Interview: SPARK!!SOUND!!SHOW!! 『アクダマドライブ』OPに採用されたシングル「STEAL!!」について

まったく独自の路線で自身のロックを磨き続けるSPARK!!SOUND!!SHOW!!、通称、スサシ。ラウドでいてエレクトロやダンスミュージックの要素をミックスし、シーンの異端児として存在感を放っている。音楽だけではなくポップアップツアーを開催したり、様々な形で自分らしさを提示する4人組だ。新作シングル「STEAL!!」は10月8日より放送開始したオリジナルアニメ作品『アクダマドライブ』の主題歌だ。ついにテレビへ活動の舞台を広げた彼らに、この楽曲がどんな作品なのか、同時に2021年はどう活動していくのかを聞いた。

L to R_169 イチロー(Dr, Cho)、チヨ(Ba, Cho)、タナカユーキ(Vo, Gt)、タクマ(Syn, Gt, Cho)

令和2年でこの主題歌をやるのは”そりゃオレらやわ”って

ー11月4日リリースのシングル「STEAL!!」はアニメ『アクダマドライブ』のオープニングテーマ(以下、OP)ですね。ぶっちゃけ、スサシがアニメのOPを担当するニュースを知ったときビックリしました。「まじか!?」と。

チヨ:僕らの周りにもアニメ好きなバンドマンがいて。「スサシ、まじか!」って声は多かったですね。『アクダマドライブ』は近未来的な世界観が描かれているので、個人的にも好きな作風だったんで、OPを担当させてもらえることになって嬉しかったんですよ。知っている声優さんも参加されているし、自分たちがOPでなくても普通に観ていたと思います。

タナカユーキ(以下、ユーキ):タイトルに”悪”って入ってるし”全員悪玉”っていうキャッチコピーも自分らのスタイルに合ったというか。バンド界隈の中で自分たちの立ち位置を考えても、どっちかって言ったらヒール役やなっていうのはあるんで。『アクダマドライブ』、オレらにぴったりの作品やなっていうのはありました。まぁ、令和2年でこのアニメの主題歌やるのって、よう考えたら、そりゃオレらやわって感じですけどね。

ー放送開始した『アクダマドライブ』は観ましたか?

ユーキ:観ました。ストーリーが本当に面白かったですね。第1話目を観て、続き気になるな〜って楽しみにしながら1週間過ごしてましたもん。オレらがOPやってる云々関係なく楽しんでますね。

タクマ:ストーリーのテンポが良くて展開がどんどん進んでいくから飽きないよね。普段、アニメを観ない人でも楽しめると思う。

チヨ:今は原作が連載漫画のアニメ作品が多いと思うんですけど『アクダマドライブ』はオリジナルアニメ作品っていうのも大きいですね。1話目を観て、面白かったら続きが気になってずっと観るじゃないですか。そこも僕らにとっても嬉しいところでした。

ーイチローさんはアニメを観ますか?

169 イチロー(以下、イチロー):強いていうなら1番観ているのはAVになるっすねぇ。

タクマ:……いや。「アニメは観ますか?」って聞かれてんのよ、今。

イチロー:あー! そっちでした? ごめんなさい! 『アクダマドライブ』の話か。そうっすね、好きなキャラクターは医者のお姉さんですかね。えちえちそうなんで放送前からチェックしています。そこ??? ってところにホクロ、ありそうじゃないですか。今後が楽しみなキャラです。あと、これはちゃんと伝えておこうと思いますけど、最近のAV女優さんの中ではAIKAさんが推しです。

ー王道ですね。

イチロー:黒ギャル元祖的な感じがあって「やっぱここだな」っていう。戻ってきた感というか。やっぱり黒ギャルカルチャーは廃れないんですよね。輝き続けてる。ちょっといじめられたいなって目線でお世話になってるんですけど、そこは『アクダマドライブ』の医者のお姉さんにも通ずる部分がありますかねー。

ーおす。あの……インタビュー中に納豆食べるの止めてもらえますか?

最近のスサシが表現する要素を詰め込んだ「STEAL!!」

ーさて、OPとなった「STEAL!!」ですが、実にグルーヴィなスサシらしい楽曲だと感じました。

ユーキ:作曲はタクマですが、今までオレらがやってきたことを1曲に全部ぶち込んだ感がありますね。

タクマ:そうだね。アグレッシブさやセクシーな要素、ダンサンブルな雰囲気など、これまでスサシが表現してきた要素を全部詰め込んで凝縮させた1曲です。でも”たまたま”そういう風になっていった楽曲なんですよね。

ー”たまたま”と言うと?

タクマ:制作している段階でAメロ、Bメロと作っているうちに、気づいたら、色んな要素が詰め込まれていたというか。サビだけなかなか思いつかなかったんですけど、そこで、これまでのスサシの要素を全部1曲の中に揃えようと思いついたんです。そこで今のサビが出来上がったんですよね。作曲者の観点からすると、楽曲の組み方に自分なりの理由づけがあった方が制作しやすいんですよ。その方が自分で自分を納得させられるから。ただ、サビは何パターンかあって、そこから採用したんですけど、メンバー的にもちょっと違和感があるものをあえて選んでいるんです。

ーあ、違和感があった方を選んだんですね?

ユーキ:そう。実際「STEAL!!」のサビはけっこう迷ったんです。タクマと相談しながら決めた今のサビって、ボーカルのメロディという点で言うと、今までやっていない感じなんですよ。普段、オレが歌ってるキーよりも低い音階で、そこに自分の声を重ねて混声何十奏みたいなハーモニーで1つのボーカルとして聴かせている感じなんで。これで良いのかな、という思いもありつつ、アニメのOPになったときに映えるサビは今のメロディだろうと感じたし、多くの人に伝わりやすいだろうと思ったんです。それに、タクマがオレのボーカルの低いキーの方に個性や良さを見出してくれているんであれば、それはもう間違いないんで今のサビでいこう、と。もっと大衆にウケそうなポップなサビの案もあったんですけどね。

タクマ:あったね。ただ、変に大衆性を意識するのだけは絶対にイヤだったんすよ。正直、周囲からのハードルもないわけじゃないじゃないですか。「アニメのOP楽曲でスサシはどう出るんだ?」っていう。そこで普段のオレらがやっていないような大衆向けの曲を出しても「まぁ、そうなるよね」ってだけじゃないですか。楽曲の良い悪いっていうのは、アニメのOP楽曲かどうかは関係なく評価してほしかったんで、中途半端なことはやらないようにしましたね。

ーちなみに9月にEP「スサ死e.p.」をリリースされたばかりですが「STEAL!!」は、いつ頃、制作していたんですか?

ユーキ:4月頃ちゃう? 自粛期間中だったと思う。

タクマ:そうそう。これがまたしんどかったんですよね。大変だったす。

ーコロナ禍で精神的にしんどかったという意味ですか?

タクマ:いえ、というより、これまでユーキと対面で制作してきたんで。あの頃、人と会っちゃいけない時期だったじゃないですか。遠隔でやり取りしながら進めていたんですけど、なんか微妙だなって思いながら制作も捗らなくて。かつ、ライブもないんでインスピレーションも得ることができないし。何も思いつかない、と思いながら作っていたんですよ。締め切りもあったので、けっこうヤバイなって毎日思っていました。

ーなるほど。アニメのOPということで何かお題などはありましたか?

タクマ:サイバーパンクっぽさであるとか、そういうテーマはもらっていました。でも、オレらはそもそもがサイバーパンクっぽい感じですからね。自分のバンドのテーマに寄り過ぎている部分もありつつ、しっかりメロディが耳に残るものでないと意味がないし、なおさら難しかったですね。シングルっぽい曲を作ろうと思って作るのって本当に難しいことなんだなって思いましたね。

ー「STEAL!!」はキャッチーでいてスサシらしいインパクトのある楽曲だと思います。まさしくシングルっぽいというか。

タクマ:そう捉えられるのはありがたいですね。最近まで自分の中であんまりしっくりきてなかったんですよ。MVを撮ったり、ライブ収録で「STEAL!!」を演奏して、ようやく「これ、いい曲なんじゃね?」って徐々に自信がついてきている段階です。

ユーキ:時間を置くことで客観的に見れるようになりつつあるのかもしれないな。ライブで演奏できるわけでもないから作曲者としてはね。

ー次にライブでやる機会が訪れたときには、「STEAL!!」はめっちゃ盛り上がると思いますよ。

ユーキ:うん。盛り上がるでしょう。

チヨ:来年、フェスに出演できたときとか、「STEAL!!」が僕らの知らん間に有名になってくれてたらいいんですけどね。

タクマ:フェスだったら、ぜーったいに、当たり前に「STEAL!!」はやるね。

ユーキ:だって『アクダマドライブ』が広めてくれてるわけやもんな。

タクマ:そうだよ、超ありがたいよ。

チヨ:しかも珍しくサビでちゃんと2ビートしてるし。曲としてわかりやすいじゃないですか。あとは『アクダマドライブ』に頑張って広めてもらって。

一同:

“悪”から得たインスピレーションを散りばめて

ーでは、歌詞の内容についても教えてください。

ユーキ:『アクダマドライブ』の”悪”からインスピレーションで広げていって。そこで口にして気持ち良い言葉や耳に残るワードを大切にしていきました。具体的に何か1つのストーリーを描くというよりも絵を描くような感じのイメージで、言葉を並べていった感覚です。アニメの”全員悪玉”っていうテーマに沿って考えると、そこには悪役しかいてないから「悪という概念自体がない、各々が正義」っていうニュアンスがありますね。悪とされているもの、そういう人生を生きている人たちであっても、自分が正しいと思っている気持ちの強さがあれば、人から”悪”だとされても自分的にOKという気持ちがあればいいんじゃないかな、と。

ー歌詞の冒頭に”Steal the world”という一節がありますね。そのまま「世界を盗め」って意図がタイトルの「STEAL!!」に反映されているんですか?

ユーキ:ああ、そうd…… イチロー:そうですね!

ーおっと?

イチロー:やっぱ、世界をかっさらっちまうかなって。しかも、こっそり。

チヨ:こっそりってキャッツ・アイ的な?

イチロー:いや、違う。やられた〜っていうよりは気付いたら「あれ? ない?」って感じ。気づいたらもう、世界がオレたちに奪われてるってことすね。

タクマ:どう? ユーキ、合ってる?

ユーキ:(イチローの話を)聞いてて、世界をかっさらうみたいな感じでいいなって思った。

イチロー:や・ろ?

ーちなみに世界をかっさらった後は何かあるんですか?

イチロー:やっぱ全部かっさらっちゃうと「これはちょっといらなかったかもなー(汗)」ってのも出てくるじゃないですか。それをソッと戻す感じですかね。リバース。だから本当は「STEAL & REVERSE」なんですよ。”& REVERSE”は曲名としては書いていないんですけど、そこまで含めての意味が込められているんで。なので「STEAL!!」のタイトルを見て「やべぇ、次のシングルのタイトルに“REVERSE”くるわ」って予想できるリスナーがいたら「やるね。お前もこっち側?」ってとこですね。

ーそうですか。

タクマ:なんかさ、こういう内容が無いことを話させたらピカイチだよね。

チヨ:いや、すごいよ。詐欺師、なれるんちゃう?

イチロー:なれるっしょ。”アクダマ(悪玉)”だからさ。補足があったらユーキ、お願いします。

ユーキ:いや(笑)。あながち間違ってないだけにもういいわ。イチローみたいな人にも伝わってるんやなってところで、もういいす。「STEAL!!」っていう抽象的なイメージのタイトルであったとしても、ちゃんと汲んでくれてるんだなってことがわかったんで。

一同:

バンドの様々な側面を贅沢に伝えるワンマンツアー

ーすでに来年開催される全国ツアー「HAPPY BIRTH DIE」が発表されていますが、これについても教えてもらえますか?

チヨ:2021年1月から全国26ヶ所を巡るワンマンツアー「HAPPY BIRTH DIE」を敢行予定です。従来のスサシのライブとは別の角度で面白いやり方をやる予定です。現状考えているのは複数の構成を何部かに分けてショーアップしたスタイルで見せる形ですね。スサシには激しい面、セクシーな面など、楽曲によって様々な表現ができるので、そこを区分けして披露することができたらって考えているんですよ。今は色々と計画をしている段階です。以前とは状況が変わっているし、今まで通りじゃない新しいことをやって、お客さんもオレらもハッピーになれたらいいなって思っています。

ユーキ:複数の構成でライブできるだけの楽曲がそろっているし、色んな側面を持っているバンドなんで。ここが固まっていないときは自分でも器用貧乏になっちゃってるなっていうのはあったんですけど、最近は普通にやれている、それがスタイルになって表現の幅が広がっているんですよね。色んなパフォーマンスに対応できるようになってきているので、次のツアーは1バンドしか出てないのに、意味わからん対バンライブを見ているような気分になれるイベントにしようと考えています。スサシはメンバーのキャラ立ちもしっかりしているし、ある種のアイドル性みたいな部分もあると思うんですよ。ダークヒーローアイドル的な。そんな風に色んな方向に振ることができるので、今まで、できへんかったことをワンマンで贅沢に披露したいですね。

ーワンマンだけにやりやすさもありますよね。

タクマ:そうすね。意外とセットリストも考えやすい。

ユーキ:スサシのことを好きな人であれば、自分が聴きたい曲が聴ける確率が高いライブになると思います。オレもそうなんですけど、バンドが聴きたい曲をライブでやってくれたら嬉しいじゃないですか。そんな風に喜んでもらえたらいいし、何よりオレらが楽しむから、来てくれる人も絶対に楽しいと思うんで。

ーどんな形になるのか非常に楽しみです。

イチロー:あの、ちょっといいですか?

ーはい!

イチロー:今回のシングル「STEAL!!」なんですが、大阪のFLAKE RECORDSでご購入いただくと『イチロック☆GREATEST HITS』が特典として付属されます。自分で制作したトラックにラップを乗っけたキングギドラ直系と言えなくもない90’s感のあるHIPHOPソングも収録しております。この楽曲は”悪童”と書いて”バッドボーイ”と読みます。

ユーキ:聴くドゥーラグっすよ。

ー”聴くドゥーラグ”!

イチロー:ラブソングも入っておりまして、ライブバージョン2曲にMCも1曲としてカウントし全7曲収録となっております。

ーわかりました。

イチロー:これはFLAKE RECORDS限定なので、是非チェックしていただきたいですね。ちなみに2ndアルバム『NU BLACK』リリース時には同じくFLAKE RECORDSさんの方で私のソロ曲第2弾「イチロック☆でGO」を収録したCD-Rを特典としてご用意させていただいたのですが非常にご好評いただいたと聞いております。このCD-Rに続くソロ作として、ご期待いただきたい。

ーはい。わかりました。

イチロー:そもそもを辿ると1stアルバム『火花音楽匯演』リリース時にはソロ楽曲第1弾「イチロック☆だもん」を収録したCD-Rを、やはりFLAKE RECORDSさん限定特典として、ご用意させていただきました。今ではコレクターズアイテムとして高値で取引されているとかいないとか。そういった経緯を踏まえ、今回の「STEAL!!」においては、ついに『イチロック☆GREATEST HITS』になったわけです。スサシのリリースの歴史とFLAKE RECORDSと共に歩んだ私の進化を発表できることを非常に嬉しく思っています。

ーわかりましたから。