Interview:Aile The Shota自身のリアルから導き出したポップとの向き合い方1st Album『REAL POP』Release

Aile The Shotaが1stアルバム『REAL POP』を11月20日にリリースする。2022年のデビュー以来、自身名義の作品はもちろん、SKY-HINovel Core作品への客演、さらにはMANATO(BE:FIRST)SOTA(BE:FIRST)とのユニット・ShowMinorSavageとして作品を発表するなど、その才能を各所で発揮してきたAile The Shota。待望の1stアルバムに、彼が込めた思いとは。SNSを中心に話題を集めた「踊りませんか?」、そして同じ布陣で作られた先行配信曲「さよならシティライト」を中心に、現在の彼のモードを覗いてみる。

──アルバムについて伺う前に、7月にリリースされた「踊りませんか?」について聞かせてください。この曲をリリースした際、この曲を作るにあたり「『J-POP』と向き合いました」とSNSに書かれていました。それはどういうことだったのでしょうか?

「踊りませんか?」を書いたのは2023年の夏頃だったのですが、その時期僕は、EP4部作の4作目(『Epilogue』)を制作しているタイミングで。そのリード曲を作ろうということで、Chaki Zuluさんと、Husky Studio(Chaki Zuluのプライベートスタジオ)でセッションをしていました。そのとき僕はカルチャー色の強い作品を作っていたので、「リード曲として『J-POPSTAR』(4thEP『Epilogue』収録。SKY-HIをフィーチャリングゲストに招いた)みたいな曲を作りたい」という話をしたら、Chakiさんに「ショウタはポップの人だから、ポップをやりな」とはっきり言われたんです。「上がった先で、いくらでも好きなラッパーをゲストに呼べる状態になればいいじゃん」って。そのとき僕はアンダーグラウンドカルチャーへの矢印に重きを置いていて、深いところに深いところにという感覚だったので、Chakiさんに「上見て!」と言われた感覚でした。し、それがすごく腑に落ちた。「自分はそっちだ」と思って、ポップスを作ろうというセッションで出来たのが「踊りませんか?」です。

──予想外なところからのポップス制作だったんですね。

はい。そこで1つポップスに対する壁がなくなったんですが、作り始めたらもう1つ壁が出てきて。それが歌詞。それまでの僕は、歌詞では自分のことしか書かないと決めていたんです。

──決めていたんですね。

はい。というか、その状態が自分で腑に落ちていたし、自分のことじゃないとなんかしっくりこなかった。だから「踊りませんか?」を作り始めたときも、最初は「自分のことしか書けないっすね」と言っていたんですが、Chakiさんと「いや、でもこっちのほうがいいよ」という議論を重ねて。話をしていくうちに、ポップスを作るということに対して割り切れるようになった。その結果、“クロエの香り”という嗅いだことない匂いを歌詞に入れるっていう(笑)。

──知らない香りだったんですね。

はい(笑)。歌詞を書いていて「○○の香りにしたいね」という話になって、Chakiさんがトラックを映し出すようなモニタに「香水 ランキング」の検索結果を映し出して(笑)。そこからメロディのハマりでどれがいいかと考えていきました。曲が出来上がったあと、せめてクロエの香りを嗅ぎに行こうと思ったんですけど、結局行けていなくて。今は、もうこのまま知らないままのほうが面白いかなと思っています(笑)。

──現在もまだ、クロエの香りを知らないんですね。

はい、知らないです。最初はそういうフィクションを書くことに抵抗があったんです。というか、誰でも書けるフィクションは作りたくなかった。でも、「踊りませんか?」でAile The Shotaが歌う必要のあるフィクション、僕じゃないと書けないフィクションを見つけられた。でもやっぱり、そのときに出したいEPには合わなかったから、「踊りませんか?」は入れなくて。その後、EP『omen』まで出して、自分が通ってきたカルチャーを突き詰めてすべてに折り合いがついたので、新しいフェーズになる……というか、ここからようやく第1章が始められるんだろうなという思いを込めて「踊りませんか?」をリリースしました。

──そうだったんですね。てっきり、それこそ5枚のEPを出して、「次はJ-POPをやろう」という意志のもと作り始めたのかと思いました。

いや、導きですね。この曲に関しては全てが導きだったんですよ。作ったときは「日本中を踊らせる」というコンセプトも定まっていなかったんですが、当時から「踊りませんか?」という曲名で。今年のワンマンツアーについて考えていたときに「今、ツアーで何がやりたい?」って考えたときに「『踊りませんか?』って言いたい」「じゃあダンサーオーディションをやろう」という話になったときに「え、俺、『踊りませんか?』っていう曲がある!」って。本当に曲に導かれていきました。

──では当時は予想外にJ-POPを作ることになったと思うのですが、具体的にはどうJ-POPと向き合っていったのでしょうか?

僕の中で“メロディと向き合うことがポップスを作ること”という一つの定義があって。J-POPを作る上で、いいメロディを探求する作業が一番大切だと思ったので、まずはそこから始めました。もともと美メロ、良いメロディというのは僕のルーツでもあるんですが、今回はとにかくそこと向き合いました。今までは、トラックができてから、そこに直感で良いメロディを乗せるという感じだったんですが、今回はもっと深くて。Chakiさんが鍵盤でコードを弾いて「このコードに行くために、この音を使ってほしい」ということを一つ一つ言ってくださって。そこからメロディを考えていくという作業をひたすら繰り返していきました。

──使う音の指定があったということ以外に、良いメロディを生み出すためにやったことはありますか? 例えば特定のアーティストの曲を聴いたとか。

いや、メロディに関しては自分の引き出しです。というのも、僕はずっと良いメロディの曲が好きだったから。「AKBのこの曲のBメロ、マジでヤバい!」「嵐の曲のメロディ、ヤバすぎる!」とか言うタイプの人だったので(笑)、良いメロディに対するセンサーは昔からあったんですよ。特に平成の美メロが好きで、最近だと「イコラブ(=LOVE)、いい曲多いな」とかよく思っています。

──ではご自身の中で、メロディが特に好きだなと思っていたルーツのアーティストというと、AKB48?

もともとのルーツはKAT-TUNなんですが、メロディで言うと嵐かも。あとはNEWSとか、「Sexy Zone(現timelesz)のカップリングがいい!」と思っていました。そのあと、AKB48と出会って、そこから日本の音楽チャートの上位の曲をいろいろ聴くようになりました。わかりやすく言うと、当時流行っていた曲が全部いい曲だったんですよね。コブクロ、いきものがかり、Aqua Timez……。そのセンサーが、今も自分の曲を作る元になっています。

──今まではご自身の通ってきたカルチャーを辿るように、アンダーグラウンドカルチャーにこだわった楽曲や作品を生み出してきましたが、それを経て、今やりたいことが見つかったという感覚なのでしょうか?

そうですね。本当にChakiさんが、自分の中にあった引き出しの出し方を教えてくれた感覚で。「J-POPってここだったんだ!」って。日髙さんにも「J-POPの真ん中にいくには、あとは『踊りませんか?』を量産するだけだね」と言われました。それと、この間日髙さんとサウナに入ってポップについて語る夜があって。そこで日高さんSKY-HIさんに「ポップには“わかりやすくするという作業が生まれてくるから、下げる作業だと思われがちなんだけど本当は違う。ポップは一番上にあって、一番難しいのもポップだし、一番変態なのもポップだ」と言われて納得しました。

──そうやってポップ、ポップスと向き合った日々を経て、再びChaki Zuluさんとタッグを組んでできたのが「さよならシティライト」というわけですね。

はい。僕の中では「踊りませんか?」を作ったことが特別な経験だったので、アルバムを作ることが決まった時点で、Chakiさんともう一曲作りたいと思った。また一緒にスタジオに入って、「踊れる感じにしたいよね」という話から、トレンディな音像が出来上がっていって。トラックが出来上がっていくのと同時に歌詞も考えていたんですが、僕のメモの中に「酔ったときだけ電話しないで」みたいなフレーズがあって。それを見て「酔ったときだけ電話してくるやつの曲書きたいかも」と思いついて、歌詞も出来上がっていきました。

──いますよね、酔ったときだけ電話してくる人。

はい。僕は電話しそうになった男なんですけど(笑)。

──それで「酔ったときだけ電話しないで」というメモを残しているの、罪な男ですね(笑)。

あはは(笑)。僕も自分で怖いなと思いました(笑)。

──でも歌詞は女性目線です。先ほど自分のことではないものを歌詞にするのがJ-POPだとおっしゃっていましたが、実際にフィクションを書いていくというのは難しかったですか?

うーん……ただ「物語を書く」といっても、僕が状況を想像できるものではあるんですよね。つまり僕がその経験をしているとか、近しい感覚があるとかじゃないと書けないので。例えば“お揃いの指輪”だったら、指輪じゃなくても僕が過去に何かお揃いにしたことがあったりとか、“煙草の匂い”だったら、タバコじゃなくても何かの匂いが残っているという経験があったり。自分を主人公に置き換えて作っているんです。だからフィクションだけど、フィクションじゃない感覚というか。歌詞もChakiさんとポジティブな議論をしながら作っていくので、すごく楽しいんですよ。次はChakiさんとどんな曲を作ろうかなって思っちゃいます。

──歌声も今までとは違う雰囲気を感じましたが、ボーカル面で意識したことはどのようなことだったのでしょうか?

“ボーカリストという自覚”かもしれない。つまり歌心。僕はこれまでオートチューンを使って歌唱することが多かったんですが、オートチューンだったら隠れてしまう歌心が、ポップスには必要なんじゃないかなと思って、この曲はオートチューンなしで歌っています。オートチューンと向き合うのもすごく好きだから、これからも使っていきたいんですけど、今回のアルバムでは使っていない曲や、使っていても薄くかけているだけの曲がすごく多いです。

──Aile The Shotaさんは、J-POPには歌心が必要だと思っていると。

そうです。感情を見せることが必要だと思う。この間、back numberさんの曲を聴いていて「声がめちゃくちゃ“心”だ」と思ったんです。僕の敬愛するDREAMS COME TRUEとかもそうですけど。だから「さよならシティライト」に限らず、今回のアルバムではちゃんと歌っています。……いや、今までもちゃんと歌っているんですけど。めっちゃ意識しているつもりだったんですけど、オートチューンをかけて歌うことによって、感情よりも正確さや美しく奏でることに意識が向いてしまっていて。

──それもそれで音楽を作る楽しさですもんね。

そうなんです。でも今は、歌心を意識するモードなので、ちゃんとボイトレも行きたいなと思って、ひさしぶりにりょんりょんのところに行ったり。あとはBE:FIRSTが歌がめちゃくちゃ良くなっていくので、BE:FIRSTを見ると「俺も歌頑張ろう」って思うんですよ。ShowMinorSavageの3人でいるときも感じますし。

──お話を伺っていると、楽曲制作に対しても、歌に対しても、これまでとは全然違うアーティストになっているんじゃないかと思うくらい、何か明確なものを掴んだんだなと感じます。

“リアル”“リアルポップ”というものを見つけられたというのが大きいと思います。デビューしてから1stアルバムを出すまで3年間、自分は何に向き合い続けていたのかを考えていたんです。例えば「THE FIRST」という出自をあえて出さない動きをしたり、この3年間はとにかく音楽を前に出す活動をしてきた。それはどうしてだったかを考えたときに、僕はリアルであること、自分がリアルであるということを証明したいと思っていたんだということに気付きました。自分に媚びない、嘘をつかない音楽を作り続けてきた。それは自分がリアルであることを証明するための序章だったんだ、自分はリアルでいたいんだって。自分が頑なに執着していたものは“リアル”ということだったんだと気付いたんです。

──だからアルバムのタイトルが「REAL POP」なんですね。

はい。やっていることは1st EPから何も変わらないし、マインドも変わっていないんですけど、自分の中で、しっかりとポップスとそうじゃないものがはっきり分けられているんですよね。例えば「Pandora」とかは“大衆へ”という意識はない。だけどそういう曲も好きだし、大事にしたい。そのどちらも自分の中で積み上げたうえで、ポップスをやっているからこそ、「Aile The Shotaはポップスです」と言えるようになっている。そして“自分はリアルでいたいんだ”と気付いた今の僕がやるポップスだから、「REAL POP」なんです。

──そんな『REAL POP』はどんなアルバムになったと思いますか?

しっかり胸を張って『Aile The Shotaはこういう音楽をやっているんです』と言ってお渡ししたい、名刺のようなアルバム。“J-POPアーティスト・Aile The Shotaの1作目のアルバム”です。もちろん曲ごとにメッセージはありますが、好きに受け取ってもらえたらと思います。好き勝手に受け取った上で、聴いた人の人生に何か影響があればうれしいです。

──今のAile The Shotaさんは、やりたかったことが見つかった感じがしますね。「自分はこれがやりたかったんだ!」というところにたどり着いたというか。

そうですね。だからAile The Shotaの未来像が見えやすくなって、この先が描きやすくなりました。「これをやって、ここに行けばいいんだ」って。

──その、今見えている未来像や目標、もしよければ聞かせてください。

目標というか、“こうなってくれないと困る”というのは、メガヒット曲を生み出すこと。大衆に求められる曲、みんなが『めっちゃいい曲だね』って言うような、クラシカルなJ-POPを生み出すことが一番の目標かな。自分が売れる、つまりJ-POPシーンにこの鳴りが響くことがすごく大事だと思うんです。それはきっと音楽シーンを変えるきっかけになる。だから売れたいです。

──最後に、『REAL POP』の制作中もしくは現在、気になっているカルチャーや、最近感銘を受けたエンタメがあれば教えてください。

ちょうど先日、友達とそういう話をしていたんですよ。友達に詩を研究している子がいて、その子と話していたので、今ちょっと文学に興味があります。僕は普段まったく本を読まないんです。歌詞もマンガとアニメからの影響で書いているので。しかも全部少年マンガ(笑)。でも考えることは超好きなので、考えるカルチャーに触れたいなって。

──小説や哲学書などは、ショウタさんの思考回路に合いそうですね。

今、枕元に「世界でいちばん透きとおった物語」(著:杉井光)という小説があるんです。ちょっとだけ読んでそのままになったまま時間が経ってしまったので、また始めから読み直さないといけないんですが……。でもこの小説を買うためにひさしぶりに本屋に行くというアクションも起こしたので、ちゃんと読み終えたいです。

──今後、文学からの影響も楽曲に出てくるかもしれないですね。

思考がブレないように気を付けないと(笑)。

INFORMATION

Aile The Shota『REAL POP』

発売日:2024年11月20日(水)
【数量限定盤】CD + Blu-ray (2DISC) ※販売終了
BMSG OFFICIAL WEB SHOP限定商品
価格:¥11,1500(税込み)
品番:BMSG-0017
仕様:BOX + デジパック
特典:直筆サイン入りカード + フォトブック(全68ページ)

【通常盤】CD Only
価格:¥3,223(税込み)
品番:BMSG-0018
仕様:紙ジャケ

収録曲
01. 踊りませんか? (Prod. Chaki Zulu)
02. Eternity (Prod. Taka Perry)
03. sweet
04. さよならシティライト (Prod. Chaki Zulu)
05. Foolish (Prod. Taka Perry)
06. Yumeiro (Prod. Shin Sakiura)
07. FANCITY feat. Soulflex (Prod. Soulflex)
08. 愛のプラネット feat. dawgss
09. 空を読む
10. Memoria -self cover-
(Prod. Aile The Shota, MONJOE, LOAR, Hiromu)
11. NEBULA (Prod. VLOT)

公式サイト:https://ailetheshota.tokyo/
X:https://x.com/Lethe_Shota
Instagram:https://www.instagram.com/lethe_shota/