Interview: マルチクリエイター歌代ニーナの新たな顔 “Thirteen13″名義でラップ活動開始インタビュー

「人生の中でラップをやるタイミングが来るなんて1ミリも想像してなかった(笑)」。Thirteen13名義で初となるEP『OMNIPRESENT』をリリースしたばかりの、歌代ニーナはそう語った。今までエディター、ライター、スタイリスト、デザイナーなど幅広く活動しながらも、決して表舞台に出てこなかった彼女が、なぜ今ラップという表現を始めたのだろうか。インタビューを通して彼女の新たな一面に迫る。


Thirteen13 – ハイクラスビッチ&ロマンス ”OMNIPRESENT”

ー突然のラップ始動に驚いている人も多いかと思います。どういった経緯でThirteen13としてラップ活動をスタートすることになったのでしょうか?

面白そうだったから(笑)。ラッパーのGASHIMAさんに声をかけていただいたことがキッカケです。共通の友達を通してたまたま飲みの席で出会ったのですが、喋ってたら「ラップやった方がいいよ」ってプロデュースオファーをしてくれたんです。EPを作ろうっていう話になって、その1週間後に今回配信するEPの2曲目に収録されている『ロマンス』のプレレコを行いました。そのトラックがGASHIMAさんと繋がりがあるJOE IRONさんのもので、そのプレレコを聞いたJOEさんがプロデュースに加わることになったんです。

ー音楽のルーツはHIPHOPだったんですか?

ピアノとバレエを幼い頃から15年程続けていたので、音楽的なルーツで言えば大もとはクラシックですね。初恋はショパンです。中学に入ってからはメタルに出会ってどっぷり浸かってました。Kornとかに始まり、Sepulturaあたりで1回メキシコ系行って、Cannibal Corpseらへんで落ち着きました。その頃、友達がカラオケでキングギドラを歌ってたりしたので、『トビスギ』を極めることに必死だった時期があったりはしたんですが、特にHIPHOPというものを知らなかったし、その先はあんまりディグらなかったです。あ、でも、前略プロフィールの『好きな男性のタイプ』のところに『K DUB SHINE』と『EMINEM』を交代でハートの絵文字いっぱいつけて書いてました、2年くらい。コロコロ気が変わっちゃって決められなくて。贅沢な妄想悩みですよね(笑)。あとはTOKONA-Xかな?好きだったのは。

ー中学を卒業してからは、どうだったんですか?

高校時代にNYに引っ越してから、ハーレムとかブロンクスで遊べば道でフリースタイルバトルが繰り広げられてるし、Jay-Zとカニエの『Watch the Throne』が出た際には、働いていたお店で永遠とループで流れてたりしてて、仲良かった友達の影響もあり半ば強制的に入ってきました。ジャンル問わずいい音楽はいい音楽だし、その頃にHIPHOPが好き、というよりはHIPHOPアーティストで好きな人ができはじめましたね。Remy Ma、Lil’ Kim、Nas、Mobb Deep、A Tribe Called Quest、Slick RickとかのNYレペゼン系大御所ラッパーたちの音楽は当たり前のように毎日聴こえてくるような環境だったし、大学がハーレムの近くだったこともあって、東海岸のHIPHOPはそのあたりで身近にあるものになりました。で、ここ数年でベルリンテクノに目覚めて、1番最近はUKドリルにドハマりしてますね。


ー実際に自分がラッパーになるって決まった時、どう思いましたか?

ラッパーになったつもりはないです。ラッパーかどうかは私が決めることではないと思います。でも、他のアーティストのMVのスタイリングをしてきたこともあって裏方慣れしているので、表舞台に立つっていう点が現実味ない部分もありますね。モデルとも違う感覚で。結構含み笑いしている自分がいます。”家を買う”、とか”子供を産む”、とかそういう遠い未来にぼんやり見えてる、みたいなものってあるじゃないですか。でも”ラップする”は漠然とした未来像にも入ってなかったことだから実感もないし、人生って何が待ってるのか分からないなっていうのは思います。初めてレコーディングした自分の声を聴いて、初めて撮影したMVで自分の姿を観て、本当に変な感じがします。私のリリックと声をプロデューサーのGASHIMAさんとJOE IRONさんが曲にしてくれて、私の世界観を映像チームのPERIMETRONが実現してくれてっていうのが、すごくシュールですね。

ーラッパーとして活動をスタートした4ヶ月前と今では自身の中での変化ってありますか?

まず「フロウって何?」っていうところからのスタートでした。専門用語も何も知らないし、ラップを聴く時も多分歌詞に焦点を当てがちで音楽性的な意識をしてなくて。生きてて韻を踏もうと思ったことないし。ラップ含めた音楽制作に関して何も知らない状態からスタートしたので、音楽の聴き方が変わりました。ラップ書きはじめてからフロウやガヤなど、角度を変えて聴くようになったので、EP制作を終えて、7月より音楽性的な欲が出てきましたね。ドラムを入れたいとか、ピアノを入れたいとか、間の取り方を変えたいとか、オプションが見えてきたというか。

ーラッパーのThirteen13と歌代ニーナは、自分の中で違いはありますか?

Thirteen13は歌代ニーナの一部なんじゃないですかね。HIPHOPってリアルを推すカルチャーのイメージなんですが、リアルの定義とかよく分かんないし。だって数ある言葉の中から選択してリリック書いてる時点で潜在意識的に世の中に発信する自分の部分を選んでるわけじゃないですか。そこに偽りがなかったところで、見せてない部分がある時点で欺きっちゃ欺きだし。という意味ではリアルなアーティストなんて一人もいないし、ってかそもそも自分のことなんて一生分かんないし。実体験を語るのも伝わりようによってはフェイクだし、逆に言えば比喩表現は必ず嘘かって言えばそうでもない。仮にThirteen13が歌代ニーナの全てだって自分で思う時がきても、自分で把握していない自分の部分もあるだろうし、表現者としての顔は必ずその人の全体像の一部だと思います。大部分なのか小部分なのかは分からないですが。


ー今までの表現(スタイリスト / エディター / ライターなど)とラップの違いってありますか?

音楽に乗って物語を構成するっていうの手法の違いなんじゃないですかね。リズミカルでないといけない、っていう縛りが。あとは3曲目の『ハッスルライフ』は私の心の内へようこそ、って感じの曲で、独り言というか自分との対話という部分が多いと思うので、今までの表現法より生々しいかなとは思います。クリエイターとしての仕事と違って、1から10じゃなくて0から10ができるのはすごく新鮮ですね。でも違いっていうよりは単純に表現ツールが増えたっていう方が正しいかもしれないです。私は音を聴いても何かに触れても視覚的に全てを捉えがちで、トラックを聴いて見えた色とか場所とかに自分の身を置いて、湧いた感情を言葉にしてるのかなと思います。でも、最近韻を踏む面白さに目覚めてから思いついたパンチラインを音で表現するのとヴィジュアルで表現するのとだとどっちが強いかとか考えるようになりましたね。最近でいうと、私うまい棒めちゃくちゃ好きなんですけど、「肉棒よりうまい棒」が出てきたときにどっちにしようか考えた末、ヴィジュアルだったので、次号のPETRICHORにてエディトリアル化しました。

ー『ハッスルライフ』のことが出ましたが、他の2曲についても教えてください。

1曲目の『ハイクラスビッチ』は、自己紹介的な感じです。デフォルトの私の生きてるスタンスを箇条書きっぽくしたくて。なんでもかんでも「~ビッチ」にしちゃうのが日頃の口癖っていうのと、上品に生きることに命かけてるんで、自称ハイクラスビッチとして日々生活してるんですが、周りの品格の定義と私の中の品格の定義がズレているようなので、私の品格の定義を曲にしました。2曲目の『ロマンス』は性と恋愛についてですかね。一晩の恋しようとしてるときの気持ちとかを主に。謎なんですよね、口説き文句に車自慢、仕事自慢、コネ自慢って多いじゃないですか。MAX6時間で終わる仲に車とか関係ないし。ましてや恋だったら尚更ステータスやら資産は関係ないじゃないですか。ハートの問題だから。恋って頑張れば出来るってものでもない。でもセックスしたいときはしたいし。ありもしない未来をかざして釣ろうとしてくるフェイクっぷりにイラっとはするんですけど、イケメンってマジ何言っててもイケメンじゃないですか。刹那的で儚いセックス物語でも快楽を一瞬一緒に味わうのも一期一会だし、それはそれでいい思い出だしありがたいし、って感じの曲になりました。3曲とも通して言えることは、世の中に反抗も同調もよく分かんないんで、自分に忠実に、でも自分に反抗し続けることを歌った、最近の心境を込めたEPです。

ーそれでは最後に、Thirteen13としての、歌代ニーナとしての今後のヴィジョンについて教えてください。

生音で楽曲を作りたいとか、英語でリリックを書こうとか色々ありますけど、まずは来年からライブがスタートするので、楽しみです。演出とか考えるの面白そうですよね。ただ、ダウンロードやストリーミングやらで1人でもお金を払ってくれる人がいるなら、その人に対する責任は忘れずにいたいです。マイクを持ってしまったら無責任な発言はアウトだと思ってるので。人に悪影響を与えるものでお金もらったら詐欺ですし。私の思う正義が誰かの不正になることもあるんだろうけど、ワルぶったりカッコつけたりしないでせめて自分の思う正義を追求できたらなと思います。あと歌代ニーナとしては、Thirteen13ちゃんのプロデュースと、12月15日に私が手掛けているインディペンデントマガジン『PETRICHOR』の2号目が発売します。同日に『PETRICHOR』のアパレル発売と、EP3曲目の『ハッスルライフ』のMVを公開します。今はこのラップという表現に関してはステージ1っていう感じ。いろいろ試しながら冒険するのが楽しみです。

INFORMATION

Thirteen13『OMNIPRESENT』

Apple Music
その他ストリーミングサイト:https://linkco.re/tg3sMn6P
https://www.thirteen13.info/
@thirteen13_info
@ninautashiro

INFORMATION

『HIRAETH』 PETRICHOR ISSUE 01 EXHIBITION

期間:12月16日(日)〜12月22日(土)
時間:12:00~20:00
会場:ギャラリー月極 (東京都目黒区東山 3-12-4)

※12月15日は19:00~21:00より ローンチパーティも開催致します。

インディペンデントマガジン『PETRICHOR』第 2 号の ISSUE 01 が 12 月 15 日に発売。ローンチに伴い、月極ギャラリーにて紙面の エディトリアルから派生された展示物や参加クリエイターたちの作 品を展示したエキシビションが開催されます。『HIRAETH』をテー マに掲げ、大人というもの、子供というものにさまざまな角度から 光を当てた内容は必見です。また、雑誌と並行して PETRICHOR の アパレルもローンチとなります。初コレクションとなる SERIES 01 『INSTAGRAM FAMOUS』はレセプションで内容公開、またギャラリー限定での発売となります。お見逃しないようにお願いします。