FOCUS:PEAVIS – 時代を生き抜く、ピュアネスとバランス感覚from EYESCREAM No.177

言わずもがな、2020年は世界中が混迷を極めた年だった。2021年においても問題は山積みだが、その最中“Peace & Unity”を信条に活動する福岡ベースのラッパー、PEAVISが待望の2ndアルバム『PORTRA¥AL』をリリースした。俯瞰的に現実を見つめ、今思っていることをストレートに詰め込んだという本作。彼が捉えた“情景描写”について聞いた。

“アートは政治や世の中の情勢を飲み込んで、超越できるもの”

-前作『Peace in Vase』から1年と少し。待望の2ndアルバムとなりますが、いつ頃から制作をスタートされたのでしょうか?

最初の曲ができたのが去年の3月頃なので、コロナ禍での制作でした。レコーディングも全部福岡で。直接的にコロナについて言及してるとかではないですけど、2020年にしか生まれない、そういった心境が詰まったアルバムになりました。

-アルバム全体の構成で意識したことはありますか?

多くの人に伝わりやすいように、という点は意識しました。リリックやビート選びもこれまでよりも分かりやすいと思うし、みんなが聴ける音楽に昇華したいなと思って。浅くならないように分かりやすく、伝えたいことを明確にして1曲ずつ向き合って作っていきましたね。

-アルバムタイトルの意味は?

『PORTRA¥AL』は肖像画とか情景描写といった意味なんですけど、今の現実や自分を、ありのままに表現したっていう想いを込めて。タイトルのYが“¥”マークになっているのは、世の中何だかんだ言っても、実際お金や数字で動いてるってことを表現したくて。

-数字を意識するというのは具体的にはどんなことでしょう?

例えば誰かを評価する指標がSNSのフォロワー数だったり、お金がないとそもそもエントリーできないみたいなことが、コロナで加速したような気がしていて。数字に支配されて、惑わされてるなって感じています。

「Carrying You feat. YonYon」では、恋人や友だちに会えなくなったりする中での気持ちを歌っているんですけど、SNSで誰とでも繋がれる時代だからこそ、もっと身近なパーソナルな関係を大事にするべきって思うんです。フォロワーが何万人いたとしても、自分が本当にピンチの時に助けてくれる人は、何人いるんだっていう。

-より人間的な向き合い方だったり、自戒も込めて惑わされないように。

まさにそうですね。「Show is Over feat. week dudus」は、映画「トゥルーマン・ショー」のように、作り物の世界にいることに気づいて、そこから抜け出すみたいなことをテーマにしています。SNSなどの作り物の世界の中で誰かの人生を傍観するんじゃなくて、自分の人生を生きろっていうコンセプトで、week dudusくんにオファーしました。音楽においても、評価されるためにやるのではなく、自分の言いたいことを言えて、自分の人生を生きられたらいいなって。そういった意味ではタトゥーも自己表現として分かりやすい方法だと思う。日本独特の固定概念は根深いけど、僕は一種の表現として、子供の頃好きだったものや愛着のあるものを入れていて、そこから興味を持ってもらうこともあるから。

-パーソナルな視点ということで考えると、福岡の音楽・カルチャーシーンについてはどのような印象を持っていますか?

僕が10代の頃、親不孝通りってクラブ街には、ギャングスタから、アンダーグラウンドなヒップホップをやってる人たち、パンクスまで一同に集まっててカオスでした。ただ、アウトプットの方向性が違うだけで根っこは一緒だから仲良くなれるというか。色んなスタイルに影響を受けてきたし、そういった混沌とした部分とゆるいノリがあって、音楽制作には良い場所です。それに東京に固執する必要性もなくなってきているので、もっと盛り上がっていくと思います。移住者が増えて、開発も進んでるけど、ローカルの良さや、東京に媚びないスタイルはキープしたいですね。それがローカライズに繋がるし、福岡だけじゃなく他もそうだと思いますけど、地元をアップするために東京にかましに行くというか。

-変化への対応力が求められますね。

「ガラスの地球」では、手塚治虫の「ガラスの地球を救え」っていう本を題材に、発展することのカウンターで失われていくものについて歌っていて。福岡もまさにそうですけど例えば、近所のご飯屋さん潰れないでほしいなとか。iPhoneを捨てて山で暮らせっていう極論の話ではないけど、便利になったことで今失われつつあるものを理解した上で、次の未来に向かっていくことが大事なんじゃないかなって。¥マークの話に通ずる部分もあるけど人間の幸せ=お金ではないので。お金がなくても、頑張って好きなことをやってる人は尊いなと思います。中々チャンスがなくて、もがいてる若い子がめちゃいるので、そういった子は気にかけていきたいなって思ってます。

-フックが印象的な「Keep Winning」では、同郷のKAISHIをフィーチャリングに迎えていますが、そういったことを意識して?

そうですね。10代の若い後輩と会話をすることもあるんですけど、結構ゲットーな環境で生きている。海外みたいな話かもしれないですけど、今の日本のストリートでもまだそういった貧困はあって。お金もないし大変なこともあるけど、どんな環境でも何か好きなことを続けて生きていけるように、っていうポジティブなメッセージを込めています。KAISHIの最新アルバム『ALL 15 WELL』ではディレクションを手伝っていて、周りの若い子をサポートしたり還元する動きはもっとしていきたいです。

「マゴコロ feat. 鎮座DOPENESS」でも、傷ついても大丈夫っていう前向きな想いを歌っていて。この時代を生き抜いていく上で、タイトル通り真心や愛情、自分にとって大切なものを見失わないことが、より大事になってくるんじゃないかな。

-活動において“Peace&Unity”というコンセプトを掲げていますが、ある種、社会の分断をも感じさせるような今のムードについてはどう捉え、反映していますか?

メディアに踊らされないように、自分の感覚を信じて常にド真ん中でいたいと思います。発信することの良し悪しではなく、煽られずにフラットで、という感じです。前作ではこうなって欲しいみたいな希望が強かったんですけど、今回のアルバムでは客観的に見た、今を伝えたくて。アートは政治や世の中の情勢を飲み込んで、超越できるものだと思うので。自分のやれることに集中して、今後も作品を通して自分の言いたいことを届けられたらと思っています。

INFORMATION

PEAVIS 2ndアルバム『PORTRA¥AL』

レーベル名:Peace Tree
Distributed by NexTone Inc.
https://nex-tone.link/94415

トラックリスト:
1. Carrying You feat. YonYon / prod. NARISK
2. Show is Over feat. week dudus / prod. Laptopboyboy
3. Be Changed / prod. NARISK
4. To The World / prod. Tigaone
5. Keep Winning feat. KAISHI / prod. Panda Gomm
6. Kizu / prod. NARISK
7. Jewelry Box feat. T-K TONY / prod. Yusuke Ito (MurderFaktry)
8. マゴコロ feat. 鎮座 DOPENESS / prod. DJ Kenbeat
9. ガラスの地球 / prod. Shin Sakiura
10. Carrying You (tofubeats remix) feat. YonYon / prod. tofubeats

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