The Wisely Brothersが先日、2nd アルバム『Captain Sad』をリリース、本作を提げたツアーが9月19日(木)の名古屋を皮切りに開催される。そんな彼女たちを現在発売中のEYESCREAM No.172でフォーカス。前作『YAK』リリースから1年5ヶ月、彼女たちの集大成となる本作について話を聞いた。WEBではツアーに先駆けて、ロングバージョンをお届けする。
和久利泉 (Ba./Cho)、真舘晴子 (Gt. /Vo.)、渡辺朱音(Dr./Cho)
“悲しみも一緒に前に進みたいと思えた”
ー2作目となる『Captain Sad』。どのような作品に仕上がったと感じますか?
真舘晴子(以下、晴子):コンセプトを決めてから制作に入ろうと思っていたのですが、具体的なものが見つからなくて。なんとなく、聴いてくれた方の大切な人や想い出が浮かんでくるような曲が詰まったアルバムになればいいなという気持ちだけを共有して作りはじめたら、意外と悲しみを纏った楽曲が多くなっていました。でも、ネガティブなままに終わらせたくはなかったので、それを自分の個性の一つとして取り入れて、前に進んで行けるような作品を作りました。ただ、しっくりくるタイトルが思い浮かばず…..。そのタイミングでよく“キャプテン”という言葉を耳にしていて、すごくいい響きですよね。それでキャプテンに悲しみ=Sad、をつけてみたらどうだろうってことから。これで悲しみを前向きに捉えられればいいなと思い2人に聞いたら、割と良かったみたいで。
渡辺朱音(以下、朱音):前に進むためのアルバムにしたかったので、最初はSadか〜って思っていたんですけど、晴子が悲しみと一緒に前に進むって説明してくれた時に、すごく私たちにぴったりだなと思いました。『Captain Sad』は私たちそのものです。
晴子:しっくり来た名前が見つかって良かったよ、本当に(笑)。
ー約1年5ヶ月ぶりのリリースとのことですが、何かアルバムに影響するような出来事はありましたか?
和久利泉(以下、泉):前作を出して以降、周りの方には私たちの音楽活動はプラスに映っていました。でも、自分たち的にはもがいていて。その苦しさを言葉にして説明するのは難しいんですけど、活動が順調だとは決して思っていなかったので。でも、曲は作らないといけない。今改めて振り返ると、あそこで立ち止まらなかったからこそ、今作を通して乗り越えることができたのかなと。
ー音楽で昇華した?
泉:そうですね。私たちにできることは曲を作ることだったので、悩んだ時はそれを作品にして、進んでいけばいいんだなって思えました。
晴子:今作はほとんどの楽曲を0からセルフプロデュースして形にしたので、自分たちの感情が音としてよりストレートに表現できました。
朱音:前作はプロデューサーとしてGREAT3の片寄(明人)さんが入っていたので、曲の方向性を先導してくれて、ワイズリーの楽曲の幅が広がりました。今回はその部分も自分たちで進めて行ったので、気持ちの共有がしっかりできたなと思います。
泉:曲に対するイメージをなるべく早い段階で共有できたのは大きいかも。いつもスタジオでとりあえずバーンって楽器を鳴らして作りはじめるか、晴子が弾き語りをベースとした新譜を持って来てくれるか。でも今回は最初に曲の描写をみんなで共有できたのがすごく楽しかったし、心強かったです。みんなで前に進んでいく感じ。
ーその他にも今作から変えた部分はありますか?
泉:トライアングルやシンセサイザーなどの新しい音を加えたりしているんですが、それ以前に改めて自分たちの音と向き合いました。自分の楽器が奏でる音が、他の楽器の印象を操作する音にもなることに気づかされました。
朱音:今までギターやベースの音に関しては片寄さんやエンジニアさんのアドバイスを受けて作っていましたが、ドラムはずっとドラムテック(ドラム音をチューニングしてくれる人)の方にお願いして、出来上がった曲のイメージを擦り合わせて作ってもらっていました。今作から初めてエンジニアさんと相談しながら自分で音をチューニングする作業を行ったことで、泉が言っていた「自分の楽器と向き合う」時間が増えました。それって曲を制作する時点で考えないといけないことだと、改めて気づきました。
晴子:練習の時から意識してね。
朱音:うん。以前より自分のフレーズプラス、曲全体でのドラムの音の存在感を考えることができた気がします。なので、全員が今までよりさまざまな角度から曲を見る、音を奏でることができるようになったのかなと思います。
ー音と言うと「いつかのライフ」ってどのように録られているんですか? この曲だけ弾き語りですよね?
晴子:そうなんです! 一軒家のスタジオの玄関で、一本のマイクだけ立てて3人でギューギューになって録りました。こういうのも面白いかなと思って。初の試みです。
ー急に曲の雰囲気がガラッと変わるから、とても気になっていました。タイトルも印象的ですよね。
晴子:今日という日も遠い未来から振り返ると、いつかになるんだなと考えていて、そこから。練習したりライブをしたり、レコーディングに向けてもがいていたり、どの日もいつかは懐かしい日々になるんですよね。
ーどの曲もワイズリー節というか世界観が独特ですよね。
晴子:ストレートに書いているつもりなんですけどね(笑)。自分でも違う日に見ると、これどういう意味だろうって思ったりするときも正直あります。わかる日とわからない日みたいなのもあったりして。その時の自分と歌詞が紐づいているからかな。
ー曲中の描写が何通りにも見えるというか。例えば、「イルカの背中」というタイトルですが、何をイメージしているんですか?
晴子:この曲は星が見える夜の空をイメージしています。とある夜にテレビで見た、3.11で被災された方のドキュメンタリー番組で、ご夫婦が夜空を見上げて、亡くなった家族に向けて話しかける姿が映っていたんです。それを観て、様々な人が思いを馳せる空って改めてすごいなと感じた気持ちを書きました。夜の空や海って、ちょっと青っぽくて、光っていて、こういう自然の美しい光景にだれかを思うって、すごく特別なことだなと思いました。そこから繋げたのは、イルカが夜に水しぶきを上げて、海からぴょんっと飛び跳ねる姿を想像した時、イルカの背中が光るんです。その光を夜の星に見立てて、このタイトルをつけました。
ー「Hobby」の“人になれない宿題”っていう表現も凄いですよね。
晴子:これはマネージャーさんにも強めに聞かれました(笑)。
和久利:あははははは!
朱音:でもすごくわかる私は。自分がそこに共感できるというよりは、晴子がこういう歌詞を書くことがすごく理解できる。晴子の歌詞を受け取る時、私たちは一緒にいる時間が長いからこそ、なんとなくこう思っているんじゃないかなとかが浮かぶんです。頭に絵は浮かんでいるけど、言葉として出てこない気持ちなんだろうなと思っています。そういうのも1つの表現方法だから、聴いた人がその気持ちを思い出してもらえたらいいなと思います。自分のあの時の何かの感情に似ているとか。
晴子:優しいね。
一同:(笑)。
朱音:“人になれない宿題”っていうのは晴子がときどき、私はもうダメかもしれない、(人と)違うのかもしれない、みたいなよく分からない方向のネガティブな思考になっている時がある気がしていて(笑)。でも側から見たら別にそんなに気にしなくてもいいし、ただ単に感性の違いなだけっていう話で。
晴子:人っていう括りが作られているような気がしてしまう時があって。人だったらこうあるべき、みたいな。犬だったら違うけど、人だったらこれが常識、みたいな。その求められている人間になれない時があるような気がして。だから人間じゃないのかもとか思ったりすることがよくあります。
朱音:そういう姿を長い間見てきたから、晴子が書いた歌詞に“人になれない宿題”ってでてきても、あ~って思える。でも確かに全然知らない人からしたら、どういうことなんだろうって思いますよね。
晴子:知ってるからね、たしかに。
朱音:本当はこうすべきかもしれないけど、できない時の気持ちってみんなあるはずだし。だから、どこかしらに感じたことがある気持ちだと思います。
ーひとつひとつの表現は個性的だけど、3人がもつ柔らかい空気感はどの曲にも反映されている気がして、優しい気持ちになりました。9月からはリリースツアーも開催されますよね。
晴子:東名阪の3箇所、対バン形式で行います。
泉:私たちが好きなバンドばかりを呼んでいます!
朱音:リリースをお祝いするライブやイベントが、今回はいっぱいあるので、みなさんが来てくれるのか心配になっちゃいます(笑)。
泉:全部来てくれたらスタンプカードが貯まるみたいなのいいかも(笑)。
朱音:集めた結果何かもらえるみたいな。
晴子:何にする?
和久利:集めた結果、またライブが見られる!(笑)
晴子:ふふ、みなさんが足を運んでくれたら嬉しいです。
INFORMATION
The Wisely Brothers
『Captain Sad』 On Sale
https://wiselybrothers.com/
「Captain Sad Tour」
9.19 名古屋 Live & Lounge Vio
Special Favorite Music / DENIMS
9.20 大阪 心斎橋CONPASS
Special Favorite Music / No Buses
9.29 東京 新代田FEVER
2 / Special Favorite Music