2016年7月からスタートした、BEAMSとスペースシャワーによる音楽と映像の実験プログラム、PLAN B。現在発売中のEYESCREAM 7月号では、今年3月からの総集編として、Aya Gloomy、King Gnu、DATS、それぞれの「B面」を探ったインタビューを一挙掲載中! スペシャルダイジェストとして、東京のユースを象徴する彼らのクリエイティブの源を、WEBでも特別にお届けする。
“DATS”はいかに表現されたか
【3月:DATS × UMA】
ー今回は弱冠20歳の映像作家・UMAとの共作となりました。このきっかけを教えてください。
MONJOE(Vo. Synth.) 「彼とはDATSのライブを撮影してもらって、その打ち上げでたくさん話して。バイブスが合って、急接近しました。その打ち上げの時に「俺めちゃくちゃアイデアあるんですよ。でもアウトプットする場所がないんすよ」って熱弁された(笑)。彼はまだネットに情報もないし、実際にキャリアを重ねていないからこそ、DATSと一緒にものを作れるのは面白いんじゃないかな、俺らにとってはそれも一つのパンチになるんじゃないかなって思ったんです」
早川知輝(Gt.) 「今回の話を頂いた時、すぐに「UMAでいいんじゃない?」って話になったよね」
大井一彌(Dr.) 「UMAとは対等な立場で話せるのが良かった。MVを作る時でも何でも、バンドとそのクリエーターはあくまで対等な関係でありたいんです。嫌なものは嫌と言って、こなしてほしいところはバッチリこなしてほしいっていう」
ー映像作品という意味では、UMAさんのデビュー作でもあったわけですね。
MONJOE 「はい。ただ、彼は経験が浅いので、僕らも企画案や構成を考えなきゃいけなかったんですが、それが僕らにとっては良いきっかけでした。「構成は映像監督が考えることだ」って思っていたけど、バンドをどう見せるかは俺たちも考えておかないと、この先ひょんなことでつまずくかもしれない。彼とやったことで、DIYでレベルの高いアウトプットができることがDATSの強みなんだってことに気付かされましたね。
ー中でも三原山の大自然の中で撮影した回は、MVと言って差し支えないクオリティでしたね。
大井 「4回の中で一番気に入ってますね。DATSにしかできない4回を作る上で、まずは自然と絡む、自然の中にDATSが溶け込むということを表す1回として、あの回はすごく効いてると思います」
ーフィールドレコーディングで収録した音でトラックを書き下ろすというトライもあった。
MONJOE 「はい。僕がトラックを作る時は、例えばサウンドライブラリの中にある心地のいい音とか、きれいに整頓された音とか、何もかもが最適化された音の中から自分がいいと思う音を選んでいます。だから今回のように本当に「生の、自然という生きものを録って作る」ことはすごく新鮮な経験でした。今後の音作りにも生きてくるんじゃないかな」
伊原卓哉(Ba.) 「大自然の中にマイク立てて、それをサラウンドで録った環境音が活きるトラックが出来たらすごく面白そうだよね。ミクロじゃなくってマクロで自然を体感できる仕組みというか。ちょうど先日のWWWのツアーファイナルでも、サラウンド音響システムで演奏したりしたし」
大井 「あの回で表現したのは、DATSが大事にしている「自然」という要素。BEAMSの店舗で撮影した回では、これも僕らにとって重要な「ファッション」という側面を出すことができた。各回いろんな側面から、DATSが見せていきたい姿を表現できたなって思います」
ー6月にはメジャーデビューを控えていますね。
MONJOE 「色んな場所で言われるように、今はメジャーとインディーズの差はあまりない。結局、バンドがメジャーな存在になれるかどうかは、作品が評価されることが全て。そう思ってるから、気分やテンションが変わっているわけではないです。ただ、僕はいちアーティストとして、気分の移り変わりが結構激しくて」
ーどういうこと?
MONJOE 「『Degital Analog Translation System』が出来て3ヶ月くらい経っていて、今はもう次の作品について考えてる。という段階で、この作品のプロモーション時期だから、色んな媒体で語らなきゃいけないんですね。このスピード感に、周りがついてこれるように俺らは常にもっと速く進んでいかなきゃいけないとは思っています」
大井 「DATSって、様々なものを代謝し続けて前に進んでいくタイプのバンド。語弊が無いようにしたいのですが、実は一つ一つの楽曲のアウトプットに対して、僕らはそんなに重みを感じていません。だからこそ、軽々とそれを飛び越えていくようなクリエイティブが合ってるし、僕らもその時その時で面白いと思ったことをそのタイミングで出せるかっていうことしか考えてない。メジャーでも精神は変わらないんですけれど、メジャーになったから会社が大きくなっていろんな話が進むのが遅くなる、みたいなことは考えられますよね。でも俺たちは、それすらも崩していかなくちゃいけない。メジャーでもこれが俺らだ、という気持ちは絶対忘れずにいたいなって思います」
next》 【4月:Aya Gloomy × Monika Mogi】
“2010年代の日本人アーティスト”として
【4月:Aya Gloomy × Monika Mogi】
ー約1年ぶりのリリースになりましたね。
「1年くらい前からずっと制作してきて、始めた時から「1年後には出そう」って思っていました。前は英語で歌詞を書いていましたが、今回は日本語の歌詞で作ったところが大きな違いかな」
ー何かきっかけが?
「今は日本語のほうが海外の反応が得られると思ったから、というのもあるけど、実は今まで日本の音楽を知らない食わず嫌いで、全然視野に入れていなかったんです。ちょっとアンチっていうか。それが、北野武さんの映画を観て一気に変わりました。もちろん映像もカッコイイけど、久石譲さんの音楽がとにかく美しかったんです。自分が知らないだけで、日本にも素晴らしいアーティストが沢山いるんだと気付かされました。そこから『AKIRA』とか『攻殻機動隊』みたいな、海外で受け入れられている日本のアニメを観るようになって、映像の中で使われているトライバルな音楽も好きになりました」
ー主に80年代の映画やアニメから、日本の音楽を好きになった。
「そうですね。あとは細野晴臣さんがプロデュースしたアイドルとかをYouTubeの関連動画で掘りまくったりしていたら、その年代の音楽がすごく好きになっていました。今の私の音楽はこの世代に影響を受けていると思います。今って、90年代の渋谷系みたいなわかりやすいシーンやブームみたいなものがない。だからこそ、2010年代に私が「海外から見た日本の良い音楽」をやりたいなって思って。こういうアプローチでやっている人はいないし、チャンスだと思っています」
ー歌詞も含めて、どちらかというとダークな世界ですよね。どういう時に曲を作っているんでしょうか。
「よく言われます(笑)。特に歌詞は何か嫌なことがあってテンションが落ちた時に、そのパワーを使って作ります。そういう時のほうがやろうと思うし、実際アイデアも出るから。歌詞をあてていない曲のストックと組み合わて、一気に作ります」
ー今回のPLAN Bでも、80年代のトーンを意識したということでした。自分が生まれていない時代のカルチャーと、今の自分の何がリンクしたと思いますか?
「うーん・・・戸川純さんかな(笑)。私はファッションと音楽が融合している人が大好きなんですけど海外のアーティストばかり見ていて、日本のアーティストでそういう方がいるのを知らなかったんです。戸川純さんはそのバランスも含めて本当にカッコいいなって。あのクレイジーなキャラクターも―もちろん作っているんだろうけど―確立されているし。戸川純さんみたいな人がたくさん出てくれば、シーンがもっと面白くなるのになぁって思います」
ー今回のPLAN Bが、Ayaさんにとって初の映像作品となりました。制作を振り返ってみて、どんな収穫がありましたか?
「4本通して一貫したテーマを作ったのがよかったと思います。今回は「宇宙」というテーマだったんですが、テーマがあることでみんなが同じ方向を向くことができるし、自分自身をどう見せるかを考えるきっかけにもなった。これからも、何か作品を作る時には明確なテーマを決めて臨もうって思います。あと、単純に私はビジュアル表現が好きなのに、今まで映像作品を持っていなかったので、PLAN Bでようやくそれが作れたことが嬉しいですね」
ー最後に、アーティストとしての目指す先を教えてください。
「うーん、やっぱり超ビッグスターになりたい(笑)私は服(古着のポップアップショップ『POMPOM SHOP』を定期的に開いている)もやっているけど、一番にあるのは音楽だし、そうあることが夢だったから。でも本当に、世界的な日本人アーティストになりたいですね。映画のサントラとか、作れたら超いいなぁ。ビジュアルだけじゃなく、音楽的に評価されるアーティストになっていきたいと思います」
next》 【5月:King Gnu × PERIMETRON】
井口はタイで強くなれたのか
【5月:King Gnu × PERIMETRON】
ーPLAN Bの話を受けて、まず何を話し合いましたか?
PERIMETRON 佐々木(以下佐々木) 「まずはPERIMETRONのメンバーで話し合いました。最初は何が出来るかも見えていなくて「フェイクドキュメンタリーのテイストを入れよう」ということしか決まってなかった。トラックを横転させて、最後に爆発したようなエフェクトをかけようとか、最初から無茶苦茶な方向でしたね。PLAN Bの他の作品がわりとストレートに作られているものが多いので、異なるテイストにしようって言ってたんです」
ーそれで、PERIMETRONからのアイデアをKing Gnuのメンバーに提案した?
PERIMETRON OSRIN(以下O) 「いや、大希(常田大希/Gt.Vo.)がPERIMETRONのメンバーでもあるので、彼を入れたブレストをする感じでした。それで・・・色々と考えた結果、タイに行けば? ってなったんだよね」
ー急に(笑)。
佐々木 「一度、PERIMETRONの作品を作る目的でタイに行って、全く何もせず遊んで帰ってきたことがあったんです。その時に、タイで起こるハプニングってすごく面白いなって思って。で、今回もタイに行けば何か起こるんじゃないかと」
O 「うん。それで・・・なぜか考えるのを止めたんですよね。タイに理(井口理/Vo.Key.)らを連れていけばいい。そのアイデアが出た瞬間、その打ち合わせが終わったんです」
一同 「(笑)」
佐々木 「俺らより、理とかOSRINみたいなやつがいったほうがおもしろい! 行ってきて! って」
O 「絶対行きたくなかっただけのやつですね。僕はもうとにかく不安で、その日に理を呼び出して、何をしたいか聞いたんです。すると「強くなりたい」とか言い出したから、ガストに行って強くなるとはどういうことか、何をすれば強くなれるのかを一緒に考えました」
常田 「あれ、確かタイに行く前日は朝まで花見してたよね」
佐々木 「そう。二日酔いの理を電話で叩き起こして「今からタイ行って!」」
井口 「それでそのままタイです」
O 「だから本編での着てる格好は、全部現地で買った服なんです。僕も理もほとんど荷物を持ってなかった」
井口 「いやぁ、めちゃくちゃイヤでしたね・・・。西岡君が出発の便に間に合うかギリギリだと分かってめちゃくちゃ焦ってる時にOSRINの上顎が開かなくなって、焼きそばが食べれないって泣き出したんですよ。うわぁ、こいつとタイ行くのかーって・・・」
ーKing Gnuから井口さん、PERIMETRONからOSRINさん、西岡さんが渡航したんですね。
PERIMETRON 西岡 「はい。僕はコーディネーター的な仕事をしていました。2人とも、ずっと何かをやらかそうとしてたから逆に(コーディネートする場所は)コンパクトでしたね」
O 「西岡がムエタイを3人で予約した時にはちょっと信じられなかったですけどね。誰が撮るんだよ」
井口 「「俺らは何をしにタイに来たのか」「ここで何をすれば面白いのか」「面白いって何なのか」ってずーーーっと自問自答してました。地獄ですね」
ー映像を作る過程で、King GnuとPERIMETRONとで意見が分かれることはなかった?
常田 「勢喜遊(Drs.Sampler)とOSRINがしょうもないことで揉めてたよね。遊がセッション中にバリカンされる「EXTREME BARIKAN」ってワンコーナーの撮影の時に「OSRINが映りすぎ」とか言って(笑)」
佐々木 「あったね。坊主にしたいって言い出したのは勢喜なのに、いざやってみたらすごい不機嫌になって。あれ、どういうことだったの? (笑)」
勢喜 「なんだろう、いざ坊主にしてみたら一気に・・・」
一同 「?」
勢喜 「・・・自信がなくなった」
一同 「(笑)」
O「お前の自信は髪の毛でできてたんだ」
ーPLAN Bの中で一番アクの強い回ができましたね。
佐々木 「オープニングのジャックする感じとか、アニメーションがあることで、中身のおふざけとのバランスがよくなったかなって思います」
O「編集している側からすると、最後に「BE PUNK」っていう言葉があることで救われた部分はあります。それまでは本当に何なんだこの映像は? って思っていたので、あの言葉で全てOKになるし、上手く締まった」
新井和輝(B_.) 「僕はやっぱりタイ語の字幕が一番面白いなって思いました」
井口 「誰向けやねんっていうね」
勢喜 「っていうか井口は結局タイで強くなれたの?」
井口 「なんていうか、人の気持ちに鈍感になったかな」
O 「あ、そういう方向(笑)」
http://www.beams.co.jp/special/plan_b/201706/
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