらに最後のサビ前には、空間を感じさせるドラムのカウントからゴスペル調のコーラスと共に<ぼくのままで生きていたい>と歌う。歌詞だけでなく、サウンドでも視野の広さや心の広さを感じさせているのだ。しかもこの曲では「鬼ノ宴」と同じベースの音色を使っているという 。

このほかにも、編曲をOvallの関口シンゴが手がけた、コーヒーの苦さを恋愛の苦さになぞらえた「コーヒー」や、愛おしい人と離れる改札での一場面をドリーミーなサウンドに乗せた「改札」など、多彩な楽曲を生み出している友成。「I LOVE ME!」と「鬼ノ宴」に同じベースの音色を使用しているのが、偶然なのか、はたまた遊び心なのかはわからないが、一見すると全く違うタイプに思える彼の楽曲に、ベースの音色のように一貫して流れているものがある。彼は出演ラジオにて、曲を作るときのこだわりとして「なんとなく目を閉じたときに、みんな同じ世界が思い浮かんだらいいなと思いながら作っている」と話していた(Kiss FM KOBE「Kiss Music Presenter FRIDAY」より)。また「鬼ノ宴」リリース時、これまでの音楽性とはがらりと雰囲気の異なる1曲に、思わず「新境地」と言いたくなってしまったが、友成はかねてより自身の音楽にオリエンタルな要素を入れることにはこだわっていたという。彼にとって「鬼ノ宴」は、新境地でもチャレンジでもなく、和の要素の分量のさじ加減を調整したまでなのかもしれない。友成にとっては、すべての音楽が地続きなのだ。もしくは、いつもの自分とは違うものを作ってみるという“鬼”の声に従ったのかもしれないが。いずれにせよ、自身の感性をフル稼働させて描く友成の世界を、口も目も耳も、ついでに鼻の穴までもかっぴらいて、もっともっと見てみたい。

INFORMATION

友成空

「I LOVE ME!」2024.3.13 Digital Release
https://tomonarisora.lnk.to/iloveme

「鬼ノ宴」2024.1.10 Digital Release
https://tomonarisora.lnk.to/oninoutage

友成空全曲集
https://open.spotify.com/playlist/4WS4Dn6UFonSKW2uxpBrQx

友成空(TOMONARI SORA)
作詞・作曲・アレンジだけでなくイラストまで全てを自分でこなすマルチな才能に溢れたアーティストで、21歳の等身大の視点からの秀逸な比喩表現とジャンルに囚われない上質なJ-POPサウンドが魅力の次世代音楽シーンを担う注目のシンガーソングライター。

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