The Sound of Taiwan Indie 洪申豪(透明雑誌/VOOID)× 加藤淳也(PARK GALLERY) from EYESCREAM NO.167

現在発売中のEYESCREAM9月号の第一特集は、“—TAIWAN PATROL— 台灣巡廻”。ガイドブックには載っていないローカルな台湾事情にフォーカスしている。
EYESCREAM.jpでは、台湾インディーを象徴するバンドとして日本でも人気を博したバンド透明雑誌洪申豪(Vo,Gt)、そして彼を日本に呼び寄せた人物、加藤淳也によるスペシャルなインタビューをお届け。日本と台湾の架け橋となった2人が見るシーンの現状とは。

ー台湾インディーのバンドシーンや日本との関係などについて、お話を聞いていきたいんですが、まずはお二人の出会いを教えてください。

加藤:もともと、モンキー(洪申豪)が透明雑誌というバンドをやっていたんです。当時は台湾だけで活動してた彼らを日本に呼びたいっていう仲間がいて、僕はその中の一人ですね。音源を聞いててすごいかっこいいと思ったんで、みんなで協力して、お金を出し合ったり、物販作ったりして、透明雑誌のジャパンツアーを組みました。初めて会ったのはその時ですね。

洪申豪:6年前ぐらいになるのかな。

加藤:その頃からだんだん台湾のインディーズバンドと日本のバンドが交流を持ち始めたよね。日本のみんなはびっくりしてたような感じはありましたけど。

洪申豪:私は今36歳なんですけど、台湾で同世代のインディーズ・オルタナ好きは、日本のインディーズも好きな人が多い。バンドマンの中では、ナンバーガール、フィッシュマンズ、サニーデイ・サービスが人気でみんな影響を受けてる。だから日本の人は、海外のこんな近いところにも同じ感覚を持ったバンドが存在することが意外だったんだと思う。

加藤:好きな音楽は一緒なのに、言葉が違う。まして、英語じゃないっていう新鮮さがあって、いち早くキャッチした子たちはすごい熱狂的に透明雑誌を好きになってくれた気がする。あと、単純にかっこよかったからね(笑)

加藤淳也

クリエイティブ・ユニットPARK INC.代表。クリエイティビティと地域をつなげる仕事に積極的に携わる。東京・末広町にてアートスペースPARK GALLERYも運営。

ー台湾では、音楽をやってない人の間でも日本の音楽はポピュラーなんですか?

洪申豪:メジャーなアーティストは台湾の人もめっちゃ好き。小学校の時は、小室哲也、ドリカム、モーニング娘とか。今も若い人にはAKBとかジャニーズとか人気ですね。でも、音楽好きは、もっとアンダーグラウンドなシンガーをディグしてた。ゆらゆら帝国とか。

加藤:リンクするんだろうね。だから、センスが似てる日本の若い子たちは台湾にみんなよく遊びにきてるんだと思う。でも、台湾に住んでて、そういうレコードはどこでゲットするの?

洪申豪: 難しいよ。日本のレコードは、あるけど、少ない。日本に旅行に行く人は、DISC UNIONで中古で買ったり。情報は雑誌からで、『relx』が大好きだった。『スタジオヴォイス』も、音楽関係のイシューは読んでたな。

加藤:それは詳しくなるね。いい雑誌だしね。

洪申豪:でも、台湾の若い人たちはみんな日本の音楽をYOUTUBE で聴いてるかな。

加藤:6年経ってもそれはあまり変わってない?

洪申豪:今は多分iTunesとかspotify。日本で人気のバンド、例えばネバヤンとかならツアーで台湾来た時にアルバム買う感じかな?

加藤:逆に台湾のミュージシャンのCDは、透明雑誌のリリース以降、買いやすくなってると思う。台湾のバンドが日本に来る機会が増えてるかも。

洪申豪:6年前だと良いバンドは限られてた。今は新しいバンドのピークかな。25歳くらいの若い子たちがどんどん出てきてる。

加藤:透明雑誌聞きにきてた子とか、そんな感じ?

洪申豪: でもテイストが全然違う。私は、パンクとかハードコア、スケボーとかがメインのルーツ。でも今のバンドの子たちが一番影響を受けるのは、ネット。だから、パンクロックとかの要素は薄い。ほとんどない(笑)基本はチル。チルな音楽。

加藤:ライブハウスに足を運ぶより、ネットで聞いてみて憧れてやってる人たちが多いかもね。しかし、モンキー男らしくなったよね。

洪申豪:もう36だし、結婚したから(笑)

加藤:最近はどんな生活してるの?

洪申豪: 今はとりあえずスローダウンな感じ。新しいバンドのVOOIDと透明雑誌は全然違う。今のメンバーはみんな超若い。だから基本はチル。どんどんパンクの要素は取り除いて、ツアーとかライブもスローダウンな感じ。とりあえず、いい曲を作りたい。忙しいのは今は違う。ゆっくりの方がいい。

洪申豪

台湾を中心に活動するバンド透明雑誌およびVOOIDのフロントマン。ソロ名義のアルバムも日本リリースしている。台湾と日本のインディーシーンを繋ぐカリスマ的存在。

加藤:生活があって、ライフスタイルがあって。リズムとメロディーがちょうどよく合わさっていくようなね。大きい声で叫ばなくても、聞かせられるようになったんだ? 今はどのくらいのペースでライブをやってるの?

洪申豪:中国と香港でちょっと長い2週間くらいのツアーをやって、それが終わったら、とりあえず今年は予定ないかな。ライブは2〜3本くらい、でもツアーは全然ない。夏から来年の春まではずっと曲作り。多分来年の夏は、ツアーをやると思う。

加藤:同じペースで音楽をやってる仲間は周りにはいるの?いい曲を作って自分たちのペースで活動しようよっていう。考え方は似てる?

洪申豪:若い子はもうちょっとペース早い。でも、確かに今の台湾は、大きな音を出すバンドはなくなっちゃった。とりあえずメタルバンドは今超人気ない。いいバンドはあるけど、出るのはちっちゃなライブハウスとかかな。

加藤:結構少なかったよね。ライブハウスは増えた?

洪申豪:増えてない。今はみんなフェスが好きだから。場所がなくても大丈夫なのかも。今の日本の若いバンドでフェスのヘッドライナーは誰?

加藤:ネバヤンとかサチモスとかかな〜?

洪申豪:D.A.N は?

加藤:あーD.A.N いいね。日本も台湾もチルだね。

洪申豪:世界中がチルってきてるね(笑)ファッションも同じじゃない?今はリラックス、リラックスって。

加藤:そうそう。割と自由っていうか。好きに楽しんでいいよって言われてる感じはある。下手でもいいし、ダサくてもOK。やりたいことやってる奴が一番かっこいいい。

洪申豪:台湾はみんなそういう感じ。

加藤:台湾の友達はみんなイケてるよ(笑)英語ができるからカルチャーに対してもグローバルで、服も音楽も自由に楽しんでる感じがする。かっこいい。日本の方が窮屈に感じてる。僕が疲れてるだけかもしれないけど。

洪申豪:精神的に疲れた?

加藤:日本は多分、地震で疲れてる。政治もよくない。

洪申豪:今の日本の音楽はどういう感じ?

加藤:今の日本の感じか、僕の主観だけで言うと、やっぱり70’Sとか80’Sとかすごい日本の音楽が成熟しはじめた頃のナイアガラとかはっぴいえんどとかあーゆう音楽が好きなニューエイジ。20代の子たちが、30代の僕らを飛び越えて、先輩へのリスペクトで音楽を作ってる印象がある。

洪申豪:あー確かに。70’Sと80’Sカミングバックなイメージ。

加藤:それはやっぱり、インターネットで過去のものがセレクトできるようになったのも大きいよね。

洪申豪: やっぱり台湾と日本で大きく違う。日本は60’S〜80’Sの先輩がいっぱいいるじゃない? はっぴぃえんどとか、YMOとか、すごい先輩がいる。でも台湾のポップシーンは、期間が短くて、本当にバンドとかエレキとかヒップホップとか始まったのは、90年代から。

加藤:歴史が短いね。

洪申豪: 尊敬とか先輩とかがない。まだ、音楽の歴史が若いから。

加藤:それは多分政治的な歴史もあるよね。

洪申豪:そう。国が建って前半の時期は、法律的にノーカルチャー。政府が超厳しかった。歌詞チェックでアグレッシブなのはもう全部ダメ。

加藤: 先輩はテレサ・テンくらいじゃない? うちの親父がテレサテンの墓行きたいって。

洪申豪:金の銅像ね( 笑)

加藤:最近台湾では何が面白い?

洪申豪:新しくて良い感じのバンドが本当に増えた。今超人気のSunset Rollercosterは、日本ツアーもやってて、スキルもどんどんレベルアップしてる。deca joinsって日本の人は知ってる? 今中国でも超人気で、多分次は日本かな。あとはイルカポリスとか、ヒップホップなら夜猫組とか。youtube で全然聞けるよ。

加藤:もう違法とか言ってる場合じゃないよね?全部アップロードしちゃえばいいのに。しかし、すごいな5年前だったらこんな名前とか出てこなかったもんね。まだ知られてないミュージシャンいっぱいいそう。

洪申豪:そう。私もまだまだ若手から勉強することがいっぱいある。最近はどんどん新しい自分になってく感覚。これからまた、台湾の音楽が面白くなりそう。

加藤:そっか。面白いものは国とか関係ないから、チェックしといた方がいいね。

disk 01 『s/t』
artist_VOOID

disk 02 『bathroom』
artist_deca joins

disk 03 『Cassa Nova』
artist_落日飛車/Sunset Rollercoster