CHAPT. 02—NY
William Strobeck
スケートがシーンを変えるうえで重要な役割を担っているのがフィルムだ。William StrobeckがSupremeと共に作り上げたきた映像作品は業界問わず誰もが見ていて、そこに登場するユースに注目する。これまでに公開されてきた名作について、そこに込められた表現に関する考え方を聞く。EYESCREAM WEBでは最新号EYESCREAM No.181よりその一部をお届けする。
「次に何が起こるのか
新たなユースの登場が今も楽しみ」
―― まずは昨年ベルリンで撮影したSupremeの『MIND GOBLIN』について教えてください。
「Supremeのベルリンストアオープンに合わせて制作したビデオなんだ。去年の11月にリリースしたものだね。クルーの半分が先にベルリンに行って、その後、他の半分が来るという入れ替わり立ち替わりの撮影だったから、毎日起きては撮影の繰り返しだった。1ヶ月の間にできる限りのフッテージを撮ることに集中していたよ。その前はSupremeのミラノストアオープンのために『Stallion』を撮影して約3週間くらいで完成させたかな。フルレングスの撮影じゃないから、いつも締め切りがタイトなんだ」
―― フィルムを撮り続ける魅力は何ですか?
「振り返れば、もう25年くらいフィルムメイキングしているんだけど、この仕事は忍耐力がなきゃできないね。毎日必要なフッテージが撮れるわけでもなく、スケーターがトックをメイクするまでカメラを回し続けているんだ。まるで狩りに出るような感覚さ。獲物がとれる日もあれば、とれない日もある。カメラマンが瞬間を記録したいように、僕は時代を記録に残し続けていきたいんだ。最初のビデオカメラを手にしたのは14、15歳ぐらいのとき。祖母がクリスマスプレゼントでくれたんだよ。17歳でフィラデルフィアに引っ越してから、ずっと撮り続けているね。当時はラヴ・パーク(Love Park、今は閉鎖されたスケートの名スポット)が、まだあってスケーターにとっては最高の場所だったな。その後、NYに移ってきて、この街が持つエネルギーにテンションが上がったよ。NYで撮るスケートフィルムはどれも個性があるんだ」
―― 自分のキャリアの中でもっとも思い出に残っている作品は?
「Alien Workshopの『Photosynthesis』(2000年発表)。僕は撮影担当だったんだけど、初めてのオフィシャルスケートビデオの撮影で、今でもあの時の感動を覚えている。あとは、Supremeの初フルレングス『cherry』(2014年発表)。僕にとっても初のフルレングスだった。ブランドが僕のビジョンを信頼してくれて、今までやりたかったフィルムを作らせてもらったんだよ。ユーススケーターにとってもSupremeのビデオに出演するのは初めてのことだったから、全員で『cherry』のプレミアを祝福したね。このビデオがきっかけで、ユースが各シーンから脚光を浴びることになったし、スケートをしない人たちも楽しんでくれたから嬉しいよ。『cherry』はスケートシーンにエンジンをかけたような作品だと言えるね」
―― あなたが撮影したユースは、その多くが数年後にシーンを代表するヒーロー的な存在になっていますが、どんな視点でユーススケーターを見ているんですか?
「本能的な直感だけど、自分の周りで何が起こっているのかを見極めることから始まっているかもしれないね。僕も僕のプロジェクトも前進していくから、いつも『次は何が起こる?』って感覚で生きてるよ。あと、僕は社交的な性格だから、ユースとハングアウトして、彼らにどんな個性や才能があるのかを考えるんだ。その魅力や可能性をどうやったら引き出せるのかを考えながらね。次世代のユースが最大限に実力を発揮できる土台を作りたいと常に考えているよ」
―― 昨年は東京オリンピックでスケートが行われましたが、ストリートとスポーツとしてのスケートボードはどんな差があると思いますか?
「ストリートとスポーツとしてのスケートの境界線は明確で、オリンピックのスケートは僕たちとまったく関連性がないと思っているよ。オリンピックによって、スケートはもっとメインストリームな存在になって、スケートカンパニーのビジネスに貢献していくことだろうね。もちろん、オリンピックを否定するつもりはないし、金メダルを獲得した雄斗( 堀米雄斗)にとっては、彼の人生を変えた出来事だっただろう。ストリートスケートじゃ、よほど努力しなくては大金を稼ぐことは難しいのが現実さ。いくつかのスモールスケートブランドにスポンサードされてフィルムを作っていても生計は立てられないだろうし。選択は人それぞれで、スポーツとしてスケートを楽しむか、僕たちのようにストリートスケートで、フィルムを作って楽しむかの違いさ。僕の場合は、こうしてシーンのビッグブランドでもあるSupremeを通して自分の世界観を世の中に伝えることができていて、それで生活できているから、すごく恵まれていると思っているよ」
―― では、最近スタートさせたブランド、VIOLETについても教えてください。
「面白いプロジェクトをやりたくて始めたボードカンパニーだよ。ユースが乗りたくなるボードを作りたくてさ。ブランド名はVIOLETだけど、インスタとかステッカーには『its Violet!』って記載している。音の響きが好きだし、デッキを使っているキッズもブランド名に合っている雰囲気だと思うんだ。でも、現時点はリリース前で、クルーがスケートに使っているだけだね。これから本格的に動かなくちゃいけないけど大量に作る予定はないよ。時間をかけて面白いものを作って、それが自然と成長するのを楽しみたいね。サポートしているスケーターはSeven、Troy、August、Kyle、Efron、Patrick、Krisの7人で、まだ知られていない魅力的なユースだから、ブランドを通して彼らが知ってもらえるような土壌を作りたいと考えている」
―― 最後に、スケートを楽しむユースにアドバイスをお願いします。
「周りの意見やコメントに左右されないで、自分のやりたいことを貫いてほしい。もし僕がスケートフィルムを始めた頃に、周りのネガティブなコメントとかを真剣に受け取っていたら、こうはなっていなかったかもしれない。他人に言われたことをやるんじゃなくて、自分で考えて、無我夢中になって自己流のスタイルでやり続けるんだ。文句ばっかり言わずに、すぐに行動することが大切だよ」
INFORMATION
EYESCREAM No.181
発売:2022年2月1日(火)
Street Skateboarding 2022
スケートカルチャーはどう変わったのか
Fucking Awesome
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