Dr.Martens 1461 3ホール誕生から60年スタイリスト馬場圭介が語るその普遍性と可能性について

1961年4月1日に誕生し、この日がネーミングの元になった「1461 3ホールシューズ」 。労働者の靴として生まれ、いまでは多種多様な人々に愛される、Dr.Martensのアイコンになっている。誕生60周年を迎えるいま、改めてその魅力を掘り下げたい。スタイリストというファッションのプロフェッショナルは「1461」を、どんなアイテムとして捉えているのか。生粋の英国通であり、英国ヴィンテージショップCOUNCIL FLAT 1を構えるスタイリスト馬場圭介に話を聞いた。

「Dr.Martensは自分のスタイルの一部。
70歳、80歳になっても一生履き続けたい」

ー普段からよく履かれるとのことですが、いつからDr.Martensを持っていましたか?

どうだろう。もう思い出せないぐらいだけど35年以上の付き合いにはなりますよね。80年代後半はロンドンに住んでいて、スチールトゥを削り出してむき出しにしてよく履いていました。イギリスの友達に10ホールの紐の縛り方を教わったりしましたね。だから日本に帰って来てからも、Dr.Martensを履いている人の紐の結び方が気になって、直してあげたいな~って思う時もあります。紐の通し方もたくさんあったりするのですが、詳しいやり方については私のYoutubeチャンネルを見ると、とても分かりやすく解説されていますので是非ご覧ください(笑)

ー当時のイギリスがどんな雰囲気だったか気になります。やはりDr.Martensを履いている方は多かったのでしょうか?

多かったです。やっぱりスキンズとかパンクスがよく履いていましたね。『THIS IS ENGLAND』って映画があるじゃないですか。1980年代はまさにあの世界観。1人の少年が年上のスキンズの不良少年たちとつるむようになって、最初のうちは遊びで楽しんでいたのが、シリアスな右翼思想に傾いていくという内容ですよね。当時、流行していたスタイルはスキンヘッド、ベンシャーマンのシャツ、Dr.Martensのブーツ、サスペンダー、ロールアップしたスキニーなデニム。映画の中でも、仲間たちと同じファッションがしたい主人公がお母さんにDr.Martensのブーツをねだるシーンもあって、「これは不良が履くブーツよ!」って怒られるんですよ。イギリス人は、Dr.Martensに子どもの頃から憧れていたっていうのがよく分かりますよね。

ー1461 3ホールシューズに対する思い入れはありますか?

個人的な思い入れというよりかは、英国のカルチャーとして好きなエピソードがあります。スキンズたちは10ホールを履いていたりしましたが、ポストマンとか工場員とか労働者たちがデモをする時には3ホールを履いていたって話があるんですよ。それは労働者階級の反逆精神の象徴であって自分たちの考えの表明、連帯意識を見た目で分かるようにしていたんですよね。そういったルーツを考えながら履くと感慨深い気持ちになります。

ー1461 を今どんなファッションに合わせるのが気分でしょうか

結局どんなファッションにも合うんですよ。よりかっこよく見せるコツとしては、基本的なことですが、パンツをロールアップして短めで履くことですかね。綺麗なシルエットが引き立つし靴も強調されます。あとはキツく縛って履くこと。10ホールはもちろん3ホールでもベロの部分が浮かないように、痛いぐらいギチギチに締めて履くのが好きですね。ゆるく履くより断然見栄えも良くなります。ただ、そうすると海外だと屋内で靴を脱ぐ文化がないけど、日本だと結構困るんだよね(笑)でも真面目な話、靴脱いだらやる気なくならない?せっかく気合入れてギュッと絞って履いているのに、良い緊張感が解けてしまうじゃないですか。だからスタジオでの撮影で脱ぎ履きが面倒な時は、ホテルのアメニティでもらえるシャンプーハットをブーツに被せています。これ、すごくラクで便利なので全国のDr.Martensファンに是非教えたい情報ですね(笑)

ースタイリストらしいプロの裏技ですね。1461をこれから初めて履くという方に何かアドバイスするとしたらどんなことを伝えたいですか?

まずは初めての人は、黒を履いて、慣れたらチェリーレッドを履いてみて欲しい。この色合いもDr.Martensの醍醐味の一つですからね。派手なようで案外、結構合わせやすいんですよ。自分自身スニーカーをあんまり履かないから、Dr.Martensを履いてるんですけど、本当にスニーカー感覚でも全然履けますからね。だからこそ、変な話だけど思い入れも逆にないんですよね。本当に日常的なものでスタイルの中にあるものだから。思えば私がロンドンに行った頃は、まだスニーカーをファッションとして履くという概念自体がまだ浸透していない頃だったっていうのもあるかな。値段は覚えてないけど、当時は確か今より安くて、丈夫で長持ちするから、イギリスでは誰もが当たり前のようにDr.Martensを履いていたように思いますね。アメリカに憧れつつも、どこか拒絶しているみたいな人も多くて、メイドインUKで履くってなった時にDr.Martensの他に何履く?ってなっても思いつきませんからね。私もクラパムコモンで住んでた家の近くの普通の靴屋さんで買ってましたよ。

ースタイルの一部ということですね。最後にDr.Martensは馬場さんにとってどんな存在か教えてください。

UKモノの古着屋にとってDr.Martensは絶対に外せないマストアイテム。カルチャー好きな人たちから始まって最近では本当に一般に浸透しているように感じます。さっきの3ホールの話のように、もともとはファッションの要素だけでなく、労働者をはじめとする多くの人たちのライフスタイルに寄り添うものだったわけじゃないですか。女性でも履いている子が多いし、そういう人を見かけると嬉しいんです。広い層に受け入れられる普遍的な魅力を感じますよね。私はいま62歳なんですけど、これから70歳80歳になっても、一生履き続けたいと思っています。

馬場 圭介

1958年、熊本生まれ。1984年、26歳で渡英。1988年、帰国。スタイリスト大久保篤志に師事。1989年、独立。2004年、nano universe と始めたブランド “GB” のディレクターとデザイナーを兼任。2011年、自身がディレクターを務めるブランド “ENGLATAILOR by GB” をスタート。2014年、東京の英国好き達が集まれる場所として隔月第4木曜日に「ROYAL WARRANT SOCIETY」を主宰。2018年、英国古着を扱うショップ“Council Flat 1”をオープンしオーナーも務める。2019年、ブランド“NORMAN”スタート。現在も数多くの雑誌、ミュージシャン、俳優、タレントのスタイリングを務める。

INFORMATION

Dr.Martens

▼商品情報
1461 3 ホール シューズ
23,100円(税込)

▼問い合わせ先
ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
URL:https://jp.drmartens.com/
TEL:03-6746-4860