12月19日から突如としてEYESCREAMのインスタグラム(@eyescream_mag)をジャックしだしたtrolleattroll(トロルイートトロル)なるもの。断片的/多層的に伝わってくる情報のなかには、真部脩一、食品まつり a.k.a foodman、KEZZARDRIX、blackmeans、offshoreなどといったワードを確認することができる。それらが交錯する中心点から、ミューズとしてこちらを見つめるのは金子理江だ。12月18日、彼女が20歳になった瞬間に明かされたこのプロジェクトは、まだまだ謎な部分も多い。ここでは、20歳の誕生日を迎える直前の金子の視点から垣間見てみた。
一人の少女が女性になる瞬間と、その現在と未来の記憶と記録を音楽とアート、ファッションで表現する——。trolleattrollのこのコンセプトは金子理江の存在あってのものだ。ではそもそもなぜこのプロジェクトの中核が金子理江だったのか。その理由を金子自身に聞いた今回のインタビュー。だが結局その答えの半分くらいは、取材冒頭のやりとりで語られてしまったように思う。
取材場所に訪れた時の、金子理江の第一声。インタビュアーの私を見て、
「あ、女の人だ! よかった、うれしい。女の人だいすき。ふふ」
そして挨拶を済ませると
「下の名前はなんていうんですか?」
「めぐみです」
「(店のメニューを見ながら)めぐみさんは飲み物、何にしました?」
初対面の可愛い女の子に、頬のすべすべの感触が見た目に伝わるくらいの距離で下の名前を呼ばれたら、男じゃなくたってドキドキする。ていうか「何にしました?」ってなんだよ。言ったら同じもの頼むのかよ(頼まなかった)。
trolleattrollをともに創る“hidden family”たちの気持ちが少し、分かった気がした。完璧な人たらし。
「全部計算でしょ、踊らされてバカじゃないの」という人もいるだろうが、退屈で踊れないより全然いい。そもそも計算かどうかなんて、結局は本人にしか分からないことだ。
「なぜか昔から敵を作りやすいんですよね(笑)。些細なことであることないこと言われたり、それをまた別の人が“それも計算なんでしょ”って言ってきたり。別にどう思われてもいいんですけどね。だって真実は私にしか分からないし、わざわざ弁解する理由もないし。この仕事って人に気に入られないといけないのは事実だけど、だからってそういうところで頑張る気にはなれないから」
もともとはアイドルになる気などまったくなかったという金子。2年契約のイメージモデルの仕事に気がつけば歌と踊りがつき、いつの間にかアイドルとして走り始めていた。MVをきっかけに世界からも注目を浴び、反響の大きさと物事の流れの速さに途中で投げ出すこともできず、そのまま現在に至るという。
「やるって決めたのは自分だから、っていうプライドもあるし、求めてくれる人がいる限りはそれに応えたいなって。それに、(アイドルとして頑張れるのは)今しかないっていうのはわかるから。年齢的にもそうだし、どんどん替えは出てくるし、在庫も増えていくし」
在庫。ここまで腹の据わった19歳の替えはそういない気がするが、ではその“在庫”の中で、なぜ自分がtrolleattrollの中心なのか。前述の通りこのプロジェクトには、それぞれの世界で第一線を張るクリエイターたちが集まっている。この状況を金子自身はどう思っているのだろう。
「んー……。何なんでしょうね、本当に。わからないんですよ、自分でも」
ずっと絶やさずにいた笑顔がほんの少しだけ、苦みばしる。やはりプレッシャーは相当なものだろうか。
「それはもう、めちゃめちゃあります。もちろんそれって悪い面だけじゃなくて、いい面もなんだけど……。なんか、本当は自由に生きたいのに、こういう時にもちゃんと応えようとする自分自身が嫌いです。前はもっと好きなようにやっていて、どんな相手も環境も関係なかったけど、今はそういう訳にもいかなくなってきちゃった。自分の意志とは別のところで、常識としてやらなきゃいけないこともあるっていうのは頭ではわかっているんだけど」
葛藤の原因は“年齢での括り”という、すべての女性が背負う宿命にもある。
「もうすぐ20歳っていうギリギリのラインにいて。私自身はJKブランドとか“10代なら許される”みたいなの、本当にどうでもいいんですよ。でもこの世の中はそういうものに縛られ過ぎてるじゃないですか」
trolleattroll “lost” MV
子どもと大人、自分と他人、期待と不安、自由と責任。さまざまなものの狭間で揺れ、それでも何とかバランスを保とうとする姿に、trolleattrollのロゴの下に刻まれた『Read a Mood』の文字を思い出す。物心ついた時からの“空気を読む”クセは悟り世代の特徴かもしれないが、金子の場合は、非力な少女に備わった防衛本能、とでもいおうか。ぴりっと不思議な危うさが孕んで、なんとなく目が離せない。この緊張感は間違いなく彼女だけの魅力だ。
そして防衛本能なるその鎧は、今のところステージの上でのみ脱ぐことができるという。今後、trolleattrollのステージでは一体どんな素の姿を見せてくれるのだろうか、期待して待ちたい。
「感情を出すのが苦手だから、歌とかに乗せるとラクなんですよね。余計なことを考えなくて済むから。だからマイク持っている時が一番楽しい。いつもめっちゃ暴れて発散してます。だって、ステージに立ってしまえば誰にも何も言われないでしょ? その瞬間は全部自分だけのものだから」
EYESCREAMインスタを乗っ取った「JACK IN THE EYES」は2017年12月19日〜12月25日のあいだ行われる。
INFORMATION
trolleattroll
公式サイト:
http://trolleattroll.com/
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