クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。スクリーンプリントのような味わいで、ダイナミックな身体の線を誇示する威風堂々たる人物たちを描く、イラストレーターの一乗ひかるにインタビューした。
東京藝術大学大学院でグラフィックデザインを学び、卒業後はデザイナーとしてデザイン事務所で働いていたこともある一乗ひかる。そもそも本格的にイラストを描き始めたきっかけも、学生時代のデザイン作品制作の一環だったのだそう。
「藝大にいる人ってみんなデッサンがめちゃくちゃうまいし、絵の具で描いたら私より上手な人はたくさんいるんです。デザインについても、周りに優秀な人がたくさんいて、へこんだりもしました。でもそんななかで、自分が得意なことを探すうちに、もしかしたらイラストがそうなのかもしれないと思うようになった。イラストを描き始めてからは、いかにデザインの邪魔にならない絵を描くかを試行錯誤していました。私は昔から漫画を読んで育ったから、最初のうちはどうしてもイラストに漫画の影響が強く出すぎてしまって。顔の中でも特に目って絵の特徴になりやすい分、どこから影響を受けたかが何となく見えてしまうことに気づいて、それを避けるために顔は捨てて、絵を必要最低限の要素だけで成り立たせることを思いついたんです」
一乗ひかるの作品において特徴的なのが、いきいきとした躍動感溢れる身体のライン。なかでも彼女自身がとりわけ楽しんで描いているのが、脚の描写なのだという。
「デザイン事務所で働いていた頃から、将来的にイラストレーターになりたいと思っていたから、仕事は忙しかったけど、ちゃんと絵を描き続けたかった。でも時間が限られているなかで続けるためには、描いていて自分が本当に楽しいと思えるものじゃないと難しくて。それで、『私が一番描きたいのは脚だ!』と。脚のラインをきちんと見せられるモチーフとして、最初は女子高生ばかり描いていたんです。描くモチーフとしては女の子が一番好きですね。曲線を描くのが気持ちいいから。最近はスニーカーを描くのも楽しいです」
夢を達成するための方法を模索するなかで、自身のイラストレーションの個性を確立させた一乗ひかる。はれて2018年にイラストレーターとして独立し、2019年にはすでに3つの個展が控えている彼女に、今後の活動の目標について尋ねてみた。
「今後はファッションや音楽など、自分が好きなジャンルと関わる表現をもっとやっていけたら嬉しいですね。ちょっと前までは、自分の名前をGoogle検索すると、『もしかして』って、漢字違いで同名の『超時空要塞マクロス』の主人公か、有名なホストの方が出て来たんですけど、最近『もしかして』が取れて、ちゃんと認識してもらえるようになったんです。最近、Twitterのフォロワー数がホストの方を超えたので、『下克上だ!』と思っています(笑)」
【一乗ひかるがレコメンドするZINE5冊】
INFORMATION
サントリーデジタルミュージアム
「空想の森」に参加
https://www.suntory.co.jp/company/mizutoikiru/works/kuusou_no_mori/
2019年春、夏にグループ展、夏に大阪で個展、冬に東京で個展を予定
http://hikaruichijo.com/
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