Paris et Tourbillon
vol.1
ヘアメイクやペインティング、撮影、衣装のデザインから製作まで幅広く表現活動を行うYoshimi Saito。自身が創りたいものを創るという“原点”に立つため、彼女は憧れの街パリへと渡った。本連載「Paris et Tourbillon」では、パリでの制作活動と彼女の心情を記録。第1回は、パリ市内で最古の庭園であるチュイルリー公園とルーヴル美術館前にて、レストランで偶然出会ったという映像作家を写す。
ー Ciel bleu à paris ー パリの蒼空
モントイユの蚤の市で買いつけた布に、今回は“パリの空に似合う”ペイントをして衣装を作った。
東京は空がビルで干渉されているけれど、パリは空が広く見えるからいい。
街全体が世界遺産にされているだけあって、建物の高さ規定があるから
遠くの空の、色の違いまでがわかる。
そこが好きだ。空って、どこも同じ色じゃない。ロマンチックだ。
私の渦もどこまでもそういう渦が描きたい。
パリは美しい街だ。何百年も建物が同じで、
ここに住む人たちは、日本人的な思いやりはあまり持ち合わせていないけれど
代わりに今の日本人があまり持っていない、政治や生き方に対して自分なりの考え方を持ち、
そしてそれをちゃんと言葉や行動に出来る。
つい最近では生殖補助医療のことで、7万人以上がデモに参加したり
政治にも積極的に一人一人が声をあげる姿は、パリに住んでいると、驚くくらい日常に根付いてる。
思っている事は、声に出さなければ
思っていないことと同じことだ。
そこに、もし自分の声が政治や制度に反映されなくても、
めげずに、揺れずに、一歩を確実に行動できる姿勢は、同じ人間として尊敬する。
比較的に早い段階から専門的な仕事で生活できたことはとても有難いことだったけれど、
それと同時に、
“自分の生活の為に、誰かの為の作品を創ることが当たり前になって、
自分の魂の為だけに、作品を創るような時間が無くなっている。”
そんな想いが積もり積もって
今まで築き上げてきた日本の仕事は一度全て辞めて、パリに引っ越してきた。
そしてきっと国の性格的にはたぶん正解だった。
少しさみしい代わりに、とても静かな日々の中、
自分で決めなきゃいけない生き方、自分にしか作れない作品、
これからの仕事のやり方を、
自分の意思は、はっきり表現するパリで、思い切り考え直しながら
この連載の中でパリの今の姿とともに表現していきたいと思う。
Yoshimi Saito
2016年にヘアメイク専門学校を卒業後、紅白出場アーティストの衣装ペイントを手がける。独学でテキスタイル作りからパターン・縫製まで学び、舞台やテレビ・映画の衣装をはじめ、ペイントに特化した作品を製作している。
2019年より写真家としての活動を開始し、初の写真展「渦写展」を開催。現在はパリを拠点に活動中。
Instagram : @yoshimiman
Twitter : @YOSHIMIMAN_UZU