Breakthrough Music for 2019 #14 Newspeak

気づけばテン年代、最後の年。音楽シーンを振り返ってみてもいくつもの潮流/トピックスがあって、そろそろ総括もしたくなってくる頃だけどそれよりも“これから”に目を向けたい。「未来は過去のなかにある」とも言うけれど、いやだからこそ未来を見据えることが結果、過去(やそこに横たわる文脈)を知れることにもつながるんじゃなかろうか。ということで、本特集「Breakthrough Music for 2019」では、来たる2020年代に向けて、EYESCREAMが追いかけていきたいホットな新世代たちにフォーカス。その音楽や存在そのものでもって、今という時代をブレイクスルーしていくミュージシャンの動向から、2019年とその先を眺めていくことにしよう。

L to R_Steven(Dr)、Yohey(Ba)、Rei(Vo/Key)、Ryoya (Gt)

#14 Newspeak

2017年に結成されたRei、Ryoya、Yohey 、Stevenによる東京発の4人組ロックバンド、Newspeak。それまで異なるバンドで活動していた4人が集結し、UKやUSのオルタナティブロックとダンスビートをミックスさせたサウンドを鳴らしている。これまでに3枚のEPと1枚のミニアルバムをリリースしてきた彼らが11月6日に発表した初のフルアルバム「No Man’s Empire」。今年、怒涛のスケジュールの合間を縫いながらようやく辿り着いた作品について。そこには、メンバー4人の葛藤や悩みを乗り越え未来へ向かって行こうとするポジティブな姿勢が込められた。EYESCREAM初登場となる今回、バンドの成り立ちを含め、今作完成に至るまでの話を教えてもらった。

音楽を続けることへの葛藤や辛さを乗り越えて完成した1stフルアルバム

ーEYESCREAMに初めて出演していただくので、まずはNewspeakがどのような経緯で結成されたのかを教えてもらえますか?

Yohey:メンバー4人とも、それぞれ違うバンドで活動していて対バンしていたんですよ。僕とReiがいたバンドが同じイベントに出ていたりとか。同様にReiとStevenのバンドが一緒にライブをやっていたりとか。それぞれ個々に知り合いだったんです。

Rei:それで2017年にイギリスのリバプールに留学していた自分が帰国して、音楽をやりたいと思って結成したのがNewspeakなんです。

ーNewspeakの前にやっていたバンドのサウンドは、現在とは全く違っていたんですか?

Rei:まったく違うというわけではないですね。そこから派生してNewspeakの音になったんだなっていうのが理解しやすいサウンドだと思います。
Ryoya:僕は当時、もっとローファイな音で日本語詞のバンドをやっていました。
Steven:その頃やっていたのはファンクロック系の打ち込みの音がたくさん入っているダンサンブルなバンドでした。
Yohey:だから近からず遠からずって感じですね。ちなみにStevenは、当時やっていたバンドではボーカルもやっていたんですよ。

ーそうなんですか!

Steven:うん。でも、人前に立ってMCをするのは緊張するからドラムの方が向いてるなって(笑)。ドラムボーカルだった時期もあったね。

ーそういった複数のバンドからメンバーが集まって2017年にNewspeakが誕生したわけですが、どのような音楽をやろうという話をして結成したんですか?

Rei:正直、目指すべき音楽性というのは、あまり話したことがないんですよね。それを話し合ってしまうとバンドとしてのオリジナリティが偏ってしまうと考えていて。意図的に避けている話題ではないんですけど全体的に目指す音楽というのは決めずに集まったんです。
Yohey:お互いがやっているバンドを見ていたので、大体好きな音楽は理解している前提で集まっていますしね。あえて話さずとも、趣味嗜好は似ているので。
Steven:結成したときはUKロック的な音楽であれば何でも良いって思ってた。
Rei:そうだね。でも、けっこうUSインディーロックな楽曲もあるけど(笑)。
Steven:最初から今も強く思っているのは、メンバー4人で楽しい音楽をやろうってことだよね。自分勝手かもしれないけど、そういうバンドをやりたくて集まったと思う。売れるために、無理に色んなジャンルの音を入れたりすることはしないで、自分たちがこうだって言える音楽をやろうって。だから、Reiに「人の意見に惑わされないで、そのままでいいよ」って話したりしたよね。
Rei:そうだったね。自分たちが楽しくやれないならバンドなんてやる意味がなくなってしまいますからね。

ー確かに。ちなみに楽曲の制作についてなんですが、どのように進行されてらっしゃるんですか?

Rei:今作「No Man’s Empire」に関しては、僕の方でデモを作って、それを持ってStevenの家でトラックを制作し、それぞれのパートをメンバーが考え直すという作業でした。ツアーに出ていたりした時期も長かったので、スケジュールを考慮してスタジオ作業は簡略化し、最終的なところまで持っていったんです。
Steven:Reiの曲はデモの段階からすごくカッコいいから、わざわざフレーズを変えなくてもいい曲が多い。だからデモを受け取ってバンドでのアレンジを考えたりする作業だったね。
Yohey:Stevenはエンジニアやコンポーザーの仕事をやっているので、自宅に作業環境が整っているんですよ。だから作品もハイペースにリリースできているんだと思います。

ー2017年の結成からこれまでに3枚のEPとMini Albumを1枚リリースされているわけですもんね。かなりペースが早いと思います。「No Man’s Empire」は、具体的な制作期間はどのくらいだったんですか?

Rei:原案自体は、Mini Album「Out Of The Shrinking Habitat」をリリースした頃から考え出して、実際にメンバーと制作をスタートさせたのが、昨年末から1月辺りでした。その頃は3rd EP「Maybe Youʼ re So Right, Gonna Get My Shotgun」のレコーディングがあり、3月後半からSurvive Said The Prophetと47都道府県ツアーに出ていたので、合間を縫っての制作作業だったんです。楽曲のアレンジまでを3月までに済ませてレコーディングは5月でした。時間軸だけ長いんですけど、結局2ヶ月間で仕上げた感覚です。

ーものすごいタイトな中で制作された作品なんですね。個人的に「No Man’s Empire」は楽曲ごとの印象が異なるカラフルなイメージで、1曲めの『Feel Alive』から最終曲の『See You Again』まで、すんなり聴ける作品だと感じました。

Yohey:Newspeakはバリエーション豊富な音楽性を持っているので、様々な雰囲気の楽曲を制作できるんです。今作に関しては、こういう流れの曲順にすれば、最後まで飽きずに聞いてもらえるだろうってことも意識して考えてまとめています。
Rei:だからライブのセットリストを組むような感覚で流れを作っているんですよね。もちろんライブは現場を盛り上げるってことが主軸にあるのでまったく同じ考えではないですが、作品を聴いていて心地よいセットリストになるように考えています。だから、このままの曲順でライブをやっても成立するかもしれませんね。

ー「No Man’s Empire」の作品としてのテーマがあったら教えてください。

Rei:訳すと”誰のものでもない帝国”というタイトルですが、誰にも支配されていない世界や空間ってイメージで、この名前を付けています。実は、この作品を制作している約8ヶ月の間、メンバー間やそれぞれの私生活もそうですけど、本当に辛かったんですよ。何のために音楽をやっているんだろうとか、ツアー中に家に帰りたくなったりとか。色んな思いが交錯する中で、誰かに支配されていると思いながら音楽をやっていたり、生きていても楽しくないなって改めて思ったんです。こういうのは誰にでもあるんでしょうけど、そういう思いが強い時期でしたね。このバンドをやっていくうえでジャンルのせいで聴いてもらえないことがあるのも嫌だと感じていたし。だから、それぞれがそれぞれの世界を持っていたらいいんじゃないか、という意味が、この作品には込められていますね。やっぱりライブにしても、自分たちのあるがままを出せなくちゃ意味がないですし、自分たちの世界観をもって自然体で演奏すれば、それは素直にお客さんにも届くとツアー中に感じましたし。あえてメンバーと話していたことではないんですけど、僕はそう思って、この作品に臨んだんです。
Yohey:多分、メンバーみんなが同時にそういう感覚になってましたね。特にSurvive Said The Prophetと3月から6月にかけて回った47都道府県ツアー”Now more than ever Tour”では感じることも多かったです。彼らには彼らのノリがあり、じゃあ僕らはどうなんだろうって、同じではないよなってことを認識していって。
Rei:そういう気持ちは歌詞にも色濃く反映されています。今までの作品は自分の現状や過去の出来事などパーソナルなことを歌ったものが多かったんですけど、「No Man’s Empire」に関しては、それがポジティブな内容になっていると思います。今後、バンドとしても人間としてもどういう風に生きていきたいんだって考えていた時期でもあったので”誰かの世界の中で生きていたくない”って意味合いの歌詞が多いですね。活動する環境を見渡しても、誰かに支配されてしまうような状況であれば、僕は音楽をやりたいと思わないだろうし。なんか、そんなパンクな精神性が働いて、このタイトルに繋がっていったんです。

誰かに支配されてしまうくらいなら音楽をやりたいとは思わない

ーそういった歌詞の内容に関してはReiさんからメンバーに説明することはありますか?

Rei:真剣に解説するようなことはないですね。こうして共に活動をしていれば、考えていることも似通ってきますし。半分ふざけながら共有することはありますよ。腹が立つことがあったから曲にしてやったわ! みたいな(笑)。シーンを見渡して違和感を覚えたことがあって、そこに着想得て作った曲だ、とか。
Yohey:歌詞に関しては、すごく理解できるものでしたね。結局、バンドとして動いているときに見る景色はメンバー全員一緒なので。だから僕らが最初に歌詞を見て、1番共感できていると思います。

ー今、シーンの話題も出ましたが、みなさんから見て、現状の日本の音楽シーンはどのように見えますか?

Ryoya:多様化してきていますよね。ちょっと前までは似たようなサウンドしかないよう時代があったと思うし、同じ音楽性でなくては理解されないような環境があったように思いますけど、今はもっと楽器や演奏がフィーチャーされたり。真の意味で音楽性を追究しているバンドも受け入れられたりするようになっているので、日本の音楽シーンも面白くなってきてるんじゃないのかなって。だからこそNewspeakも受け入れはじめてもらえてるのかな、と感じます。今の若いリスナーは色んな音楽を聴いて僕らを見つけてくれていますし、その状況は良いことだと思います。
Rei:最近、カッコいいバンド増えていますよね。Spotifyとか手軽に音楽をディグれる環境があるので、僕らもそれに助けられているのかもしれません。今後、全世界から出てくる、そういうカッコいいバンドに負けないようにしながら、より自分たちらしく活動していかなくてはいけないと感じます。

メンバーの個性がフルに発揮された これまでの活動の集大成として

ーでは、1stフルアルバムとしてリリースされる「No Man’s Empire」について。改めて自分にとってどんな作品になったのかをそれぞれ教えてください。

Rei:歌詞に関しては、この2年間で感じたことと、これからの未来を見据えたうえでの内容になっています。サウンドに関してはメンバー個々のキャラクターであったり、個性をお互いに理解できてきた状況の中で制作しているので、2017年の結成以来の2年半の集大成として、それを1つにまとめられていると感じています。
Steven:人生は良い時も悪い時もある、という自分たちの気持ちをシンプルにストレートに、ダンサンブルなビートに乗せて伝えようとしている感じがする。リアルな楽曲も多いしね。今の僕らのライフを音楽にしたら、こういう感じになったんだなって思います。
Yohey:辛い時期も含めて全てをメンバーで共有しているので、バンドを介して4人が繋がった状態で制作したアルバムだと強く感じています。聴いてくれれば、僕らの世界観を理解してもらえるんじゃないかな、と。そして、それをスッと受け入れてもらえるような作品になっていると思います。自分たちのことだけに関わらず、リスナーも含めて、生活における喜怒哀楽が詰まっているんじゃないでしょうか。
Ryoya:今作に関しては特に、どの楽曲も、それぞれ異なる場所へ連れて行ってくれるようなアルバムになっていると感じています。例えば、大草原が想像できたり、小さな街並みとか、自分の部屋とか。聴いていて、そういう情景が浮かんでいるような想像力に訴えかける豊かな楽曲が詰まっていると思います。

ー最後に、例えば、アリーナでのワンマンやワールドツアーを目指すなど、今後のNewspeakの展望があれば教えてください。

Rei:どこか大きな場所や世界を明確に目指すというよりも、今、自分たちがやっている音楽をより多くの人に届けようという気持ちを持って着実にやり続けていくだけですね。その延長線上に、よりキャパの大きな場所でのワンマンやワールドツアーが待っていると信じたいです。今作のタイトルに込めたメッセージが、今後より浸透していけばいいなって。
Yohey:無理してシーンに自分たちを合わせるのではなく、自然体でバンドの規模感を大きくしていきたいと思っています。その時々に自然に考えていることが自分たちのやりたいことに繋がってくると思うので。
Steven:Newspeakを見たいと言ってくれる人がいるなら、どんな国にでも行きたいし、大きなステージにも行きたいよね(笑)。そうだなぁ、世界で言えば、やっぱりUKツアーはやってみたいかも。
一同:そうだね!

1stフルアルバム「No Man’s Empire」は下記よりチェックを。

INFORMATION

Newspeak

「No Man’s Empire」
発売中
01. Feel Alive
02. Wide Bright Eyes
03. No Man’s Empire
04. Lights and Noise
05. What’s Left In Your Mind
06. Stay Young
07. Shanghai Disco
08. Perfect Trouble
09. Changing Shapes
10. Firelight
11. See You Again

https://newspeak.jp/
https://www.instagram.com/Newspeak_band/
https://twitter.com/Newspeakjp