ストリーミングサービスにSNS、YouTubeなどから発信される音楽が多く聴かれる近年は、スマートフォンから巻き起こるムーブメントが世界中を席巻しているといっても過言ではないだろう。そんな“ブーム”を生み出しているアーティストの楽曲で構成されるプレイリストプロジェクト「BOOM BOOM BOOM」のリアルイベント「MAKE A BOOM #7 -evergreen-」が6月30日(日)に恵比寿LIQUIDROOMにて開催。Ivy to Fraudulent Game、カネヨリマサル、kobore、パーカーズ、プッシュプルポットの5組のバンドが集結。
前篇に引き続き、今回はそんな一夜を前に各バンドのフロントマン5人のトークセッションを敢行。後篇の今回は、それぞれの音楽体験やイベントへの意気込みを語ってもらった。
Left to Right
豊田賢一郎(パーカーズ)
山口大貴(プッシュプルポット)
佐藤赳(kobore)
ちとせみな(カネヨリマサル)
寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game)
――Ivy to Fraudulent Game、カネヨリマサル、kobore、パーカーズ、プッシュプルポットが出演するライブイベント「MAKE A BOOM #7 -evergreen-」が6月30日に恵比寿LIQUIDROOMで開催されます。「evergreen」には「時が経っても色褪せない」という意味もあります。みなさんのevergreenな音楽体験について教えてください。
寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game):中学生の時に、姉が持っていたギターを弾きたかったんですけど、家にアンプがなかったんですよ。エレキギターってアンプに繋がないとチャカチャカした音しか出ないので、「テレビでロックバンドのライブを見ていると、明らかに違う音が出てるぞ?」「俺が下手だからあの音が出ないんだ」と思いながら練習してたんですけど、ある日「どうやらアンプというものがあるらしい」と知って。お年玉で買って繋げた瞬間、バカみたいにカッコいい音が出始めて、その瞬間「俺は多分ギターをずっとやってくんだろうな」と思いました。俺にとっての音楽はそこから始まった気がする。俺は大きい音を出すのが昔から大好きだから、今でもライブでデッカい音を出してます。あれからけっこう時が経ったし、もう初期衝動ではないんだろうけど、「楽しい」という気持ちがないと多分続けていないだろうから。苦しい時もあったけど、「あの楽しさが今日までずっと続いてる」と思えているのは、初めてギターを鳴らしたあの瞬間が自分にとってデカかったからだと思ってます。
ちとせみな(カネヨリマサル):私、BUMP OF CHICKENとチャットモンチーを聴いて「バンドが好きだ」と思ったんですけど、特にチャットモンチーにはスリーピースバンドのカッコよさを教えてもらいました。ギター1本、ベース1本、ドラム1台だけだから、5人や4人のバンドに比べると音は薄くなるんですよ。だけど3人編成だからこそ出せるグルーブとか、シンプルなカッコよさを見せられるのがスリーピースの強みやなと思っていて。今回のメンツでスリーピースバンドは私たちだけなので、スリーピースのよさをお客さんにもしっかり伝えられたらと思っています。
佐藤赳(kobore):僕もちとせさんと一緒でBUMP OF CHICKENが好き……というか、この世界に存在しているのが信じられないくらい崇めているんですよ。藤原基央さんの言葉で、「例えば白い紙を見たら、誰もが白い紙だと言う。だけどそこに点を一つ打ったら、みんな黒い点だと言う」というものがあって。その言葉をめちゃくちゃ大事にしているんですよね。バンドやってると、誘惑というか「これをやった方が売れる」みたいなものがあるじゃないですか。だけどそれって結局誰かが作り上げたものだし、そういうものをぶち壊して、何もない状態から自分たちで始めていかないと、そもそもバンドは続かない。白い紙の話にはそういうことを教えてもらったし、BUMP OF CHICKENのライブを観るたびに「今見ているステージって誰もいなかったらただのステージだけど、あの4人が立つことによって、ここにいる全員が4人を見ている瞬間が生まれるんだ。それってすごいことだな」と思います。あの言葉の解釈って年をとるごとに変わるし、分かれば分かるほど自分も成長してるんだなと思える。自分の中に深く根付いている、色褪せない言葉ですね。
豊田賢一郎(パーカーズ):僕にとってのevergreenな音楽は、小学生の頃、家族で出かける時に車で流れていたMr. Childrenです。ミスチルを聴いた時に初めて「音楽、好きだな」と思えたんですよ。そのあとサッカーとかいろいろやったけど、将来の夢みたいなものが特になくて。「サッカー選手にはそこまでになりたくないな」「本気でやってる人に対して、俺は覚悟が全然足りない」「そんな自分が将来の夢と言うのはおこがましい」というふうに悩んでいた時期もあったけど、音楽だけは覚悟を決めてちゃんとやっていけると思えたから、この道に進んだんです。自分は、音楽に助けられたことがたくさんありました。「もうダメだ」と思った時も、音楽を聴けば「明日もなんとか頑張ろう」という気持ちになれました。僕のような人って、きっと他にもいるんじゃないかと思っていて。ミスチルとの出会いから始まって、今は、人の心を救えるような歌を歌ったり曲を書いたりしていきたいと思っています。
山口大貴(プッシュプルポット):僕、岩手に住んでいた高校時代に初めてバンドを組んで、ライブハウスに出たんですけど、その時に対バンしたのがSWANKY DOGSという岩手のバンドで。目玉飛び出るんじゃないかってくらい、目力がえぐかったんですよ。そのライブを観た時に、「ライブは歌だけじゃないし、動きだけでもない」「表情でも迫力は伝えられるんだな」と思ったのが自分の中でけっこう大きな経験だったと思います。というのも、僕、「目がバッキバキ」ってよく言われるんですよ。自分ではそのつもりはなかったんですけど、多分SWANKY DOGSへのリスペクトが無意識のうちに出ていたんだろうなと、人から言われた時に初めて気づきました。
――お互いに対する印象や関係性についてはインタビューの前半で話してもらいましたが、「大学でコピーしてました」「いちリスナーとしてずっと曲を聴いてました」という話も出ましたね。
山口:コピーしてたバンドと対バンしたり、ごはん行ったり、遊びに行ったりというのは「なんか変な感じがするな」と思うこともあるけど、そういうことも起きるのがバンドの面白さではありますよね。
佐藤:それで言うと、僕、ノブ君の大ファンだったんですよ。高校生の頃、ツイキャスっていう生配信アプリで初めてノブ君を知ったんです。同級生から「寺口くんって人知ってる?」「この人の弾き語り、ヤバいいんだけど」と教えてもらって。ツイキャスで「はじめてのチュウ」を弾き語りしてた時の動画の切り抜きがYouTubeかどこかに上がっていたんですけど、俺、それを聴いた時に「うわっ、歌めちゃくちゃ上手い」「やっぱりこの世にはやべえ人いっぱいいるんだ」と思いました。で、その人がやっているバンドもめちゃくちゃカッコいいんだよということで、Ivyも聴いて、弾き語りとかもノブくんバージョンでカバーして。そう考えると、Ivyと対バンするようになったり、ツアーに呼んでもらえるようになった今の状況って面白いなと思うし、巡り合わせみたいなものを感じます。
寺口:じゃあ弾き語りステージでコラボするか。「はじめてのチュウ」。
佐藤:おおっ……!
――楽しみにしています。寺口さんが今言っていたように、当日はメインステージでのバンドでの演奏だけではなく、弾き語りステージもあります。お客さんにはどのように楽しんでもらいたいですか?
豊田:自分は弾き語りで曲を作るタイプなんですけど、そこからバンドアレンジにしていくとやっぱり形が若干変わるんですよ。バンドではメンバーとグルーヴを併せて音楽を届けていくことになるけど、弾き語りだと自分だけのグルーヴになるので、その違いを感じてもらえたらと思います。
佐藤:普段のライブでは激しい曲でも弾き語りではゆっくり歌うこともあるから、シンプルな曲のよさとか、歌っている人の声質をダイレクトに感じてもらえると思います。そういうところを楽しんでもらいたいです。
――ちとせさんは、山口さんのステージにゲスト出演するんですよね。
ちとせ:2人で弾き語りするということで、対バンともまた違う空気になるんじゃないかと、今からワクワクしています。仲のいい友達と一緒のステージということで、ハッピーな感じになりそうやなと思ってますね。
――最後に、ライブへの意気込みをお一人ずつお願いいたします。
寺口:以前、このイベントを企画している金子さんとライブ会場でたまたま会って、挨拶をしたんですよ。その時に、「イベントをやってます。次は6月30日です」と言っていたので、俺の方から「出してください!」とお願いして。
山口:逆オファーなんだ!
寺口:そう。ハイになっていたからか分からないけど、これは絶対に言わなきゃダメだと思って、その場でスケジュールを見て「空いてます。出ます。お願いします」と直談判しました。それを受け入れてくれて本当にオファーくれるのは素敵だなと思ったし、すごく嬉しくて。めちゃめちゃいい日にしようと思っているので、この記事を読んでいる方も楽しみにしていてほしいし、たくさんの人に来てほしいです。よろしくお願いします!
ちとせ:いろいろなバンドがあるし、弾き語りステージもあるし、音楽漬けの楽しい1日になりそうやなと思ってます。だから、みんなには最初から最後まで観てほしいなと。私たちは紅一点で、この日唯一のスリーピースバンドなので、カネヨリマサルらしい風を吹かせれたらなと思ってます!
佐藤:ツーマンやスリーマンとは違って、5バンドでの対バンって難しいっちゃ難しいと思うんです。お客さんはいろいろなバンドを1日で取り入れることになるから、いろいろな感情が渦巻くだろうし。だけどこの5バンドでやるからには、やっぱり「この5バンドである必要があったよね」という日にしたい。いい意味でステージで殴り合うような、お互い高め合える日にできたらいいなと思うし、お客さんにも「この5バンドでよかったな」と思ってもらいたいです。そんなライブにできたらと思ってます!
山口:この前初めて喋って仲良くなったパーカーズも含めて、仲いいバンドばかりだけど、仲良くしすぎると俺はふわついちゃうから。力を抜きすぎずに。赳くんが言ったように、この5バンドだからこそ成り立つ日にしたいです。この5バンドだからこそ面白かったんだ、楽しかったんだ、と言えるようなライブにできたらなと思ってます!
豊田:5組とも違う個性を持ったバンドですけど、僕らは一番ハッピーが溢れるライブをみんなに届けられたらと思ってます。その上で、みなさんの言う通り、この5バンドで最高な日を作りたいです。よろしくお願いします!
INFORMATION
MAKE A BOOM #7 -evergreen-
開催日:2024年6月30日(日) OPEN 14:30 / START 15:30
開催場所:恵比寿LIQUIDROOM
ARTIST:
Ivy to Fraudulent Game / カネヨリマサル / kobore
パーカーズ / プッシュプルポット