観光産業化したベルリンテクノシーン。毎週末のクレイジーなパーティーや盛大なフェスティバルを目指し、多くの外国人が訪れる。一方、その地下では多様な人種/ジェンダー/セクシュアリティが混じり合うカラフルなクィアシーンが息づいている。そういったベルリンのカルチャーシーンで活躍するクィアピープルたちにフォーカスし、ベルリンのアンダーグラウンドで起こっている新しいムーブメントを紹介する「Berlin Fluid View」。
以下、ベルリン在住のマルチメディアアーティスト、ink Agopがナビゲートする形で進む。
去年の夏、フンボルトハイン公園の野外スイミングプールにあるアートスペースTropezで行われたcreamcake主催のサマーイベント「EURO POOL」において、DJをしていたDOVECAKEことZen Jeffersonと出会った。踊りながらオーディエンスとコミュニケーションを取るハッピーなDJスタイルが印象的だった。Zenがオーガナイザーを務める「Bodysnatch」は、毎月第2火曜日の夜にクロイツベルグのコットブッサー・トアにあるMonarch Barで2011年から続くパーティー。Zenへのインタビューとともに、Bodaysnatchクルーと、彼らの拠点であるクロイツベルグでフォトシューティングを行った。
インタビューに答えてくれたZen Jefferson
—あなたのバイオを見たんだけど、すごく多様な民族背景を持っていて異なる文化的背景で育ったんだね。
アフリカ人の父とスイス人の母のもと、イギリスのヨークで生まれて、アメリカのシアトルの緑の丘と青い海に囲まれた育ったよ。
—ベルリンにはどういう経緯で来たの?
いろんな人々との出会いや各地の匂い、たくさんの経験を経てベルリンに辿り着いた。そこに居ついたってことは、ベルリンがゆっくり遊んだりリラックス出来るお気に入りの休息地ってことだよ。
—「Bodysnatch」の創始者であるIsabel Lewisとあなたは、どちらもコンテンポラリーダンスに関わってるよね。どうやってIsabelと出会ったの?
Isabelの姉、Sarah Lewisを通して出会った。Sarahとはいくつかのプロジェクトで一緒にコラボレーションしたことがあったんだ。2010年に初めてベルリンに来てすぐに「Bodysnatch」に遊びに行って、ゲストDJとしてプレイするようになった。それから何年間かはゲストとして火曜日の夜のパーティーに参加する期間が続いた後、レジデントDJとして「Bodysnatch」の一員に招待されたんだ。
写真左がIsabel Lewis。ドミニカ系アメリカ人のパフォーマンスアーティストで、ロンドンのテート・モダンをはじめ、ヨーロッパの名だたるコンテンポラリーアートシーンでパフォーマンス、ワークショップ、講演などを行っている。右は「Bodysnatch」のオーガナイザーのひとり、Camille Darroux。
—どういう活動をしているの?
活動のベースはダンス・パフォーマンス研究。パフォーマンス作品の中でサウンドコラージュ/サウンドデザインを制作する一方、ここ8年間はDJとしても活動している。自身のプロジェクトでは、それらの世界を行き来して、常に実験的で新しいことを探求、発見して共有する試みをしているよ。
Christoph Winkler, Zen Jefferson
Black Cyborg or If I Had a Heart for Whom Would it Beat
ドイツ人コレオグラファーChristoph WinklerとZenのコラボレーション作品、2017年
アメリカン・コミック「Cyborg(サイボーグ)」の主人公Victor Stoneは、アメコミの世界で数少ないブラックスーパーヒーロー。このキャラクターは「白人至上主義」における「黒人」のステレオタイプを具象化している。Zenはこの作品の中で、それらを解体し流動的なボディランゲージによって別の象徴主義へと再構築する。
—ZenにとってダンスとDJとの関係性は?
父はいつもさまざまなジャンルの音楽の良いとこ取りしたような音楽をかけていた。父の音楽に対する多様性と情熱は、子供の頃の身体に染み付いていったんだ。幼いころはスポーツに夢中だったんだけど、だんだんダンスに移行していった。音楽は、身体がどのように精神を通してアクティブになって動くかを感じることの出来る自然な方法だったんだ。音楽が持つ社会的で共同体的なところ、それはダンスにも通じるけど、音楽やダンスによってみんなが一体になる瞬間を共有できるところが大好き。DJすることは、みんなが一緒になって生きる喜びを分かち合える一つの手段だね。
—多民族の移民や多様な性別、セクシュアリティの人々がベルリンにやってきてコミュニティを作るようになってるよね。ベルリンのアートシーンにおいて、自分のポジションをどう考えてる?
ベルリンのアートシーンにおいて自分の「ポジション」というものには全く関心はないね。興味があるのは、今でも他にない特別なベルリンの音楽シーンにおいて、「Bodysnatch」のように意識的にみんなの愛とつながりによって築かれてきた創造性のあるコミュニティだね。
「Bodysnatch」は2011年にIsabelとJustin Kennedy、Josep Maynouたちによって始まった、汗だくでお尻をブンブンとシェイクするダンスを楽しむためのダーティなパーティーなんだ。毎月第2火曜日の夜に集まる多様な人種のコミュニティとして成長してきた。今でもエントランスは2ユーロ、ドラマなし、ゲストリストなし、すべての愛と共に。