ニューアルバム『WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.』愛も、憎しみも超えた 僕らの未来を示す極上ハードコア。スペシャにてリリース記念番組の放映も

12年ぶり2作目となる今作、EGO-WRAPPIN’の中納良恵やカヒミ・カリィ、小西康陽などの参加アーティストにも目を惹かれる。とことんまでハードコアな作品の誕生はもはや事件。今作について、今里氏の言葉に耳を傾けたい。

時間みたいなものが
ずっとあると思ってたんですけど、
時間ってそういえば永遠じゃないなと

― アルバムを聴いたとき、今里さんの懐の深さが遂に出てきたなと思いました。

「ははは!(笑)」

― これまでに影響を受けてきた方達との物語というか、アルバム1枚を通じて、1冊の小説のような感じがしました。

「声をかけたのは、誘いたかった人と、ずっと遊び続けている人なんですけど、全員影響を受けた人たちですね」

― 小西康陽さんをナレーションの読み手に選んだ理由はなんだったのですか?

「小西さんのことが大好きで。ラジオもやってらしたし、テレビで司会とかもやってらしたし、あと毎年レコード屋さんのノベルティで小西さんが喋られて、曲をかけるというCDを出されてるんですけど、それも素晴らしくて。当たり前なんですけど実際に会って話されてもあの感じで、とにかく喋り方とトーンが凄く好きなんです」

― ナレーションの言葉は今里さんが考えたんですよね?

「はい。最初に小西さんにお願いをしに行ったら、「全然大丈夫ですよ」と。あんなに簡単にオッケーしてくださるとは思わなかったので、もう一度お願いをしに行ったくらいなんです。でもそこから俺が1年くらい遅刻したんですよ。文章に手を加えていたら止めどきが分からなくなってしまって。「一部分だけ、ちょっと煮詰まっております」と正直に伝えたんです。最終的に仕上げて、でも小西さんが使わないような文章とか単語もあったんですけど、それもオッケーだったんです。収録当日は20分ぐらいで撮り終えたんですけど、完璧でした。流石だなって言う」

― 1曲目は『CHANGE THE MOOD』ですね。

「『ROCKERS』っていう映画の中で好きなシーンがあって。ディスコに行って自分たちの曲を、DJブースにカチ込んでこのレコードをかけろっていうシーンがあるんですけど、その時に「CHANGE THE MOOD!」って言うんです。曲名はそこから取ったんですけど、たいてい僕たちのライヴの時に1曲目にやっていて、周りの友達が好きになってくれた曲ですね。昔7インチで出したんですけど、そのときもナレーションを入れました」

― BUSHMINDとDJ HIGHSCHOOLのビートがまた良い感じです。

「BUSHMINDには、アルバム制作の初期の段階から構成とか相談していたんです。彼の作るビートは、すごく確立されているから、BUSHMINDだって前情報がなくても分かる。6曲ビートをくれて、その中から2曲選びました。DJ HIGHSCHOOLは、dREADEYEっていうバンドのヴォーカルをやっています。彼には「君のビートが買いたいんだけど」っていきなり電話したんです。単純にその言葉を俺が言いたかったって言う(笑)。ビートも作れるし、語学も堪能だし、ジョークも面白いし、本当に多才なんです」

― 『IT WAS A WAR EVERYWHERE』ですが、ガツンときました。

「昔、LESS THAN TVが出したバレンタインのコンピに参加したことがあって、その時は違うタイトルで、副題が「IT WAS A WAR EVERYWHERE」だったんです。90年代頭から、90年代半ばに下北沢で自分たちの身の回りに起こっていた出来事についての曲です」

― アルバム後半からヴォーカルが入ってきますが、カヒミ・カリィさんがカバーしたビリー・ジョエルの『YOU MAY BE RIGHT』では、NYへレコーディングに行ったとか。

「すげー語りたいっす、これ(笑)。先ず『YOU MAYBE RIGHT』があって。この曲をボストンのパンクロックバンドThe Bruisersが『lunatic』って曲名でカバーしてるんですよ。それで今回アルバムを作ろうってなったときに、カヒミさんに歌ってもらいたいなと。カヒミさんには以前、Hawkwindってバンドと、Nancy Sinatraのカバーをやって頂いたことがあり、今回はBruisersのカバーをやりたいと思っていたんです。ビリー・ジョエルもニューヨークじゃないですか。歌詞にも“Bedford Stuy”って出てくるし、今カヒミさんもNYに住んでるから共通点があるなって」

― それでNYでレコーディングをしたんですね。

「それで昨年の3月に弾丸でニューヨークへ行ったんです。着いた次の日の午前中からレコーディングだったんですけど、チボ・マットの本田ゆかさんの家のクローゼットにマイクスタンドを立てて録りました。ゆかさんの家にバターカップってかわいい犬がいて、凄くデカイ窓があって、家でゆかさんはコンピューターが置いてあるテーブルに居て、大好きなカヒミ・カリィがクローゼットの中でBruisersの曲を歌っていて、俺はひたすらバターカップを撫でて、夕方になって遠くで子供が噪ぐ声とか、パパーッてクラクションとか聴こえて。その状況に「俺、何やってんだろ」ってちょっと分かんなくなってしまって。だって、厳密に言ったら俺は犬を撫でてるだけじゃないですか( 笑)」

― 最高に贅沢じゃないですか?

「いやもう最高っすね。一生分の運があるとしたら、あの日に使い果たしたんじゃないかと思います」

INTERVIEWの続きは、本誌7月号[VISIONS]をご覧ください。

[VISIONS]
1.VISIONS:菅田将暉
2.VISIONS:小袋成彬

なお、アルバムリリースを記念した特別番組「CHANGE THE MOOD – STRUGGLE FOR PRIDE」が6/26(火)にスペースシャワーTVにてオンエアが決定。今里氏の過去と現在、彼を取り巻く環境にフォーカスした貴重な映像コンテンツとなっている。
この番組は、6月28日よりDAXでのストリーミング配信も予定しているので、併せてチェックして頂きたい。

「CHANGE THE MOOD – STRUGGLE FOR PRIDE」
<放送日>
6月26日(火)25:00-25:30
<配信日>
6月28日(木)
SPACE SHOWER TV 「DAX」にて
 http://www.dax.tv 

INFORMATION

『WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.』

発売中
http://spaceshowermusic.com/release/20760833/