表に出そうとしなくても、やっぱり「自分」が出る。そこを楽しんでいったほうが、「役者・菅田将暉」としての人生じゃなくて、ひとりの人間の人生としても面白いんじゃないか、と思った
昨年歌手デビューを果たした菅田将暉が、初のアルバム『PLAY』をリリースする。石崎ひゅーい、amazarashi、忘れらんねえよ、黒猫チェルシーなど豪華アーティスト達が、この当代随一の人気若手俳優のデビューアルバムにその名を連ねているのだ。そんな華やかなアルバムでありながら、フタを開けてみれば、不器用に生きる人々へ暖かな目線をおくる、優しいアルバムでもある。この差こそが、菅田将暉という役者と人間そのもの、幅広さ/奥深さなのだ。
『普段自分が何を考えているか』
それは役をやる上で邪魔だと思っていた
ー歌手デビューをしてから約1年、遂にフルアルバムに辿りつきました。
「はい。辿りつきました」
ーデビュー時点でアルバムを出す、というのはもちろん決まっていたと思うんですが、その時持っていたイメージと、こうして出来あがったもの、比べてみてどうですか。
「思い描いていたものに、おおむね近いと思います。ざっくり言えば、自分も少なからずゼロの段階から参加する楽曲もある、また、自分の好きなミュージシャンにちょっと甘える曲もある」
ーははは。
「その中ではもちろん、自分らしさというものを出せるようにしたい。そういう感じでした」
ーアルバムまさにその通りのものになりました。素晴らしい。
「ありがとうございます」
ーやはり苦労はありましたか。
「音楽的なところでも、技術的なところでも日々見つかるものが多すぎて、頭を抱える日々ではあるんですよ。それでも、慣れていくというかーー。お芝居を始めた時もそうなんですけど、そもそも『表現しよう』とする以前の段階だったんですよ。だって、『標準語喋るのとか恥ずかしい』だったんですから」
ー(笑)そこからですか。
「ええ。あとは『テレビで聴こえる自分の声、なんかヘン』とか(笑)。そういうのはちょっとずつ取れてきたんじゃないかなと。やっぱり場数だけはいろいろたくさん踏んできたっていうのがデカいのかな、って思ってますけど(笑)」
ーただ菅田さんって、そうした最初の居心地の悪さが、取れてきたからもう無きものにしちゃうんじゃなくて、自分の心の大事なところに置いている感じがして、それがすごくいいなと思うんです。
「最初の居心地の悪さ、好きですもん(笑)。そりゃウンザリはしますよ?『ええ!それ大変じゃん、やめたい』みたいにはなるんですけど」
ーその感覚を持ってる人が「えー、人前で歌います」なんてーー。
「とんでもないことなんですよ。わかっていただけますか(笑)。ましてや『役者として勢いがある』と評価していただいているこの時期に(笑)、歌手デビューなんて危険な挑戦をするなんて、と。実際、最初に歌ってみたら、それでも思い描いた理想像には全く届かなくって・・・あれは近年ない落ち込みでした。でも、考えてみればそんな風に落ち込むのだって『何様のつもりだ』なんです。だって、最初から何もかもうまくできるわけがないんですからね。そんなことを考えてーーこう、非常にエモーショナルになりました」
ーそうですね。本当にエモーショナルなアルバムになっていると思います。自身の作詞された楽曲を始めとして、菅田さんの本音というものがとても見えてきます。
「そもそもーー表現する人として以前に、普通に生きてる男として、自分のことってあんまり他人に言わないですよね」
ーそうですね。
「伝わる人だけ、わかってくれる人にわかってもらえればいい、って思っていたんです。『普段自分が何を考えているか』なんていうのは、役をやる上で邪魔なんじゃないかとすら思っていましたから」
ー役者さんの中にはその考え方/スタイルを貫き通す人もいますよね。
「そうですね。それももちろん正しいと思います。でも・・・表に出してなくてもやっぱり、出るんだと思うんですよね。自分も、仲間と曲作ってみたり、洋服作ってみたりした時に、自分が出るんだなとおもいましたし。そこを楽しんでいったほうが『役者・菅田将暉』としての人生じゃなくて、ひとりの人間の人生としても面白いんじゃないかな、って思ってるんです。そんな感じのアルバムになったと思います」
INTERVIEWの続きは、本誌4月号[VISIONS]をご覧ください。
[VISIONS]
2.VISIONS:小袋成彬
3.VISIONS:今里(STRUGGLE FOR PRIDE)