SixTONESが2023年1月4日に3rdアルバム『声』をリリースした。前作の2ndアルバム『CITY』が時間の移り変わりを描いたコンセプチュアルなアルバムだったのに対し、今作はメンバーが思いのままに選んだ楽曲群が収められているという。2020年のデビューから3年で培ってきた彼らの確かな実力と自信が作り上げた1枚だ。2022年に彼らが積み上げてきたものを振り返りながら、このアルバムの魅力を探る。
はじめに、2022年のSixTONESを振り返ってみると、1月1日のTHE FIRST TAKE「Imitation Rain」公開から始まっている。2022年は、バラエティのイメージの強かったSixTONESの、歌唱力や表現力を、歌“声”で魅了することから始まった。
また新年早々、1月5日には2ndアルバム『CITY』をリリース。その前日1月4日から、同作を携えたコンサート「Feel da CITY」をスタートさせた。アルバムのコンセプトにあわせ、時間の移り変わりを時に幻想的に、時にハイテンションに表現したステージングで全国のファンを熱狂させた。またコロナ禍真っ只中の2020年にデビューした彼らにとって、初めて完走できたツアーに。その事実は、6人に大きな自信を与えたに違いない。そんなツアー中、彼らは6thシングル「共鳴」をリリース。ツアー完走直後には、7thシングル「わたし」をリリース、8月にはYouTube限定の新曲「PARTY PEOPLE」のMVを公開、11月には8thシングル「Good Luck!/ふたり」をリリース、12月には「FNS歌謡祭 第2夜」(フジテレビ)にて京本大我が宇多田ヒカル「First Love」をカバーするなど、彼らは1年間ずっと、音楽活動に奔走してきた。バラエティ出演や俳優業など各々の音楽以外での活躍も光った2022年だが、実は1年を通して彼らは常に音楽と向き合い、成長することを忘れないでいた。
アルバムがリリースされるたびに、特設サイトでは、SixTONESメンバーによるセルフライナーノーツが掲載される。メンバーが1曲ずつ楽曲の想いやサウンドの特徴などを説明している。それを読むたびにSixTONESメンバーの音楽の造形の深さや、音楽への向き合い方に感心する。同時に、彼らのインタビューが掲載されている雑誌やインタビューを熱心に探していないリスナーでも、彼らが楽曲に込めた想いを受け取ることができる。彼らが自分たちの音楽を、広く届けたいという想いが形になっている一つが、このセルフライナーノーツなのだろう。今作にコンセプトを設けなかったのは、そんなSixTONESメンバーへの信頼でもあるような気がする。彼らが歌いたい、パフォーマンスしたいと思う楽曲をピックアップすれば、自ずと名盤が出来上がる。メンバー自身も含め、“team SixTONES” がみんなそう感じているからこそ、自由に作ることができたのではないか。
さて、そんな彼らのニューアルバム『声』を聴いてみよう。幕を開けるのはアカペラで始まる「Overture -VOICE-」。まさに“声”から始まるアルバムである。歌声だけでは足らず、ボイスパーカッションまで取り入れ、SixTONESの“声”フル稼働だ。彼らの“声”に魅了されたところで、<聞かせるぜアンセム>というリリックからもわかるように今作のアンセムとも言える、ファンキーなパーティチューン「Boom-Pow-Wow!」、<最後はやっぱり笑って踊ろうぜ>と明るく歌い飛ばすシングル曲「Good Luck!」、スラングで「素晴らしい」という意味を持つタイトルを冠したハードな「Outrageous」と、アッパーで明るいSixTONESらしい楽曲が続く。バラード「ふたり」からは、絆を歌った「共鳴」、そして本作でもひときわ異彩を放つ「人人人」と、より言葉を聞かせる楽曲が続く。「人人人」は作詞作曲を、「共鳴」や「わたし」などと同じくSAEKI youthKが手がけた1曲。ラップを取り入れた楽曲の多いSixTONESだが、この曲のような2000年代の日本語ラップを踏襲したナンバーは珍しい。複数メンバーでのラップでのマイクリレーが巧みで耳触りが良い。それこそ先述したセルフライナーノーツで松村が「僕はこんなSixTONESをずっと見てみたかった」と話しているが、彼らがステージでこの曲をどのようにパフォーマンスするのか、非常に興味深い。なお、もちろん言葉選びも巧みなので、聴き心地に流されずリリックにも目を通してほしい。
「人人人」で肩の力の抜けたフラットなラップを聞かせたあとには、艶やかなボーカルで怪しげに誘う「Risky」でさらに場面展開。前半が仲間とワイワイ盛り上がる“大声”だとすれば、ここからは2人の時間を愛おしむ“囁き声”に。「Chillin’ with you」では、前半にスリリングなラップやボーカルを聞かせていたのが嘘のように、甘い声で魅了する。「SUBWAY DREAMS」では“ひとりひとりが主人公”という、SixTONESが楽曲でこれまで何度も伝えてきたメッセージを、明るく歌い上げる。6人が歌で物語を紡いでいく様は、まるで「マスカラ」のミュージックビデオのコンセプト「それは“SixTONES”という、一人の男のお話」のよう。SixTONESは性格も、ダンスや歌にしても、それぞれの個性が強い。そんな彼らだから、実は“6人で1つ”よりも、 6人がそれぞれの個性を生かし、バトンをつなぐように前に進んでいく、ストーリーを推進させていくのが似合うのだろうと思う。そんな個性の強い6人が思いのままに一様に盛り上がると「PARTY PEOPLE」のような華やかさが出る。
恋に落ちる自分を<有り得ないところまで 心が 動き出す>という言葉で綴ったミディアムチューン「わたし」で、“心の声”へ。そしてアルバムは、壮大なサウンドに、等身大の歌詞とリラックスした歌声が乗った「Always」でフィナーレを迎える(※14曲目以降は、アルバムの形態によって異なる楽曲が収められる)。この“等身大”、“リラックスした姿勢”というのが、実は本作の、そして現在のSixTONESにとって大きな要素であるような気がする。デビューの勢いや決意をそのまま凝縮したような1stアルバムでは出せない、コンセプチュアルなアルバムでも出せない、“等身大”で“リラックスな姿勢”。メンバーは今年1年を振り返って、個人での活躍が目立つ一方でグループの知名度が足りないと発言している。それが、良い意味でSixTONESというグループへの固定概念やイメージを打ち砕き、それはグループが、様々なものに縛られず自由に音楽を鳴らすことができることにつながっているのではないだろうか。またリラックスした等身大の姿で音楽を作るのは、自分たちに自信がないと、実は難しい。この『声』という作品は、デビューから3年が経ったという自信が生み出した、新たなSixTONESの“声”なのだ。
THE FIRST TAKEという歌“声”から始まった2022年の締めくくりは、「第73回NHK紅白歌合戦」出場。彼らはこの大舞台で「Good Luck!」を披露し、2023年へとつないだ。2023年は、どのような声で楽しませてくれるのだろうか。