TO MAKE PROGRESS Interview with EIICHIRO HOMMA part.01 from EYESCREAM alt. nanamica issue.

TO MAKE PROGRESS Interview with EIICHIRO HOMMA part.01 from EYESCREAM alt. nanamica issue.

ライフスタイルに根差すデザインと機能性の融合を掲げるファッションブランドnanamicaを特集した、『EYESCREAM alt. nanamica issue.』。WEBでは現在発売中の本誌から、一部コンテンツを掲載する。第1弾では、nanamica代表取締役・本間永一郎のインタビューを2日に渡ってお届け。

TO MAKE PROGRESS Interview with EIICHIRO HOMMA
〈ナナミカ〉の現在、そしてこれから。

Photography—Mitsutaka Omoteguchi、Text&Edit—Hideki Goya

シンプルでクリーン、機能的で等身大。だから身体に馴染む、毎日着たくなる。そんな〈ナナミカ〉のことをもっと知りたくて、話を聞いた。ブランドのコンセプト、海外進出、代官山の旗艦店、そして4月にオープンを控えるNY店について。歩みを止めない〈ナナミカ〉。その行方を探るインタビュー。

ナナミカ 代表取締役
本間永一郎

目指したのは日常の生活にちょうどいい服。

ーまず始めに〈ナナミカ〉のコンセプトを教えてください。

本間:標語で言うと“ファッションとスポーツの高次元ミックス”です。僕はもともとスポーツウェアメーカーで働いていました。取り扱っていたアウトドアウェアやマリンウェアの中には『普段着にできそうだな』って思うものが沢山あったんですが、スポーツウェアメーカーが機能性を追求すると、ウェアは裸に近づいていくんです。例えばスピードスケートのジャンプスーツみたいに。そこで、僕たちが目指したのは、日常の生活でちょうどいい服。一見すごくクラシックなアメリカンスポーツウェアなんだけど、ハイエンドな最新技術を使った、高機能で快適な着心地の服を作ろうと。ただ、好みは昔から一緒なので、白絵で見ると10年前に作ったものと最新コレクションがほとんど変わらないんですよね(笑)。実際には素材が改良されていたり、カッティングやフィットがアレンジされていたりしていて、そういった部分で時代にアジャストしています。

ー〈ナナミカ〉が目指すデイリーウェアは、着心地の快適さが重要なポイントなんですね。

本間:そうですね。僕らが若い時って自分自身の問題よりも先端ファッションみたいなものが主役で、自分がそれに“to be”で合わせていく感じだったと思うんですが、今の時代、ファッションは脇役でいいと僕たちは思っています。カッコイイ言い方をすれば生き方だとか、趣味だとかライフスタイルの方が大事。それに対して見た目も含めて、着ていて快適で、気持ちいい服が人を幸せにするんだろうなと考えています。あとは人生観のバランスというか、服だけすごくても、とかね。

ー確かにおっしゃる通り、価値観も自己表現の仕方もどんどん変わってきています。

本間: そういうバランスの中で、生活のクオリティを高めるのに〈ナナミカ〉の服を役立てていただきたい。逆に言うと、この時代に僕らが役立てることってこれしかないかな。

ーブランドがスタートしたのは2003年でしたね。

本間:そうです。スポーツウェアをデイリーウェアにリファイン出来たら、かなりいいレベルまでいけるんじゃないかっていう構想がずっとあったんです。〈ナナミカ〉を始める前に〈ゴールドウイン〉にいた頃にもやってみたことはあったんですが、時代と合わなかったというか、うまくいかなかったところもあって。それでも、自分の考えは変わらなかった。2001年くらいに今木(〈ナナミカ〉デザイナーの今木高司)と知り合って、2人で別の仕事をしていたんですが、自分たちでブランドを作った方が面白そうだなと思って会社を作りました。それからブランド作りと店作りについてアイデアを練ってスタートに至りました。それが2003年です。

ーそして、今なお創業時からコンセプトがブレていないのはすごいですね。トレンドの振り幅も大きい時代だったと思います。

本間:デザインやコンセプトは創業時から変わっていないですね。でもサイズ感は調整しています。2003年から5年くらい前までは、トレンドがタイト、コンパクト。服がどんどん小さくなっていくワケですよ。2サイズくらいは小さくなったと思います。でもそれが5、6年前からまた大きくなり始めて。で、今はちょっとやりすぎたかなみたいな(笑)。ウチの顧客さんでクラシックフィットが好きな人からは『好きだけど着られない』と言われることもあります。見に来てくれるのだけど買うものがなくなってしまったという感じ。反省してます(笑)。

ー流行は無視して我が道をゆく、という訳ではないのですね。

本間:ブランドは自分たちが作りたい服そのものではなくて、その服を着てくれているお客さんと一緒になって作っていくものだと思っています。ホームページには『流行から距離を置いて』と書いてあるんですけど、程よい距離感でアジャストしていかないと。やっぱり古く見えるのはあまりいいことではないと思うので。時代に対してある程度の距離感で合わせていくということをやっているつもりです。

ーそれが時に顧客から離れたデザインになってしまうことも?

本間:やっぱり人間の仕事だから、何かをやるとそれに対しての自己評価があって、レイヤーを重ねていくようになるんですよね。服を一着作って、翌シーズンにそれをより良く変化させるみたいな。そのアップデートのレイヤーを重ねていると、少しづつ自分たちの本当のド真ん中から距離が出てしまうことってあるんです。気がついたらすごい距離まで行っちゃてて。お客さんはそこまですごい変化と認識してないかもしれないけれど、そういうときはすべてのレイヤーを取り払って、一気にデフォルトに戻すことがあります。

ーそうやってブランドのアイデンティティを守っていくのですね。

本間:着ていただいているお客様を見ていて、ちょっとこれまでと違う人たちが着始めたかなという時は慎重に検証してリセットしてます。この18年の間で2、3回はやっているんじゃないですかね。

ー色々な人が着てくれるのは悪い話ではないように思いますが。

本間:例えば表地にコットン、裏にゴアテックスをラミネートしたコートは、言葉は悪いですけど、相手を騙してでも一度着てもらえればその良さを実感してもらえる、極端にいうと国民一人一着持ってもらいたい、それくらいたくさんの人たちに着ていただきたいと思っています。その一方で、去年売れたものを今シーズンさらに売ろうという発想でビジネスをやっていると、自分たちが本当に着たいと思えないものをお客さんに提案しなければいけない場面が出てくる。大きい会社にいると、うまくいけばいくほどそういう問題に突き当たるものです。この会社を作ってからは、自分たちがそれを見て新鮮に思えない、今の気分に合わないと判断したときは、売れる見込みがあっても生産しないことにしています。

INFORMATION

EYESCREAM alt.
nanamica issue.

発売中
お取り扱いは全国の書店オンライン、Amazon等にて



POPULAR