Live Report: ザ・クロマニヨンズ ー普遍性に感じる絶対的初期衝動ー

2024年6月4日(火)、TOKYO DOME CITY HALLにてザ・クロマニヨンズツアー『HEY! WONDER』のライブが開催された。ツアー自体は2月16日(金)にスタート。全国津々浦々を旅して周った後半戦のライブであり、今回のツアーの中でも大規模なキャパで開催された1日でもあった。

『HEY! WONDER』はザ・クロマニヨンズの17枚目のアルバムであり、他の多くのアルバムと同様に12曲のロックンロールソングが収録されている。前提の話になるが、ザ・クロマニヨンズ のツアーライブでは、新作アルバムの収録通りに全曲届けられる。メンバーがA面、B面と名付けた通りのセットリストの中に過去の名曲が織り交ぜられて1つのライブが構成される。このスタイルは今の段階では変わることがないものだ。ちなみに、このライブ構成については、甲本ヒロトが5曲目ほど演奏した後にMCで「気に入ったら、また何回でも聴いてください。今日の同じ曲順で楽しめるから」と解説してくれていた通りである。
毎回同じ構成というのは単純に不変というわけでは決してない。ザ・クロマニヨンズのツアーとは、ロックンロールの普遍的な魅力を伝えるショーであり、同時にフレッシュでヒリヒリとした初期衝動を常に五感で感じることができるライブだ。
果たして、この日のライブも同じく感受性の根っこを揺さぶられるような感動をオーディエンス全員が体感することになった。

TOKYO DOME CITY HALLのフロアは言わずもがなぎっしり。ライブ開始の時間が伝わるにつれ、あちらこちらからメンバーを呼ぶ歓声や拍手が巻き起こり、実に楽しげな空気が生まれていた。ステージのバックにアルバムのアートワークが掲げられると同時にザ・クロマニヨンズの面々が登場。

甲本の開会宣言「オーライ! ロックンロール!」と共にアルバム1曲目「あいのロックンロール」でライブがスタートした。この曲は2ビートが最高に身体を揺らせてくれるパンクチューンで、サビの<あい あい あい あい あい あい あい あい >でフロアは一斉にシンガロング。TOKYO DOME CITY HALLはアリーナから第3バルコニーまでコロシアムのような構造をしているのだが、もう1曲目から最上段まで大盛況! ぴょんぴょん飛び跳ねるオーディエンスの熱気は終演まで続くことになった。
「ありがとう! よう来てくれた!」という言葉に始まるMCを挟んで、A面6曲目の「恋のOKサイン」ではリリックに合わせて会場のミラーボールが煌めき、TOKYO DOME CITY HALLは色気を感じるダンスホールに。

7曲目からは、一旦アルバムのセットリストから離れて過去の楽曲コーナー第1弾へ移行。ステージへ押し寄せる怒涛のフロアに対して、甲本も「すごく楽しそうでいいな! こっちだって楽しいぞ!」と笑いかける。そんなバンドの姿に対してメンバーを呼ぶ声が止まらない。

ふと下手を見ると小林勝(Ba)が軽々とベースを回しながら完璧なフレーズを奏でている。気づくと活き活きと演奏を続けるザ・クロマニヨンズの姿をただ無心に見つめてしまう。何千人も入るTOKYO DOME CITY HALLなのに、まるで数百人が熱狂するライブハウスの空気感を味わっているようだ。このドキドキさせられる高揚感はザ・クロマニヨンズのライブでしか体験できないものだと思う。特に私の周囲では「勝治ーー!」とドラムの桐田勝治を呼ぶ黄色い声が多かったことを忘れないように記しておきたい。

3曲を経て、再び『HEY! WONDER』の世界へカムバック。ほぼノンストップで演奏を進め「不器用」で真島昌利(Gt)がギターを持ち替えた。
そこですかさず甲本が「このB面の5曲目だけ、このギターが登場します。普通はこんなこと喋らん。だけど、後で効いてくるんよ」と笑顔でのMC。その後も「さり気ない。上手なメンバー紹介」を踏まえた歓談が続き、先ほどまで沸々としていたフロアが一気に笑顔に包まれた。

アルバム最後の曲の前に、「クロマニヨンズはもっとやりたいぞ!」という掛け声が投げかけられ過去の楽曲コーナー第2弾へ。
そこで披露された楽曲は初期のファンも絶叫するほどのナンバーばかり。本編ラスト前には「ナンバーワン野郎!」が演奏され、全員でシンガロングして会場は一体に。
B面最後の曲「男の愛は火薬だぜ ~『東京火薬野郎』主題歌~」に向かう前、メンバーを呼ぶ怒号が飛び交う下で、甲本は「今回のアルバムもええのができた。オレらだからできた。今日のライブはみんなだからよかった。ありがとう!」と挨拶し、最後の曲へ向かった。
本編終了後、鳴り止まぬ拍手に対して、アンコール曲はアルバム1曲目であり27枚目のシングル「あいのロックンロール」のカップリング曲「SEX AND DRUGS AND ROCK’N’ROLL」など3曲。ラストにはバックに掲げたフラッグや壁を取っ払い、ステージ裏まで可視化できる状態での演奏となり、その奥行きや特別感をあってスケールの大きさに食らってしまった。

終演後の帰り道、夢が醒めないような浮遊感を抱きながら水道橋駅へフラフラ歩いていたのは私だけではないだろう。芸術などを前にしたとき<考えるな、感じろ>といったことが言われることがあるが、まさしくザ・クロマニヨンズのライブはロックンロールを感じるために存在するものであり、そこにウンチクや知識などは必要なのである。年齢性別はもちろん、普段はHIPHOPなどのクラブミュージックしか聴いたことがないというユース世代も必ずバッチリ食らうはず。
ロックやHIPHOPはカウンターカルチャーであり、その純度が深いほどにリアリティがあって攻撃力が高い。ザ・クロマニヨンズのライブはメンバーの世代関係なく常に新鮮で純真だと感じる。その色はユースの初期衝動が起こす表現に近いのかもしれない。そんなライブにいつも心が突き動かされる。そして、ファンになったら、その感動をいつ観ても味わうことができる。
ザ・クロマニヨンズの音楽とライブからは常に衝撃がもらえるし、いつも初めて彼らのライブを観たときと同じようにフレッシュな気持ちで向き合うことができるのだ。

INFORMATION

ザ・クロマニヨンズ ライブDVD 『HEY! WONDER』

ライブDVD『ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024』
発売日:9月25日(水)

2024年2月に発売されたアルバム「HEY! WONDER」を携えての全国ツアー(全43公演)から、今年3月25日の神奈川県 CLUB CITTA’公演を完全収録!
今作DVDの監督は、ザ・クロマニヨンズのアートワークを担当する菅谷晋一氏が担当し、全編16mmフィルムで収録したこだわり抜いた映像作品。
初回限定盤は特製リストバンド&特製缶バッジ2個、そして映像商品には初となる28Pの写真集付。