音楽の場を生み出すオーガナイザーが語り合う。TARO FUJITA×MASAHIRO TSUCHIYA〈後編〉そして#WOMB [________ & FRIENDS]へ

パーティーの、フェスティバルの、その裏には強い思い/理想/希望を込めてその日にかけるオーガナイザーがいる。

西麻布alife麻布十番WAREHOUSE702、ELE TOKYOなどといったクラブの運営を経て、現在はアメリカ発の巨大フェスティバル「EDC Japan」のエグゼクティヴプロデューサーとして活躍するTARO FUJITAと、エレクトロニック・ミュージックの最良の瞬間を体験することのできるオープンエア・フェスティバル「RAINBOW DISCO CLUB」をオーガナイズするMASAHIRO TSUCHIYA渋谷WOMBが仕掛ける新たなプロジェクト#WOMB [________ & FRIENDS]の第2シーズン:オーガナイザー/プロデューサー編に登場する、同世代二人による対談を前後編に分けてお届けしよう。

前編とは入れ替わり、後編ではMASAHIRO TSUCHIYAがTARO FUJITAの思いに迫る。

TARO FUJITA

西麻布alifeや麻布十番WAREHOUSE702、VILLAGE、ELE TOKYOなどの人気クラブをはじめ、海外での飲食店プロデュース、ファットボーイ・スリム主催のビーチパーティー日本版「BIG BEACH FESTIVAL」、次世代の都市型ヒップホップフェスティバル「PUBLIC LABO BLOCK PARTY」の運営などに携わってきた。現在は「EDC Japan」のエグゼクティヴプロデューサーとして活躍。

MASAHIRO TSUCHIYA(以下、MASA):TAROさんは、とにかくフットワークが軽い。その軽さでものすごくデカいことを平然とやってのける。逆に聞きたいのは、あれだけ規模がデカくなるとどうなるの? 単純に、大きくなればなるほど動く人の数も、お金も、根本的にスケールが違ってくるから。それをすごい余裕でやっている。あんまり辛そうじゃないし。

TARO FUJITA(以下、TARO):結局、「BIG BEACH FESTIVAL」をつくるときに、「Solstice Music Festival」(98年にスタート。00年代のサイケデリック〜エレクトロニック・ミュージック・シーンに強いインパクトを残した伝説のフェスティバル)の人たちと合流して、一緒にやらせてもらうなかで学んだのはデカい。一年目は余裕なかった。それまではオーガナイザーというよりはハコ側でこの業界にいたから。オーガナイザーよりもう一本裏の、インフラ側として。

MASA:あの経験があったから、と。

TARO:常にアンコントーラブルな人たちばかりだから。俺はチーム意識というよりは、個人としては「えっ?」「全然言うこと聞かない」ということの連続のほうが楽しくて。結局、やりやすい=自分の許容範囲のなかで物事が作られていくから。全然考え方も違う人と一緒につくるからこそ、すごいものが生まれる。クラブやっていても、いい質のパーティーをして、お客さんを入れてくれるオーガナイザーってやっぱり気難しかったりするし、言うこと聞くようなタマじゃない。

MASA:それを繰り返して、今がある。

TARO:麻布十番の物件だけで言っても、WAREHOUSE702、VILLAGE、ELE TOKYOと変えさせてもらって、それぞれジャンルも考え方も全然違う。でも結局、俺らが売っているのは“空気”だと思っているから。その空気を形にしていって、お客さんに来てもらう。

MASA:なるほど。だからいろんなジャンルやれるんだな、というのが今よくわかった。

TARO:でも、だからこそトレンドを追うのではなく、自分的にその側面において「この人たち本質的だな」という人たちとやりたい。全然本気じゃない人とやってもおもしろくないから。それがビジネスの面でもいいし、カルチャーの面でもいい。例えば、ラスベガス型のシャンパンサービスするようなお店のノウハウもやっぱりすごいから。そこを真剣に日夜考えて、やりたいことをやっている人たちのクオリティーってやっぱり学ぶものがある。実際、クラブパーティーの作り方はゲイパーティーから学んだ部分も多かったりするし。

TARO:「EDC Japan」に関しては、そこに上場企業のGMOからの出資が入ってきたというのは、新しい時代を感じたし、大きな感謝と改めてのむずかしさを感じた二年だった。ようやく道筋が見えてきたというか。この夏に、今後の変革に向けてプレゼンに本国まで行ってきたけど、そのときにパスカーレっていうEDCをつくった人ともちゃんと対話できたのは自信にもなった。彼らも元々は倉庫を借りて、それこそ300人規模からはじまっている。勝手にやる、レイヴ感というか、根幹はそこにあるんだけど、ビジネスとしても成功している。とにかくアメリカの市場になってくると規模がデカいから、裏方のクオリティーも高い。そこに触れて、草野球からいきなりメジャーリーグに触れた、みたいになった。「こいつらと一緒のレベルでできるようになりたいな」って。このフィールドに立たせてもらっているのがありがたい。もちろん好きなジャンルはあるけど、戦いになったらジャンルがどうだとかはあまり関係なくて、それって俺にとってはフォワードやりたいけどディフェンダー、くらいの違いでしかない。試合に出れない、戦えないということのほうが辛い。
まだまだ日本ではダンスミュージック市場全体が小さくて、実際スポーツで例えるなら超マイナースポーツみたいなものだから、継続するだけでもギリギリになっていると思っている。本来は開催することは基礎能力として最低限の条件であり、プロであるならその上で自分の考える世界を追求してライバルたちとの差別化や競争に勝っていかなくてはいけない厳しい世界でもあるから。

MASA:ほんと、あれだけの規模になると、プロの人たちが各セクションにいないと成り立たないだろうから。

TARO:とにかく裏方のレベルが高い。ダンスミュージックにおいては日本にもいい選手はいっぱいいるけど、裏方がいなかったり、コーチングができない体制だったりするから。

MASA:それはめっちゃ感じる。

TARO:収益を合わせながら、クリエイティブも追求して、お客さんも満足させて。アメリカのすばらしいフェスを日本にただ持ってくるというよりは、その感覚やレベル、技術、収益性だったり、そこをしっかり学んでいきたいなと。

MASA:パーティーやフェスにしても、誰でも一回はできるよね。それを続けていくことがむずかしい。

TARO:ほんとそう。「継続こそ」というのはやっている人はわかっていると思うけど。正直、ハードワークだから。好きじゃないと絶対できない。10年以上やってる人って、絶対にお金でやってるとは思わない。

MASA:この職業のいいところは、やってる人全員「それが好き」という。それくらい大変でもあるから。

TARO:そこに誠実であることが大事。みんないい時期も悪い時期もあるから、助け合えばいいし。根幹が一緒だと絶対つながる。実際、日本は規制や会場問題、言語、コストの面においても、世界からみたら相当ハードな環境であるのは間違いない。そこで継続して、各ジャンルにおいてその文化をつないでいる方々は相当すごいと思う。結局のところ好きだからやめられないんだろうけど(笑)。

MASA:逆に、こういうことをしてなかったら、味わうことのないほどの辛さも味わったな……というのはある。振り返ってみれば、そこで折れずにやってこれたから、今はいい思い出になりつつある。思い出したくはないけど(笑)。

TARO:それでいうと、自分のモチベーションが下がることが一番苦痛かもしれない。お金をスるより、問題が起こるより。「自分のパーティーをしたくない」というときが、地獄のような時間。

MASA:そういうのってパーティーに出るしね。絶対に見抜かれる。

TARO:結局、言っていること、思っていることがアウトプットに宿ってないと意味がないから。それができるときとできないときがある、環境的にも。だからお互い、満足できることなんてなかなかないだろうし。

MASA:ないなあ。瞬間はありますけどね。

TARO:日本だと、好きなことを突きつめていけばいくほど金にならない、みたいなアンダーグラウンドな感覚が植え付けられちゃっている。みんなそれに直面したから。でもそれってもしかしたら、追っかけ方が足りない、というのもあると思っていて。それがお金にならないから、稼ぐために他のものに時間を割いていく、そうなると元々のエネルギーが少なくなってくる。でも、DJもオーガナイザーも、成功させている人はそれだけ人生賭けている感がある。まあ、成功したあとにそういう人に会っているから、それが評価に値するんだろうけど。とにかくエネルギーとパッションとモチベーション、そういうのをかけている時間はすごいなと感じるし、実際まだまだ才能ある人がたくさんいるから、裏方として少しでも役に立てればと思っている。

MASA:別に片手間でしちゃいけないわけではないけど、目指すべき場所がどこかによっては、そうじゃいけないなと思うときはある。ドロまみれになりながら、這ってでも進んでいくくらいの気持ちじゃないと。自分のやってきたことが結ばれてきているのは、瞬間瞬間で感じるので。結局誰もが、“続けてきた”人には魅せられる。[________ & FRIENDS]シリーズも、そういう人しか出てこない。

MASA:#WOMB [TARO FUJITA & FRIENDS]はどんなラインナップで? TAROさんは出せるカードが広すぎるから、どのカードをどう切ってくるのか。

TARO:そのアウトプットそのものがメッセージだったりするからね。

MASA:すごい大物とかブチ込んだり?

TARO:そういうサプライズは起きない(笑)。基本的には、自分の歴史をなぞろうかな、というのをテーマに。でも、開催する週の頭までは(出演者を)未発表にしようかなと。これは俺なりの今回のオーガナイズのなかでの仕掛けのひとつ。今回でいうと、何ヶ月も前から出したとしても、プラスに作用するとは思わないから。瞬発的に話題になって、「あっ、行こう」ってなったほうが効果的かなという戦略的ですね。それも仕事のひとつなので。告知期間がどうじゃなく、そこに「行こう」と思わせることのほうが本質的だから。

MASA:パーティーって自分の人生の投影になるよね。自然と。

TARO:知ってる人とパーティーをやってきただけ、なので。それがデカくなったり、小さくなったりしているだけで、自分のスタンスとしては変わってない。自分の根幹は、「誕生日パーティーを開くのが好き」。人になにかをやってあげる、なにかを“催す”ことが好き。やれば集まってくるから。「RAINBOW DISCO CLUB」も、森のなかにスピーカー持ち込んで「みんな集まれ!」ってやることで物事が動いていく、という。人間のエネルギーってすごいから。

MASA:結局、人が人に向けて、喜びみたいなのを与えることに僕らは魅了され続けている。

TARO:今回は、すげえいいきっかけもらったなって。やっぱりWOMBでやるというのは神聖なことだし。自分のなかでは絶対にスベりたくない、変なことはしたくないって強く思うクラブだから。どれだけ大きいイベントやっていても、金もなくて路頭に迷って葛藤してたときに居場所を与えてくれたのはやっぱりこのカルチャーだしクラブそのものだから、自分らしくやりたい。こういうことがないと、そこに向き合うこともないので。そうなったときに、今までの人たちを、現在進行形含めてやりたいなって思えた。そのなかに小技を効かせてみたり。自分自身がせめてワクワクしないとね。なかなかどうして、お客さんには伝わらないから。

MASA:いいこといっぱい言ってますけど、元々のところを言うと「この人がいるから行く」んですよ、みんな。なんだかんだ言っても、結局は人間力がすごい。

TARO:まあ11月は俺の誕生日月だから。(集客は)一割増しだよ、マンパワーになったら(笑)。

MASA:出たーー! マジっすか。それズルい!

INFORMATION

#WOMB [________ & FRIENDS] SEASON 2

会場:WOMB(東京都渋谷区円山町2-16)
料金:DOOR: MEN3,000円 / WOMEN2,000円 / FLYER & MEMBER: 2,500円(男性のみ)

#WOMB [TARO FUJITA & FRIENDS]
日時:2018年11月10日(土)23:00-04:30
MAIN FLOOR:
WAXFIEND FROM AMSTERDAM, HOKUTO, SHINTARO, 9HZ SOUNDSYSTEM WITH FTK, JIROTOKYO, BASSSICK TAKEOVER,
and MASANORI MORITA (NY HOUSE SET)

WOMB LOUNGE -CULTURE SALON-:
SHINICHI OSAWA, JOMMY, SONPUB w/ MC WISE (KATS’ SET), CARLOS KONNO & BINGO TRIBE, ALAMAKI, KEKKE, DAISUKE TSUDA
HOSTED BY SHUICHI KAYANO / NAOKI IZUMI

VIP LOUNGE -LOUNGE-702-:
SHOTARO MAEDA B2B NAOKI SERIZAWA, MOCA B2B RYO.T, PI-GE B2B HYOTA.
HOSTED BY KOSUKE TAKADA

#WOMB [T. ISHIHARA & FRIENDS]
日時:2019年1月12日(土)23:00-04:30
LINE UP:T.B.A.

#WOMB [MASAHIRO TSUCHIYA & FRIENDS]
日時:2018年10月20日(土)23:00-04:30
LINE UP:FORCE OF NATURE, SATOSHI OTSUKI, KIKIORIX, NAOKI SERIZAWA, TIMOTHY REALLY
VIP LOUNGE:TOSHYUKI GOTO and IORI B2B, ELLI ARAKAWA, KITONOA
WOMB LOUNGE:THE PEOPLE IN FOG aka DJ SODEYAMA, KNOCK, MIDORI AOYAMA, GENKI TANAKA

http://www.womb.co.jp/news/2018/10/11/womb-friends-season-2/