[ZINEspiration]Vol.17 一乗ひかる

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui

[ZINEspiration]Vol.17 一乗ひかる

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui

クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。スクリーンプリントのような味わいで、ダイナミックな身体の線を誇示する威風堂々たる人物たちを描く、イラストレーターの一乗ひかるにインタビューした。

東京藝術大学大学院でグラフィックデザインを学び、卒業後はデザイナーとしてデザイン事務所で働いていたこともある一乗ひかる。そもそも本格的にイラストを描き始めたきっかけも、学生時代のデザイン作品制作の一環だったのだそう。

「藝大にいる人ってみんなデッサンがめちゃくちゃうまいし、絵の具で描いたら私より上手な人はたくさんいるんです。デザインについても、周りに優秀な人がたくさんいて、へこんだりもしました。でもそんななかで、自分が得意なことを探すうちに、もしかしたらイラストがそうなのかもしれないと思うようになった。イラストを描き始めてからは、いかにデザインの邪魔にならない絵を描くかを試行錯誤していました。私は昔から漫画を読んで育ったから、最初のうちはどうしてもイラストに漫画の影響が強く出すぎてしまって。顔の中でも特に目って絵の特徴になりやすい分、どこから影響を受けたかが何となく見えてしまうことに気づいて、それを避けるために顔は捨てて、絵を必要最低限の要素だけで成り立たせることを思いついたんです」

一乗ひかるの作品において特徴的なのが、いきいきとした躍動感溢れる身体のライン。なかでも彼女自身がとりわけ楽しんで描いているのが、脚の描写なのだという。

「デザイン事務所で働いていた頃から、将来的にイラストレーターになりたいと思っていたから、仕事は忙しかったけど、ちゃんと絵を描き続けたかった。でも時間が限られているなかで続けるためには、描いていて自分が本当に楽しいと思えるものじゃないと難しくて。それで、『私が一番描きたいのは脚だ!』と。脚のラインをきちんと見せられるモチーフとして、最初は女子高生ばかり描いていたんです。描くモチーフとしては女の子が一番好きですね。曲線を描くのが気持ちいいから。最近はスニーカーを描くのも楽しいです」

夢を達成するための方法を模索するなかで、自身のイラストレーションの個性を確立させた一乗ひかる。はれて2018年にイラストレーターとして独立し、2019年にはすでに3つの個展が控えている彼女に、今後の活動の目標について尋ねてみた。

「今後はファッションや音楽など、自分が好きなジャンルと関わる表現をもっとやっていけたら嬉しいですね。ちょっと前までは、自分の名前をGoogle検索すると、『もしかして』って、漢字違いで同名の『超時空要塞マクロス』の主人公か、有名なホストの方が出て来たんですけど、最近『もしかして』が取れて、ちゃんと認識してもらえるようになったんです。最近、Twitterのフォロワー数がホストの方を超えたので、『下克上だ!』と思っています(笑)」

【一乗ひかるがレコメンドするZINE5冊】

千葉紘香
『Genetic linkage 遺伝子の連鎖』

「大学院時代の同級生なんですけど、彼女の制作スタイルがすごく好きで。この中では毛糸などのいろんな糸をスキャンしていて、それが遺伝子を連想させるような作品になっている。背表紙もベロアのリボンで作ってあって、中の作品とリンクしていて。彼女の作品には肉体的な要素を感じさせるものが多くて、私とは作風が全然違うけれど、惹かれているものが同じ感じがしているんです」

湯浅政明
『st.BREAK FLIPBOOK No.4』

「いろいろなアニメーターの方が描いたパラパラ漫画シリーズのひとつで、アニメーション監督の湯浅政明さんのパラパラ漫画です。最近私の作品を、映像をやっている人に見せると、『湯浅さん好きでしょ?』って言われることが多くて。バレるのが恥ずかしいんですけど、気づいてみれば確かにすごく影響を受けている。昔、ツイッターで湯浅さんのことばかり書いていたら、このパラパラシリーズを発行している方が私をフォローしてくれていて、存在を教えてくれたことがきっかけで購入しました。このパラパラも、すごく湯浅さんらしいカット割で、いきなり場面が変わったりするところが面白いですね」

佐々木悟郎
『My Little Brown Book』

「昔、京都の恵文社一乗寺店に行ったときに買ったものです。旅日記やスケッチ、メモ書きのようなものがつらつら載っているんですけど、すごくしゃれていて。学生時代、制作に困ったときによく見ていました。20年くらいの期間にわたって描いていたノートから絞ったものが載せられているんですけど、このメモを描き続けられる生活というか、精神的な余裕のようなものも素敵だなあと思います」

北村美紀
『傍ら』

「北村美紀さんとは中学生の頃に、絵を描くのが好きだという共通点からBBSで仲良くなって。それからはBBS上やメールでやりとりをしたり、文通で絵を送りあったりしていたけど、一度も会ったことはなかったんです。しばらく連絡を取らない期間があったんですけど、大学時代のある日、自分が通っていた大学の購買にかわいいイラストのメモ帳が売っていて。手に取ってみたらイラストレーターの名前として『北村美紀』って書いてあった。それで連絡をとったら、彼女がイラストレーターとして活動していることがわかって。これは彼女が個展をやったときのZINEなんですけど、そのときにようやく初めて会えたんです。昔はお互いハンドルネームで呼んでいたから、『なんて呼んだらいい……?』みたいなやりとりから始まって(笑)。中学生の頃からの絵を知っている友達がこんなに素敵なイラストを描く人になっていたことが嬉しかったですね」

BND 榎元
『COSTUME 2』

「中学生の頃にネットの通販で買いました。その頃から私は、漫画もファッションもどちらも好きだったんですけど、当時はファッションと漫画って相容れないような気がしていて。でもこの人のイラストを見て、そのどちらの要素も両立していることにすごく衝撃を受けたんです。衣装が石岡瑛子的でめちゃくちゃおしゃれだし、身体のラインもすごく綺麗。今、絵を描くときに特に身体の線を気にして描くのは、ここからの影響なんだろうなと思います」

INFORMATION

サントリーデジタルミュージアム
「空想の森」に参加

https://www.suntory.co.jp/company/mizutoikiru/works/kuusou_no_mori/

2019年春、夏にグループ展、夏に大阪で個展、冬に東京で個展を予定
http://hikaruichijo.com/
Instagram: @ichijo_hikaru_
Twitter: @ichijo_hikaru

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