ライブイベント「REDLINE ALL THE FINAL」が12月7、8日に幕張メッセ 国際展示場 展示ホール9〜11にて開催される。2010年にスタートした「REDLINE」。15周年を迎える今年、「ALL THE FINAL」として終止符が打たれる。当日はこれまで「REDLINE」を支えてきた常連組から、今回初出演となるアーティストまで、多彩な顔ぶれが登場しイベントのフィナーレを盛り上げる。
本イベントの開催を記念して、主催の“KTR”こと鈴木健太郎(JMS)と、coldrainのフロントマン・Masatoの対談を実施。「REDLINE」での思い出はもちろん、共に作り上げてきた“ラウドロックシーン”についても語り合ってもらった。
──そもそも「REDLINE」とはどのような思いで立ち上げられたものだったのでしょうか?
鈴木:立ち上げたのは2010年、僕が25歳くらいで、JMSに入社して2年目のときでした。 JMSの業務のメインはCDの流通で、僕は当時EGG BRAINやHEY-SMITH、SHANKなどを担当していました。少しずつ担当アーティストが増え始めてきたこともあって、そのアーティストたちを繋げられないかなと考えるようになって。JMSが担当するアーティストのカラーとしてもライブバンドが多かったので、だったらライブで見せるという場所を作っていくのがいいんじゃないかと思って、ライブハウスツアーとしてイベントを組んでみたことが始まりでした。
──公式サイトには「REDLINEとは? 限界を超え、すべての境界線を無くすことを目的とする活動体」というフレーズの記載がありますが、イベントとしてのテーマのようなものは当初からあったのでしょうか?
鈴木:「ジャンルレス」というのは一つのテーマでしたね。普段バンド主催のツアーでは呼ばないような組み合わせなど、面白い組み合わせにしようということは当時から意識してブッキングしていました。
──coldrainが「REDLINE」に出演したのはイベントが始まって2年目、「REDLINE 2011」です。
Masato:NAGOYA CLUB QUATTROですよね。……誰が出てました?
──FAT PROP、ROTTENGRAFFTY、SHANKですね。
Masato:うわ、覚えてない!(笑)
鈴木:俺も……(笑)。
Masato:「REDLINE」に出たこと、クアトロのフロアで鈴木さんとしゃべったことは覚えているんですけど、ライブの記憶は一切ないですね(笑)。
──イベントに誘われたときのことは覚えていますか?
Masato:もちろん。そもそもcoldrainと鈴木さんの関係っていうのが不思議な距離感で。俺らはJMSで流通してなかったけど、当時同じ事務所にいたSiMはJMSから流通していて。SiM以外にも、仲のいいバンドは結構JMSと関わりがあったから、絶妙な距離で鈴木さんのことを見ていました。
鈴木:そうね。ただ一緒にビジネスはしたことがないっていう。
Masato:でも鈴木さんのやり方はSiMを通して知っていました。JMSでSiMがやっていたこと、つまり鈴木さんが仕掛けていたような、CDショップで売るだけじゃないみたいな売り方がいいなと思って、自分たちの所属しているメジャーレーベルの人に「こういうことってできないんですか?」って言ってた記憶もあります。
鈴木:インディーズには、いい意味でのコンプラの無さみたいなのがあるからね(笑)。
Masato:SiMもFACTもJMSで流通していたし、鈴木さんが絡んでいるのを見ていたから、うらやましさもちょっとあったし、だからこそ「負けねえぞ」みたいな気持ちもあったなと思います。
──その絶妙な距離感だったcoldrainを「REDLINE」に誘ったのはどうしてですか?
鈴木:ただただcoldrainが好きだったから。「REDLINE」ではビジネスを一緒にしているかどうかは関係ないんで。それに、シーンを盛り上げたいという気持ちもあったので、そういう意味でもcoldrainは重要なバンドだったのでオファーしました。
──その後、coldrainは2012年の「REDLINE」と「PUNKLOID」とのコラボイベント「NO BLUR CIRCUIT 2012」、2022年11月の「REDLINE ALL THE REVENGE」に出演しています。「REDLINE ALL THE REVENGE」はコロナ禍による規制から、ライブやライブハウスが戻りつつあった時期の開催でしたが、いかがでしたか?
Masato:“コロナ明けの第一歩”みたいなことをすごく感じたのを覚えています。あの日は、俺はフロアがどんなことになっても「これはREDLINEだから」と思って、何も言わないって決めてたんですよ。なんですけど……今だから言えることなんですけど、俺スポットライトがめちゃくちゃ当たってて正直フロアが全然見えなくて(笑)。
鈴木:照らされすぎて(笑)。
Masato:そう。だから何が起きてたかは正直あんまりわかんなかった(笑)。
鈴木:でも声は聞こえたでしょ? あの日は声出しもOKにしていて。シンガロングもフルでOKというのはまだ他のライブではあまりなかったので、アーティストはみんなそれがうれしかったみたいで。
Masato:声は聞こえました。「本当にライブが帰ってきたな」というのをすごく感じましたね。あの日は久々に疲れました。それまでは常に見られているようなライブだったから、どちらかというとメンタルが疲れるという感じだったんですけど、あの日はより“みんなが参加している”ライブになった感じがして。肉体的に疲れました。「この疲れ方も久しぶりだな〜」と思いました。
鈴木:あの日はお客さんからも「戻ってきたな」という空気感を感じました。そういう意味で、他のイベントやフェスに対していい空気感でつなげられたのかなと思いました。やってよかったなと思う1日でした。
Masato:coldrainとしては、「REDLINE」がやることが、俺らの主催フェス「BLARE FEST」につながっていることが多いんです。2020年の「BLARE FEST」の前には幕張メッセでの「REDLINE ALL THE BEST 2019」があったし、2022年の「BLARE FEST」の前にもぴあアリーナの「REDLINE」があった。あの空気感をどこまで盗めるかというのは考えていますね。2019年の「REDLINE」のときはクロークのことで相談しましたよね?
鈴木:うんうん。「REDLINE ALL THE BEST 2019」で、クローク用の袋にイベントのロゴを入れたんですよ。そしたらゴミも減るし、うちとしてもちょっと値段が上げられるしと思って(笑)。
Masato:それを見て、うちもデザイン入りのクロークにしようとしました(笑)。「BLARE FEST」は年明けにやるから、タイミング的にも「REDLINE」が直前にあって、成功例として参考にさせてもらっていることが多いです。2019年のときに思ったんですけど、「REDLINE」ってやろうとしていることがめちゃくちゃなんですよね(笑)。
鈴木:360度ステージ作ったり?(笑)
Masato:そうそう。ああいうのって普通、やりたくても何かあったときに誰も責任取りたくないからやらないんですよ。でも鈴木さんは責任を取ってやろうとしている。そういうところを見て「負けたくねえな」って思うんですよ。鈴木さんは裏方ですけど、バンドに寄っている感じがする。だからこのメンツが集まるんだろうし。お客さんも“わかってる”感じがして。そこも大事なことですよね。
鈴木:そうだね。「REDLINE」は商業フェスじゃないから。確かに僕は裏方の人間ですけど、「REDLINE」に限らず、ものをつくるときはバンドマン視点で作っているつもりです。
──鈴木さんは立場としては会社員でもありますが、いわゆる“むちゃくちゃなこと”ができるのはどうしてなのでしょうか?
鈴木:そもそも自分が会社員だっていう感覚がないんですけど(笑)。自分がキッズだった頃、ステージダイブがあったりモッシュがあったりするライブが楽しかったんですよね。あの頃ってみんなが思いやりを持ちながら無茶をしていて。あの感じを作りたいと思っているんです。もちろん音楽の聞き方やライブの楽しみ方は時代によって変わっていくし、いろんな論争が尽きないのもわかるんですけど、でも「REDLINE」にはそのあたりを理解しているやつだけ来てくれと思っていて。そうじゃない人は、「申し訳ないけど来なくても大丈夫です」と思っています。後ろで見るとか、いろいろ楽しみ方はあるわけですし。今回は1日目と2日目で結構色も分けたんですよ。いつもは異種格闘的に、ジャンルをミックスするんですけど、今回は完璧に分けたんで……そこはもう、そういうことです。
Masato:そういうことっすね!(笑)
──冒頭にも少し話がありましたが、鈴木さんとcoldrainは、いわゆる“ラウドシーン”を作り上げてきた一員でもあると思います。この時代の移り変わりをどのように見ていたのかもせっかくなので聞きたいなと思っていて。
Masato:俺らがバンドを始めた頃って、「ラウド」とか「ラウドロック」という、言葉もジャンルもなくて。俺らはただメタルやパンクの要素をたくさん入れた、激しめな音楽をやっていただけだったんです。でもそのときライブハウスシーンには“メロコア”という言葉が浸透していて。音楽業界全体で見たらK-POPとかも流行っていた。だから俺らがやっている音楽にも言葉があったほうがいいなと思って、鬱陶しいくらいに“ラウド”という言葉を使うようにしたんです。ちょうどその頃、俺らだけじゃなくて、FACTとかSiMとか、抜きん出ているバンドが出てきたタイミングだったから、自分たちもそこの一部になろうと思って。といってもFACTはあんまり絡んでくれなかったんですけど(笑)。
鈴木:あはは(笑)。
Masato:そのときに俺らがやりたかったことは、シンプルに“メロコアを食うこと”。というのも、どこに行ってもディッキーズにタオルというスタイルのパンクキッズで溢れていたから。いかにその人たちを取り込めるか、だと思っていた。つまりパンクバンドたちがやっていることに憧れていたし、同時にそこと戦う面白さというのも感じていて。言ってしまえば、ラウドロックという言葉は、日本のパンクシーンが作ってくれた言葉なじゃないかなと思います。で、そのラウドシーンを盛り上げる役目を果たしていた一人が鈴木さんだと、俺は思っているんですよ。
鈴木:そのあたりで言うと、僕はまずFACTを担当して、そのあとSiMやMY FIRST STORYを担当してきました。それこそMasatoたちバンドマンが「ラウド」「ラウドロック」と言い続けたから、ちょっとずつタワレコに「ラウドロック必聴」というポップができたり、ラウドロックコーナーが登場したりして。
──FACTやSiMを担当し始めた頃から、新たなシーンができるのは感じましたか?
鈴木:感じましたよ。FACTやcoldrain、Fear, and Loathing in Las Vegas、Crossfaithなど、レーベル問わずにいろんなバンドが一斉にリリースしていたし、裏方にもそういう音楽が好きな人がたくさんいて、みんなで「盛り上げようぜ」みたいな雰囲気がありました。そこからだんだん“coldrainみたいなバンド”、“SiMみたいなバンド”が出てくるようになって。ファッション的にも、メロコアがディッキーズだとしたら、ラウドはカットオフのTシャツにビリビリのスキニーみたいなイメージがちょっとずつ確立されていって「ああカルチャーができたな」という実感がありました。ちゃんとラウドロックカルチャーが伝わっているなって。
──そうやってジャンルと、自分たちの存在を確立してきたcoldrainですが、その中で今、ライブをする上で意識していることや大切にしていることはどのようなことでしょうか?
Masato:考えすぎないことですかね。それは次の世代が教えてくれたことなんですけど。ハルカミライとかって“むちゃくちゃ考えて、むちゃくちゃ考えていないみたいなライブ”をするんですよ。俺らで言うめっちゃ適当なライブを、綿密に考えてやるのが次世代のバンド。俺だったらストイックにパーフェクトなライブをすることを考えるんですけど、次世代のバンドは、荒削りに見えるようなライブをパーフェクトにやっているんですよね。
──なるほど。
Masato:俺らはそれを真似ようとしてもできないから、だったらもう考えないでやるしかない。「この歴で考えすぎずにやるっていうのが面白い」ということに最近気づきました。俺らが型にハマると、たぶんもうあんまり印象に残らないんですよね。名前も知られているし、「ああ、あの重たい音楽の人たちね」みたいな感じになっちゃう。だったら新人の頃のようなことをやるのが大事かなって。だから常に初出演みたいなバイブスを出すようにしています。だからたまに、途中で焦りますもん、「俺、今ベテランっぽくなってた」って。
鈴木:「TREASURE05X 2024」でMasatoが客席の車椅子エリアまで走って、そこからダイブした映像がSNSで流れてきたのを見ました。そういうことだよね?
Masato:そうです、そうです。
鈴木:めっちゃ遊び心あるなって思った。Masatoってそういうことやらなそうなイメージだったから。それこそハルカミライだったらわかるけど。その動画を見て「面白い!」って思っていたので、今の話を聞いて「そういうことだったのか」と思いました。
Masato:あの日も最後の最後で「やべえ、俺ストイックにやってた!」と思い出したんですよ。で、ステージを降りてフロアに進んだんですけど、昔「DEAD POP FESTiVAL」でフロアに入って潰れたことがあったから「やべ、俺、ここ入っちゃダメなんだった」って思って、車椅子エリアに走って車椅子の人たちとハイタッチして。しかも最初からダイブすることを狙ってたらもっと冷静に飛べたと思うんですけど、何も考えてないから、登ってマジ3秒くらいで飛んでるんですよ(笑)。今見返すとめっちゃダサいんですけど、それも新人っぽいかなって。
鈴木:うん、いいよいいよ。
──では12月に控える「REDLINE ALL THE FINAL」ではどんなライブをしたいですか?
Masato:もう適当に(笑)。あんまり意気込まないことによってステージで意気込めるみたいなこともあるし。とりあえず頑張ります。とはいえ、「REDLINE」の最後だし、メンツももう天下一武道会じゃないですか。全員がお互いを潰しに行く日にはなると思うので、どうするのかというのは……もうちょっと近くなったら考えます。
鈴木:当日、Masatoは何ステージ出るんだろうね?(笑) この日は、Masato、JESSE(The BONEZ)、こいちゃん(CrossfaithのKoie)と、客演王が多いので、そのあたりも楽しみです。coldrainはとにかくこのシーンを背負っていくバンドなので、圧巻のステージで若い子に憧れられるような背中を見せてほしいですね。あと、この日はMasatoのアパレルブランド・OVER(ALL)の出店もあって。OVER(ALL)が他のイベントに出展するのは初めてなんだよね?
Masato:そうなんです。OVER(ALL)はここ最近あまり動けていなくて。というのも俺は服を作るのってアルバムを作るのと同じような感覚で、できるときはできるけどできないときはできないんですよね。まぁ服の場合はシーズンがあるのにシーズンは待ってくれないから困るんですけど(笑)。ちょうど今年の冬は作りたいなと思っていたところで声をかけてもらったのでやるしかないと思って……今、絶賛頑張っているところです(笑)。でも本当に人が集まる場所にOVER(ALL)が出店するタイミングって、これまでなかったので楽しみです。
INFORMATION
REDLINE ALL THE FINAL
日程:2024年12月7日(土)、8日(日)
会場:幕張メッセ 国際展示場 9~11ホール
公式サイト:https://redlineallthefinal.com/
【出演】
2024年12月7日(土)
ACIDMAN、AgeFactory、ALI、ASP、Awich、bacho、FAT PROP、FOMARE、
go!go!vanillas、HERO COMPLEX、KOTORI、MONGOL800、MY FIRST STORY、
PEDRO、RIZE、SATOH、SIX LOUNGE、THE FOREVER YOUNG、TETORA、tricot、
w.o.d.、WurtS、04 Limited Sazabys、クリープハイプ、サンボマスター、
ハルカミライ、東京スカパラダイスオーケストラ、優里
2024年12月8日(日)
AFJB、BLUE ENCOUNT、coldrain、Crossfaith、Crystal Lake、CVLTE、Dragon Ash、
dustbox、EGG BRAIN、ENTH、FACT、Fear,and Loathing in LasVegas、FOR A REASON、
HEY-SMITH、MAN WITH A MISSION、MONOEYES、MY FIRST STORY、NOISEMAKER、
Northern19、Paledusk、ROTTENGRAFFTY、SHADOWS、SHANK、SiM、The BONEZ、
SPARK!!SOUND!!SHOW!!、TOTALFAT、マキシマム ザ ホルモン
OPENING ACT:WORSTRASH