次に登場したのは、lit初出演のBonbero。uinプロデュースの「Flafla」をラップしながら現れ、観客のテンションをさらに押し上げた。途中にはSkaaiも再登場し、ステージ上で自然な連携を見せる。「Me vs. Me」や「Ringdidiringring」では鋭いスピットを響かせ、アカペラを差し込む構成力も光った。さらにCampanellaとともに、新曲「maishu」も先行披露。 ラストの「Karenai」まで一貫してストイックなライブを展開した。
15分の転換を経て登場したMFSは、所作、ダンス、シルエットのすべてが音に溶け込み、冒頭から観客の視線を自然に引きつけた。「Mind」ではビート上で滑らかにラップと歌を行き来し、「Don’t」では全身を使って高揚を生み出す。「I DONT KNOW」ではこの日2度目となるCampanellaが登場し、息の合った掛け合いで場を熱くした。「BOW」の前にふとこぼれた一言、「私は元気だよ、1日ずつ楽しんでいきましょう」。その言葉は静かに心に残った。
MFSの熱をやわらかく引き継いだのはiri。クリアで伸びやかな歌声で「Pick You Up」から観客の身体を揺らし、バックDJ、TAARのスムーズなプレイで高揚感の流れも途切れない。 3月リリースの新曲「Butterfly」ではアコースティックな音像とともに雰囲気が穏やかに切り替わり、iriの表現の幅がにじみ出た。「Wonderland」では合唱が起こり、多幸感がじんわりと広がっていった。
初日のヘッドライナーを飾ったのはSTUTS feat. Campanella / KMC。MPC、鍵盤、歌と自在に行き来しながら、「ORANGE」、「心」と2曲続けてJJJのバースを噛み締めるようにビートを鳴らす。「Rock The Bells」から登場したKMCもJJJに追悼を捧げ、感情の波を叩きつけるようなラップで会場を震わせた。「Expressions」以降はCampanellaが本日3度目の登場を果たし、2人だけの新曲も披露。そして最後に演奏された「Changes」では、スクリーンにJJJとfebbが交互に映るMVが流れ出す。今回のパーティにて、VJとしてMVがそのまま使われたのはこの瞬間だけ。ストレートな演出が、深い余韻をフロア全体に残した。
2日目の口火を切ったのは、福岡出身のラッパーBANNY BUGSだ。「A24」のイントロとともに登場するや、フロアは大合唱。代表曲を軸に走り回り、拳を煽り、全身で盛り上げる姿からは、地元の大舞台に立つ意志と勢いがはっきりと伝わってきた。ラストには、「DIE FOR YOU」のドリル調リミックスを先行披露。今後リリース予定のアルバム『UNVEIL』に収録される見込みだという。ステージを通して、そのアルバムタイトルがVJにさりげなく映し出されており、短時間ながら強烈な印象を残すライブとなった。
BANNY BUGSからの最高のパスを受け取ったのは同じ九州は長崎出身のKohjiyaだ。1曲目「Kick Back」から観客のシンガロングが起き、「KJ Season Freestyle」では本人が歌わずとも声が響く。「Naked Eyes」と「Denied」では初日に引き続き登場したBonberoとの息もぴったりだ。終盤にはポカリスエットのCM曲「99 Steps」も先行披露。ラップのスキルとステージング、所作のひとつひとつに、“若すぎるチャンピオン”と呼ぶにふさわしい風格が滲み出ていた。
Kohjiyaの余韻を断ち切るように現れたのはC.O.S.A.。「POP KILLERS」から空気は一変し、「Don’t like summer」では重く鋭いラップが会場を包む。ANARCHYとの楽曲「Reach」の自身のバースをアカペラでスピットする場面では、“JJJみたいに痛みをRec”というラインに、自然と歓声が上がった。ラストはJJJプロデュースの「LOVE」。破壊力と繊細さを兼ね備えたC.O.S.A.のライブが、会場に深く刻み込まれた。
10分の転換を経て登場したkZmは、「Aquarius Heaven」、「Super Sonic」と続けて軽やかに突き抜けるようなスタートを切る。「DOSHABURI」では観客がJUMADIBAのバースを歌い、フロアに大きな声が響いた。「帰り道がない」など清涼感あるナンバーで温度をゆるやかに調整した後、「Dream Chaser Remix」、「Sagging My Jeans」で再び全体を弾ませる。空気の波を巧みにデザインした30分だった。
夜が深まるなか、SIRUPがステージへ。「Need You Bad」や「CHEESE CAKE」では無邪気な笑顔とともに柔らかなグルーヴを広げ、会場に明るい風を吹き込んでいく。「FINE LINE」では初日に続きSkaaiが、新曲の「OUR HEAVEN」ではDaichi Yamamotoが登場し、客演との自然な掛け合いも魅せた。後半は「GO!」、「See You Again」へとスムーズに繋げ、背伸びせず、軽やかに、SIRUPらしいスタンスを貫いた締めくくりだった。
そして明け方5時前、MAGIC SQUARE BUILDING 2Fには毎年恒例のB2Bタイムがやってくる。KMを筆頭に、SHOTA-LOW、YOSUKE、MARZY、オカモトレイジ、uinなど、根っからのパーティ好きが続々とブースに集まり、代わる代わるUSBを差し替え、マイクを取り合いながら曲をかけていく。
ジャンルもスタイルも超えた“DJやりたがり集団”による、即興性と遊び心に満ちたセッションが繰り広げられ、熱気のピークは明け方に再び更新された。こうして音が途切れることなく繋がっていった2日間超は、litがずっと大切にしてきた“パーティ”の原点を、あらためて思い出させてくれた。なお、本稿では触れきれなかったDJ/アーティストたちのパフォーマンスも、この夜を特別なものにしていたことを記しておきたい。