レジェンド・スケーターがインスパイアされるものとは? Tony Alva INTERVIEW at HOUSE OF VANS

5月28日(土)、29日(日)の2日間に渡って横浜・赤レンガ倉庫の特設エリアにて開催された複合型カルチャーフェスティバル『GREENROOM FESTIVAL 2018』。ビーチカルチャーやサーフカルチャーをルーツとし、数々のアーティストによる音楽パフォーマンスや、多様なブランドによる出店ブース、さらにアートや映画なども包括し、多彩なカルチャーが交差したフェスである。

そのGREENROOM FESTIVALの一角に開かれたマルチ・スペース『HOUSE OF VANS』。ステージでのライブ、ワークショップ、アート、限定プロダクトの販売など、スケートカルチャーやサーフカルチャーを牽引してきたVANSが、さまざまなコンテンツを通して人々とつながるポップアップイベントだ。

今回は、伝説のスケートチーム・Z-BOYSの中心メンバーであり、スケートボードシーン創成期に活躍したTony Alva(トニー・アルバ)が来日。説明することすら野暮なほどの、レジェンド・スケーターである。EYESCREAMは、スケートボードシーンを知り尽くしたトニー・アルバに、今後のカルチャーの行く先アルバ自身がインスパイアされる人やものについてインタビューを行なった。

リビングレジェンドを前に緊張もあったが、フランクながら真剣に語る彼の姿にワクワクするばかり。映画『ロード・オブ・ドッグタウン』の一場面を思い出しながら本当に貴重な体験となったことを実感した。

ーVANSのプロダクトやプロジェクトで1番クリエイティブだと思うのは何ですか?

トニー・アルバ(以下、アルバ):プロダクトでいえば、やっぱり『SK8-HI』だね。あのスニーカーは本当に好きで、スケートするときはいつも履いている。それでスケートパークに行ったり、空のプールでスケートしたりね。

プロジェクトだと、毎年VANSと一緒にニューメキシコでやっているイベントがあるんだ。それはネイティブ・アメリカンの子どもたちと触れ合うというもの。2週間くらいに渡って、ワークショップをやったり、スケートしたり、というのをやるんだけど、それは最高だと思うね。もちろんサインをあげたりもする。

ー最近1番クリエイティブだと思うこと、もの、人は何ですか?

アルバ:いろいろあるよ! まずサーファーでいったら、ライアン・バーチだね。彼のビデオを見てごらん、本当にヤバイから。バーチはスケートボードみたいに波に乗るし、どんなフォームのボードでも使いこなしちゃうからすごい。スクエアのボードだったり左右非対称のものだったり、本当にあらゆるフォームのボードを作っては、乗りこなすんだよね。それから、背が高いっていうのもおもしろいなって思うよ。

それからチェンハイ開催されたコンテストで見たスウェーデンのスケーターはすごかった。しかも、子どものスケーターだったんだけど、信じられない才能だったよ。のびのびとして、なおかつあらゆるタイプのスケーターになれる。ランページでもストリートでも才能を発揮するような、そんなタイプのスケーターだと思う。彼のライディングを見て、ヴィデオゲームみたい、魔法みたい、って思うけど、それをリアルにやってしまえる才能に本当にびっくりしたよ。

ほかには…実際インスピレーションを与えてくれるクリエイティブなものっていっぱいあるんだよね。もちろんアートはいろいろ好きだし、スカルプチャー、ファッション、たくさんある。影響力のあるファッションデザイナーもいっぱいるね。クレイジーな感じのものは特に好きだね。あ、日本のファッションでいえば、コム・デ・ギャルソンは本当に好きだな。コム・デ・ギャルソンのプロダクトにはクリエイティビティを感じる、すべてのプロダクトといってもいい。

ーこれから先のスケートカルチャーやサーフカルチャーはどうなっていくと思いますか?

アルバ:どうなっていくか…かあ。サーフカルチャーでいえばたとえばケリー・スレーターが作った「ウェーブプール」について思ったりするかな。人工で作られた巨大な波がある施設なわけだけど、サーフィンのコンペティションがビーチに代わってウェーブプールで行なわれたりする。人工で完全な波を作るために、電力消費など環境に関する影響があるんだよね。そのためにソーラーパネルなどを使った電力供給なんかも取り組まれている。スレーターがサンフランシスコに立てた施設では、100%の「完全な波」が作り出されているんだ。それがコンペティションに使われている。こうした事柄が、やっぱりテクノロジーがこれから先のカルチャーというものに大きく寄与していく、と思わせる。そして、変わっていく、と。

スケートでも似たようなことがいえるね。大都市でいろいろなコンペティションが開催され、盛大に行なわれていて、そのためにすごい大きなランページや競技用のステージが作られたりしていて、そういうのを見るとスケートをする環境自体が変わってきたんだ、カルチャーが変わってきているのかな、と感じるね。

俺自身はもっとオールドスクールだからね、ビーチでサーフィンするし、スケートだったら滑れる場所を探したりして、っていうのが楽しい。街のなかでも、空のプールでもね。

あと、スケートボードがオリンピック種目になったりして、やっぱりそういうのってカルチャー全体を考えたらすごくいいことなんだと思うけど、個人的にはなにより楽しむってことが重要なんだよね。

取材が始まる前にHOUSE OF VANSブースにてスケートボードに興じたり、インタビューの途中でその日の朝に会場近くでたまたま一緒にスケートを滑った日本人のカップルを見つけてサインを書いてあげたり、とハプニングともいえる事態が起こりながらの取材となった。

しかし、イベントで来日し、朝からひとりでスケートを滑りに行ってしまうほどに心からスケートボーディングを愛し、そしてそのカルチャーを愛する人たちをも愛する、そんなトニー・アルバの姿勢を見せられ、本当に素晴らしく思えた。

トニー・アルバといえば、いわずもがな「レジェンド」という冠がつく。だが、彼が言うように、「なによりも楽しむこと」、そしてそれを実践するアルバの姿は、ひとりのスケーターとしてのあり方を垣間見た気がした。

Tony Alva(トニー・アルバ)

カリフォルニア出身。伝説のスケートチーム・Z-Boysのオリジナルメンバーとして活躍。スケートカルチャー以外にも、サーファーやミュージシャンとしても活動している。