昨年の11月25日にSpotify O-EASTにて開催されたMargt ISLAND 23。当日来場したオーディエンスをはじめ、出演アーティストやスタッフからも大きな反響を呼び、存続を熱望する声が高まっている。これまでにもMargt ISLANDの動向を度々お伝えしてきたEYESCREAMは、MargtのIsamuとArata、そしてMargt ISLANDにVJとして出演し、彼らとは旧知の仲であるデジタルアーティストのYuhei Kanbe(mesoism)を迎えプチ新年会を開催。Margt ISLAND 23の開催をサポートしたジョニーウォーカーのスコッチウイスキーを片手に、あの日の思い出を振り返りつつ、今後のMargt ISLANDについて自由に話してもらった。果たして、Margt ISLANDは今年どのような展開をみせるのか。
Left to Right→Isamu(Margt)、Yuhei Kanbe(mesoism)、Arata(Margt)
「Margt ISLANDの開催中はずっと、白昼夢を見ている感覚だった」
Kanbe:Margt ISLAND当日、二人は何時入りだったの?
Arata:前日の23:30ごろかな。Margt ISLANDの設営がオープンまで絶対に間に合わなさそうで、悲壮感が漂いまくってた。だってCAT ISLAND(2階ステージ)の猫のアーチを会場に搬入したのが、朝の7:00くらいだから(笑)。
※Margt ISLANDのオープンはAM11:00。
CAT ISLAND
Isamu:こっちはこっちで映像制作が間に合っていなかったから、オレは朝7時くらいまで事務所でずっと作業していて。Arataからちょくちょく進捗が来るのよ、会場設営が間に合わないって。
Arata:結局なんとか間に合わせたけど、オープンの時点ですでに満身創痍(笑)
Isamu:オープンに合わせてお客さんも並んでくれていて、出入り自由ではあったけど、会場は終始賑わっていたし、フードもグッズも爆速で売れて。そこは改善点でもあるけど、嬉しい誤算だった。
Arata:Margt ISLANDの開催中は、ずっと白昼夢を見ている感覚だったな。お客さんはライブを観て盛り上がっていたし、会場内も満員で、スタッフもみんな楽しんでいて、すごく幸福度の高い光景だった。CAT ISLANDに出演してくれたTENDREに、「ステージが小さくてごめんね」ってイベント後に謝ったんだよね。そしたら、「お客さんとの距離が近いし、みんなめっちゃ盛り上がってくれて、楽しかった」って言ってくれて。
Isamu:次回開催時にはCAT ISLANDの混雑を改善させるだろうから、あの光景は最初で最後。TENDREはじめ、CAT ISLANDの出演アーティストのライブをあの距離感で観られるのは、かなり貴重だったと思う。
当日のタイムテーブル
「VJブースから観たあの日の景色は、一生忘れない」
Kanbe:オレはねほんとに、当日の記憶がいっさいないんだよ。オレもギリギリまで映像を調整してたから徹夜で、Margt ISLANDには午後から行ったんだけど、結局、裏でずっと準備してたからライブも観てないし、プレッシャーがすごくて、純粋に楽しめなくて。仲間が主催したこんなにも楽しそうなイベントなのに、なんで自分はVJとして参加しちゃったんだろうって、出番直前まで思ってたね。
Arata:それはオレら自身も思ってた(笑)。何も考えずに遊びたかった。でもその分、自分のVJが終わったときの開放感がえぐかったんじゃない?
Kanbe:荘子it & TaiTan (from Dos Monos)のライブがスタートして、映像が流れた瞬間、会場からどよめきが起こって。オレにだけ聞こえた幻聴だったのかもしれないけど、めちゃくちゃ上がったんだよね。
Arata:オレらはラストのTempalayのVJが控えていて、結構焦って楽屋で準備してたんだけど、会場のどよめきが凄すぎて観に行ったもん。
Isamu:そうそう、会場がKanbeの映像で大盛り上がりしていて、オレらが最後にやるのが不安になった。
Arata:あの映像から、Kanbeのイベントに対するホスピタリティを感じた。オレらがMargt ISLANDのために作った花とかキャラクターとか、いろんなモチーフのデータを、一週間前くらいにKanbeに送ったじゃん。どういう感じに使うんだろうって思ってたけど、あれ全部モデリングして使ってくれたんでしょ?
※モデリング・・・0の状態からCGを作りあげること。
荘子it & TaiTan (from Dos Monos) × mesoism
荘子it & TaiTan (from Dos Monos) × mesoism
Isamu:あれは衝撃的だった。
Kanbe:自分の役目として、どういうアプローチでMargt ISLANDのVJをやろうか考えたときに、 “自分なりのMargt ISLANDをやろう”と思って。Margt ISLANDのキャラの制作にオレは一切関わっていないけど、あのキャラたちが広く浸透していったら、イベントとして良いだろうなとか、勝手にいろいろ思っていて。
Isamu:Margt ISLANDの打ち上げで言ってたもんね。「CGを使った映像は、一番オレがちゃんとやらなきゃいけない」って。
Arata:本当に素晴らしかった、ありがとう。
Kanbe:VJブースから観たあの日の景色は、一生忘れないね。ジングルで自分の名前がモニターに出るのとか、すごく嬉しかった。そもそも、フェスのラインナップに自分の名前が入っていること自体に上がったし、Tシャツにも名前を書いてくれていたし。嬉しかったな。
「Margt ISLANDを開催したことで、オレら自身が自分たちの歴史を感じた」
Kanbe:二人はVJを担当したアーティストとどうやってコミュニケーションを取って、制作を進めていった?
Arata:Tempalayは本番の二日前にやっと綾斗(小原綾斗)と話せたけど、結局、綾斗自身は一度もオレらの映像を観ないまま本番を迎えてる(笑)。スサシ(SPARK!!SOUND!!SHOW!!)は前にもSpotify O-EASTで一緒にライブをやったことがあったから、それをベースにアップデートしていって、Jojiは、オレらが撮りたい画を伝えた上で、鳥取(Jojiの故郷)まで取りに行った感じかな。
Tempalay × Margt
SPARK!!SOUND!!SHOW!! × Margt
Joji × Margt
Arata:KanbeはDos MonosのVJをやるのは初だもんね。
Kanbe:LINEでやりとりしつつ、荘子itとTaiTanと3人でスタジオに入ってリハもやったかな。本番2日前にもう1回リハして、そこでようやく荘子itから完成音源が届くって感じ。オレも出番ギリギリまで仕込むみたいな状態だったけど、荘子itも多分、当日の朝まで音をいじってたんじゃないかな。
Arata:saccharinとRyojiさん(Ryoji Yamada)は今回がほぼ初対面で、オファーのタイミングで一緒に呑みに行ったら、二人のバイブスがあって、今回の共演が実現した感じ。どういう風に映像制作を進めていったのか気になる。
saccharin × Ryoji Yamada
Isamu:JACKSON kakiと(sic)boyは、まずkakiに声をかけたら、(sic)boyくんを紹介してくれて、出演をオファーして。kakiが当日「今日はぼくの集大成です」って言ってくれたのが嬉しかったな。
JACKSON kaki × (sic)boy
Arata:kakiがミレパ(millennium parade)の映像制作を手伝ってくれたときに、オレらの映像への考え方とか表現方法に衝撃を受けたらしく、それがきっかけで「自分もVJへの考え方が変わった」って言ってくれて。今回、他にいい言葉が見つからなかったから、Margt ISLANDでの映像演出を“VJ”と呼んでいるけど、きっと本来のそれとは違くて、VJとしての経験値が高いkakiにとって、オレらのやり方は新鮮だったんだろうね。あとOsrinと歌代ニーナ。あそこは3〜4年ずっと一緒にやってるし、MVも最高だからなあのコンビは。間違いない組み合わせ。オレらは観られなかったけど、多分、一番フロアがアゲアゲな感じになってたんじゃないかな。
Isamu:TENDOUJIとMOTOはもう超ハッピーで、「Kids in the dark」とか「FIREBALL」とか、MargtがMVのディレクションをした曲をやってくれて、それが嬉しかった。スサシもMargtがMVを作った楽曲を全部やってくれて。Margt ISLANDだからこそのセトリだった。
TENDOUJI × MOTO
Arata:みんなMargtをフィーチャーしてくれて。それはオレらが今までやってきたことの賜物というか、オレら自身が自分たちの歴史を感じた。Margtという名前で活動しているけど、その実態をオレら自身があまり感じていなくて、Margt ISLANDで再確認できた。出演者とか、スタッフとか、お客さんとかもふくめて全員のおかげ。
「Margt ISLANDが誰かに“きっかけ”を与える場所になっていたら嬉しい」
Arata:今回、フードやマーチの屋台、入場ゲートとかを作ったから、開催を重ねるごとにそういう美術品を増やしていって、アミューズメントパーク感を増していきたい。やりたいことは無限にあるけど、どうしてもお金や時間の縛りがあるから、ゆっくり時間をかけて、理想の姿を作り上げていきたいと思う。
Isamu:オレはあの日Margt ISLANDにいて、自分が渋谷にいるっていう感覚がどんどん薄れていったから、その非日常感を突き詰めていきたいなと思う。
Kanbe:次のMargt ISLANDにもmesoismを呼んでくれたら、オレは第3のMargtとしてやることをやるだけ。オレ自身も本当はもっとやりたいことがあったけど、結局、間に合わなかった部分があるから、自分が思い描いた画くらいは、描ける人になりたいね。去年末に下北で呑んでて、隣に座っていた若い2人組の男性が、Margt ISLANDの話をしてたの。「Margtってかっこいいよね、オレもMargt ISLAND出たい」みたいな話をしていて、多分、彼らも映像をやっているんだろうね。例えば、ミュージシャンだったら、「フジロックに出る」とかそういう目標って絶対あると思うんだけど、映像作家って特にないじゃない。ここに出たら箔が付く、みたいな、映像作家の登竜門的な場所って。だから、その二人が話しているのを聞いて、新しいなと思った。映像作家が「絶対ここに出たい」みたいな目標を持つことが。それってすごく素敵だし、Margt ISLANDが彼らの目標になっていることが、自分のことのように嬉しかった。
Arata:映像はアウトプット先が、媒体か映画しかない。ライブの演出もあるけど、大々的に取り上げられることはないしね。でも、4年前くらいに初めてライブ演出を手がけたとき(2020年にTempalayが開催した「TOUR 2020」)に、ライブで映像を出すっていうことに対する高揚感がすごくて、この感覚を映像作家みんなに感じて欲しいと思った。映像作家は自由に自分の映像を出せて、ミュージシャンは新しい映像を背景に背負えて、その相乗効果で、新しいグルーヴが生まれればいいなと思う。
Isamu:映像作家も普段は裏方に徹するし、今回美術で入ってくれた千広さんはじめ、制作を支えてくれたSMASHの藤川さんも、みんなクリエイティブのプロフェッショナル。そういう人たちが今後、もっとフィーチャーされてほしいし、Margt ISLANDをそういう場所にしていきたい。“TENDOUJIがバンドを始めたきっかけが、フジロックに行って衝撃を受けたから”みたいな。下北で呑んでた子のように、映像をやっている人が、Margt ISLANDで映像をやりたいなって思ってくれたり、美術をやっている人が、あそこの1ステージで美術やりたいなとか。Margt ISLANDがそんな“きっかけ”を与える場所になったら嬉しいな。
Arata:そうだね、最初はフジロックみたいに大きなフェスにしたいと思っていたけど、実際に開催してみて、そしていま話していて思ったけど、やっぱ別次元の場所、まったく新しいコンテンツとして、Margt ISLANDが存在し続けていけたらいいなと思う。音楽フェスでも映像のイベントでもなく、Margt ISLANDという遊び場。
Isamu:コンテンツが音楽と映像だけである必要はないから、ダンサーがいたり格闘技があったり、総合的なエンターテイメントの場になったらおもしろそう。
Arata:Margtはひとつのことだけに注力するチームじゃないし、いろんなことに興味があるから、その興味が寄せ集まって大きな興行になっていくのが理想。Margt ISLANDのインスタにメッセージをくれた人もいたじゃん、「会社辞めて、夢のために頑張ろうと思った」って。そんな、来た人の人生を狂わすような場所、それだけでも存在価値があると思う。
Kanbe:Margtじゃなかったらあんなにお客さんは集まってないし、スタッフもアーティストも集まっていない。オレもMargtのおかげで今回、いろんな挑戦をさせていただきました。ありがとう。ほら、お前らもありがとうって言えよ。
Arata:(笑)。じゃあ、最後ありがとうで締めよう。
Margt:ありがとう!