現在発売中の『EYESCREAM alt. nanamica issue.』。昨日に引き続き、nanamica代表取締役・本間永一郎のインタビューをお届けする。
Part.01 TO MAKE PROGRESS Interview with EIICHIRO HOMMA from EYESCREAM alt. nanamica issue.
ブランドの世界観を表現する場所を自分たちの手でつくる。
ー昨年、代官山に〈ナナミカ〉ブランド初のオンリーショップ『ナナミカ 東京』がオープンしましたね。
本間:元々〈ナナミカ〉は世界中で販売していこうというビジョンがあって、2010年から海外の展示会に参加しています。その1年半前からイタリアの古い友人のコネクションでテスト販売をしたり、パターンが合うか、輸出入した時にどんな問題が出るかという検証をしたり、準備を進めていました。現在まで丸々10年継続してみて、卸先は24ケ国100件弱まで増えました。ただ、その一軒一軒にある量というのは、すごく我々のブランドが好きでよく売れる店でも4ラックくらい。普通のお店というのは、1ラック程度なんですね。そうなると自分たちが作っているものが、果たして正しくお客さんに伝わるだろうか、と。このやり方は限界だなと思っていました。『アップル ストア』じゃないけど各国に1つくらいフルラインナップの店があれば理想的で、タッチポイントとしてブランドの世界観を表現するなら、その場所は自分で作るしかないという結論になりました。最初はロンドンに作ろうと考えていたのですが、物件を調べている時にブレグジット(イギリスのEU離脱)が決まっちゃって。輸出入制度の不安から計画を止めちゃったんです。今はその判断はミスだったと反省しているんですが……。そうこうしているうちにNYの取引先の〈ウールリッチ〉が移転するから、その空いたスペースに入らないか、という話が来て。サイズ感もちょうど良かったし、家賃は高いけど、歯を食い縛ればできるんじゃないかと出店を決めました。その時に気がついたんです、日本に〈ナナミカ〉のブランドストアがないぞって。それなら作ろう、というのが旗艦店をオープンしたきっかけです。
ーブランドの世界観を表現するプレゼンテーションの空間になっているということでしょうか。
本間:そうですね。最初の4店舗は“人の個性を否定しない”という発想で、とにかくミックスというのがキーワードでした。例えばテーブルの周りに6脚の椅子があったとして、全部別の椅子なんだけど、それが空間に馴染んでいてバラバラに見えない、そういうバランスがいいね、というのが僕らの発想。だから店のコンセプトは共通なんだけどインテリアが違う、品揃えも店長や顧客様のテイストによって変わる。各店舗のMDが少しづつ違っていても肯定していたし、インテリアそのものにキャラクターがある空間にしていました。『ナナミカ 東京』は、モノ、つまり服を主体にするために、インテリアをかなり控えめにしています。あと、NYに出店することが前提にあったので、洋間だけど日本人が作った洋間感覚で、和室ではないけどディテールに日本人の感覚が宿るように意識しました。フィッティングルームの扉が引き戸になっていたり、木の太さが通常よりも細くしてあったり。服が主体に見えてやや繊細な雰囲気。それが日本人に期待されていることだろうと。
ーシンプルで素敵な空間だとは思いましたが、そのような意図があったんですね。
本間:あと、こだわりは木の色ですね。僕がヨットをやることもあって、自分にとって“海”から連想する木材ってチークなんです。お店のウッドはオークなんですが、それをチークの雰囲気に染めています。その方が色の変化が少なくて、新品のチークの雰囲気が長く保てるので。世界展開に向けて、次の目的地はロンドン。
ー現在24カ国で販売されているとのことでしたが、取引先はどんなお店が多いのでしょうか。
本間:2010年から最初の5年くらいはアウトドアスタイルがトレンドでした。だからモードなブランドが多くラインナップするブティックでも、アウトドアをベースにした服が並んでいたんです。その頃は割と偏りなく、いろいろなショップがバイイングしていました。でも、結局付き合いが長いのは、トラッドとかスポーツとかアウトドアのテイストが常にあるショップですね。ヨーロッパだと〈ストーン アイランド〉などをセレクトしているお店が多いかもしれません。
ーやっぱり理想は主要なエリアに1店舗ずつオンリーショップを出すことなんでしょうか。
本間:まぁそんな感じなんでしょうけど。次はロンドンに出したいなと思っています。その先は英語圏じゃないとまだ怖くて出店できないという部分もありますが……。スタッフが誰もドイツ語もフランス語も解らないというのは不安ですから。さっきロンドンの計画をストップしたのは間違いでしたと言ったのは、『じゃあ次はどこへ!?』となった時にやっぱりロンドンしかないなって思うわけです。NYとロンドンにショップがあれば、アメリカ人とイギリス人が働いてるだけじゃなくて、マルチナショナルな会社になるはず。そうすれば、パリでもどこでも行けるのかなと考えています。
ーブランドが17年続くというのはすごいことだと思います。
本間:自分たちではそんな感覚はないのですが、最近は『今、18期です』なんていう話をすると、『そんなに長くやっているんだ!』と驚かれることはありますね。
ーしかも常に新しいことにチャレンジされているのがとても刺激的です。
本間:今から思えばあっという間でした。でも、あと2年で20年も経つのか、と思うと……。当時20歳の人が40歳で、40歳だった人が還暦なわけですから。
ー進行中のプロジェクトや今後のお知らせがあれば教えてください。
本間:まずは、4月にオープンするNYのお店ですね。“モノを主体にする”というテーマは共通ですが、東京とはまた違った空間になりそうです。あと、コラボレーションの話はたくさんあるのですが、今、打ち合わせているのは全部来年のもので。ここでお伝えできる段階のものはないのですが、ぜひ期待していてください。