パーティーの、フェスティバルの、その裏には強い思い/理想/希望を込めてその日にかけるオーガナイザーがいる。
エレクトロニック・ミュージックの最良の瞬間を体験することのできるオープンエア・フェスティバル「RAINBOW DISCO CLUB」をオーガナイズするMASAHIRO TSUCHIYAと、西麻布alifeや麻布十番WAREHOUSE702、ELE TOKYOなどといったクラブの運営を経て、現在はアメリカ発の巨大フェスティバル「EDC Japan」のエグゼクティヴプロデューサーとして活躍するTARO FUJITA。渋谷WOMBが仕掛ける新たなプロジェクト#WOMB [________ & FRIENDS]の第2シーズン:オーガナイザー/プロデューサー編に登場する、同世代二人による対談を前後編に分けてお届けしよう。
前編は、TARO FUJITAがMASAHIRO TSUCHIYAの思いに迫る。
TARO FUJITA(以下、TARO):初めて会ったのは、Raft Tokyoをはじめた頃だったっけ?
MASAHIRO TSUCHIYA(以下、MASA):そうですね。WAREHOUSE702でパーティーをしたくて。10年以上前かな? ふたりともまだ20代だったはず。
TARO:最初は、ハコ側とオーガナイザーとの出会い。で、そのあとに「RAINBOW DISCO CLUB」(以下、RDC)もはじまって。RDCは、すごくいいタイミングで出てきた。待ってました感というか。シーンの人間としてもそうだし、お客としても、あんなに遊びやすい、素晴らしいものはない。やりたいことも明確で。
MASA:晴海(客船ターミナル)で5回、うち中止2回(笑)。伊豆(東伊豆クロスカントリーコース)に移って来年で5回目なので、来年で10年目。
TARO:なんで(伊豆に)場所を動かしたの?
MASA:理由はいくつかあって。ひとつは、まあそれがあったからなんだけど、晴海でオリンピック関連の開発がはじまる、となったから。今、あの一角って工事してるじゃないですか。それを2012年くらいに言われた。結局、開発が遅れたから2014年まではやらせてもらったんですけど。あと、一日開催ってすげえこわくて。どうしても(天候なども含めて)博打になってしまう。それに自分自身はレイヴカルチャーにも影響を受けてきたので、そういったものをやりたいという思いもあった。
TARO:元々はレイヴで遊んでいた?
MASA:若いときは海外のレイヴによく行っていた。バーニングマンには1999年と2005年に行ったかな。99年はひとりで行ったんだけど、あの砂漠ってめちゃめちゃ広くて。時計の針で自分のテントの位置を言ったりする。「真ん中から8時の方向にあるよ」とか。で、戻ったら竜巻でテント飛んじゃってた。「絶対ここだよな、でもなんもねえ」って。探したらカバンはあったんだけど、テントはやっぱなくて。夜はびっくりするくらい寒いし、砂漠だし、って。
TARO:俺はクラブサイドから入っていったから、純粋なオーガナイザーさんが何をきっかけではじめたのかは気になる。
MASA:オーガナイザーって昔は結構いたけど、気がつくと今はすごく少ないですよね。DJが兼任していることが多い。オーガナイズの部分はクラブと助け合いながら、という。海外だとそういうのは少ない気がします。各クラブにもプロモーター、オーガナイザーがいて、そういう人たちが影響力を持っている。例えば(イビサ屈指の人気パーティー)「CIRCOLOCO」は、それが如実に出ているケース。オーガナイザーのふたりに影響力があって、DJをスターにしていく能力が高いから「CIRCOLOCO」に出演するDJは、次々と世界に羽ばたいていく。オーガナイザーという目線で見ると、あのパーティーは強く印象に残っていますね。
TARO:元々、RDCの構想があってのRaft Tokyoだったの?
MASA:RDCは、晴海のあの場所が出てきたというのが大きい。都心からあまり無理のない距離だし、海沿いで気持ちいい場所だし。まあやってみて、海沿いはいろいろ大変だというのは気付いたりするんだけど。RDCは主催者として三人いる。そのうち二人は当時、「REDBOX」というクールなパーティーをしていた外国人。今はもう二人とも日本にはいないんだけど。当時、彼らと一緒にパーティーもしていて、それこそWAREHOUSE702でもやっていたり。「晴海でしたい!」となったときに自然とその三人で立ち上げた。RaftのクルーもREDBOXのクルーも、一緒に力を合わせる形で。当時は、山のキャンプ場とかでは野外のものは行われていたけど、そういうなかであの場所は斬新に映ったし。
TARO:たしかに、都市型フェスのハシリに感じた。
MASA:「都市型」という表現って、当時まだあまりなかったかもしれない。それこそ(#WOMB [________ & FRIENDS] SEASON 2の三人目に登場する)T. ISHIHARAさんがしていた「Body&SOUL Live in Japan」や「渚音楽祭」くらいで。でも、結果的に(震災や悪天候で)2回中止になったのもあって、こうなったら、やりたいことを素直にやってしまったほうがいいんじゃないかなと振り切れたところはありますね。東京から少し離れていくことで、いろんな要素がひとつのパーティーに盛り込めるようにはなった。その分、考えないといけないことは増えたけど、得るものもたくさんあった。
TARO:そもそも自分的には、プロデューサーやオーガナイザーというのは、自分たちでリスクテイクしてはじめて、という思いがある。会場も、お金の部分も、ブッキングも責任とってやる。だからこそ自由度もリスクもあるんだけど。
MASA:自由度とリスクは比例するかもしれない。リスクを背負うというのを自分が選べば選ぶほど、自由にはなれる。その分、跳ね返りも大きいけど。見積もりを見るときが一番こわい(笑)。
TARO:オーガナイザーだから、最初はあれもやりたいこれもやりたいって構想も膨らむもんね。
MASA:思い描いたことを全部言って、それで見積もりをもらったら「やっぱきた、すいませんでした、自分が甘かった」となる。じゃあどこから削っていこう、って。
TARO:そこがセンスだから。リスクテイクして、じゃあ何を削るか。どれも削れない……と葛藤になる。DJにかけるのか、プロダクションなのか、ホスピタリティなのか。向き合わなきゃいけない。それにしても、RDCは内部の人の入れ替わりが少ないのがすごい。それがどれだけむずかしいかというのは、この歳にもなるとよくわかる。
MASA:コアメンバーはほぼ変わらずやってきている。それは素晴らしいことだと思う。みんな年齢も重ねてきて、環境変化もあるなかで、ほんとよくやってくれている。まずはそれがないと成立しない。感謝しかないですね。
TARO:今ってRDCのようなジャンルは、日本だと若い子が少ないと言われていて、実際問題そうだけど、RDCとしてそこに対してのアプローチはどう考えている? やっぱりフェスってどこまでいってもユースカルチャーというか。別におじさんが楽しんじゃいけないわけじゃないけど。
MASA:チケット代と必要な装備、それこそテントだったり車だったりも考えると、そもそもあの価格設定って、やっぱ若い子に対するハードルは非常に高くなっちゃっている。その部分とかは少し僕も考えていかないとなと思うところではある。お金ないって理由で来れなかったりするような子たちにはボランティアスタッフとして働いてもらったりしている。失敗することも多いけど(笑)。でも若い人は少ないわけではなくて、僕が知っているだけでも相当にいいヤツらがものすごい熱量でパーティーしまくっている。若い人たちの目線や考え方はまた全然違って本当に勉強になるし、ヒントがあふれていて、凝り固まった自分の考え方を柔らかくしてくれる。これからのシーンは本当に楽しみ。もっともっと良くなっていくと思う。おじさんたちもいい刺激です。
TARO:主催者のそういった姿勢は空気感に出てるよね。あったかいし、閉鎖的じゃないし、でもクールなクローズド感もある。フェスなんだけどクラブっぽいなって。
MASA:それはすごい意識してる。クラブってかっこいい人が集まってくるじゃないですか。ああいう人たちが、そのまんま遊べるような都会感というか。
TARO:「RDCに行く服どうしよう?」とか、みんな考えてるんじゃないの? もっとマスになるけどコーチェラと同じ感覚というか。行くまでのワクワクしてる感じだとか。
MASA:そういったモチベーションみたいなのも、お客さんに与えられているとしたらすごいうれしい。
TARO:#WOMB [MASAHIRO TSUCHIYA & FRIENDS]はどんな夜になりそう?
MASA:DJのみんなに声をかけるときに僕がするべきことは、その人たちに出演してもらうこと。その人たちのするべきことは、いい音楽をかけること。ただ、どうしても近年、DJとしてやらなきゃいけないことが増えている。宣伝をするだとか、お客さんを呼ぶだとか。そこも大事なことなんだけど、なによりも「いい音楽をかける」というのは僕が変わることができない部分なので。そこに集中してもらえるようにしたい。同時に、まず僕らが楽しめるような空気をつくること。そのバイブレーションはお客さんにも伝わるから。当たり前のことなんだけど、ずっとやってると忘れがちになってしまう。そういうルーツに返っていけるようなメンバーを揃えました。僕自身もすごく楽しみだし、彼らもそう思ってくれているはず。そういう部分を見せるというのは、今回の企画のなかで見出した答えのひとつになっている。でも最初、話がきたとき、すげえ悩んだんですけどね。どうやるかな……って。
TARO:ほんと、そこからオーガナイズがはじまるよね。日程があって、予算があって、裏ではどんなパーティーがあって、そのなかで自分のアウトプットをする。
MASA:ブッキングって、自分がやりたいことの表現。僕がこういう人を集めるというのは、その意思表示だから。
TARO:音楽の知見のレベルが高いお客さんが来るんだろうね。それがMASAくんのやってきたことだから。やっぱ宿ってんなって。
MASA:楽しめる内容になっているのは間違いないので、いつもよりテンションの高いアーティスト陣を見てほしい。いい距離感のパーティーになると思います。
INFORMATION
#WOMB [________ & FRIENDS] SEASON 2
会場:WOMB(東京都渋谷区円山町2-16)
料金:DOOR: MEN3,000円 / WOMEN2,000円 / FLYER & MEMBER: 2,500円(男性のみ)
日時:2018年10月20日(土)23:00-04:30
LINE UP:FORCE OF NATURE, SATOSHI OTSUKI, KIKIORIX, NAOKI SERIZAWA, TIMOTHY REALLY
VIP LOUNGE:TOSHYUKI GOTO and IORI B2B, ELLI ARAKAWA, KITONOA
WOMB LOUNGE:THE PEOPLE IN FOG aka DJ SODEYAMA, KNOCK, MIDORI AOYAMA, GENKI TANAKA
日時:2018年11月10日(土)23:00-04:30
LINE UP:T.B.A.
日時:2019年1月12日(土)23:00-04:30
LINE UP:T.B.A.
http://www.womb.co.jp/news/2018/10/11/womb-friends-season-2/