Berlin Fluid View #06 Brownie Family / オンラインジェネレーションღクィアバブル

観光産業化したベルリンテクノシーン。毎週末のクレイジーなパーティーや盛大なフェスティバルを目指し、多くの外国人が訪れる。一方、その地下では多様な人種/ジェンダー/セクシュアリティが混じり合うカラフルなクィアシーンが息づいている。そういったベルリンのカルチャーシーンで活躍するクィアピープルたちにフォーカスし、ベルリンのアンダーグラウンドで起こっている新しいムーブメントを紹介する「Berlin Fluid View」
以下、ベルリン在住のマルチメディアアーティスト、ink Agopがナビゲートする形で進む。

ベルリンのパーティーで何度も顔を合わせて友人になったBjornは、交換留学で1年間、東京に行っていて帰ってきたばかり。Bjornの友人のLeeやLisaもパーティーでよく会う顔ぶれ。今回は、BjornやBrownie Family(と自分たちを呼んでる)が住むノイケルンのフラットで撮影した。

左より時計回り/Bjorn、Lucia、Lee、Lisa、Laura、Charlie

—簡単に自己紹介してくれる?

Bjorn:北ドイツ出身で、高校卒業した後にベルリンに引っ越してきた。

Lisa:シドニー出身でベルリンに引っ越してきて3年、その前はロンドンに1年住んでた。THE BLACK MARKTというヴィンテージファッションブランドをやっている。

Lee:フランス出身、ベルリンに住んで5年になるかな。デザイナーとして働いている。

Laura:オーストラリア出身でベルリンに来て1年、ライター。

Charlie:ニュージーランド出身でシドニーに住んでた。ベルリンに来て2年半、ここ1年はあちこち旅をしていて、2ヶ月前にベルリンに戻ったところ。PLANT FACEDというストリートファッションブランドをやっている。

Lucia:アルゼンチン出身、ベルリンに来て1年と5ヶ月かな。

—みんなどうやって出会ったの?

みんな:Tinderだよね。

—へ~! みんなどうやってデート相手と出会ってるの? オンライン?

Lisa:私たちはオンラインジェネレーションだね。Tinderはカジュアルな出会いのためにみんな使ってる。OkCupidは詳細にプロフィールを書かなきゃいけないし、もっとシリアスなリレーションシップのためのアプリって感じ。

Lee:私は最近Bumble使ってるよ。

—何それ?

Lee:基本デーティングアプリなんだけど、アプリ内にセクションがあってキャリアを広げるためやネットワーク作りのためにも使えるアプリだよ!

—Bjornは1年間、東京に住んでたよね。日本でTinderは使ってたの?

みんな:Wow! それ聞きたい!

Bjorn:数日使ってみたけど、プロフィール写真はみんなプリクラ加工されたような同じような写真ばっかだし、プロフィールも「猫が好き」とか「食べるのが好き」みたいな同じようなことしか書いてなくて、全然興味引くようなのは見当たらなくてすぐ使うのをやめちゃった。日本でいろいろな人に出会ったけど、みんな今いる友達と遊んでいて、Tinderとか新しいツールを使ってネットワークやリレーションシップを築くことにはあまり興味持ってなさそうな感じがした。

—みんないろんな国から来てるけど、ベルリンってクィアにとってどう特別なんだと思う?

Lee:自分の居場所を見つけた! って感じ。私がフランスで高校に行っていたときは、常に自分って変わり者って感じていた。私はなにか間違ってるのか? なんでみんなとこんなに違うのか? って。地元でクィアを見つけるのは難しかったし、違うジェンダーの価値観ってものがなかった。2010年頃からTumblrを使いはじめて、10代のオンラインクィアコミュニティで自分と同じような人と話すようになった。ベルリンに初めて来たとき、私と同じように感じている人がここにはたくさんいるって気付いた。

Lisa:私の友達でストレートの女の子がベルリンに来たとき、ストレート男性のデート相手を見つけるのが難しかったって。だってここではゲイがマジョリティだから(笑)!

Lee:フランスに帰ると、ストレート社会! ってすごく感じる。今のベルリンはクィアバブルみたいなところがあるからそれに慣れて麻痺しちゃうと、他の社会がすごくストレートだってことにビックリするよね。

Lucia:アルゼンチンはカトリック社会だから、同性カップルが手をつないで歩いてるとかは有り得ない。ベルリンにいるとそれが普通だから、ここがクィアにとって特別だってことを忘れないようにしないと。

Lee:ベルリンでもクィアであることをオープンにするのが100%安全だとは限らないよね。ここには大きなアラブ系コミュニティがあってすごく保守的でジェンダー役割がはっきりしているから、まあ恐らく何も起こらないとは思うけど、例えば10代のアラブ系のグループの前では同性同士で手をつないで歩くのは控えた方がいいとか。

—Brownie familyは日本に行ったことある人多いよね。日本のクィアシーンはどう感じた?

Bjorn:すごくアンダーグラウンド。自分の場合はベルリンですでに日本人のクィアたちと知り合っていたから簡単にアクセスすることができたけど、すごくすごーく小さなコミュニティだよね。夜は新宿二丁目によく遊びに行ってたんだけど、そこが一番、みんなリラックスして楽しんでるって感じたから。でも数回通ううちに同じ人ばかりと会うってことに気付いた。東京って一千万人近くが暮らす大都市なのに、同じ人ばかりと会うなんてすごくクレイジーだって感じた。それだけ二丁目が小さなコミュニティだってことだよね。

—日本で居心地が悪いと感じることはあった?

Lisa:私は東京の路上でキスしたら、その子が「道でキスしちゃった!」って言ったの。ベルリンではわざわざそんなこと言わないじゃん。それってここでは普通じゃないのかな? て思った。南アジアではレズビアンのカップルでも、片方はすごく男性っぽくって、もう片方は超フェミニンなカップルが多いよね。ジェンダーの役割がゲイの間でもハッキリあるってすごく変な感じ。ベルリンではフェミニン同士のカップルや、ブッチ同士のカップル多いよね。

Bjorn:東京ってすごく安全じゃん。東京のATMで現金を引き出してお金を取るのを忘れちゃったとき、知らない人が「お金忘れてますよ!」って教えてくれた。そんなことヨーロッパでは有り得ない! 日本ではフィジカルな面に関してはすごく安全だけど、家族からのプレッシャーや社会的プレッシャーがすごく強いよね。

—日本のクィアたちに、ベルリンにおいでよ! って勧められる?

みんな:イエス! 君の抱えている問題はすべて解決されるよ(笑)! でも別の問題を抱えることになるけどね!

—ベルリンではどこで遊んでるの?

Bjorn:日本から帰ってきてからは、全然出かけなくなっちゃったな。日本の狭いアパートからこのフラットに帰ってきて、家にいるのが快適だしみんな遊びに来てくれるし。

Lee:以前はパーティーによく行ってたけど、最近はディナーに行ってワインを飲んで帰ってくるかな。

Charlie:アートエキシビションのオープニングによく行くよ。

Lisa:シドニーに住んでた頃はコミュニティを探しによくクィアパーティーに出かけてたけど、ベルリンでは周りの友達にクィアが多いし、出会いやコミュニティを求めてクィアパーティーに行くことはそんなに重要じゃないかな。10代の頃はデート相手に出会うために出かけてたけど、今はTinderがあるし!

みんな:その通り!

Bjorn:グループでビーガンサンデーブランチによく行くかな。以前はOHM(※1)によく行ってたけど、最近はあんまり行かなくなった。なんかちょっと変わっちゃった感じがする。

Lisa:そうだね。以前は2週間おきにOHMに行ってたけど、最近はACUD MACHT NEU(※2)によく行くかな。いろんなカルチャーイベントがやってるし、特に夏は中庭で吸いながらリラックスしていろんな人としゃべったりできるから。 

Charlie:実は昨日CockTail d’Amore(※3)に行ってたんだ……今朝10時に帰ってきたけど、また今夜行くと思う!

Lucia:そう言えばBerghainで再入場するのにまたお金払わなくちゃいけなくなったって聞いたんだけど。

Bjorn:そうだよ! 今まではパーティーに一度入ったら、外に出てシャワー浴びで朝ご飯を食べてリフレッシュしてまた遊びに戻るってのができたけど、再入場するのに5€払わなきゃいけなくなったんだよ。終わったね。

—最後に、告知しておきたいことを教えて。

Charlie:私のやっているPLANT FACEDは、ヴィーガンでオーガニックな素材で作られてるTシャツやパーカーを扱っていて、日本のサプライヤーと取引がはじまったばかりだよ。ヨーロッパやオーストラリアのリアルショップでも扱ってる。日本のお店でも扱ってもらえるようになるといいな。ぜひウェブサイト見てみて!
https://plantfacedclothing.com/

Lisa:THE BLACK MARKTは、5年前にロンドンで、オンラインでヴィンテージの服を売りはじめた。ロンドンやパリ、ヨーロッパ各地のフリーマーケットで面白い掘り出し物を見つけるんだけど、一番面白いものが見つかるのがイタリアで数ヶ月に1度は買い付けに行っている。東京にも買い付けに行くよ。日本はアメリカのヴィンテージが多いかな、スポーツウェアとか。11月にもまた東京に行くよ!
https://theblackmarkt.com/

Lee:私のエロティックレズビアンイラストレーションもInstagram(@cypriness_)でチェックして!

※1 OHM:Tresorと同じ建物にあるクラブ。http://ohmberlin.com/

※2 ACUD MACHT NEU:ミッテにある、クラブやスタジオ、ギャラリー、映画館が入ったカルチャーコンプレックス施設。https://acudmachtneu.de/

※3 CockTail d’Amore:2009年から始まったゲイパーティー。ノイケルンのGriessmuehleというクラブで開催されている。土曜から月曜まで続くお化けパーティー。

photography and interview_ink Agop

ベルリンを拠点に活動するビジュアルアーティスト。写真、映像、インスタレーションなどマルチメディアを使いビジュアル表現を行う。最近はバクテリアを使った発酵バイオアートを展開。またベルリンのアートスペースTROPEZや音楽イベント「3hd Festival」のドキュメンテーションなどを通してベルリンのカルチャーシーンに関わっている。
http://inkagop.com/
instagram @inkagop