クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。今回は、独特の色彩感覚で、有機性と幾何学性を併せ持つ線を描きだす、ユンボム。第17回グラフィック「1_WALL」のファイナリストにも選出された彼女がセレクトしたZINEとは。
グラフィックデザインを学ぶため、日本の美術大学へ入学したことを機に、韓国・釜山から日本へ移り住んだユンボム。日本人の祖父を持つこともあり、もともと日本との縁も深かった彼女だが、日本でデザインを学ぼうと決意したのは、17歳のときに日本で見た仲條正義の展示がきっかけだったという。
「ある展示で仲條正義さんの作品を見て、日本ならおもしろいことが勉強できるかなと思って、留学を決めたんです。でもグラフィックデザインを勉強したくて大学に入ったから、大学4年生まではイラストを描くつもりはなくて。尊敬しているデザイナーの大島依提亜さんにポートフォリオを見せる機会があったときに、ポートフォリオの中に落書きで描いたイラストも入れたら、大島さんが褒めてくれて、そこから調子に乗って描くようになった。その後、『1_WALL』に応募して、長崎訓子さんの奨励賞をいただいたこともあって、イラストを続けようという思いが強くなりました」
大学卒業後、現在はグラフィックデザイナーとして仕事をしつつ、イラストレーションを描き続けているユンボム。言葉にし難い絶妙な感覚をすくい取った彼女の作品が生まれるのは、自身の内面でネガティブな気持ちが強くなったときなのだという。
「恥ずかしいんですけど、ネガティブな気持ちのときじゃないと描けないんですよ。『1_WALL』に出した『パーク幡ヶ谷209』という作品も、当時自分が住んでいた家が環境も含めてすごく嫌いだったから、その気持ちを昇華しようと思って描き始めました。そうした思いをイラストレーションに落とし込む過程を経て、気に入った絵が完成することによって、マイナスな気持ちが少しだけ解消されるような気がします」
彼女の作品はラフの段階から完成まで、すべてパソコン上で完結している。以前は手書きで描くこともあったそうだが、最近は一貫してデジタルでイラストレーションを描いているのだと話す。そこには、デジタル作品の「価値」に対する信念があった。
「手書きとデジタル、それぞれが持つ『深さ』や『味』についてはよく考えます。多くの人にとって、今はまだ手書きの作品の方が、価値があると思われているし、私のイラストについても、手書きの方がいいと言われて、悩んだこともありました。でも、やっぱり私自身の作品は、デジタルの方がしっくりくると思っているんです。それに個人的には、紙ってそのうちなくなると思っているから、その時代に合う形で絵を描いていきたい。デジタルの絵を見せる方法として、何が最適なのかは難しいけど、今のところはSNSで展開するのが一番いいんじゃないかなと思って、Instagramを使っています。今、友達と3人で文芸誌を作っているんですけど、それもWEBで発表するつもりです。次の『TOKYO ART BOOK FAIR』に合わせて、紙バージョンも一応出すんですけどね。みんなでイベントに参加してわいわいしたい、という理由ですけど(笑)」
【ユンボムがレコメンドするZINE5冊】
INFORMATION
ユンボム
平成生まれのクリエイター総勢60名によるグループ展「Hey! Say! Graphics!」に参加
Hey! Say! Graphics!
会期:2018年8月31日(金) – 9月12日(水) ※会期中無休・入場無料
時間:11:00 – 21:00(9/2&9/9は20:00まで、9/12は18:00まで)
会場:表参道ROCKET(東京都渋谷区神宮前4−12−10 表参道ヒルズ同潤館3F)
http://www.rocket-jp.com
・オープニングパーティー:8月31日(金)19:00 – 21:00