[ZINEspiration]Vol.13 ユンボム

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui

[ZINEspiration]Vol.13 ユンボム

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui

クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。今回は、独特の色彩感覚で、有機性と幾何学性を併せ持つ線を描きだす、ユンボム。第17回グラフィック「1_WALL」のファイナリストにも選出された彼女がセレクトしたZINEとは。

グラフィックデザインを学ぶため、日本の美術大学へ入学したことを機に、韓国・釜山から日本へ移り住んだユンボム。日本人の祖父を持つこともあり、もともと日本との縁も深かった彼女だが、日本でデザインを学ぼうと決意したのは、17歳のときに日本で見た仲條正義の展示がきっかけだったという。

「ある展示で仲條正義さんの作品を見て、日本ならおもしろいことが勉強できるかなと思って、留学を決めたんです。でもグラフィックデザインを勉強したくて大学に入ったから、大学4年生まではイラストを描くつもりはなくて。尊敬しているデザイナーの大島依提亜さんにポートフォリオを見せる機会があったときに、ポートフォリオの中に落書きで描いたイラストも入れたら、大島さんが褒めてくれて、そこから調子に乗って描くようになった。その後、『1_WALL』に応募して、長崎訓子さんの奨励賞をいただいたこともあって、イラストを続けようという思いが強くなりました」

大学卒業後、現在はグラフィックデザイナーとして仕事をしつつ、イラストレーションを描き続けているユンボム。言葉にし難い絶妙な感覚をすくい取った彼女の作品が生まれるのは、自身の内面でネガティブな気持ちが強くなったときなのだという。

「恥ずかしいんですけど、ネガティブな気持ちのときじゃないと描けないんですよ。『1_WALL』に出した『パーク幡ヶ谷209』という作品も、当時自分が住んでいた家が環境も含めてすごく嫌いだったから、その気持ちを昇華しようと思って描き始めました。そうした思いをイラストレーションに落とし込む過程を経て、気に入った絵が完成することによって、マイナスな気持ちが少しだけ解消されるような気がします」

彼女の作品はラフの段階から完成まで、すべてパソコン上で完結している。以前は手書きで描くこともあったそうだが、最近は一貫してデジタルでイラストレーションを描いているのだと話す。そこには、デジタル作品の「価値」に対する信念があった。

「手書きとデジタル、それぞれが持つ『深さ』や『味』についてはよく考えます。多くの人にとって、今はまだ手書きの作品の方が、価値があると思われているし、私のイラストについても、手書きの方がいいと言われて、悩んだこともありました。でも、やっぱり私自身の作品は、デジタルの方がしっくりくると思っているんです。それに個人的には、紙ってそのうちなくなると思っているから、その時代に合う形で絵を描いていきたい。デジタルの絵を見せる方法として、何が最適なのかは難しいけど、今のところはSNSで展開するのが一番いいんじゃないかなと思って、Instagramを使っています。今、友達と3人で文芸誌を作っているんですけど、それもWEBで発表するつもりです。次の『TOKYO ART BOOK FAIR』に合わせて、紙バージョンも一応出すんですけどね。みんなでイベントに参加してわいわいしたい、という理由ですけど(笑)」

【ユンボムがレコメンドするZINE5冊】

安藤晶子(IG:@kokia0414)、きくちゆみこ(IG:@unintendedvoices)、三河史堯
『cinemafilm vol 01』

「2015年に初めて『TOKYO ART BOOK FAIR』に行ったときに買ったZINEです。映画からイメージされた絵と文章をまとめたZINEで。『息子のまなざし』や『アデル、ブルーは熱い色』など、大好きな映画が取り上げられていたので買いました。安藤さんときくちさんと三河さんが、それぞれイラストと文章とデザインを担当されていて、最初はイラストに惹かれていたんですけど、デザインもテキストもすごくいいなと。このZINEをきっかけに、きくちさんの文章を読むようになりました。表紙も映画のチケットみたいで素敵ですよね」

山本悠(IG:@yuuyamamoto.jp
『ヨコハマトリエンナーレ2017 全作品解説出版記念パーティー』

「山本さんは、私と同じ年に『1_WALL』のファイナリストだったんです。友達から、ZINEを売るから遊びに来てと誘われたイベントに山本さんも参加していて、このZINEを買いました。このときのトリエンナーレにちょうどまだ行けてなかったんですけど、『これ見たら全部わかるよ!』って言われて……(笑)。表紙だけ見るとちょっと怪しいんですけど、山本さんはアートの人だから、内容はちゃんとした展覧会の評で。自分が行ってない展覧会の感想を人から聞くのって、意外とおもしろいんだなと思いました」

文藝誌 園 編集部(IG:@sono_magazine
『文藝誌 園』

「私の地元の釜山に関する文章が載っていたので気になって買いました。日本で暮らす韓国人としてのアイデンティティにまつわる話を書かれていて、共感しました。それと、今友達と作っている文芸誌の参考にしたくて。普段エディトリアルデザインをやっているから、紙媒体を見ていると文字の組み方とかつい気になっちゃうんですけど、これはデザインもすごく読みやすい。新しい感覚の文芸誌だなと思いました」

水越智美(IG:@mizugyo_za
『グッドモーニング』

「大好きなイラストレーターです。最近、海外でも人気みたいですね。最初に彼女の絵を見たときは『ラフなのかな?』と思ったんですよ。『これで終わり⁉︎』って。でもそれが新しいなって。形は単純だけど、目を惹きますよね。余白が多いのに、画面の中にいろんなものが描かれている感じがする。デジタルで描かれているけど、水越さんの作品こそ、手書きよりその方がいいなと思いますね。たまにInstagramにアップされているGIFも好きです」

加瀬透(IG:@kasetoru
『COPIED CITYⅠ』

「学生の頃、ゼミの先生に教えてもらってから、加瀬さんのデザインに憧れていて。このZINEは去年の『TOKYO ART BOOK FAIR』で、モノクロのグラフィックのかっこよさに惹かれて買って、ご本人にサインも入れてもらいました(笑)。写真とグラフィックのZINEなんですけど、ピンホールカメラで撮ったみたいな写真で、すごくかっこいいんです」

INFORMATION

ユンボム
平成生まれのクリエイター総勢60名によるグループ展「Hey! Say! Graphics!」に参加

Hey! Say! Graphics!
会期:2018年8月31日(金) – 9月12日(水) ※会期中無休・入場無料
時間:11:00 – 21:00(9/2&9/9は20:00まで、9/12は18:00まで)
会場:表参道ROCKET(東京都渋谷区神宮前4−12−10 表参道ヒルズ同潤館3F)
http://www.rocket-jp.com

・オープニングパーティー:8月31日(金)19:00 – 21:00

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・Vol.03 酒井いぶき
・Vol.04 安野谷昌穂
・SUMIRE meets TOKYO ART BOOK FAIR
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・Vol.08 篠宮由香利
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・Vol.10 山ちゃん(どついたるねん)
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Vol.12 TOWN BOY(君)
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